(穂乃果)
私たちの目に飛び込んできたのは冷たい現実だった。
何も満員のお客さんを期待していた訳じゃない。ただ少しでも私たちを見て私たちのいる、音乃木坂がいいな、と思ってくれる人ができたらなと思ったのに、、、
私たちの目の前には、誰もいない
私たちの思いを誰にも伝えられない
機械室から出て来たヒデコと目が合う。
フミコや、ミカ、カイトくんもやってきた。
4人とも申し訳なさそうな顔してる。
ううん、私たちのせいだよ。ヒデコたちは悪くない。私たちがもっと宣伝しなきゃならなかったんだよ。
、、、そうだよね、、、
思いつきで初めて、それで最初から上手くいくなんて
「世の中、そんなに甘く、、、
パチパチ!!
たった一人、客席の最前列からそれは聞こえてきた。私たちを見上げる格好で私たちを見ている人がいた。
「μ 'sのライブ!!楽しみだなー!!早く見たいなー!!!穂乃果!いつもみたいに元気いっぱいな姿、見せてくれよ!!海未!緊張してんのか?そんな真面目腐った顔してないで今日は楽しめって!!ことり!いつもの天使バリの甘々の声と笑顔でメロメロにしてくれよ!!」
「大輝くん、、、」
たった一人、声を張り上げて私とその斜め後ろにいる海未ちゃんことりちゃんに声援を送ってくれる。
「μ 'sのライブ!!早く見たいなー!!!だってオレは!!
君たちの1番のファンだから!!」
「でも、「でもじゃない!!」」
「オレは、君たちの、ファンなんだ!!だから、見せてくれよ!!君たちの歌う姿を、踊る姿を!!
それじゃあ、ダメ、かな、、、」
「!!」
初めてみる大輝くんの表情。それは悲しさ?悔しさ?虚しさ?いろんな気持ちが詰まっていて、それでも無理して笑っていた。
「わ、私は、、、」
バン!!!
講堂のドアが大きく開け放たれる。入ってきたのは一年生の子、急いで来てくれたのかな。息を切らせて入ってくる。
「あれ?ライブは?」
メガネをかけたその子は周りをキョロキョロしながら講堂に入ってくる。
「っ!ほら!μ 'sのファン候補がもう一人!!見せてくれよ!君たちの力を!」
大輝くんがこっちを見て叫ぶ。その顔はさっきまでの無理な笑顔じゃない。本当の笑顔があった。
「うん!やろう!歌おう!2人とも!そのために今日まで頑張って来たんだから!」
*☼*―――――*☼*―――――(穂乃果→μ 's)
、、運命の歯車が、動き出す、、
*☼*―――――*☼*―――――(→圭)
時間は少し遡る。グラウンドに圭たち3人は来ていた。
「君、すごいね!才能あるよ!ねぇぜひ入ってよ!」
「そ、そうですか?いや〜照れるにゃ」
星空さんに陸上部の見学に引っ張られて来たけど、星空さんって本当に運動神経いいんだな。試しに走ってみない?なんて言われて走ってみたら、部内でもトップクラスの速さだったらしい。よほど気に入られたらしく僕らの番は流れてそのまま星空さんへの熱烈な勧誘タイムになってしまった。(僕としては走らずに済んでホッとしているのだけど)
と、小泉さんがソワソワと落ち着きなくしているのに気が付いた。
「?小泉さん?用事かなにか?」
「え!?いや、用事って訳じゃないけど、、、」
うーん、そうは行ってもさっきから時計を気にして、チラチラ見てるし。
「ねぇ、やっぱりなにかあるなら行った方がいいんじゃない?このままでも特に何かあるわけじゃなさそうだし」
「そう?かな?」
やっぱり何か用事があるならそっちを優先させた方がいいよね。
「じゃぁ圭くん、その、先輩に断ってきてくれない、かな?」
「え?」
「あの、なんていうか、ちょっと怖くて、、、」
いや、僕も怖いんですけど、ただでさえ人見知りしてしまうのに、今先輩たちは総出で星空さんを口説いてる。その目はもう、獲物を狩るみたいになって、流石の星空さんだって引き始めてるくらいだ。それを僕に行け、と?
、、、無理無理無理無理、、、
ジッッッッ
こ、小泉さん、そんな目で僕を見ないで、わかってるよ、小泉さんも僕に負けずを劣らない人見知りだって、でも、いくら何でもこれは、、、いやいやでも小泉さんの用事の時間もあるだろうしこれ以上引き伸ばすわけには、、、
うう、やってやる!やればいいんだろ!
でも、声をかけるのは怖いから一番近くにいる先輩の肩を軽く叩く。
「ん?どした?」
「あ、あの、ちょ、ちょっと、よ、用事があるので、、、」
「ん、ああ、わかったよ、入部はいつでも歓迎だからね」
お、上手くいった?やった。僕だってやればできるんだ!
