ソードアート・オンライン 《神聖剣》と《神魔剣》 作:あけろん
作者としては「オリキャラと原作キャラをとにかく会話させたい」という願望がありまして、会話を中心に話が進んでいくような構成になっています。
なかなか展開が進みませんが、気長にお付き合いください。
タクトside
「……本気かい?」
ディアベルは俺の提案に驚いたようだ。
だが、すぐにそれは俺を憐れむような顔に変わる。
「悪いけど勝負にならないと思うよ。レベルも武器も防具も俺の方が上だ。しかも、君は新規組だろう? 元ベータテスターの俺とはゲームの経験値だって歴然とした差があるんだぜ」
「だからこそさ。俺が勝ったら、このSAOにおいての強さが、レベルと装備じゃないことの何よりの証明になるだろう?」
そう言う俺にディアベルは呆れたような顔をすると、くるりと背を向けた。
「悪いけど付き合っていられない。帰って明日の作戦も詰めないといけないんだ。俺はこれで失礼するよ」
「怖いのか?」
俺の一言に、歩きだそうとするディアベルの足がピタリと止まる。
悪いなディアベル。でも、俺はお前にどうしてもわかってもらいたいんだ。
「レベルも武器も防具も格下の相手に背を向けるなんて、明日前人未到のボスレイドに挑むリーダーとは思えない臆病さだなぁ? いっそ明日は俺がリーダーを代わってやろうか? ん?」
「……いいだろう」
「リーダーを代わる」この一言が効いたのだろう。
振り返ったディアベルは俺を怒りのこもった目で睨みつけると、メニューウィンドウを操作する。
俺の前に《初撃決着モード》でのデュエル申請のウィンドウが現れた。
承諾するとデュエル開始までの60秒のカウントダウンが始まる。
「すぐに終わらせる。MMOの『現実』を見せてあげるよタクト」
腰の片手剣《アニールブレード》を抜き放ち盾を構えるディアベル。
「なら、俺はその『現実』とやらをぶち壊させてもらおうかな」
俺は背中から両手剣《ツヴァイハンダー》を抜き、肩にかついで腰をおとす。
睨み合う俺達の間で開始までのカウントが徐々に減っていき。
《DUEL》
の文字と同時に俺は飛び出した。
ディアベルまでの最短距離を一気に詰め、ディアベルの左側から横薙ぎの一撃を繰り出す。
開始と同時に距離を潰されたにも関わらず、ディアベルは落ち着いていた。
武器を持っている側から攻撃に、体を少し横に傾けると左手の盾で俺の剣を受け止め、そのまま半回転した動きで回し斬りを放つディアベル。
俺はあわてて剣を引き戻すと、なんとか回し斬りを受け止め距離をとった。
「威勢のいいことを言った割には、なんの工夫もない突撃かい? 芸がないね」
「じゃあ、これはどうか……な!」
俺は今度はディアベルの右側に回り込むように接近し、横薙ぎを放とうとしたところで大きくサイドステップ。
盾で防御しようとしていたディアベルの反対側から両手剣を叩きつける。だが
「甘い!」
ディアベルはその一撃を片手剣で受け止め、上から押さえ込むようにしながら俺の剣の動きを鈍らせると
「セアァ!」
片手剣ソードスキル《シャープネイル》の三連擊を体勢を崩した俺に放つ。
「くぉっ!」
俺はまたも両手剣を引き戻しつつ地面を転がるように回避を試みるが、押さえられた両手剣に動きを制限され、《シャープネイル》の一撃が俺をかすめた。
俺のHPが数ドット削られる。
「今ので決まったと思ったんだけどね。いい目と勘をしてる。対等の条件なら危なかったかな?」
「そういうことは勝ってから言うもんだぜ!」
俺は接近しては攻撃を繰り返すが、そのことごとくはディアベルに弾かれ、カウンター気味に攻撃を返されてしまう。
こちらもまともに食らうことはなかったが、徐々にHPが削られていく
「これで分かっただろう? 君の剣がもっと強ければ、防御の上からでも俺のHPを削れただろう。君の防具がもっと強ければ、直撃をもらってない君のHPもほとんど減っていないはずだ。どうやら証明されたのは俺の『現実』の方だったようだね」
確かに今の状態を見ればそう言われても仕方がない。
俺のHPは後一撃食らえば負けるところまで削られており、対してディアベルのHPは1ドットも減っていないからだ。
だが、それでも俺は
「何度も言ってるだろ」
ディアベルを見据えながら両手剣を構えて
「そういうことは勝ってから言うもんだ」
ニヤリと笑ってみせた。
ディアベルは一瞬たじろいだ表情を見せたが、すぐに顔を引き締め
「それなら、勝ってもう一度言わせてもらおう」
そう言うとディアベルは、初めて自分から攻撃に転じた。
