僕達の女神   作:Isaac 1,92

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太陽のいる部室へ

(海未)

 

「大変申し訳ございません」「「ません」」

 

 私たちの前でテーブルに手を付き頭を下げる幼なじみの穂乃果と一年生の凛、そして大輝の三人を前にして溜息しか出ません。

 私たちアイドル研究部は何とかラブライブエントリーの許可を得るチャンスを獲得したのですが、条件として次のテスト赤点を取らないことが提示されました。その結果が今の状況、つまりこの3人が赤点をの可能性が高いという訳ですね、、、

 

「小学校の頃から知ってはいましたが、、、穂乃果、、、」

 

 私の幼なじみが勉強を苦手にしているのは今に始まったことでは無いので、特段驚きはないですね。高校入試の時もこうやって泣きついて来ましたから、、、

 

「数学だけだもん!!」

 

 私の言葉に穂乃果は直ぐに反論するけれど、今はその数学が、問題なのです。

 

「、、、しちし?」

 

 花陽が試しに九九の問題をし出してみるけれども、流石にこれは簡単なはず、、、

 

「、、、、、、2、、、6、、?」

 

「、、、かなりの重症ですね、、、」

 

 時間が掛かりすぎな上に間違えるとは、、、悪化しましたね、これは、、、

 

「り、凛ちゃんは?」

 

「英語!!凛は英語だけはどうしても肌に合わなくて!」

 

 ダンッ!!と両手を机に突き、身を乗り出しで力説する凛の口調は、自分ではなく、肌に合わない英語が悪いと言いたげです。

 

「た、確かに難しいよね」

 

「そうだよ!だいたい凛達は日本人なのに、どうして外国の言葉を勉強しなきゃならないの!?」

 

 ダンッ!!!

 

「屁理屈はいいの!」

 

 ああ、真姫が先に動きましたか。あまり言うと私から説教しようかとも思いましたが杞憂でしたね。花陽は凛に甘いですが、真姫がいれば何とかなるでしょう。現に今も真姫が凛に詰め寄っています。その様子が飼い猫を叱りつける飼い主に見えて少し可笑しいですが。

 

「ア、アンタ達、しっかりしなさいよねぇ~。あ、赤点なんて、ぜ、絶対取っちゃダメよ~」

 

 ああ、そう言えばこの人も理事長室で絶望してましたね。

 

「にこ先輩、成績は?」

 

「ににに、にこぉ?もぉ、ことりったらァ。に、に、にっこにっこにーが、ああ、赤点なんて、とと、取るわけないでしょお~」

 

 にこ先輩、動揺し過ぎです、、、

 

「で、次は大輝ですか、、、」

 

 未だに頭を下げ続ける彼は一体何が苦手なのでしょうか、、、穂乃果同じ数学だと、まとめて教えられるので楽なのですが、、、

 

「大輝くんはどの教科が苦手なの?数学?英語?」

 

 ことりが質問します。まぁ、普段の体力トレーニングの指導の様子を見てる限りだと穂乃果程壊滅してるとは思えませんが、、、

 

 

「い、いやぁ、、、ハハハ、、、」

 

 ん?大輝は歯切れが悪いですね。

 

「大輝?ちゃんと言わなければ、対応の仕方がありません。さぁ何が苦手なのですか?」

 

「い、いやぁ何が苦手って言うか、、、」

 

 

 、、、まさか、、、、、、

 

 

 

 

 

「全部危ない、、、かも、、、?」

 

 

「、、、ハハハ、、、」

 

 

 、、、もう、笑うしかありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 *☼*―――――*☼*―――――(海未→雄大)

 

 

 

 

 

 

 絵里を追って理事長室を後にした俺は生徒会室まで戻って来ていた。理事長室から出てきた時の絵里の顔は入る前よりも一層険しいものだったことから良い話を聞けなかったことだけは確かだ。希はあのまま理事長室に残ってたみたいだし、俺が話を聞いてやらないと絵里はまた一人でため込むだろう。世話の焼ける生徒会長だ。

 絵里は生徒会室の自分の定位置に座り、持参したのだろうか、ノートパソコンを開いていた。

 

「絵里、理事長になんて言われたんだ?」

 

「雄大、、いつも通りよ。なんで理事長はあの子たちの事ばかりひいきするのかしら、、、」

 

「ん?ってことはアイドル研究部の要望は通ったのか?」

 

「ええ。そうよ、、、こんなものの、どこがいいのかしらね、、、」

 

