ソードアート・オンライン 《神聖剣》と《神魔剣》 作:あけろん
原作キャラ登場第一号はなんと彼になってしまいました。
ここからは原作キャラも絡んでくる話になっていきます。
タクトside
俺の両手剣に会心の手ごたえを残しながら「リトルネペント」は無数のポリゴンになって砕け散る。
どうやら俺の作戦はうまくいったようだった。両手剣を振り切った体勢から体を起こし、さっきの感覚を思い出そうと体を動かそうとしたところで
「ちょっと、さっきのアレは何よ」
振り返ると剣を納めたエルナディータが不振そうな眼でこちらを見ている。
「アレってなんだよ。どれのことだ?」
「さっきのヘヴィスラントのことよ!ツタをすり抜けてたじゃないどうやったのよ。まさかシステムのオーバーアシストじゃないでしょうね?!」
彼女は何かすごい剣幕で俺に詰め寄ってくる。
顔はとても怖いのだが、彼女の綺麗な顔がとても近いので俺は変にどぎまぎしてしまう。
「お、落ち着いてくれ。「しすてむ」とか「おーばーあしすと」とかは知らないがツタをすり抜けてたわけじゃない、ちゃんと当たってたよ」
「嘘! 当たってたらソードスキルが発動するはずないわ。完全に直撃コースだったじゃないの」
「嘘じゃない。ここを見てくれ」
俺は視界の左上にあるHPバーを指差す。それが9割残ってたHPが8割になっていることを示していた。
「これは……確かに減ってるけれど直撃したにしては減りが少ないわね。どういうこと?」
「簡単なことさ。直撃しなかったんだ」
「はぁ…………はぁ!?」
俺のこともなげな答えにエルナディータは頷きかけ、その途中でガバッとその頭を元に戻した。
「じゃあなに? ソードスキルを発動しながら、体勢を崩さない程度に直撃を避けつつ、助走の勢いを殺さずにヘヴィスラントをリトルネペントに当てたっていうことなの?」
「あーそういうことなのか?」
エルナディータの言ってることはよく分からなかったが、彼女がそう言うならそういうことなのだろう。彼女はすごく頭がいいみたいだしね。
彼女はまたも難しい顔をして「そんなことできるもんなの?」とか「なんなのよこの戦闘時とのギャップは」とかブツブツとつぶやき始める。
エルナディータって考え込むと自分の世界に入っちゃうんだなぁ面白いや。
「まぁ、いいわ。それじゃ早くここを離れるわよ。どこかの誰かさんが大声で色々叫んでくれたせいで、音に敏感なリトルネペントが集まってくるかもしれないからね」
「さっきのエルナディータも相当うるさかった気がするんだけど……」
「何か言った?」
「いや何も」
彼女がなおも俺に何かを言おうと口を開きかけた時
「ぁぁぁぁ……ぁぁぁぁぁぁ……ぁぁぁぁぁぁ」
遠くから何かが聞こえてきた。これは……悲鳴か?!
「何よ、どうしたの?」
急にあさっての方向を向いた俺をエルナディータが不思議そうに見ている。
彼女には聞こえていないようだ。
「何か聞こえる。悲鳴みたいだ」
「え? 私には何も……」
俺は悲鳴の聞こえた方向へ走り出していた。エルナディータが「ちょ、ちょっと!」と言いながら追いかけてくる。しばらく走ると彼女にも聞こえてきたらしく顔をしかめた。
「おかしいとは思っていたのよ」
2人で森を全速力で駆け抜ける。悲鳴はだんだん大きくなっていく。
「あれだけ森の中で大声をだしていたのにあの周辺にはリトルネペントは全く集まっていなかった」
俺はエルナディータの声を聞きながら悪い予感が膨らんでいくのを感じる。
「それは、リトルネペントが私たちの声が届かないところに集結していたからだったんだわ」
エルナディータはこの先に待っているものの予測がついているのか、顔が悲壮感に強張っていた。
「つまり」
俺達はついにそこに辿り着く。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そこには10匹以上のリトルネペントに襲われ悲鳴をあげているプレイヤーの姿があった。
「こういうことだったのね」
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「助けないと!」
俺は両手剣を抜き放ちながら今まさに命の危機にあるプレイヤーの元に駆け出す。
プレイヤーを襲っていた1匹が俺に気がつき、ツルの振るってきたがかまわずに突っ込む。
2本のツタが俺の体をわずかにかすり、抜けた先にある胴体と茎の接合部に向けて
「…………らあっ!」
勢いの乗った両手剣を叩きつけた。そのままネペントの横を走りぬけ後ろに回りこむと両手剣を斜め下に構える。ソードスキルのモーションが起こされ、武器が青いエフェクトに包まれる。
大剣用単発水平斬撃技《ブレイバー》
ヘヴィスラントとは軌道のちがう斜め下からすくい上げるような一撃が、ネペントの背後から接合部に叩き込まれる。気絶状態になったネペントの接合部にさらに回し斬りを打ち込んだところでネペントがポリゴンになって爆散する。
「早く離れろ!」
俺はプレイヤーに声をかけるがそのプレイヤーはガクガクと震えて動かない。その唇が
「ごめんよキリト……ごめん……ごめん……」
とつぶやいている。
キリト? 仲間がいるのか?