「小泉さん、大丈夫だって、行こ?」
「え?圭くんも行くの?なら急がなきゃ!!」
え?行くってどこに?僕は抜けても大丈夫って意味だったんだけど、、、
「ちょっと、小泉さん!?ってか、足そんなに速かったっけ!?」
あっという間に駈けていってしまう小泉さんを流れで追いかけて行くのだった。なんかここ最近2人に振り回されてばっかりな気がする、、、
「にゃ!?かよちん、圭くん、どこいくにゃ〜!!」
「ちょっと!逃がさないわよ!」
「にゃぁ!?先輩!?離してー!!」
星空さん、、、ごめんね
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「で、どこに行ったんだ?小泉さん」
星空さんの尊い犠牲ののおかげ(?)で何とか陸上部を抜け出してきたが、しばらく走った後で小泉さんを見失ってしまった。小泉さんがあんなに速く走れたなんて、、、なんとかついて行けてたが、ここに来て僕の体力が持たないなんて、男としてちょっと情けないなぁ。
この辺ってなにがあるんだっけ?あんまり来たことないんだよなぁ。確か入学式の時に来て以来かな?
『やろう!』
開けっ放しになっていたドアの向こうから大きな声が聞こえていた。なにかやっているんだろうか?
気になった僕はそのドアの向こうへ、、、
その数歩で、僕の高校生活は変わった。
*☼*―――――*☼*―――――(圭→雄大)
「ったく、絵里は何処行ったんだか」
部活の様子を見に行くって言ってたから室内部活から見て回って絵里を探して見たのだが、誰に聞いても「見てない」「見てない」って、それなら外部活かと思えばそこでも「見てない」「見てない」、、、
じゃぁどこに行ったんだか、絵里がサボるなんて考えにくいし、それならそうと嘘はつかないだろうから、何処かに行ってるのは確かなのだけど、
後、行ってないところは、、、講堂、ああ、そうかあの子達がライブやってるんだっけか。当てもないし行ってみるか。
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「おーい絵里?いるか?」
「しっ!」
客席を覗いても絵里の姿が見えなかったから機械室に来てみたらいきなり絵里に注意された。絵里のやつ反対してたからってこんなところのガラス越しで見るなんて素直じゃねぇの。
機械室には絵里の他にステージの照明や、音響の操作をしている子がいたが、絵里がいるせいなのか、かなり緊張した顔してる。無理もない。今の絵里の顔は不機嫌一色、そんな生徒会長と2人きりじゃあよほど神経が太くない限りこわばってしまう。
視線を講堂内に移し、客の人数を数えてみる。
あの日、にこにあの子達のライブを評価するように頼んだ日、にこにされた質問。
『ああ、にこからもう一つ質問なんだけど
普通ライブの評価ってお客さんの入具合でつけるものだけど、どうしてそうしないの?』
理由を簡単に言えば分母が少なすぎるからだ。現在、部活動を行っている2.3生は同好会、外局も含めて全体の約8割。1年生で、入部する部活動をほぼ決めているのは、毎年行っている生徒会のアンケートによるとおおよそ2割。単純計算で約70人しか客になる見込みがないのだ。しかも今日は新入生歓迎会の日、他の部活動も勧誘する中で集客するし、講堂を使えるのが生徒会の後片付けの終わった後、ライブ開始時刻が夕方にずれ込み、その時間ならと、帰ってしまう生徒もいるだろう。3年は特に受験を控えている。そうなると身内でもせいぜい十数人来ればかなりいいほう。そんなものを評価の目安にするのは、賢いやり方じゃない。
そこでにこに評価してもらうという手をとったのだが、、、
ライブ真っ最中なので講堂内は暗くて見づらいが、最前列に一人、いつもステージ上の3人と一緒にいる男子。出入口から少し入ったところに2人、講堂の真ん中に3人。この子達はさっき外でビラを配ってたから、身内か。あとはこの機械室にいるこのクォーターが一人と。お、もう一人ショートヘアーの子が2人組のところに近寄っていく。ここからは見えないけどにこもいるはず。ってことは俺を含めて10人か。
まぁまぁいいんじゃないか?
そこで初めてステージに目を向ける。
と言ってもやはり俺にはダンスなどのことはよくわからない。歌ってる曲は、、、ん?この曲、あの赤毛の一年生のものじゃなのか?
、、、そうだ間違いない、あの子が作って俺が編集した曲だ。てことはあの子が言っていた友達はこのグループのことだったのか。確に何かに使うみたいなこと言っていたしな。
せっかくだし、最後まで見ていくか。俺は適当な壁に寄りかかってそのステージ見ていた。
*☼*―――――*☼*―――――(雄大→)
曲は最後のサビへ
様々な視線をその身に受けながらもμ 'sの3人の心は一つにつながっていた。
『楽しい!!なんて楽しいんだろう!』
曲は終わり、3人は最後のポーズをとって止まる。
息が上がり、完璧とは言えなかったがそれでもやりきった。
いつの間にか増えた観客からのまばらだが力強い拍手がμ 'sを褒め称える。
それは大輝のものであり、また花陽や凛、圭ものでもあった。
まだ興奮しているのかその拍手はなかなか止まない、
と、
カツ、コツ、カツ
拍手ではない。足音が2つ。その音に皆拍手を止め、振り返る。
絵里と雄大が機械室から出てきて、講堂の中ほどまで来る。
「どうするつもり?」
絵里が口を開いた。
本文中に出てきてませんが、真姫、希もちゃんと来ています。ただ講堂の外にいるため誰とも遭遇していないだけです(^^;そのへんを上手く表現出来ない自分の文才に嘆く毎日です。
1章は次回で最終回になると思います。