ソードアート・オンライン 《神聖剣》と《神魔剣》 作:あけろん
読みにくい部分や設定が甘い部分が多々でてくると思いますが、がんばって書こうと思いますので
よろしくお願いします。
聖女と少年
目の前の光景はまるで現実感のないものであった。
「君、大丈夫?」
確かにここはフルダイブ型とはいえゲームの中であり、現実感がないというのは当たり前かもしれない。
しかし、俺、タクトがこのソードアートオンラインにINして1時間とたたない内にこのゲームは全プレイヤーに「死」という現実をつきつけた。
「さっき茅場も言ってたでしょう?このゲームで死んだら、ナーヴギアが電子レンジになって死んじゃうんだからね」
ならば、このゲームはもうゲームであっても遊びではない。
この全身を包む恐怖は俺にここがまぎれもなく現実であることを伝えている。
しかし……
「私が助けなかったら、間違いなく死んでたんだから。もう少し気をつけなきゃダメだよ」
フラフラと一人でフィールドに出て、最初に出会ったモンスター『フレンジーボア』に襲われていた俺は「死」という現実を実感しながら、横から鮮やかに青イノシシを倒した女剣士に見惚れていた。
歳は俺より少し上ぐらい、十七か八ぐらいだろうか。落ち着いた綺麗な声が俺の耳の中でリピートしている。
長い金髪を1本の三つ網にまとめ、大きな青い瞳がへたりこんだ俺を見下ろしていた。小さな顔と同じく小さな鼻、薄く薔薇のように色づいた唇は、まるで何かの映画から抜け出した聖女のように美しく、俺の瞳に焼きついた。全身を包む現実と非現実に当惑しながら俺はようやく
「あ、ああ、助かったよ。ありがとう」
と感謝の言葉をひねりだした。
俺の感謝に女剣士は一度頷き、その顔はすぐに呆れ顔に変わる。
彼女はメニューウィンドウを操作し、オブジェクト化した黄色の液体の入ったビンを投げ渡しながら
「どういたしまして。君、動きから見てもベータテスターじゃないよね。それなのにいきなりフィールドにでるとか、度胸があるというか無謀というか……」
「い、いや……いきなり死ぬとか実感なかったし、でもとりあえず動かなきゃ、何かしなきゃと思って」
彼女に見惚れたまま間抜けな答えを返す俺を女剣士は笑わずに
「ふぅん、はじまりの街で泣いてる人達よりはマシってところかな。行動が先走って頭が伴ってないのが残念なんだけど」
と形のよい眉を眇めた。
「な、なんだよ。馬鹿にしてるのかよ」
ようやくはっきりしてきた頭をフル回転させ、彼女の顔に引き寄せられようとする目を全力であさっての方向にそらしながら俺は口を尖らせた。
「馬鹿にしてるわけじゃないよ。行動する前に考えろって言ってるのよ。このゲームはもう遊びじゃない。茅場は本気で全プレイヤーをこのデスゲームに巻き込んだんだ」
そう言って女剣士は俺から視線を外し、何もない虚空を強い目で睨み付けた。
まるで、そこにある茅場晶彦の意志に挑むかのように。
俺は彼女の目にある種の「使命感」のようなものを感じた。彼女は他のプレイヤーとは何か違うものを見ているように思えたのだ。
「じゃあ、私はもう行くけど君は一度はじまりの街に戻って防具とポーションだけでも買った方がいいよ。命を拾った幸運を無駄にしないようにね」
そう言って女剣士はくるりと踵を返すと迷いのない足取りで俺から離れていく。
その時俺の中に何か言い知れない衝動が芽生えた。彼女とこのまま離れるのはダメだ。
いや、「離れるべきではない」。
「ま、待ってくれ!!」
俺は自分でも驚くくらいの大声で女剣士を呼び止めていた。
彼女は訝しげにこちらを振り向くと大きな目を細めて俺を見た。
「なに?聞きたいことがあるなら手短にして。私も早く次の街に行かなくちゃならないから」
女剣士の目は俺を見ているが、俺を視ていない。
彼女はもう自分の使命のために歩き出そうとしている。それが何なのか俺には分からなかったが、彼女の目が邪魔するのは許さないと言っている。
そもそも、俺は何か目的があって彼女を呼び止めたのではないのだ。
俺は「あー」とか「うー」とかうなった後
「助けたのなら、最後まで責任を持ってくれ!」
と何も考えずにわけのわからないことを言っていた。
「…………はぁ?」
それまで俺を見て細くなっていた女剣士の目が、俺の一言で大きく見開かれた。口はポカンと開いている。
今までの彼女の雰囲気からは想像もできない表情に、俺はまた見入ってしまう。
「な!?せ、責任って何よ!助けてもらっておいてまだ何か要求するつもりだっていうの!?」
「責任っていうのはアレだ。捨て猫にその場しのぎでエサをやっても根本的には何の解決になってないとか、俺を死なせなかった責任をとってくれとかそういうアレだ!」
「前半はまだいいとして、後半はわけがわからないわよ!あなた頭おかしいんじゃないの?!」
最初のイメージからは想像もつかないことになってしまった女剣士と、ギャアギャアと口論とも思えないやりとりが続き。
