僕達の女神   作:Isaac 1,92

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遭遇

(雄大)

 

「音乃木坂学院は来年度の生徒募集を止め、廃校とします。いいですね。綾瀬さん、鈴木君」

 

 理事長は俺と絵里を見比べるように言う。横目で絵里を見るとさっきのように理事長に食ってかかるようなことはしなかったが、両手は小刻みに震えていて、目は大きく開かれていた。これまで廃校阻止のために頑張って来た絵里にとってこの通達はそれほどのショックだったのだろう。

 すると背後に人の、それも大勢の気配がした。ドアを勢いよく開け放って入って来たのはアイドル研究部に入った、あのスクールアイドルグループのリーダーの子だった。

 

「理事長!今の話、本当ですか!?」

 

「あ、あなた!?」

 

 絵里は突然、何の挨拶も無く理事長室に駆け込んできたその子の失礼を注意しようとするが、その子は気にも留めずに理事長の前まで走ってくる。

 

「本当に廃校になっちゃうんですか!?」

 

「お母さん、そんな事全然聞いてないよ!」

 

 隣に駆け寄って来たベージュ髪の子が理事長に涙目になりながら聞く。この子は理事長の娘だったのか、確かに髪の色は二人とも同じ珍しい色をしている。

 

「お願いします!もうちょっとだけ待ってください!あと一週間いや、あと二日で何とかしますから!!」

 

 身振り手振りのオーバーアクションでリーダーの子は理事長に訴えかけるが、、、なるほどね。この子たちがそんなに慌ててる理由が分かったわ。

 

「、、、いえ、あのね高坂さん。廃校にするというのは今度のオープンキャンパスの結果が悪かったらという話よ」

 

「、、、おぅ!?」

 

 勘違いを自覚したのか、リーダーの子は熱弁をふるった体勢のまま変な声を上げる。

 

「オープンキャンパスで学校を見に来た中学生にアンケートをとって、その結果が芳しくなかったら廃校にする。

 そう綾瀬さんと鈴木君に話していたところよ」

 

「なぁんだ、そうなんだ」

 

「安心してる場合じゃないわよ」

 

 絵里が、文字通り胸をなでおろすその子に釘をさすように付け加える。

 

「オープンキャンパスは来月。そこで結果が悪かったら、それで決まりってことよ」

 

 絵里の言葉で初めて事態の深刻さが正確につかめたのか、アイドル研究部の子たちはざわざわと相談し始める。と、その様子を見かねたように一人の男子が声を掛ける。

 

「あと、少ししかねぇんなら、今すぐにでも練習しようぜ!オープンキャンパスってことはオレ達の出番があるかもしれねぇだろ!」

 

 その言葉にアイドル研究部の面々はうなずくと理事長室をあわただしく出て行った。が、退出するときに一礼して出ていったのは黒髪の子二年生ただの一人だった。あわただしいグループだ。せめて一礼くらいしていけよ、、、その様子にあきれながらも、おかげで少しショックから立ち直ったのか絵里は理事長に向き直った。

 

「理事長、オープンキャンパスのときのイベント内容は生徒会で提案させて頂きます」

 

「、、、止めても聞きそうに無いわね」

 

 理事長は絵里の頑として譲らないという視線に折れた。

 

「失礼します」

 

 一礼して絵里が理事長室から出ていくのに習って俺も付いて行って生徒会室を後にする。廊下に出るとそこには希が待っていた。

 

「エリチ、話は大体聞こえてたよ。どうするつもり?」

 

 そう言って希は1枚のタロットカードを取り出す。星の逆位置。意味は確か、、、理想の不透明性、現実の厳しさ、不和の兆候、だったか。そのカードを見ても絵里は臆することなく言い切った。

 

「どうするって決まってるじゃない。何とかするのよ。絶対に」

 

 絵里は決意を固めるが、それはつまり俺の仕事も増えるという事だ。面倒が増えるが、絵里の決意を無下にする事は生徒会の仲間として出来ない。結果的に俺の負担も増えはするが、まぁ、仕方の無いことか。肩を竦めつつ、俺は希と絵里と一緒に生徒会室に戻った。どうせこれで決まるんだから最後まで思うまでやらせてやるのも、まぁ、悪くないだろう。

 

 

 

 *☼*―――――*☼*―――――(雄大→真姫)

 

 

 

「廃校か、、、なんだかいよいよになって来たね、、、」

 