金属防具を装備しているとは思えない俊敏さで俺を片手剣の射程に捉える。
俺は両手剣を振り下ろすが、今までの攻防で動きを見切られたのか、盾すらも使わず回避するディアベル。
そのまま剣を上段に振りかぶり
「これで、終わりだ!」
ディアベルの片手剣が赤いライトエフェクトを帯び、ソードスキル《バーチカル》が発動する。
剣を振り下ろした体勢の俺が、この《バーチカル》を回避するのは不可能だ。
目と勘を頼りに直撃をまぬがれたとしても、かすりでもさせるだけで勝負は決まる。
勝利を確信し、薄く笑うディアベル。しかし
「ああ……これで終わりだ」
下段から黄色のライトエフェクトを帯びて高速で跳ね上がってきた両手剣に、ディアベルの笑みは凍りついた。
両手剣単発重斬擊技《ホライゾン》
だが、それでも結果は変わらない。相討ち覚悟でソードスキルを撃ったとしても片手剣と両手剣ならば片手剣のソードスキルの方が速いのだ。
両者のソードスキルが至近距離で交錯し、ダメージに体勢を崩したのは――――――――ディアベルだった。
「ぐあっ!」
下から両手剣の重斬擊技をまともに食らい、ディアベルの体が浮き上がる。
しかし、まだ決着はついていない。
現時点での最高級品である鎧と10というレベルに裏付けられたステータスにより、ディアベルのHPはまだ勝負を決するラインを割っていない。
だが、その彼の目に飛び込んできたのは自らに敗北を告げる赤いライトエフェクトだった。
「おあああああああああ!」
俺の両手剣が浮き上がったディアベルを上下から切り裂き、引き絞った一瞬の溜めから繰り出された突きが彼の体を3メートルほど吹き飛ばした。
両手剣三連擊技《トライスカーレット》
ソードスキルは今度こそディアベルの敗北に足るHPを削り取り、俺の勝利を示すシステムメッセージが目の前に現れた。
「……負けたよ。完敗だ」
ディアベルは吹き飛ばされて仰向けに寝転んだまま言った。
彼の性格からして、格下に負けたとしても変なプライドから負けを認めないということはないだろう。
だが、納得できないところはあったらしい。
「でも、1つ教えてくれないか。あの時どうして君のソードスキルの方が早かったのか」
ディアベルが言っているのは俺の《ホライゾン》と彼の《バーチカル》が交錯した時のことを言っているのだろう。
俺は両手剣を背中に戻すと
「ああ、俺も完全に賭けだったんだけど……」
あの時俺は、両手剣を振り下ろしながらもう《ホライゾン》のモーションを起こしていたのだ。
これまでの俺の攻撃を全て左右の側面からの横薙ぎになっていたのも幸いした。
俺を追い詰めていたことへの油断と、横からの攻撃に慣れて下への警戒が薄くなっていたディアベルは、《ホライゾン》の初動に気づけなかった。
加えて沈み込みながら発動する《ホライゾン》と上から叩きつける様に発動する《バーチカル》では、俺の体がディアベルのソードスキルから逃げるように、反面ディアベルは俺のソードスキルに突っ込むように動くことになる。
結果俺のソードスキルが先にディアベルにヒットしたというわけだ。
「あのまま攻撃を待たれてカウンターを入れられ続けてたら、俺が負けてたかもしれないけどな。なんだか説明してるとほとんど運で勝ったようなもんだなこれ」
俺の話を聞いてディアベルは空に向かって大きく息をはきだす。
「いや、そんなことはないよ。あの時笑う君を見て、俺は背筋が寒くなったんだ。レベルと装備の差に加えてHPも敗北寸前なのに、君の目には諦めの色が全くなかった。圧倒的に自分が有利のはずなのに、逆に追い詰められてるような気さえしたんだ。それで勝負を焦って、このザマさ」
ディアベルは目を閉じる。
「あの時、君の笑う姿に俺が飲まれた時点で勝負は決まっていたってことか……」
「そんな大層なもんじゃないさ。俺はただ楽しかっただけだよ」
俺は笑いながらそう言うと、ディアベルに手を差し出した。
彼は俺の顔をジッと見て、それから少し笑うと俺の手を取って立ち上がった。
「なんとなくだけど分かった気がするよ。こういう強さもあるんだな」
「俺の相棒はもっと強いぜ」
「本当かい? まいったな」
ひとしきり笑いあった後のディアベルはいつもの爽やかなイケメンに戻っていた。
「わかったよ。LAボーナスにこだわるのはやめにする。明日の討伐は死者0で乗り切ることに全力をかたむけることにするよ」
「ああ、俺も明日は全力をつくす。がんばろうぜ!」
そう言って俺とディアベルは固く握手をしたのだった。
◆ ◆ ◆
ディアベルと別れた後中断していた食材探しを再開し、《トールバーナ》に戻ってきた俺はへとへとになっていた。
