視点はすべて雄大です。それでは、、、
(雄大)
沈黙が流れるアイドル研究部の部室。
テーブルに置かれたチョコレートも、もうすぐで無くなってしまう位になった頃、そのドアを開ける人物が現れる。
ガチャ
「あら、雄大、ここにいたの」
「絵里?どうしたんだ、何か用事か?」
「ええ、少し。アイドル研究部の部長の矢澤さんに」
「、、、にこに何の用よ」
「少し長くなるかもしれないからそのつもりで、ああ、雄大も聞いて頂戴。アイドル研究部の部員として」
直感的に面倒な事になると予想した俺はしかめっ面とともに覚悟を決めて絵里に向き直った。
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「まとめると、早いうちに、アイドル研究部を廃部にしろってことね」
にこの要約は乱暴だが確実に絵里の言いたいことをまとめていた。
「平たく言うとそうなります。この部活にあなた達3年性2人きり、卒業した後引き継ぐ人が居ないので2人が卒業した時点で廃部になるけど、正直な所、廃部にするなら早いうちにして欲しいの。生徒会も年度末は忙しいので」
「ふん、そんなの知ったことじゃないわ。第一にこはこの部活を辞める気なんて無いし」
はぁ、と、一つの溜息を付いて絵里は続ける。
「あまりこういうことは言いたくないのだけれど、、、矢澤さん、あなたがこの部活を続けて何の意味があるの?これといった活動も無いのに」
「っ!うるさい!!アンタに何が分かるのよ!」
堪忍袋の緒が切れたのか、立ち上がりながらにこは声を荒げる。座っていた椅子はその勢いで大きな音を立てながら後ろに倒れる。机についたにこの両手は小刻みに震え彼女の怒りの強さ表していた。
「にこ、落ち着け。絵里も今のは言い過ぎじゃないか?」
「、、、そうね、『生徒会長として』は言い過ぎだったわ、気を悪くしたのなら謝るわ」
『個人的』には言い過ぎたとは思わないけど、そう言外に言う絵里ににこは再び食ってかかりそうになるが、寸でのところで踏みとどまり深呼吸をして落ち着きを取り戻す。倒れてしまった椅子を直し腰を掛けるとにこは口を開いた。
「そうね、謝ってくれるならいいわ、にこも大声出したりして悪かったわ。でも、さっきの話、やっぱりもう少し先のほうお互いのためなんじゃない?」
「どういうことかしら?」
「だって、今、生徒会は学院の廃校を阻止するために活動してくれてるんだから忙しいはずでしょ?」
「別に、廃部申請くらいなら大丈夫よ、日常業務だから差支えないわ」
「ああそっか、生徒会は頑張って案を『出そうと』頑張ってるけど、いい案はまだ出てないから結局今はヒマなのね!だからにこに八つ当たりに来たんだ!」
「そんなんじゃ、ないわよ」
にこのあからさまな嫌味に何でもない風を装っては入るが今度は絵里の声に怒りが篭る。無理もないだろう。自分が一生懸命になってる事を貶されたのだから。それはもちろんにこにも言えたことだが、
「おい、にこも言い過ぎだ。貶されたのが頭に来るのは分かるが仕返しして何になる?不機嫌を他人にぶつけても、、、」
「貶された?そんなんじゃないわよ!!
にこはコイツに夢を馬鹿にされたのよ!それが何もしないでいられる訳ないじゃない!!
生徒会長だからって偉そうにしてるけど何!?結局自分じゃ何にも出来ない癖に、今回だってろくな案が無いってのは図星なんでしょ!?」
俺の声を遮ってにこが大声で叫ぶ。先程よりも一層激しく、強くにこは声を荒げる。座っていた椅子はすでに先程よりも遠い位置に転がっていた。
「あ、あなたに何が分かるって言うのよ!!!
私だって頑張ってるのよ!でも、しょうがないじゃない!廃校なんてどうすれば防げるのよ!!何で理事長は活動を認めてくれないのよ!!!それでも出来ることが無いかって努力してるのよ!!
