(にこ)
私の、矢澤にこの、高校生活はもう終わったも同然だった。
一年生の頃、夢でもあったスクールアイドルになる。それを実現する事が出来ただけでも満足するべきなのかもしれない。その結果が散々だったとしても。
グループが自然消滅してから、私はずっと一人だった。と言っても孤立したとか、そういう事じゃない。雄大や希みたいに仲のいい友人もいるし、クラスともある程度交流はある。だけど、一度諦めた夢がいつまでも頭の中をチラついて離れない。そのせいでずっと何処かに淋しさを感じていたの。あの時、仲間だと思っていたグループのメンバーにアイドルを辞めると言われた時の足下が一気に崩れていくような喪失感と一緒に。
雄大は未だに部に残ってくれているから部活が無くなるのは私がこの学院を去ってから。そう思ってた。実際、雄大は私がまだスクールアイドルへの憧れをわかって、私に活動の場を残そうしてと部に残っているみたいだったから。
私の夢の抜け殻のような部活が無くなる可能性なんて疑いもしなかった。
だけど現実は違った。学院の廃校、それに伴って生徒会長から廃部するように何度も働きかけがあった。初めはプリントの通達だったけど昨日、遂に生徒会長直々に部室までやって来た。
私の今までの全部を否定されたみたいで、アイドルを貶されたと感じて、取り乱してしまったけれど、今になって思えば生徒会長の言うことももっとももよね、、、部活が私と雄大二人になってからはこれと言った活動をしていない。メンバーが抜けたのが1年の夏休み前だったから約二年、何もしてない事になる。むしろ今まで待ってくれただけ良かったのかも、、、まぁ待っても何も無いから廃部になるんだろうけど、、、
、、、
いや、何も無いなんて嘘ね。
あの子達、μ 'sを見てから私の心の中ではずっとあの夢が燻っていた。私だってステージの上で輝ける。輝きたい!と
μ 'sはスクールアイドルとしてまだまだ未熟だけど確かにアイドルとしての素質、輝きがあったから、、、
素直に仲間に入れてって、言えば良かったのにね。あの子達に負けたような気がして悔しかったのかなぁ、八当りみたいに中傷して、解散しろなんて、、、雄大に言われて気が付いたけど、私、嫉妬してたのねあの子達に。
気が付いた時にはもう遅かった。私は自分の夢のチャンスを2回も無駄にしてしまった。もう、次はきっと無い。いっそこのまま部活も辞めてしまえばケリもつくかしら。
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授業をそれなりに聞き、昼食を取って、また授業に出て、放課後を迎える。いつも通り、何も無い日常。
部活に行く人、友達と遊びに行く人、意味もなく駄弁る人、それぞれがそれぞれに過ごす中、誰もいない誰も来ない部室に向かう。こんな毎日をずっと続けていても意味が無いのは分かってる。部活を潰せって言われるのも当然ね、、、
何処かに行くのだろうか、楽しそうに話す人達に背を向けて私は一人になるべく部室の扉を開けた。雨のせいでほぼ真っ暗に近い部室の電気を付けようとした時、わたしはまだスイッチに手を掛けてもいなかったはずなのに部室の中がパッと明るくなった。
*☼*―――――*☼*―――――(にこ→大輝)
「「「「「「「「「おつかれさまでーす!!」」」」」」」」」
明かりを付けるタイミングも完璧!!にこ先輩あせってるあせってる!
「な、なぁ!!?」
「お茶です、部長!!」
「部長!?」
「今年のの予算表になります。部長」
「部長~、ここにあったグッズ、邪魔だったんで棚に移動しておきました」
「コラ!勝手に!!」
「さ、参考にちょっと貸して、部長のお薦めの曲」
「そ、それなら迷わずこれを、、、」
「あ〜!!それは保存用!!」
穂乃果の作戦、オレが昨日グループトークから追い出された後に決まり、後で海未からメールで教えられたもの(その前に穂乃果からも来ていたけど意味不明だったから省略)、それは自然な流れでにこ先輩にμ 'sに『入って』もらうのではなく、既にμ 'sに入っているも同然に接すること。
正直ぶっ飛んだ作戦だと思うけど、穂乃果と海未が知り合った時も、穂乃果が木の影に隠れていた(笑)海未にいきなり「次はあなたが鬼ね!」なんて声をかけて仲間に引き込んだ実績付きだ。まぁ考えついてもそれを実行するのは流石穂乃果というべきもな。
さて、次は俺の番かな。
「ところでにこ部長!次の曲の相談なんスけど!」
「やはり、次はよりアイドルを意識した曲にした方がいいかと思いまして」
「そ、その、歌詞も、何か参考になる物があれば、お、お願いします!部長!」
俺に続いて意外にも自然と言葉が出てきた海未と正反対にたどたどしく一単語ずつ並べるように圭が続ける。
「それと~振り付けも何かいいのがあったら~」
「歌のパート分けもお願いします!」
ことりと穂乃果が追い打ちを掛けると、にこ先輩も口を開けて唖然としていた。が、少しすると状況が読み込めたのか、目を閉じると、
「こんな事で押し切れると思ってんの?」
と、低い声で聞いてきた。が、これこそ穂乃果が待っていた言葉だった。
「押し切る?私はただ、相談していただけですよ。音乃木坂アイドル研究部所属のスクールアイドル、『μ's』の7人が歌う次の曲の」
「7人、、、?」
にこ先輩はこの部室を見渡す。男の俺と圭を除くとこの部屋にいるのは、、、
穂乃果、海未、ことり、花陽、凛、真姫、、、そして、にこ先輩。
みんなはにこ先輩を笑顔で見つめ続けている。と、
「っ!」ガチャ!バン!
