THE PHANTOM PAIN Another ep:X 作:delutaplus
今回は日常パートの書き方を変えてみました。
ある話をしよう。信じるも信じないも、君次第だ。
その昔、2度、いや3度世界を巻き込んだ大きな戦いがあった。
それは読んで字の如く世界大戦といわれた。
中でも世界人口の約2.5%、8000万人が犠牲になったとされる第二次世界大戦。
ヨーロッパを主戦場とする戦いと、太平洋を主戦場とする戦いに分かれた大戦。
中でも太平洋戦争に関わる日本、アメリカ両国に伝わる噂話・・・おとぎ話があった。
曰く、外れることのない神の矢を放つ。
曰く、飛翔する艦砲を撃墜した。
曰く、長大すぎる索敵距離と射程距離を持つ。
それを間近で見たものは、口をそろえてこう語る。
「あれは未来から来た」・・・と。
その艦は砲弾一発で沈んだといわれる。
その情報が確かならすべては海の底、というわけだ。
その艦は、名を"みらい"といった。
確かにその艦は未来からやってきた。
日本の自衛隊に所属しているが故に専守防衛という義務と人命救助という責務の狭間で、歴史を変えるために行動する男を止めるため戦い、死んでいった。
強いが故に戦い、強いが故に負けた。
さて、彼らは戦いを終わらせるために戦った。
それ自体は正しいのかもしれない。
だが彼らはあるミスを犯した。
彼らの行動原理である"人命第一"。それを蔑ろにしたのは彼ら自身に他ならない。
誰かを救うために誰かを犠牲にする。
はっきり言おう。そんな世界など大戦で滅んでしまえばよかったのだ。
もちろん、単なる我儘であることはわかっている。
事実、世界は誰かに犠牲を強いることで成り立っている。
だからどうしたと?誰かを犠牲にしなければ生きていけない世界。
だったら皆死んでしまえばいいのだ。
もう一度言おう、彼らは間違えたのだ。
少々熱くなりすぎたようだ。
これから語るのはまた別の、というべきか。いや、そのあとの物語。
1974年11月30日午後2時12分
グレナダ沖20km
<こちらマザーベース。聞こえるか、スネーク>
カズから通信が入った。
「ああ、海鳥の声よりはよく聞こえるよ」
<それはよかった>
「何か?」
<今隣でボスが昼寝していてな。こそこそやってるんだ>
なるほどそれなら仕方ない。
指令室で寝るなと言わないのか聞こうと思ったが、ボスはそんなものお構いなしに食っちゃね、警備の兵にCQCを気まぐれでかけるような人物だということを思い出し、やめた。
「で、何か用でも?」
カズは普段はおちゃらけた女たらしだが、作戦行動中は凄腕の指揮官となる。まさか暇つぶしに無線を使うようなことはしまい・・・しないと願いたい。
<ああ、あるタレコミがあってな>
その単語に。スネークは眉をひそめる。
「タレコミ?」
通常、徹底した機密管理を行っているMSFはタレコミなどの類は受け付けていない。
ましてやMSF初の公式な作戦行動なのだ。
<シギントからだ。きちんと裏も取れている>
「ほう、なら大丈夫だ。で、どんな情報だ?」
<カリブの海賊は、コスタリカに"あるもの"を運ぶらしい>
「"あるもの"?」
<内容物まではまだわからん。だが、それを運搬するのは超弩級の船らしい>
「超弩級・・・わかった。その積み荷はどうする?」
<確保してくれ。中身を調べる>
「了解」
<おい、スネーク>
「ん?ボス、寝ていたはずじゃ?」
<残念だったな、トリックだよ・・・うそうそ、冗談だよ、今起きたとこだ>
赤道付近にもかかわらず冷え込んできた気がするのはスネークだけだろうか。
「で、あんたは何の用なんだ?」
<お前、負けるぞ>
その言葉に、スネークの目がすっと細くなる。
「なぜ?」
<ふむ、強いて言うなら、勘だ>
「勘?」
<大丈夫だ、死にゃせん>
ボスの言葉が引っかかりながらも、CICからの連絡で通信を切る。
その連絡は、カリブの海賊艦隊を発見したというものだった。
CIC
「敵の総数は?」
「5です。その他に輸送船とみられる巨大な艦が・・・いえ、輸送船ではありません」
「なんだ・・・あれは・・・」
レーダーに映る艦影と衛星画像、マザーベースから飛び立ったP3Cの画像。それを見るCIC、マザーベースは静まり返った。
「に、日本の戦艦、大和型一番艦・・・大和、です」
世界最大の戦艦、大和。後にも先にもこれを超える戦艦はない。
分厚い鋼鉄の装甲、何よりも46センチ3連装砲がその巨体の存在意義を物語っている。
斉射時に甲板にいればミンチどころかジュースになるとさえいわれる砲は、全盛期の大艦巨砲主義をまざまざと物語っている。
「敵はまだこちらに気付いていませんがどうしますか」
「大和のスペックを出せ」
「こちらです」
「トマホークでも沈められんか・・・ッ待て!」
"ある可能性"にたどり着いたスネーク。
