ソードアート・オンライン 《神聖剣》と《神魔剣》 作:あけろん
タクト君初めての(まともな)戦闘編となります。
バトルシーンを書くのも初めてなので表現のつたなさはご容赦ください。
あと作者ははSAO8巻を紛失しておりまして過去に読んだ「はじまりの日」の記憶をもとに
書いております。原作と違う点が多々あるかと思いますが重ねてご容赦ください。
エルナディータside
「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
「のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
私はこんなことをしている場合ではないはずなのに。
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
私は早く強くならなければいけないのだ。そして、彼を探さなくてはならない。
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そして彼に……
「ファァァァァァァァァァァァァァァ!?」
「ちょっと!もう少し静かに戦えないわけ!?」
フィールドモンスターのなかでも雑魚中の雑魚『フレンジーボア』に吹っ飛ばされて意味不明な悲鳴をあげているタクトに向かって私は思考を中断し叫んだ。
「そんなことっ、言ってもさっ、さっきからっ、攻撃がっ、全然っ、当たらないんだっ、よっとっと!」
タクトははじまりの街で買った両手剣をメチャクチャに振り回しながら切れ切れに私に訴えかける。
今私とタクトはパーティを組んでいる状態だ。したがって私の視界の左上には私エルナディータのほかにもう一つタクトのHPバーが表示されている。そのバーが満タンから4割ほど削られていた。ちなみにフレンジーボアのHPは8割以上残っている。
「何よ、さっきからのそれは攻撃だったの?私あなたがモンスターを前に錯乱してタコ踊りを踊っているのかと思ったわよ」
「な、俺の懸命な攻撃をタコ踊りってちょっとひどくないか!?」
「しかも、奇声まで一緒にあげていればもうタコが錯乱してるとしか思えないじゃないの」
私がそう言うとタクトは「うっ!」と言葉をつまらせて下を向いてしまう。
その隙を知ってか知らずかフレンジーボアが右の前足で土を掻き、再度突撃体勢に入った。
タクトのHPは6割残っているし、あれからはじまりの街で簡素な皮鎧とはいえ防具も見に付けている。あの一撃で死ぬことはないだろうが、これ以上あの奇声とタコ踊りを見るに忍びなくなった私は、フィールドにおちている石を拾い上げ投剣用ソードスキル「シングルシュート」のモーションを起こす。
石を包むように赤いライトエフェクトが発動するのを確認すると
「ふっ!」
短い掛け声と共に石を放つ。石はまさに突撃しようとしていたフレンジーボアの額にカウンター気味に命中し、「ピギィ!」という鳴き声と共にフレンジーボアはのけぞった。
「今のがソードスキルよ。モーションを起こしてライトエフェクトが発動したら後はシステムに沿って体を動かせば勝手に敵に命中させてくれるわ。体に余計な力を入れずにシステムが体を引っ張る方向へ動きをゆだねればいいのよ。体をタコみたいにしときなさい。得意でしょ?」
「さっきから、タコタコと……」
「ほら、くるわよ」
私が指を指すとのけぞり状態から復帰したフレンジーボアが、再度突撃体勢に入るところだった。
「モーション起こし!ライトエフェクト確認!そして体はタコ!はい復唱!」
「モーション起こし!ライトエフェクト確認!そして体はタk……はもういいだろ!?」
タクトは叫ぶと両手剣を水平に構える。両手剣基本技「ヘヴィスラント」のモーションをシステムが感知し、両手剣を赤いライトエフェクトが包んだ。突撃してくるフレンジーボアを正面に捕らえ
「タコォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
「もしかして気に入ったのかしら」
タクトのヘヴィスラントは、カウンター気味にフレンジーボアの首の付け根のクリティカルポイントを直撃し、フレンジーボアのHPを消し飛ばした。
「うっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「はい、初勝利おめでとう」
私はたかが最弱モンスターの初勝利に浮かれて駆け回るタクトを呆れながら見つめつつ、なぜか馬鹿にすることができなかった。
私がこのSAOでモンスターに初勝利した時はどうだっただろうか。答えは「全く覚えていない」だ。それほど前ではないはずなのに私はどうやってモンスターのHPを削り、どんな技でとどめをさしたのかすら覚えていない。
それは、あの時も今も私の中にある一つの決意のせいだ。私はこのゲームを楽しむためにログインしたのではないのだから。
だから、今なお駆け回りながら全身でこのデスゲームを楽しんでいるように見えるタクトのことが、羨ましいわけではない。羨ましくなんかない。
