蓬莱人で美人のヤンデレが俺の嫁   作:ちゃるもん

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投稿です!!

さあさあ、あのフラグを回収するぜよ。

では、どうぞ!!


俺の忘れていた感情

 血が大地を覆い、もはや何れが誰のものかが分からない手足が転がる庭。

 歩くたびにピチャッピチャッと血が飛び散る。

 

「天子」

「…………!!」

 

 ……まあ、そうなるわな。

 天子は怯えた目で俺を見ていた。

 配慮はしたとはいえ、周りは血の海。人の腕や脚。デロンと飛び出た腸や目玉。此方をじっと見詰める顔。そして、目の前にはそんな惨状を作った血塗れの男。

 怯えない……、全うに生きてきた人間が、これだけのものを見て怖がらない筈がない。昨日のような、生易しい世界では無かったのだから。

 

「……。俺がやれるだけの事はやった。後は自分で頑張れ」

 

 そう言って、自分が天子の頭に手を伸ばしているのに気付く。血で真っ赤に染まった手を。

 無意識に伸ばしていた手。動かない天子。

 俺は自分の手と、天子を見て、手を引っ込めた。

 こんな血で塗れた手であの美しい青を汚したくない。そして、天子は今後こんな汚れた俺なんかと居るべきではないのだ。

 

「……。じゃあな」

「…………ぁ」

 

 天子の横をすり抜け、振り返る事なく真っ直ぐ歩く。

 あの門から帰れば良いんだったか?まあ、飛び降りて行けば良いだけだし大丈夫だろ。

 そんな思考で、視界の端に見えた、手を伸ばす天子の姿を揉み消しながら。俺は飛び降りた。

 

 

 門の前。後はその門から出て地上に戻るだけ。なのだが、俺はそれが出来ないでいた。

 何故か?

 

『やあやあ。待ってたよ蓬莱山縁』

 

 俺の行く手を阻むように仁王立ちをする存在が居たからだ。

 丸や三角、四角の物体が付いた鎖をアクセサリーのようにぶら下げた少女。しかし、その身長とは対照的にその存在感は大きかった。

 それもその筈。少女の頭には一対の大きな角。鹿のような、枯れた枝のようなその角は一つの事を表していた。

 

「鬼……か……」

『なんで嫌そうな顔をするんだい』

「鬼には嫌な思い出が多いからな。それで?俺の名前を知っているようだが?」

『ああ、勇儀事か……。あれは災難だったね』

 

 何で知ってるのか、問いただしかった所だが、ここで敵対はしたくない。

 この圧力……星熊と同等の化物か……。

 

「それで、私の名前だったね。私は『伊吹(いぶき)萃香(すいか)』だよ。種族は見ての通り鬼さね。一応鬼の四天王の一角でもあった」

「そうか。知っていたようだが蓬莱山縁だ。で?俺に何のようだ?」

「率直に言えば戦いたい」

「断る」

「ありゃ、即答か。どうしてか聞こうじゃないか」

「理由もクソもあるか。俺にメリットがない」

「そんな詰まらない事で動くような人間だったのか……。ちょっとガッカリだよ。だったら、お前さんがさっき別れてきた女を殺す。って言ったらどうする?」

 

 …………。

 恐らくコイツは俺が断れば天子を本当に殺るだろう。

 

「ああ、一つ言っておくとねぇ。私は能力で小さく分裂出来る。まあ、言ってしまえば分身だとかそんなのだね。お前さんの名前を知ってたのも、別れてきた女の事も知ってるのは分身が見てたからだよ」

「……。だからなんだ?天子を殺したところで……」

「焦ってるのが丸分かりだよ」

 

 伊吹は瓢箪の栓を抜き、中に入っているであろう酒をゴクゴクッと豪快に飲む。

 ここまで漂ってくるツンッとした酒の匂いだけで、その酒の度数が異常なほどに高いのが分かる。匂いだけで酔ってしまいそうなほどだ。

 

「ぷはぁ~。ん~そうだね~。あの天人がだめなら……お前さんの嫁を殺すか?」

「ほお?お前に輝夜が殺せるのか?」

「う~ん。正直難しいね。なら、吸血鬼の餓鬼。巫女や魔法使い。古明地姉妹辺りでも良いのか。幻想郷全体に私の分身は居るからね。何時でも殺ろうと思えば殺れる。さあ、どうする?」

「……チッ。分かった。勝負がしたいんだな?」

「ああ。受けてくれるんだね?」

「分かったよ。場所を変えよう」

 

 

「何だいこれは?」

「何って、居酒屋だが?」

 

 俺たちが居るのは天界下層のある居酒屋。

 下層は上層よりも活気がよく、浮島と言う点を除けば地上と似たような場所だった。伊吹は妖怪だからか警戒されていた。俺は血塗れだから泣かれた。兵隊さんたちが飛んできた。まあ、事情を話せば泣いて喜ばれたよ。仇を取ってくれてありがとう。とか。特に子供から言われたのは驚いたな。

 まあ、その後風呂とか借りて、血を洗い流して酒場のおっちゃんに場所を借りた感じ。

 

「それぐらい見りゃ分かるよ。それともあれかい?こんな狭いところでおっぱじめるのかい?」

「なあ伊吹。その瓢箪からは幾らでも酒が出てくるのか?」

「そうだけど。それがどうかしたのかい?」

「そうかそうか」

「なんか含みのある笑みだね……」

「いやなに。やっぱりどっちかだけが簡単だったりはフェアじゃないだろう?」

「まさか……あーそう言う事かい!!してやられたね!!」

 

 ペシンッ!!と、自分の額を叩く伊吹。

 してやったり。恐らく俺は今悪い顔をしていることだろう。

 

「だが、キチンと確認はしたぞ?『勝負がしたいんだな?』ってな。勝負内容までは決めてない」

「はぁ……。わかった。分かったよ。飲み比べ。鬼に喧嘩を売った事後悔させてやるよ」

「売ってきたのはお前だけどな」

 

 俺は店主のおっちゃんから大きめの杯を二つ貰い、伊吹に酒を注いで貰う。

 

「「かんぱい」」

 

 コツンッと互いの杯をぶつけ、一気に酒を喉に流していく。

 酒の辛みが旨味と共に胃を刺激する。

 酒には詳しくないが、そこそこ良いやつなのではないのだろうか?

 

「良い飲みップリじゃないか」

「酒には詳しくないけどな」

「はっはっは!!そんなの気にしなくて良いよ!!ほら!!じゃんじゃん飲みな!!」

 

 伊吹が俺の杯に酒を注ぐ。

 そして、また一気に流し込む。

 周りにはいつの間にか観客が生まれ、何時しかどんちゃん騒ぎに。

 

 そして、空っぽになった杯に酒が注がれる。

 久しく忘れていたこの感情を埋めるが如く。俺は酒を喉に流し込んだ。

 




お読みいただき有難うございます!!

天子……強く生きるんじゃよ……。
そして、何だかんだで寂しかった縁。

誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。

もうすぐ本編最終回です。

では、また次回~
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