それは第二次大戦中にあった大和の核爆発。海中で核が爆発、周囲が汚染されたものだ。
なぜ大和がいるのかは知らないが、核を運ぶ艦としてこれ以上優秀な艦はないだろう。
「カズ、奴ら、大和は核を運んでいる!」
<なんてことだ、どこに!?>
「わからんが、ここで爆破させるわけにはいかん!航行能力を奪うしかない」
<頼むぞ、ここで核が爆発すればヒロシマやナガサキどころではない大惨事になる>
「潮流や風に乗って拡散する範囲は底知れない」
「総員戦闘配置!対艦戦闘用意!」
「トマホーク発射用意、目標、大和を護衛する海賊艦隊!」
「準備完了」
「発射!」
トマホークごとき、イージス艦なら撃墜は容易い。だが、MSF研究開発班が開発したステルスミサイルとフォックスから放たれるECMによりトマホークは視認以外に完全にステルスだ。気づいた時には、もう遅い。
「全目標撃沈!」
「いいか、これから艦砲射撃でまず敵の射撃指揮所を潰す。その後停船させる。こちらに従わない場合は、強硬手段に出るしかないがな」
「了解!」
「大和との距離30000、敵の索敵範囲に入ります」
CICのモニターの海域図に大和の索敵範囲、主砲の有効射程、フォックスの主砲の射程が重ねて投影される。
「ここからが勝負だ。敵主砲の動きに細心の注意を払え」
「了解」
「敵艦との距離30」
「なぜまだ動かない・・・?」
「敵艦に動きあり!」
「砲塔旋回、本艦を照準!」
遂に大和が動いた。こちらを撃沈するため、砲を向けた。
「回避行動開始!」
確実に電探と射撃指揮装置を破壊するための有効射程、10kmまで20km。
「この場合、敵主砲を避けて近づくのにどれだけかかる?」
<回避行動をしつつ前部後部射撃指揮装置を破壊するまで概算30分だ。頼む、耐えてくれ>
「やるしかねぇだろ」
そう返したスネークの顔はしかし、笑っていた。
「敵艦、発砲炎を確認!」
続けて、30km離れているにもかかわらず腹に響く轟音が聞こえてきた。
「回避!取り舵いっぱい!」
所詮第二次大戦中の巨艦。避けられるとだれもが思っていた。
そこへ驚くべき情報が届いた。
「敵弾、分裂!」
「何!?」
そして聞こえてきたのはスネークが予想していた砲弾が海面を叩く音ではなく。
「う、右舷SPYレーダー破損!ECM停止、ダメージコントロール!露天艦橋、状況を報告せよ」
フォックスの悲鳴だった。
「三式焼霰弾・・・!」
三式焼霰弾とは第二次大戦中、日本軍が使用した対空兵器である。
炸裂点を頂点とする円錐状の空間を攻撃でき、敵航空機編隊の前面で炸裂し弾子を放出するものだ。
要は馬鹿でかいショットガンを思い浮かべてもらえばいいだろう。
しかし三式弾は対空戦闘でも効果を上げられず、対艦などもってのほかだったのだが。
レーダーなどの精密機器が露出し、装甲が薄いイージス艦には最大の効果を上げる。
<CIC艦橋!こちらでは死者一二名、けが人多数!>
「総員艦内に退避!このまま左から敵艦の前に回り込め!」
残るSPYレーダーは左舷の物のみ。左舷に被弾は許されない。
有効距離10kmまで8km。
「くははははは!」
突如CIC内に響いた笑い声にクルーが静まる。
「いいねぇ、そういうことか、ボス!決まってるんなら――どうしようもねぇよなぁ!」
歪んだ笑みにクルーは顔を引き攣らせながらも問う。
「か、艦長?」
「上等だ!だったら、どこまでできるかやってやろうじゃねぇか!」
狂ってしまったのかと心配になるクルー。
「両舷全速。奴に突っ込め!」
「は、はい!両舷全速!」
だが、彼らは従う。なぜなら艦において、艦長は絶対だからだ。
艦橋に直撃弾を食らいながらも進むフォックス。
敵は精密機器が集中している艦橋しか狙ってこない上に、狙いが甘く左は奇跡的に無傷だ。
有効距離10Kmまで1Km。
「目標、破壊可能圏内に入りました!」
待ち望んだ瞬間がやってきた。
「主砲諸元入力、前部射撃指揮装置!」
「完了!」
「主砲、てぇーッ!」
「発射!」
「弾着確認、前部射撃指揮所ごと破壊しました!」
「続いて照準後部射撃指揮装置!てぇーッ!」
「発射!」
「後部射撃指揮所破壊!」
同時に海域は静寂に包まれる。
大和型戦艦一番艦"大和"、イージス艦シーフォックス型一番艦"シーフォックス"沈黙。
現時点におけるカリブ洋上海戦において勝利したのはMSFといえる。
海賊艦隊は殲滅、大和型一番艦"大和"の戦闘能力を奪ったのだ。
ガラパゴス諸島沖海戦、カリブ海海戦を経て損害はシーフォックスのイージスシステム、SPYレーダー、12名の死者、露天艦橋のみ。"海賊"撃滅に関して、OPERATION "Pirate Hunter" は成功した。
フォックスは大和の後ろ姿を見ながらマザーベースへ向かっていた。
どっかで見たことあるなーという人、あなたは何も見ていない、いいね?