ソードアート・オンライン 《神聖剣》と《神魔剣》 作:あけろん
多くの文章を書ける人ってすごいですね。今の私には5000字前後が限界みたいです。
物語はようやく入り口に入りました。先がとても長くてくじけそうです。
書きたいことを全て書き終われるようにがんばろうと思います。
エルナディータside
「ギアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
私のソードスキル《スネークバイト》により、目の前のリトルネペントが長い断末魔を残して爆散する。
振り返るとタクトが最後の1匹を《ブレイバー》で倒したところだった。
10匹以上いたリトルネペントだったが、私は弱点やモーションをよく知っていたし、後半からはタクトもノーダメージで倒すようになっていたためなんとか倒しきることができた。
私は、先程まで襲われていたプレイヤーに声をかける。
「もう大丈夫よ。間違えてネペントの実でも割ったの? 運がなかったわね」
今倒したネペントは蕾ばかりだったが、時々POPする実がなっているネペントは、その実を割ると強烈な臭いにより周囲のネペントを呼び寄せるというやっかいな性質をもっているのだ。
そのプレイヤーは自分が助かったことにやや呆然としていたようだが
「た、助けてくれてありがとう。僕はコペル。それで……その……」
コペルと名乗った少年はそのまま真面目そうな顔を伏せて黙り込んでしまう。
何か言いたげなその表情に私は帰り道の心配をしているのだと思い
「エルナディータよ。ホルンカの村までは一緒にいくわ。だから……」
「もう一人いるんだろう?コペル」
「安心して」と続けようとした私の声をタクトが遮った。
タクトはコペルに近づくと真剣な表情でもう一度コペルに問いただした。
「同じように襲われているやつがもう一人いるんじゃないのか?」
「どういうこと?タクト」
「ああ、コペルを助けた時に聞いたんだ『ごめんよキリト』って」
コペルはそれを聞いて目に見えて青ざめた。おそらく、意識して口にしていたことではないのだろう。なぜかコペルはガタガタと震えながら、右手を右目かかざす動作を繰り返している。
何がコペルを追い詰めているのか私にはわからなかったが、なるべく優しい声を意識しながら
「教えてコペル。もう一人誰かが襲われているの?」
コペルは私の顔を見る。その目にはみるみる涙がたまっていき、ついにコペルは泣き出していた。
そして、まるで懺悔をするかのように頭を垂れて
「お願いします!キリトを、キリトを助けてください!」
と私達に頭を下げたのだった。
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私達はまたも森の中を走っていた。
「僕が弱かったんだ。いつ殺されるかもしれない世界で、人を信じることなんてできなかった。なら殺される前に殺さなくちゃって」
「それでMPKをしたってわけね」
コペルはリトルネペントの実をわざと割り、集まってきたネペントをキリトになすりつけ逃げてきたのだという。しかし、彼の《隠蔽》はネペントには通用せず、集まってきたネペントの一部に襲われていたのだ。
コペルが泣きながら話したことは到底許せることではなかったが、私にはそれを責める権利はない。
そもそも、彼がそのような行動に走ってしまったのは、このソードアートオンラインがプレイヤーを殺すデスゲームになってしまったからだ。
その責任は私にもあるのだから。
「あなた達に助けられた時、何かの間違いだと思った。あんな状況に飛び込んで助けようとしてくれる人がいるわけがないって」
コペルはそう言って何か眩しいものでも見るように私を見た。
私は肩をすくめながら
「私はおまけよ。あの状況にパーティーメンバーに相談もせずに飛び出していったのはあっち」
と私の横を走っているタクトの方向を指差した。
私の指の先で苦い顔をしたタクトは
「まだ、根に持ってるのか。結構執念深いんだなエルナディータって」
「悪かったわね。言っておくけどまだ許したわけじゃないわよ。次同じことやったらモンスターのほうに加勢してやるんだから」
「だから言ってるだろ。俺は君を……」
「あー聞こえない聞こえないー」
私は耳を塞ぎながらタクトに向かって舌を出した。
そんな私たちをみてコペルはクスクスと笑ったが、すぐにその顔には影がかかる