だが、今はここをしのがないと!
「そのキリトも必ず助ける!だから早く離れてくれ!」
俺のその言葉にそのプレイヤーはようやくよろよろと動きだす。
その背後からネペントがウツボのような胴体をプクッと膨らませた。初めて見るモーションに嫌な予感がしたがこのままではその攻撃がプレイヤーを直撃してしまう。
俺は両手剣を盾の様に前面に構えながら、プレイヤーとネペントの間に割り込んだ。
ぶしゅっ!と薄緑色の液体が飛沫状に発射され、俺はそれをまともに受けてしまった。
「ぐぅぅぅぅぅっ!」
全身から白い蒸気が上がり、俺のHPが3割ほどガクンと削られる。
その場を離れようとしてもかぶった液体が粘液となって思うように動けない。
そんな俺をあざ笑うかのように大きな口を笑みの形に吊り上げたリトルネペントが、2体俺に向かってツタを繰り出した。4本のツタが動けない俺を嬲ろうと迫る。
「やれやれ、勝手に飛び出さないでくれないかしら」
だが、4本のツタは俺に届く前に全て断ち切られていた。
目の前の金色の髪は薄暗い森の中であってもいささかもその美しさを損なわない。まるで金色の疾風のように俺の前に現れたエルナディータは舞うようなステップから、どこの動きでモーションを起こしたのか薄水色のライトエフェクトに包まれた片手剣で
「ふっ!」
単発水平斬撃技《ホリゾンタル》を放ち、見事にネペントのクリティカルポイントを切り裂いた。「ギィ!」と怒りの声をあげたネペントは再びあの腐食液を吐き出すべく胴体をプクッ膨らませる。ぶしゅっ!と発射される腐食液。
しかし、もうその範囲にエルナディータはいない。いち早く側面に回りこんだ彼女はその動きと連動したモーションを起こしていた。紫色のライトエフェクトを放つ剣が、空中に鮮やかな曲線を刻む。
「やぁぁ!」
片手剣二連撃技《スネークバイト》
左から右へ振られた剣が、高速で切り返され右から左へ振り抜かれた。
その名の通りまるで巨大な蛇に噛み砕かれるように、ネペントの胴体が足から離れる。
ネペントは断末魔も放つ間もなくその身を無数のポリゴンに変えていた。
「私、言ったわよね」
鮮やかにモンスターを倒したエルナディータに、またも見入っていた俺はその一言で我に帰った。
彼女は前を向いたままなのでその表情は見えない。しかし、彼女は今とてつもなく怒っていることがその低い声から伺えた。
「行動する前に考えろって」
エルナディータは顔を半分こちらに向けて、氷のような瞳で俺を見た。
「ご、ごめん……」
俺は謝るしかなかった。出会った時から俺は少しも進歩していない。
また彼女に命を助けられ、俺は地面にへたりこんでいる。
「飛び出す前に少し考えれば簡単に分かることでしょう?」
彼女は俺が助けに飛び出したことを怒っているのだろうか。余計な危険は回避して、見捨てるべきだったと、そう責めているのだろうか。しかし、俺は……
「どうして飛び出す前に、パーティーメンバーの私と連携をとって動こうと思わなかったの!」
「え?」
俺は一瞬エルナディータが何を言っているのかわからなかった。
彼女はまだ顔半分でこちらを見ていたが、その目はさきほどまでの氷のような目ではなく不機嫌に細められ、その表情はなんだか拗ねているように見えたのだった。
「あなた、飛び出した時完全に私のこと忘れてたでしょう。失礼しちゃうわ。私はそぉ~んなに信用できないメンバーだったってことなのかしら?」
「いや、俺は君を……」
「ハイハイ、後からならなんとでも言えるわよね。私がここまでどれだけ苦労したk……って邪魔!」
話の途中で襲ってきたリトルネペントを見惚れるような連続攻撃で瞬殺し
「まぁ、いいわこの話は後にしましょう。そろそろ粘液の効果もきれるでしょう?次のタイミングでスイッチ行くわよ!」
「お、おぅ……!」
エルナディータは再びリトルネペントに攻撃を開始する。
俺は全身に力がみなぎるのを感じながら、彼女の「スイッチ!」という言葉と同時にネペントの群れに突撃した。
名前はでてきませんが作中のプレイヤーが誰かもう皆さんお分かりですよね。
読んでくださってありがとうございました。