私は、理由もなく湧き上がってきたイライラを目の前の男にぶつけることにした。
「見事な初勝利だったわタクト。私あなたの今の勇姿を決して忘れないと思う」
「え、エルナディータ……やっと俺のこと認めて……」
「特にとどめの時の決めゼリフは、この私が全SAOプレイヤーに語って聞かせることを約束するわ」
「そっちは忘れてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
私の我ながら見事な上げ下ろしより、精神的にドン底に落ち込みながら頭を抱えて転げまわるタクトを見て溜飲を下げた私は
「さぁ、今のでコツをつかめたでしょう?あとはホルンカの村まで急ぐわよ。危なくなったらスイッチしてあげるから、基本あなた前衛でさくさくいきましょう」
「えぇ~……前衛は交代にしたいんだけど……」
「文句言うな。タコ男」
「もうタコから離れてくれませんかね!?」
どうしてしてこんなことになってしまったのだろうか。
まだ転げまわっているタクトを見ながら私は不思議だった。なぜあの時、私はタクトを助けたのだろうか。そして、一時的とはいえPTを組み、戦闘のレクチャーまでしている。こんなことは私の目的にとって何のプラスにもならない。ただの無駄だ。それならどうしてこんなに・・・
「もうタコはいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「フフッ……」
それは私がこのSAOで初めて笑った瞬間だった。
◆ ◆ ◆
「なぁ、こっちであってるのか?」
後ろを歩いているタクトがセリフとは裏腹にのんびりとした声で聞いてくる。
「大丈夫よ。地図上ではこのルートが距離的に一番近いはずなんだから」
辺りの景色は広い草原から、薄暗い森に変わっている。
私は事前に仕入れている情報を元に最短なルートを割り出しているのだ。この森を抜ければすぐにホルンカの村のはずである。
「あ、この辺からモンスターが植物系になるからね。リトルネペントっていうんだけど、実がついてるやつが出たらすぐに言いなさいよ」
「ちょっ……ここでも基本俺が前衛とか言わないよな?」
「あぶなくなったらスイッチするって言ってるじゃない」
「そう言ってさっきから石ころシュートしてるだけなんですけどねぇ!?」
確かに私はここまでまともにスイッチをしていなかった。
最初はタクトが早く戦闘に慣れるためだったのだが、ソードスキルに慣れてからというものタクトの戦闘は全く危なげなく、暇になったら私が後ろから石を拾ってシングルシュートを放つだけになっていたのである。これならホルンカに着くころには一人で戦えるくらいにはなるだろう。そうでなくては困るのだ。うん、困る。私はタクトの方を振り向いて
「あなたね、ホルンカ村についたら一人で戦っていかないといけないのよ?私はいないくらいの気持ちで戦闘しなきゃね」
「そうだけどさぁ……」
神妙な表情をするタクトを見て、なんだかモヤモヤした気持ちが湧き上がってくるのを認めることができずに、私は前に向き直った。
その時私はすっと目を細めた。《索敵》スキルにモンスターの反応がひっかかったのだ。さっきまでの見晴らしのいい草原フィールドと違い、この森というフィールドはうっそうと繁った木がモンスターの姿を隠してしまう。ましてそれが植物系のモンスターなら肉眼による感知はさらに困難になるだろう。何かを言いかけるタクトを手で制し
「シッ……モンスターが来るわよ」
「あれ、エルナディータも分かったのか。俺もそう言おうと思ってたんだ」
どうやらタクトも《索敵》スキルを取っていたらしい。ボケボケな性格からして両手剣以外は何も取っていないと思っていたのに。
「へえ、あなたにしては意外ね。ちゃんと《索敵》取ってたんだ?」
「いや、取ってないぞ。《索敵》ってなんだ?」
「え、じゃあどうしてモンスターが来るのがわかって……」
「ギシャァァァァァァァァァァァァァァ!!」
「奇声出してないで答えなさいよ!」
「いや、今のは俺じゃないぞ」
「へ?」
そう言って振り返った私の前へ、前方の木々からにじみ出るように植物系モンスター「リトルネペント」が姿を現した。ウツボカズラのような胴体の下部に根をウネウネとくねらせ、左右から生えた2本のツタがヒュンヒュンと風をきっている。頭には大きな口がパクパク。天辺に蕾がくっついており、かろうじてそれが植物であることを主張していた。
「うわー、話には聞いてたけど実物見るとグロいわねー。タクト任せたわ」
「あぶなくなったらスイッチだよね? ね!?」
「弱点は、ウツボ部分と太い茎の接合部よー」
「お願いだから聞いて!?」
そう言いながらタクトは律儀に私の前に出る。
さすがに初見のモンスターだし、今までの「フレンジーボア」よりは格上の相手だ。私はいつでもフォローに入れるように腰の片手剣を抜き放つ。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