「ハァ……ハァ……つまり助けてもらってもこのままだとすぐ死にそうだから、このゲームに慣れるまでしばらく面倒をみてほしいと……?」
「ハァ……ハァ……そ、そういうことだ……」
女剣士は難しそうな顔で考え込んだ。「うーん」とか「なんでこんなことになるのよ」とか独り言をブツブツとつぶやいた後、こちらをチラリと見て「はぁぁぁぁ」と深いため息をついた。
「じゃあ、戦闘のレクチャーをしながら次のホルンカの村までは連れて行ってあげるわ。だ・け・ど!それ以降は知らないからね。自分でなんとかしなさいよ」
「お、おぅ……わかったそれでいい。俺はタクト、よろしくな」
「ほんと、なんでこんなことになったのかしら。私はエルナディータよ。短い間だけどよろしく」
エルナディータと名乗った女剣士は、俺の前まで戻ってくると
「ほら、へたりこんでないで行くわよ。一度はじまりの街まで戻ってあなたの防具とポーション類を買ってこないとね。ここまででかなりロスしてるんだから急ぐわよ」
と言ってさっさと俺をおいて道を戻り始めた。
さすがに俺もこのままでは格好がつかないので、勢いよく立ち上がると彼女の後を追いかけながら
「よし、行こうぜ!次に出たイノシシは俺に任せてくれよ。今度はうまくやってやるからさ」
美人にいいところを見せたいというのは、男の本能だ。俺の本能から迸り出た言葉にエルナディータは
「あなたねぇ……そのまま次のモンスターと戦う気なの?」
「へ?」
エルナディータはまたも「はぁぁぁぁぁぁぁ」とさっきより深いため息をつき。
近づいてくると、人差し指で俺の視界の左上あたりをチョンチョンと指した。
「ここ、見て」
「え、どこ?」
俺は顔を左に向けてエルナディータの指差した辺りを見ようとするが、そこにはなにもない。
彼女は何を思ったのかさらに俺に近づき手を伸ばした。彼女の手が俺の頬に添えられる。
「え、ちょっ……」
「動かないで」
エルナディータがまっすぐに俺を見ていた。初めに見惚れた美貌が今は目の前にある。
頬に添えられた手はひんやりと冷たく、それがデータによる信号であるとわかっていても、俺は顔が熱くなるのを止められなかった。俺を映した彼女の目がすっと左上に向けられる。
「眼だけ動かすのよ。HPバーがあるでしょう?」
俺は熱くなる顔を気取られないかドキドキしながらもそろーりとエルナディータが言うとおり眼だけを左上に向ける。そこには俺の名前「Takuto」とその下に真っ赤な短いバーが点滅していた。
「あー……赤いバーが点滅してるな」
「完全に死ぬ寸前じゃないのよ!なんで忘れてるわけ?!あなた頭おかしいんじゃないの!?」
エルナディータは俺の頬から手を離し、その指を俺に突きつけながら本日2回目のセリフを言い放った。
「私がさっきポーションあげたじゃないの!あれ早く飲みなさい!」
「あ、あれ捨ててたんじゃないのか?その場に置きっぱなしだぞ」
「あああああああああああ!!もおおおおおおおおおおおおお!!」
とエルナディータはその綺麗な髪をグシャグシャとかきむしり、俺の胸倉をつかみあげガックンガックンと揺さぶり始めた。
「ちょ……やめっ……本当に死んでしまうっ!」
「いっそ、ここで死んでくれたほうが私にとっては面倒がなさそうよね!開始早々オレンジかぁ、それもいいかもね?」
「すみませんエルナディータ様。すぐとってきますのでその手が血に染まる前にワタクシから手をお離しくださいませ」
俺の誠心誠意?の謝罪が功を奏したのか、エルナディータは手を離しビッっとポーションの落ちている方を指差す。俺は猟師に命じられた猟犬のごとくポーションを回収し戻ってくる。
「じゃあ、それ飲んだら行くわよ。本当になんでこれだけのことにこんなに疲れないといけないのよ全く……」
エルナディータは今度こそはじまりの街へ歩き出す。本当は一刻も早く次の街へ行きたい筈だ。お願いしておいてなんなのだが、自分を見捨ててその場を離れることもできた。そもそも、自分を助けずに次の街に行っていてもおかしくないのである。
虚空を見つめる彼女の瞳を思い出す。あの自分とは何か別のものを見ているような、何かとてつもなく大きなものに挑むようなあの瞳を。俺はその背中を追いかけながら
「大変なんだなぁ。エルナディータは」
とその背中に声をかける。彼女はピタッと立ち止まるとその肩が震えだした。
何事かと思いながら追いつき、顔を覗き込もうとすると
「誰のせいだと思ってるのよーーーーーーーーーーーーーー!!!」
エルナディータの今日一番の大声がアインクラッドの空に響いたのだった。
一般的なボーイミーツガールな展開を意識して書きました。
タクト君が少し?ボケボケすぎなせいで聖女なはずのヒロインがめちゃくちゃです。
そして、全く話にでてこない神聖剣と神魔剣……。
もう少しお待ちくださいませ。
なるべく早く次がだせるようにがんばります。
読んでいただいてありがとうございました。