「キリトの宿に風呂があるんだったな。俺も入らせてもらうか」
「おお、それはちょうどよかったナ。オネーサンも一緒に行っていいかナ?」
声がした方を振り向くと、両のほっぺたに三本線のメーキャップがおなじみの《鼠のアルゴ》が立っていた。
「よぅ、ター坊。《メロウズボア》の情報は役にたったカ?」
「ああ、バッチリ狩ってきたぜ。報酬待ってろよ」
「そいつは楽しみだナ」
金にはあまり余裕のない俺だったが、アルゴには食材の情報でかなり世話になっている。
俺が「金のかわりにできた料理を一番先に食べさせてやる」と真顔で言うと、アルゴは大笑いした後なぜかOKしてくれたのだった。
「なんだ。早速食べたいのか? 宿まで来れば料理してやるけど」
「それもあるんだが、客が丁度1箇所にいるんでナ。報告にはちょうどいいと思ったんダ」
宿にいる3人の中ににアルゴの客が複数いるってことか
「へぇ、誰だよ」
「ここから先はタダというわけにはいかないナ」
「今夜の料理アルゴの分は一皿増やしてやる」
「キー坊とお前さんの相棒だヨ」
即座に契約が成立し、情報をくれるアルゴ。
キリトはともかくエルナディータもアルゴに何かを依頼してるらしい。
「と言ってもキー坊の方は終わりだけどナ。依頼者がついさっき依頼破棄を言ってきタ。その報告ダ」
「へぇ、そういうこともあるのか」
「何があったのか知らないガ、急に向こうさんの様子が変わってナ。ビックリしたヨ」
俺は特に気に止めずにもう一つの情報の方を聞こうとして
「エルが何を依頼したかは……やっぱいいや今のナシ」
「にひひ……賢明だナ」
エルがこっそり何か依頼していたとしても、俺は何も気にしない。
彼女が信頼できる人間だということは、この1ヶ月一緒に旅してきた自分が一番よく分かっているからだ。
長い金髪と大きな青い瞳が目を引く綺麗な顔立ち、聡明な頭脳を駆使して舞うように戦うその姿に、何度見惚れたかわからない。
彼女がなぜまだ俺と一緒にパーティーを組んでくれているのかは分からないが、その彼女を疑うようなことはしたくなかったのだ。
◆ ◆ ◆
キリトのいる宿に着き、ノックをするとドアが開いた。
「お、おぅ、遅かったなタクト。え、アルゴもいるのか!?」
なぜか焦った様子のキリトがしきりに部屋の奥をチラチラと見ている。
「ああ、そこでばったり会ってな。用事があるみたいだから一緒にきたんだ」
「邪魔するゾ」
「あ……」と言うキリトを尻目に部屋に入る俺とアルゴ。
エルナディータとアスナは部屋にはいないようだ。出かけてるのか?
「飯もここでご馳走になるからナ。ちょっと夜装備に着替えるかラ、隣の部屋を借りるゾ」
「ままま待て、アルゴ! 仕事の話が先じゃないか!?」
またもや挙動不審のキリトが、隣の部屋に向かおうとするアルゴを引き止めた。
アルゴは「それもそうだナ」と言ってキリトの方へ戻っていく。
ものすごくホッとしたようなキリトに俺は
「すごい疲れたから俺は風呂に入らせてもらうぞ。えーと、こっちか?」
俺は先ほどアルゴが開けようとしていたドアを開けると隣の部屋に入る。
キリトが「あ!」と言っていたようだが、疲れているから後で聞こう。
「あー……ほんと今日は疲れ……た……」
「「………………」」
そこは確かにバスルームへ続く脱衣場のような部屋で、風呂に入りに来た俺としてはそのまま服を脱いで、風呂に入ればいいのである。
うん、問題ない。問題ないはずだ。
――――――――ここに下着姿のエルナディータとアスナがいなければだが
2人はまだ状況が飲み込めていないようで呆然と俺を見ていた。
白い下着に包まれ、なだらかな美しい曲線を描くボディラインと、艶やかでなめらかな肌を見せるアスナ。
対してピンクの下着に包まれ、アスナより若干凹凸に富んだボディラインと、染み一つなくまぶしいくらいに白い肌を見せるエルナディータ。
そのエルナディータの肌が一瞬で赤く染まり……
その後、俺はここで味わった天国と地獄を生涯忘れないだろう。
長い金髪と大きな青い瞳が目を引く綺麗な顔立ち……に冷たい殺意を宿し、聡明な頭脳を駆使して舞うように俺を叩き出したその姿に俺は見惚れ……る前に意識を刈り取られた。
はい、あとがきです。
ディアベルとのデュエルとラッキースケベの話になります。
こ、これくらいでR15になったりしないよね?原作はもっとすごいことやってたもんね?
もし、やばそうならその部分だけ消しますですハイ。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
感想をお待ちしています。