相変わらずの大声でタクトはリトルネペントへの距離を詰める。
その蕾の表面に目のようなものは何もないにもかかわらず、リトルネペントはタクトの場所を正確に感知し、2本のツタを繰り出した。
「っとぉ!」
1本を両手剣で受け止め、2本目をジャンプで回避したタクトはそのまま両手剣を水平に構える。剣を赤いライトエフェクトが包み
「うりゃあ!」
放たれた「ヘヴィスラント」がリトルネペントのツタの1本を断ち切った。
「へぇ……」
私は思わず感嘆の言葉をもらす。
最初のころとは段違いの動きだ。今までのフレンジーボアとの戦闘でそれなりに戦えるようにはなっていると思っていたが、初見のリトルネペント相手に無傷でファーストアタックを当てるとは。
だが……
「よし、これであと1本も切り落として、あとは殴りほうだ……い!?」
ヘヴィスラントのスキル硬直がとけるタイミングでネペントの側面が盛り上がり、あっというまにツタが再生する。
「うそーん!」
叫んだタクトに再び2本になったツタで攻撃を仕掛けるネペント。
今度も1本は両手剣で受けとめたが、もう1本を避けきれずツタが肩口を捕らえる。
「ぐっ!」
SAOのペインアブソーバは10で固定されているはずなので、ダメージを負っても不快感を覚えるぐらいで済むはずなのだが、このSAOというゲームにおいてダメージによってHPが削られるということは、それだけ「死」に近づくということなのだ。それは体より心が削られているということにほかならない。一旦距離をとったタクトに私は
「どうする? スイッチしようか?」
当たる瞬間直撃を避けたのだろうか。ツタの一撃を食らったとはいえタクトのHPはまだ9割以上残っている。
だが、ダメージにより心を削られた結果冷静な判断ができなくなり、そのまま自滅してしまうケースも少なくない。そう思っての提案だったのだが
「大丈夫だ。もう少しやってみる!」
そう言って顔半分だけこちらを向いたそこには
(笑顔……?)
タクトはなんと笑っていたのだ。錯乱しているのか?いや
自分の命が1割ほど削られているにもかかわらずその笑みは私に、「この状況が楽しくてたまらない」と言っている。
そういえば初めて出会った時、死にそうになっていたにもかかわらず、その顔は笑っていなかっただろうか。その後もまるで死に掛けたのが嘘のように平常心だったのを思い出す。
私はもしかしてすごく危険なやつと一緒にいるのではないだろうか。
「さて、ツタがダメならどうするかね……」
タクトはつぶやきながら開いた距離をジリジリと詰める。ネペントは近づいてくるのを待っているのか、ツタの射程に入るまで攻撃を仕掛けてこないようだ。ツタが再生したとはいえ、敵のHPが回復しているわけではない。ネペントのHPは再生する前の2割ほどのダメージがきちんと残っている。
なので再生しても根気よく切り落としていけば倒せるはずなのだが
「でぇい!」
タクトは一直線にネペントに向かってダッシュ。
そのまま両手剣を水平に構えて「ヘヴィスラント」のモーションを起こす。
「バカ!早い!」
私は、その背中に向かって叫んだ。
あの状態で突っ込めば、2本のツタをまともに食らうだろう。当然食らった時に起こるノックバックでソードスキルは中断され、タクトのHPはイエローゾーンまで削られるはずだ。
こうなっては仕方がない。攻撃を食らってノックバックした瞬間に無理やりにでもスイッチしようと私は戦闘体勢をとった。
射程内に入った獲物をネペントが見逃すはずもなく、2本のツタが大剣を構えたまま突っ込むタクトに向かって振り下ろされる。その瞬間
「らぁ!」
タクトのヘヴィスラントが発動する。しかし、ネペントの攻撃がタクトに当たればスキルは中断されるはず。私はネペントを見据えながら足に力を込めた。が
「え……?」
私は目の前光景を疑った。
システムアシストによって加速したタクトにネペントの攻撃が当たる瞬間タクトの体がツタをすり抜けたのだ。そしてすり抜けた先にあったネペントの根にヘヴィスラントが炸裂する。
「ギィィィィィィィィィィィィィ!」
それまでの助走の分も上乗せされネペントのHPが一気に残り2割まで削られる。
しかも、まともに食らったネペントを黄色いライトエフェクトがくるくると取り巻き気絶状態になった。
まさに絶好の位置にあるクリティカルポイントを
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
スキル後の硬直がとけたタクトの大剣が深々と切り裂く。
その瞬間リトルネペントはガラスのような音をたて、無数のポリゴンになって砕け散った。
フレンジーボア1匹とリトルネペント1匹にどれだけかかってるんだ自分は……。
そして今回も出てこない原作キャラと、神聖剣と神魔剣……。
やきもきする展開ですが気長にお付き合いくださいませ。
読んでいただいてありがとうございました。