「君たちみたいな人もいるのに、僕は何を怖がっていたんだろう。自分が恥ずかしいよ。もし、キリトが死んでいたら僕は……僕は……」
コペルの目に再び涙が溢れる。
彼は自分が犯してしまった罪に押しつぶされようとしているのだ。
私は何を言っていいのか分からずに黙るしかなかった。しかし
「助けるんだ」
タクトのその迷いのない一言は、その場にのしかかる重い空気に一筋の風を呼び込んだ。
そのまま彼はコペルを真っすぐ見つめ
「お前が助けるんだコペル。俺達2人が全力で手伝う。その後にキリトに心から謝るんだ」
コペルは驚いたように目を見開いた。
「僕が……」と小さくつぶやく。見開いた目を一瞬閉じ、その一瞬で何かを振り切ったコペルは目を開く。
その目には新たな決意が宿っていた。
「ああ……!僕がキリトを助ける!2人共力を貸してくれ!」
「任せとけ!」
「ええ、急ぎましょう!」
私達は走るペースを上げて、襲われているというキリトのもとに急ぐ。
コペルの言うとおりなら、そろそろ彼が実を割ったという場所につくはずだ。
「あそこだ!」
コペルが叫ぶ。
前方の木が少し途切れており、少し広い空間になっているようだ。
木々を抜けその空間に足を踏み入れたとき
「なによ……これ……」
私は目の前の光景をすぐに受け入れることができなかった。
同時に到着した2人も同様に言葉を失いたちつくす。
そこには辺り一面を埋め尽くす無数のリトルネペントがひしめき合っていた。20……いや30はいるだろうか、その全てがたった一人を一重二重に囲い込んでこんでいる。その中心でハーフコートに片手剣を装備した剣士キリトが絶望的な戦いを強いられていた。
(これは……もう……)
私は唇をきつくかみ締めた。
できることなら当然助けたい。しかし、ネペントの数は先ほどの3倍である。あの時も決して楽に勝てたわけではないのだ。武器の耐久値もかなり減少している。あれだけの数にこの3人が突っ込んだところで死体が3つ増えるイメージしか思い浮かばなかった。
「僕がネペントのヘイトを取って引き付ける。その間に2人はキリトを中から助け出して、1匹づつ引きながら各個撃破してくれ」
私たちの前に進み出たコペルが提案する。
彼はこの手のMMOをよくやっていたのだろう。作戦としては悪くない。問題なのは30対4という状況なのであり、コペルが敵を引き付け3対1を30回という状況を作り出せれば生還率は格段にあがるだろう。
しかし
「ダメよコペル。あなた死ぬ気?」
そう、この場合ヘイトを取った人間は必ず死ぬ。そして残りのネペントは他の3人に襲い掛かるだろう。
だからコペルは暗にこう言っているのだ。「自分が全ての敵を引き付けるから、キリトを助けたら自分を見捨てて逃げろ」と
「僕はキリトを助けると決めたんだ。元々自分が蒔いた種だ。自分の命で償わせてもらうよ」
その瞳に暗い決意をたたえてコペルが1歩前に出ようとする。
「じゃあ、それは俺の役目だな」
そしてそのさらに1歩前にタクトが進み出た。
「待ってくれタクト、君が行くことはない。死ぬのは僕でいいんだ」
「キリトを助けると決めたんだろ?じゃあ、あの中からキリトを連れ出すのはお前の役目だ。安心しろ、俺はお前と違って死ぬつもりはない。エルナディータ、コペルのフォローを頼む」
そう言ってリトルネペントの群れに走り出そうとする。
タクトの後ろ姿が無数のポリゴンになり、砕け散るイメージが私の頭に浮かんだ瞬間
私の手は彼の腕を掴んでいた。
「エルナディータ?」
タクトは不思議そうな顔で私を振り返った。
もうダメだ。言うしかない。私が言うしかない。
「逃げましょう」
「何言ってるんだエルナディータ。冗談にしても……」
「私は逃げるわ」
タクトがヘイト役をやってもおそらく結果は変わらない。死ぬのがコペルからタクトに変わるだけだ。
そして、そもそもこの作戦がうまくいく確率も低い。ヘイト役が早く死ねばそこで全滅、キリトを連れ出す際に私とコペルのどちらかが死んでも全滅、連れ出す前にキリトが死んでも全滅だ。
だが、そう言っても2人は行くのをやめないだろう。ならば一番のダメージディーラーである私が「逃げる」と言うことで2人の心を折る。2人の心に「逃げる」という逃げ道を用意する。
「私は逃げるわ。こんなところで死にたくないもの」