「何言ってるのよ圭。私たち、そのために活動してきたんでしょ?」

 

「うう、真姫ちゃん、、、そうだけどさぁ、、、」

 

 私の言葉に圭はしょげる。生徒会室からの帰り道、凛が花陽を連れて走って行ってしまったから、私と圭の二人で話しながら部室に向かう。きっと凛のことだから廃校と聞いていてもたってもいられなくなったのだろう。まぁ、走って部室に戻ったところで何かが起こるとは思えないけど、、、。それに引き換え、圭は頭がいいし、勉強もできる。なのにどうしてこう度胸がないのかしら。廃校って聞いたくらいでビクビクし始めちゃって。私の方がまだ度胸はある気がするわ。

 

 意気地のない同級生と並んで部室に入る。

 

「ライブだよ!ライブをやるしかない」

 

 私が戻って来てから聞いた第一声が穂乃果先輩が言ったそれだった。

 

「オープンキャンパスでライブをやって、入学希望者を増やすしかないよ!」

 

「ライブはいいです、オープンキャンパスでライブなんて出来るの?また、生徒会長に止められるんじゃない?」

 

 私だってオープンキャンパスでライブする事に関しては異論はない。それが、恐らく私たちに出来る事の全てだろうし、、、ただ、あの生徒会長の事だから私たちの思い通りのライブ設備の使用の許可をくれるとは到底思えないのだ。だか、私の心配をことり先輩が見事に解決してくれる。

 

「それなら大丈夫だよ真姫ちゃん。オープンキャンパスの時は各部の発表の時間が必ず設けられはずだからそこで歌を披露出来るんだよ」

 

「と、言う事で真姫ちゃん!!」

 

「ちょっと!穂乃果先発そばで大きな声を出さないで!ビックリするじゃない」

 

「真姫ちゃん!新曲作って貰ってもいいかな?」

 

 穂乃果先輩は私の両手をぎゅっと握って頼み込んでくる。

 

「新曲をやるんですか?」

 

「そうだよ!新曲の方が見に来てくれた人たちの心を掴める気がするんだ」

 

 また、穂乃果先輩の直感か。まぁ、私をμ 'sには誘ったのも直感的だったらしいから穂乃果先輩らしい言えばらしいのかも。それに新曲が関心を引けるってのもあながち間違いではない気がするし。

 

「分かったわよ。作ってみるだけ作ってみるわ」

 

 言った直後、穂乃果先輩の顔がパッと明るくなって、お礼を叫びながら私に抱きついて来たのには少し戸惑ってしまった。

 

 

 

 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆

 

 

 

 私は作曲、海未先輩と圭は作詞の案を考え、残りのみんなで衣装の案を出し、それをことり先輩がまとめる。という役割分担が決まったわけだけど、、、

 

「海未先輩も圭も準備が良すぎるのよ。まぁ、こっちの方が話が早くて助かるのだけど」

 

 私の手には海未先輩と圭が書いた歌詞カードがある。二人とも次の新曲に備えて何個か歌詞を考えていたようだった。

 

 まあ、かく言う私も何通りかの新曲用のフレーズを考えてはいたので二人のことをあまり言えない。歌詞カードを貰った私はそのまま音楽室に行き、ピアノを前に歌詞にあったメロディーなるようにフレーズを組み合わせて曲を作っていく。

 しばらく作業に没頭していて、ついに曲を完成させてしまった。さすがに下校時間を過ぎてしまったかと思ったら以外にもまだ一時間以上余裕があった。何というか、やっぱり私も人のことを言えないな、、、

 

 予定よりも早く終わったことで少しだけ気分がよかったので何曲か演奏していると音楽室のドアが開く音がした。

 

「やっぱり君か、音楽室を使う時には生徒会まで許可を取りに来てくれると助かるんだけどな」

 

 そこにいたのは雄大先輩だった。

 

「あ、いや、、、すいません」

 

「で、また作曲かい?新しい曲はできたの?」

 

「あ、はい。あの、それで良かったらなんですけど、、、」

 

「ん、見せてその曲」

 

「え?」

 

「え、ってその曲アイドル研究部がオープンキャンパスで披露するつもりなんでしょ、なら編曲も急いだほうがいいんじゃない?」

 

「ど、どうしてそれを?」

 

「どうしてって、このタイミングで自作の新曲ってそれしかないと思ったけど、、、違った?」

 

「い、いえ、その通りですけど、、、いいんですか?またお願いしても」

 

