(圭)
「今日はこの位にしておきましょう」
日も傾き、いい具合の夕焼けになった頃、僕達は練習を切り上げた。
海未先輩の声で、穂乃果先輩とことり先輩は持参した敷物に腰を下ろす。
「終わったぁー。もう動けない~。圭くん~そこのお水取ってー」
「はいどうぞ、穂乃果先輩。お疲れ様です。ことり先輩もどうぞ」
「あ、ありがと~。圭くんも疲れてるのにごめんね」
「いえ、マネージャーですから。って本当にマネージャーってトレーニングまで参加するんですかね?」
僕はここの所連続して練習に参加(強制)して、足が筋肉痛で酷い。マネージャーってこういう事もするんだっけ?
「おう!メンバーの大変さを知らないとサポートしようにも出来ないことがあるかもしれないだろう。きっと」
「きっと、ですか、、、」
段々と怪しいなぁ。
と、
ガチャ
「え?圭くん?何でいるにゃ!?」
「そんな事より、話があるでしょ!」
「星空さん、西木野さんに、、、小泉さん?どうしたの?」
屋上にやって来たのは星空さんと西木野さん、その2人が小泉さんの腕を持って吊るすような格好でやって来た。捕まった宇宙人の有名な写真みたいな構図と言えば伝わるかな?
「あの!先輩方!お話があって来ました!かよちんはずっとアイドルに憧れてて、、、」
「そんな事はどうでも良くて、この子、結構歌唱力があると思うんです」
「ちょっと!西木野さん、どうでもいいってどういうこと!?」
「文字通りの意味よ!」
星空さんが西木野さんを睨む。負けじと西木野さんも睨み返す。
「あの?、、、それでμ 'sに入りたいってことでいいのかな?」
西木野さんと星空さんは2人で口喧嘩を始めてしまって、要点を言いそびれていたが、たぶんそういう事なのだろう。
ことり先輩に言われて、小泉さんが顔を上げて答える。
「あ、あの、私はまだ、、、」
「もう!かよちんいつまで迷ってるの?絶対やった方がいいの!」
「それには賛成!やってみたい気持ちがあるならやってみた方がいいわ!」
屋上に来て初めて星空さんと西木野さんの意見が一致する。小泉さんの拘束を解きながら、西木野さんは続ける。
「さっき見たいに大きな声を出すなんて簡単!あなただったら出来るわ!あなたがやるんだったら、、、少しくらい応援して上げるから」
「凛は知ってるよ!かよちんがずっとずっとアイドルに憧れてたこと!かよちんがアイドルになるなら、凛はずっと、ずーーっと応援してるからね!」
星空さんと西木野さん、2人に励まされた小泉さんは、二人を見つめ、勇気を出して先輩達に向き直る。
「えっと、私、小泉、花陽、、、」
それでも、声は小さく自信は感じられない、オドオドとした調子で指先を合わせながら俯き気味。そんな小泉さんの後ろから
トンッ!