 絵里はパソコンの画面を睨みつける。覗いてみるとそこには以前俺が作成した、スクステ上のあの子たち『μ's』のホームページが表示されていた。約一週間前に俺が編曲した『これからのsomeday』と言うタイトルのあの子たちの最新曲が無音で再生されていた。

 

「こんなものって、、、音もなしでよくわかるな」

 

「わかるわよ。この子たちのダンスは、人前で発表できるようなレベルに達していない。ただの素人よ」

 

「、、、そうか。でも評価するのは絵里じゃない。インターネット上を通じてみる誰かだ」

 

 無音、という不完全な形での評価に対して編曲で関わりのある俺は一瞬憤りを感じて、少し冷たい言い方になってしまった。気持ちを落ち着けて俺は続ける。

 

「絵里がどう思おうとも『μ's』というグループが評価されている事実に変わりはない。君が認めようと認めまいとそれは受け入れなきゃいけないことだ」

 

「そんなの、わかってるわよ、、、」

 

 押し黙った絵里はなおも再生されているあの子たちのダンスを観察し続ける。俺は適当な席に腰を落ち着け、話の続きを待つことにした。

 

「でも、、、やっぱりわからないわ。どうしてあの子たちばかり認められて、私はダメだったの?」

 

 画面から目を離した絵里は悔しげにそう呟いた。理事長に活動が認められない、、、という意味だろうか。ただそれにしては絵里の表情は悲しいことを思い出した、過去あった似た苦い経験を思い出している、といった感じにも見える。

 

(希なら、なんて言うんだろうか)

 

 人の気持ちを察するのが上手い彼女なら、今の絵里にかけてやるのにいい言葉がわかるかもしれない。だが、オレには絵里が何を思ってるのか見当もつかない。自分の不甲斐無さを噛み締めることしかできなかった。

 

 

 

 

 *☼*―――――*☼*―――――(雄大→希)

 

 

 

 

 気が付くとウチは中庭にいた。本来ならば雄大くんのように生徒会室に戻って自分の仕事をするなりエリチと今後について話すべきなのに、理事長室を出た後、どうも気持ちが落ち着かない。

 

 、、、いや、原因は分かってる。エリチや。

 

 エリチの様子に違和感を覚えたあの日からずっとウチは迷ってるんや。このままでええんかって。でも、分からないんよ、何て言ってあげたらいいのか。何て言えば、エリチが自分自身で押し殺してる本心を引き出せるのかが、、、

 

 、、、そう言えば、穂乃果ちゃん達とちゃんと話をしたのは、この中庭が初めてやったかなぁ。あの時は雄大くんもいてファーストライブに使う講堂について話したんやったっけ。

 

 穂乃果ちゃんあの時の目は、前にも思ったけど、やはり特別な力を感じたし、今でも思い出すことができる。揺るがない決意の目。そして穂乃果ちゃんにはそれを実現するための仲間がいた。真面目で、穂乃果ちゃんを上手に制御できる海未ちゃん。その二人に絶大な信頼を寄せて二人が見落としてしまうポイントをフォローすることりちゃん。そして、舞台に立つこの三人を後ろからしっかりと支え、背中を押してあげる大輝くん。

 ウチはこの子たちに希望を見出して、だから、μ'sって名前を付けた。いつかウチの夢が叶うかもって少しだけの自分勝手さも含めて。

 

 μ'sはウチが望んだとおり、一年生四人とにこっちをメンバーに迎えた。ウチが見つけた、素直になれずに苦しんでる子たちを見事見つけ出し、その仲間に加えたんや。残るは、、、そう、エリチ。

 

 生徒会長としての義務感によって変わってしまったエリチの心を救い出せるんはきっとあの子達しかおらん。

 ウチは誰かを支えることはできても、誰かの心を救い上げてやることまではできん。それができるのは、どんな暗闇だって照らし出せる太陽みたいな笑顔を持ったあの子だけやから。

 

 

 ウチは来た道を引き返し。途中で道を逸れ、その扉の前にやってきた。心を照らす太陽がいる『部室』に。

 その取っ手に手をかけて回す。いつもの調子で挨拶をしながらその部屋の中に入る。

 

「どうや~?みんな理事長に言われた通り赤点回避できそうかぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「、、、希先輩、、ハ、ハハ、、」

 

 ウチが一番初めに目にしたのは、ひきつった笑いを浮かべる海未ちゃんやった。

 

 あ、あれぇ?

 

 

 

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