「俺も趣味みたいな感じだから気にしないくていいよ。、、、これがその曲かい?」

 

 楽譜立てにかけていた新曲の楽譜をひょいと手に取った雄大先輩はそれをパラパラとめくりだす。

 

「あの、そしたら、お願いします」

 

「了解。ほら、今日はもう帰りな。下校時間だ」

 

 雄大先輩がそういうとちょうどチャイムが鳴った。

 

 

 

 

 *☼*―――――*☼*―――――(真姫→雄大)

 

 

 

 

 自分の下駄箱から靴を取り出して履き替えて学校を出る。ついこの前まで咲き誇っていた桜もすっかり散ってしまい、今は夏本番を前に若葉を生やし始めた校門までの並木道を歩きながら今日一日を思い返す。

 テスト返却に理事長からの呼び出し、アイドル研究部の乱入に、生徒会に戻ってからの絵里、希、俺に加え後輩たちまで巻き込んだオープンスクールの出し物会議、さらについ先ほどの音楽室での会話。我ながらなかなかの密度の濃い一日だったような気がする。絵里に押し付けられた資料が入った紙袋の中に、先程西木野さんからもらった楽譜の入ったクリアファイルを入ってることを確認して校門から出る。と、そこに金髪碧眼の少女が立っていた。

 

「・・・絵里?」

 

「え?」

 

 金髪碧眼なんてそうそういるものじゃないし、とりあえず思い当たった名前を口に出してしまったが、その名前に反応した少女は顔立ちこそ少し似ているものの身長などからして絵里ではないことが明らかだった。その子は突然話しかけられたからか、明らかに警戒した顔をしていた。まずい何かを言わねば、、、

 

「あ、いや、人違いだったよ。君はここで何してたのかな?」

 

 勤めて優しい口調で語りかけてみるが、、、

 

「え、いや、アリサはべつになにもしてないでした、Я не подозрительный предмет」

 

 明らかにおびえてる、、、顔を青くして自分の体を両手で抱いているし、言葉もめちゃくちゃなことを口走ってる。ほんとに、なんでこうなるのかなぁ。俺はたいてい初めて会う年下は、ここまでとはいかないけど多少なりおびえさせてしまう。今の生徒会の後輩も慣れるまでずっとそんな感じだっし。

 

「そこのあなた、何をしているのですか!?」

 

 どうしたものかと頭を悩ませていると、後ろから激しい声が聞こえてきた。

 

「学校の前でよくも堂々と妙な真似ができましたね!!」

 

 そう言って俺と少女の間に厳しい顔をした一人の女子が割って入って来た。その差すような視線の先は、、、

 

「え?俺?」

 

「あなた以外に誰がいると!?年下の女の子を泣かせるなんて!!」

 

「ちょ、俺は何も、、、」

 

「言い訳するなんて見苦しい!!自分がした事くらい責任を持ちなさい!!」

 

 全く聞く耳を持たないこの子の中では俺はすっかり悪者で決定のようだ。キッと睨んだ目からは敵意しか感じられない。いや、俺なにも悪いことしてないよな、、、

 

 

 

 

 結局、金色の女の子が落ち着くまで俺への疑いが晴れる事は無かった。

 

 

 

「すいませんでした。何も知らずに、、、」

 

「いやぁ、いいって勘違いなんて誰にでもあるし」

 

 誤解が解けた事でさっきまでむき出しにしていた敵意も今はなくなり、逆に申し訳なくなったようでその黒髪の子始めた俺に何度も頭を下げた。そんな時だった。

 

「え?」

 

 不意に頭を下げていた黒髪の子が驚きの声を上げた。視線の先には絵里から貰った資料学校入っている紙袋がある。

 

「どうしてあなたが、これを、、、」

 

「亜里沙、何しているの?」

 

 と、後ろから聞きなれた声が聞こえる。そのおかげで黒髪の子が何と言ったのかは聞き取れなかったが。

 

「あ、おねぇちゃん!」

 

 亜理沙と、呼ばれた金髪の女の子はたった今声を掛けた、絵里の下に駆けていく。なるほどな、絵里の家族なら金髪碧眼物を納得がいく。

 だが、そんな呑気な事を考えていたのは俺だけのようで。

 

「っ!あなたは、、、」

 

「、、、生徒会長」

 

 黒髪の子と絵里の間に険悪な雰囲気が流れ始める。

 

 




雄大は初見、ただの目つきの悪い893です(笑)
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