小泉さんと西木野さんがそっと背中を押した。振り返った小泉さんに笑いかける2人。言葉にしない。けれどしっかりと伝わる励まし。小泉さんは先輩達にもう一度向き直り、今度はしっかりと顔を挙げて話し始める。
「私、小泉花陽と言います。一年で、背も小さくて、声も小さくて、人見知りで、得意なものも何も無いですけど、、、
でも!アイドルに対する気持ちなら誰にも負けないつもりです!だから!」
途中、また声が小さくなってしまったがそれでも、小泉さんは最後には自信を持って言う。
「私をμ 'sのメンバーにして下さい!」
「花陽ちゃん!こちらこそ、よろしく!」
差し出された穂乃果先輩の手に小泉さんはしっかりと自分から、握り返した。
「それで?2人はどうするの?」
いつの間にか星空さんと西木野さんの方に行っていたことり先輩と海未先輩は話す。
「やる気のあるメンバーはいつでも募集中ですよ!」
先輩2人は手を差しのべる。
「「え!?」」
大層驚き、目を丸くする星空さんに西木野さん。
「で、でも凛は、、、」「わ、私は別に、、、」
この2人は断っちゃうかな、、、2人とも興味があると思ってたんだけど。
「なーに言ってんだ!」
「うぇえ!?」「にゃ!?」
「大輝先輩!?」
いつの間に2人の背後に回っていたのか、大輝先輩は2人の後ろから肩を組み話しかける。
「応援するのに一番傍にいなくてどうするんだよ?友達何だろ?なら、迷う必要はねぇんじゃねぇの?」
大輝先輩は2人を開放し、その動きの中でそっと背中を押す。
2人の視線の先には、穂乃果先輩と並んで立つ小泉さんが
「、、、しょうがないわね、応援するって言っちゃったしね」
「凛もかよちんと一緒に、か、、、いいかもにゃ」
2人は先輩達の手を取った。
夕焼けは一層鮮やかに燃え上がった。
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翌朝、朝練の為に僕は星空さん、西木野さんと一緒にいつもの神社の階段を上がっていた。
「朝練って毎日こんなに早起きしなきゃ行けないの~」
「当然よ!と、う、ぜ、ん」
「当然なの~」
「まぁ次第に慣れるよ」
「圭くんが言うならそうなのかも」
「ちょっと!それって私じゃ信じられないってこと!?」
「西木野さん、言葉通りの意味だにゃ~」
「な、何それ!イミワカンナイ!」
この2人は案外気が合うのかも知れないな。タイプが全然違うからちょっと心配だったけど、杞憂だったみたい。西木野さんが星空さんに弄ばれる展開は意外だったけど。
階段を登りきったところで小泉さんが既に来ていて準備運動をしていた。
「あ、かよちんおッはよー」
「あ、凛ちゃん!おはよう」
振り返ったった小泉さんを見て僕達は驚く。小泉がいつもの掛けている眼鏡がそこには無かった。
「あ、あれ?かよちん、眼鏡は?」
「コンタクトに、して見たの。変かな?」
「ううん!かよちん、ぜんっっぜん可愛いよ!すっごく!」
眼鏡を外した分今までよりも明るい印象になった。早速μ 'sに入って変化が現れた。いい変化だなぉ。
「ふぅん、良いじゃない」
「あ、西木野さん」
「う、、、ねえ、眼鏡取ったついでに私のことも名前で呼んでよ。、、、私も、名前で呼ぶから、花陽、凛」
顔を真っ赤にしてそういうの西木野さん。対象的に歓びを現す小泉さんと星空さん。
「うん、真姫ちゃん」
「うー!真姫ちゃーーーん!!!真姫ちゃん!真姫ちゃん!!真姫ちゃん!!!」
一度満面の笑みで呼ぶ小泉さんと、それだけじゃ収まらないのか全身で喜びを表現しながら何度も名前を呼ぶ星空さん。
「な、なによ」「真姫ちゃーん!」ガシッ「真姫ちゃん!真姫ちゃん!真姫ちゃん!真姫ちゃん!」
名前を連呼され挙句飛びつかれた西木野さんは一層顔を赤くする。
「う、うるさいー!」
「真姫ちゃん、照れてる照れてる~」
「照れてないーー!」
まだしつこく西木野さんの周りを飛び回ってる星空さんと困り顔の西木野さんを眺めながら、小泉さんはとても穏やかにほほ笑む。
「よかったね、小泉さん。二人とも入ってくれて」
「うん!