私はもう一度きっぱりと宣言する。こんな私をタクトは軽蔑するだろうか、失望しただろうか。
そんな彼の表情を想像し、私は彼の顔から目をそらした。彼の腕を掴んだ手に自然と力が入る。
お願い…………逃げると言って…………
「エルナディータ」
タクトがどんな表情で私の名前を呼んだのかわからない。怖くて顔が見られない。
彼は腕をつかんでいる私の手を握ると、そっと引き剥がした。
「エルナディータ。コペルのフォローを頼む」
「私は逃げると言っているじゃない」
「頼む」
「死ぬわよ」
「大丈夫だ。俺は死なない」
私の言うことを聞かず、根拠のないことばかり言うタクトに私は怒鳴り返そうとして
「俺は君を信じている」
その言葉に私の頭は停止した。なんだか顔が熱い。私は何を言おうとしていたんだっけ。
「やっと言わせてくれたな。何度も言おうとしたのに聞いてくれないからさ」
タクトは頭をかきながら私に笑いかける。そこには私への軽蔑も失望も感じられない。
ただ、私への信頼だけがうかんでいた。
顔が熱い、体が熱い、頭がグルグルと回っている。
その時私の中に、それまで考えもしなかった道が作られた。これは逃げ道ではない。この状況を真っ向から粉砕しうる私の切り札。全員で生き残ることができる光の道だ。
しかし、これを使えば私は……
「わかったわ、もう何も言わない。その代わり条件があるわ。ヘイト役は私がやる」
そう言った私にタクトは驚いて何かを言おうとした。がさせない。
「タクト」
私は彼に向かって微笑むと必殺の言葉を放つ。
「私を信じて」
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私のいくつかの指示にしたがって2人は離れたところで配置につく。
今この場にいるのは私一人だ。これから行うことを誰にも見られるわけにはいかない。
これはルール無用のデスゲームであるソードアートオンラインの中でさえ、禁忌中の禁忌である反則技だからだ。
私はストレージから一つのアイテムをオブジェクト化する。
それは表面に複雑な紋様の入った一枚のカードだ。それを自分から少し離れた所に放り投げる。
カードは地面に落ちることなく私の胸のあたりの高さでフワリと静止した。
私は大きく息を吸い込むと高らかに叫ぶ。
「システムログイン!IDエルナディータ!」
宙に浮いたカードがクルクルと回転しはじめ、ソードアートオンラインの中枢カーディナルシステムへの道を開く。私の周りに無数のシステムウィンドウが現れる。私はそれを両手で操作し、目的のものを探しながら不要になったウィンドウを消去していく。
と私の指が消去するウィンドウの上で一瞬止まった。そこには
《LOG OUT》
と書かれたシステムウィンドウがあった。
「操作の邪魔よ」
私は一言で切り捨ててウィンドウを消去した。
さらに高速でウィンドウを操作しながらようやく目的のものを見つける。
最後に残った1枚のシステムウィンドウを私は睨み付けた。
クルクルと回転しているカードに手をかざし次のボイスコマンドを入力する。
「………………からエルナディータへ一時的に管理者権限を譲渡」
カードの回転速度がどんどん早くなる。やがて自らの回転速度に耐えかねたようにカードは無数のポリゴンになって砕け散った。
これでもう2度と私はカーディナルシステムにログインできなくなったことになる。
急がなければならない、プロテクトに切断されるまえに最後の操作をしなければ。
カードは最後の仕事をしてくれたようで権限の譲渡は終わっている。あとはボイスコマンドを入力するだけ。
私は再度息を吸い込むと、この『世界』とどこかにいる『彼』に宣言する。
「管理者権限により発動!ソードスキル《神聖剣》ダウンロード!」
はい、あとがきです。
色々と取り返しのつかないことをしてしまった気がしますが、後悔はありません多分。
やっと出てきた神聖剣(名前だけ)とまだでてこない神魔剣、そして4話目でもまだハブられているキリト君。
一つのエピソードにこれだけ話使っていいんでしょうか先行きが不安です。
ちなみに最後のログアウトウィンドウは使用者だけの一人用です。全員分だったならエルナディータは迷わず押したんでしょうがね。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。
よろしければ感想お待ちしております。