「ああ!にこ先輩!」
にこ先輩は何も言わずに部屋から出ていってしまった。思わず穂乃果が伸ばした手は、虚しく空を切る。
「にこ先輩、、、うーん上手くいくと思ったんだけどなぁ」
作戦の発案者だったからだろうか、穂乃果は伸ばした手を戻して悔しそうな顔をしているが、まぁさすがに高校生相手に穂乃果が幼かったころの作戦をそのまま使っても無理か。
「まぁでも、いい手応えだと思うぞ。俺は、にこ先輩はきっともう少しでμ 'sに入ってくれると思う」
「そうだね、、、うーん、でもこれ以上何すればいいのかな、、、」
腕を組んでわかりやすい考えるポーズをしてうんうん言い始めた穂乃果。まぁにこ先輩の感じだともう一歩ってところかな、ここまで来たら、あとは誰かが後押しすればにこ先輩はμ'sに入ってくれそうな気がする。
「あ、あの!」
手を挙げたのは意外にも圭だった。
「僕が説得しに行ってもいいですか?」
「圭が、出来るのか?」
正直に言うと、圭はこういう事に向かないと思う。話せばいい奴だけど、慣れるまでかなり引っ込み思案な所がある。ほぽ初対面で、更にこちらにいい印象を持っていないにこ先輩を相手に話すのは厳しいだろう。が、
「はい。、、、多分ですけど穂乃果先輩や大輝先輩みたいに、μ'sの結成の時からいるメンバーは、矢澤先輩きっと反発して話を聞いてくれないかもしれない、だから、僕くらいの方が適役だと思います。それに、僕もμ 'sのために何かしたいって思ったんです」
圭の言うことも一理あるな、、、それに、そう言う圭の目はしっかりとオレを見てブレない。
「よし、、、頼んでいいか?」
「はい!それじゃあ探して連れ戻して来ますね!」
よほど自信があるのか、成功宣言までして圭は部屋を出ていった。
*☼*―――――*☼*―――――(大輝→圭)
にこ先輩を見つけるのは簡単だった。部室を出てすぐの階段の踊り場で、窓越しに振り続けてる雨の眺めていたから。
「矢澤先ぱ、、、」
言いかけて止める。にこ先輩はμ 'sの仲間、僕はμ 'sの仲間の事を結局全員名前呼びしてる。なら、
「にこ先輩」
「、、、なに?ってあんたが来たのね。うるさいセンターの子かもう一人の男が来るかと思ってたわ」
やっぱり、にこ先輩の目から見てもあの二人は中心人物なんだなぁ、、、
「いい?私はあんた達を認めない、だから」
「アイドル魅力って何ですか?」
「、、、は?」
にこ先輩の話を遮って尋ねたのは、とても今アイドルのマネージャーをしている人とは思えない発言だろう。にこ先輩も意外だったのだろう。口を開けたまま固まってしまった。確かに話の方向はまるっきりおかしいだろうなぁ、、、
「にこ先輩。アイドルの魅力について、教えてください」
「、、、あんた、そんな事も分からないでマネージャーやってるの?」
「はい。僕はアイドルじゃなくて『穂乃果先輩達』に憧れて、あの人たちとなら、何か得られるかもしれないと思って、それでμ 'sのマネージャーになりました、だから、アイドルについては詳しくないです」
「笑えるわね」
「ええ、笑い者です」
「、、、何が言いたいのよ」
自虐し始めた僕の話が見えないからか、にこ先輩は少し苛立った声で続きを催促する。
「さっき言ったように僕のμ 'sに入るきっかけは穂乃果先輩達でした。でも、最近思うんです、穂乃果先輩達が特別って訳じゃないんだなって。あの日ステージで輝いていたのはそれまでの努力があったから。実際にマネージャーになってみてそれが分かったんです。だから、」
一呼吸おいていよいよ本題に入る。
「僕もμ'sのために努力しなきゃって、努力したいって思ったんです。何かをしたいって思えたのって、実は初めてで、やり方もあってるかわからないですけど、それでも僕なりにできることをしたいんです。だから!
アイドルの魅力について教えてください!」