あなたみたいに自分の好きな事だけやって毎日無駄にしているような人に、そんなこと言われたくない!!!」
絵里までもが立ち上がりながら怒鳴り声をあげる。普段、大声を出さない絵里からは想像もつかないくらいの声量と荒々しさを伴っている怒号。
互いが互いを罵る不毛な会話が今繰り広げられることは自明であった。俺にとって二人ともかけがえのない友人なので、二人が罵り合う姿なんて見たくもない。
「二人とも落ち着けって!どうしたんだよ!」
机を叩いて2人の注意を俺に向けさせながら叫ぶ。その音に我にかえった2人はそれでも互いの顔を見ることなく、あらぬ方向に視線を向ける。何とか最悪の事態は防いだわけだが、険悪な雰囲気が収まることもない。
「、、、とにかく、廃部については俺とにこで話して結論を出すから少し待ってくれ。それでいいか?」
「、、、分かったわ。あまり遅くならないようにしてね」
最後までにこと目を合わせずに絵里はさっさと部室を出ていった。
部屋には再びにこと俺の2人きり。先ほどとは違う、まとわりつくような居心地の悪い空気が漂っているが、俺が話すことはもう決まってた。俺はさっきにこがさっき思わずこぼした単語を聞き逃さなかった。
「にこ、もう自分がどうしたいか分かってるんじゃないか?」
「どういう意味よ、、、」
「さっき自分で言っただろ?『夢』だって。やっぱりスクールアイドルをもう一回やりたいんじゃないのか?」
「当たり前よ、それがどうしたって言うのよ」
「なら何であの子達、さっき来てたグループに、入れてくれって言わなかった、いや、言えなかったんだ?」
正直なところ、にこがアイドル活動を休止して以来、本人の口からもう一度やりたいと、聞いたことは無かったからもしかしたらもうやらないのかもと思っていたのだが、それが今でも夢だったのだとわかった以上、親友として背中を押さない訳には行かない。
「っ!それは、、、μ 'sのレベルが低いからよ!ダンスも踊れる人と踊れ無い人の差が激しくてバラバラ、歌も歌える人も入れば調子乗って外す人もいる。それにアイドルがなんなのかも分かってないで、自己満足のためだけにやってるような奴らだからよ」
「そうか、でも、それはにこがスクールアイドルをやらない理由にならないよな」
「な、何いってんのよ、、、雄大、、、」
両目を見開いて俺を見るにこ。確かに、にこが挙げた点はあるのだろう、にこ本人が言うのだから間違え無い。しかし大切なのはそこじゃない。
「ダンスがバラバラなら揃うまで練習する。歌が合わないなら綺麗にハモるまで歌い続ける。俺が『ファン』になったアイドル、矢澤にこならきっとそう言うと思う。どんなに厳いって分かってても、ひたむきに努力し続ける、アイドルだったにこならな」
「、、、そうかもね、、、でも、無理よ。ろくに話も聞かないで突き返したのに、仲間に入れてくれなんて」
本心がバレた照れ隠しなのか、わざとらしく溜息をつくにこ。それはどこか自嘲めいていて、けれどそれはにこが俺にそれ以上の言葉を望んでいないことをありありと表現していた。
「あーあ、にこにー今日は疲れちゃった。もう帰るわ。部室閉めるけどいい?」
「ん、わかった」
チョコレートの残りをまとめてにこと並んで部室を出る。
「俺は生徒会に戻るから、また明日な」
「ええ、また明日」
にこと別れて生徒会へ、廊下を歩く足音と雨の音が、響く廊下を1人歩く。
さっきの絵里の様子。にこは普段から感情豊かなところがある分、怒ると怒鳴ることはたまにあるが、普段から落ち着いてる絵里があんな態度を見せるのは珍しい。
生徒会室は一つの下の階。部室からはすぐ近くにあるのですぐに到着した。
「あら、雄大。どう?矢澤さんと話しは付いた?」
何事も無かったかのように俺を迎える絵里。また、学院について調べてたのか、絵里の席には数多くの資料が積まれていた。希は不在のようだ。
「急な話だったから、一旦冷静に考えようって、数日間考える事にした。それくらいなら問題ないだろ?」
咄嗟に嘘を付いたが、あの状態のにこにその話をしても意味は無いので事象的にはあながち間違いではないだろう。
「そう、分かったわ。ごめんなさいね、さっきは取り乱してしまって」
「珍しいってか初めてかもな、絵里があんな風にキレるのを見たのは」
「ええ、、、自分でも少し驚いてるわ、、、ダメね、最近イライラすることが多くて」
頬杖をついて窓の外を眺めながらつぶやくように言う。雨のせいで生徒会室全体が普段より暗めになっているのも相まって、その絵里の表情は影を落としていた。
「どうした、元気なさそうだな。何かあったのか?」
部室で食べきれなかった分のチョコレートを机の上にあけて、その中から一つつまみ出して口に運ぶ。普段の絵里ならすぐに注意してくる行動も今は上の空の様子で、見向きもしない。よっぽど気が参ることがあったみたいだな。
「そうね、強いて言うならさっき矢澤さんに言われた通りだってことかしら。結局、図星だったのよ。私一人頑張ってみても事態は好転しないまま、時間だけが過ぎていく。生徒会長として、何としても学院を次の世代に残したいって思ったけど、、、無理かもしれない、、、」
いつも凛としてリーダーシップを取る姿からは想像もつかないような、弱気な絵里。雨の音にかき消されそうになるくらいか細い声は二人しかいない生徒会室に弱弱しく消え、周囲から綺麗だと評判の白い肌も今は彫刻のように無機質に見える。
「それで、絵里は今後どうしたい?続けるか、やめるか」
今の絵里に必要なのは選択する事。辛いかもしれないが絵里自身が決めなければならないこと。決意が揺らいだのならば、もう一度決意を新たにする必要がある。それは他人が介入できることではない。
「言っておくが、今回の問題はかなりの難問だし、今までの絵里の努力が嘘になるわけじゃない。だから、今ここでやめても、誰も文句言えないし、言わせない。それは俺が保障できる。だから、絵里、君はこれからどうするんだ?」
「私は、、、」
長い思案の後、顔を上げた絵里はいつもの調子で言いきった。
「続けるわ。私がこの学院の生徒会長なんだもの。私が諦めるわけにはいかないでしょう」
「そうか。わかった」
「ええ。残り時間は限られているのよ。くよくよしてられないわ。まずは、、、」
すっかり元に戻った生徒会長、綾瀬絵里はその初仕事として、俺のチョコレートを容赦なく、全て没収した。
アニメではなかった絵里VSにこですね。登場人物が少なかったですがいかがだったでしょうか?
アニメの中でにこが絵里のことをよく思っていないような描写があったのですが、その根拠になるシーンがなかったので、こんな事がもしかしたらあったかもなぁなんて。
こっから関係のない話すデス。
書いてて気づいたのですが、希ってよっぽど着目して書かないと出番が滅多に回ってきませんね。何とか登場させるネタを考えようと雄大バリにチョコ食べて頑張ってます。そういえば最近ボトルに入ったチョコレートにはまって、机の片隅にいつもおいてあります。気が付いたら、三日で三箱消費してました。今から生活習慣病が怖くなってきた瞬間です(笑)
それではまた次回~♪