って、圭くんは名前で呼んでくれないの?」
「へ?」
「そうだよ!圭クン、穂乃果先輩たちの事は名前で呼んでるのに、どうして凛たちは苗字なの!?」
西木野さんとじゃれていたはずの星空さんまでこっちを見てくるし。
「そ、それは穂乃果先輩がそうしろっていうから、、、」
「じゃあ、私たちにもそうしなさい。命令よ」
「えぇ!?命令ってそんな西木野さん冗談を、、、」
ツーン
「え、えと、星空さん?どうしたらいいと思う?」
「ツーン」
「いや、声に出してるし、、、こ、小泉さん、どうしよう、、、」
「うぇえ?あ、あきらめるしか、ないんじゃないか、な?」
「もう!圭!いい加減覚悟決めなさいよ!」
「覚悟って、西木野さんが、「なぁにぃ?だぁれぇがぁ?」ま、真姫ちゃんが、、」
真姫ちゃんが物凄く怖い顔で近寄って来るものだから、言わざるを得なかった。
「ふぅ、やればできるんじゃない」
「圭クン、凛は凛は~?」
「り、凛ちゃん、、」
「うむ、合格だにゃ」
「えっと、花陽ちゃんもよろしくね?」
「圭くん、うん、よろしく!!」
その日の練習は新しく入った3人も含めた全員から笑みがこぼれる、いい練習となった。
*☼*―――――*☼*――――(圭→)
その日、一対の目が彼女たちの事を見つめていた。
μ'sが練習している神社、その片隅からμ'sの練習を観察するツインテールの黒髪の少女。もうすぐ夏だというのに厚手のコートを着て、さらに顔にはマスクとサングラスをかけているため、顔は認識できない。はたから見れば見本ともいえるほど、これぞ不審者、といった格好である。バイトにやってきた希は神社の管理棟(社務所というらしい)の裏にいた彼女を見つけると通報することもなく、足音を忍ばせてその子の背後に近づき、、、
*☼*―――――*☼*――――(→希)
「ワシワシワシワシィィーー!!」
「うにぁぁ!の、希ぃ!?」
いやぁ、相変わらずにこっちはええ反応するなぁ。
「うーん、にこっちは手ごたえ薄いなぁ」
「う、うっさいわよ!っていうかいきなり胸揉んどいてその反応!!?」
「あはは、ごめんごめん。いやぁ不審者だったら神様に変わって天罰を下さんとなぁおもって」
「にこのどこが不審者よ!」
「うーん、この辺から、この辺まで?」
「頭の上から、足の先まで、、って全部じゃないの!」
「あはは、にこっちはホンマにおもろいなぁ。して、どうしたんこんな朝早くから」
「、、、あの子たちを見に来たのよ」
「あの子たち?」
にこっちの指差す方にはμ'sのメンバーとさらに新しく入った子たちが。あの子らも上手くやっとるみたいやな。
「ああ、あの子たち!スクールアイドルやるんやて。いっつもここを練習場所にしとるんよ」
「知ってるわよ、だから身に来たの。ダメね、あの子たちは、全然なってない」
「そうなん?」
にこっちはアイドルが大好き。そして自分もアイドルになりたいって思いが人一倍強い。それを前提として話すから、にこっちはいつもアイドルに関しては辛口の評価になる。ウチは何も口出しできんから、黙ってにこっちの続きを待つ。
「ええ、個人の技量はそこそこあるみたいだけど歌もダンスもバラバラ、できてる人とできてない人の差がありすぎる」
言ってることは厳しいが、細かいところまでよく見ている。つまり、かなり興味津々ってことやな。だったら、、、
「なら、にこっちが教えてあげたらええやん?」
「私が?」
「うん、だってわかるんやろ?あの子たちの直すべきところが」
「ふん、もちろんわかるわよ。でもなんでにこが教えなきゃいけないのよ」
「にこっちは『もう一回』やりたくないんか?」
「それとこれとは別よ、それじゃぁ、にこはもういくからね」
大人数ではしゃぐμ'sに背を向けて歩き出したにこっち。もう、ホンマに素直やないんやから。まぁ、にこっちは特別かもしれんけど。
吹き抜けた風は、どこか冷たい雨のにおいがした。
1年生編完結ですね。
凛と真姫については、わざとぼかしまた。決して文章能力が無いからじゃないんだからね!(笑)