僕達の女神   作:Isaac 1,92

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タイトルのないCD

(大輝)

 

 放課後の練習を終えたオレ達は屋上からに戻ってくる。メンバーはすでに着替えを済ませ制服姿になった。オレ達はまもなくやってくるだろう、その幽霊部員を待つ。

 

「それにしても穂乃果は急過ぎです!まさかあのタイミングで依頼するとは、、、」

 

「えへへ~。でも海未ちゃん、結果オーライだよ!」

 

 海未は生徒会室での穂乃果の行動をまだ引きずっているのか少し機嫌が悪そうだったが、穂乃果は全く気にしている様子はない。

 そんなやり取りをしながら待つこと数分、部室のドアが開きその背の高い人物はドアをくぐるように入って来た。

 

「すまんな、思ったよりも時間がかかったんだ」

 

 入って来てからの第一声がオレ達を待たせたことに対する謝罪だったことにオレは驚いた。生徒会ってもっと偉そうなイメージだったから、、、いや、そういえばこの先輩、ファーストライブの一件でオレ達に頭を下げたこともあったな、、、

 

「いいのよ雄大。とりあえず座って?」

 

「おう、悪いな絵里、、、で、俺に話ってなんだ?ステージがどうこうって、、、」

 

 空いていた席に腰かけた雄大先輩は何の前置きもなくいきなり本題に入ると、μ'sとオレ、圭の全員を見渡す。答えたのは海未だった。

 

「実は、私たち、オープンキャンパスでライブをするつもりだったのですが当日は講堂を使うことができなくなってしまって、、、」

 

「そこで雄大、あんたに白羽の矢が立ったって訳。一年の時ににこ達に作ったステージ。なかなかいいセンスしてたわよ」

 

「雄大先輩!お願いします。生徒会室でも言った通り、絶対に成功させて廃校を何とかしたいんです!お願いします!」

 

 海未に続いてにこ先輩、そして最後に穂乃果が頼み込む。そして穂乃果が話し終えると同時にオレ達は一斉に頭を下げた。この上ない完璧な頼み込み。オレはそう感じた。だが、、、

 

 

 

 

 

 返って来たのは、なんとも事務的な口調の返事だった。

 

 

「つまり、アイドル研究部は発表場所も決まってないのにライブがしたいから、どこかいい場所を俺に探してこい、と。そう言いたいんだな?」

 

 その乱暴にまとめたの言葉はオレを苛立たせるのには十分だった。

 

「、、、おい、そんな言い方ねぇだろ。こいつらがどんだけ努力してるのかも見てねぇ癖に。どんだけ頑張ってここまで来たのかも知らねぇだろ」

 

 先輩とか、生徒会とかそんなこと、関係なかった。オレはただこいつが、穂乃果の、ことりの、海未の努力もしらないで。毎日圭が暑くないように屋上に水まきしてるのも知らねぇのに。運動が苦手な花陽のために凛が一生懸命教えてるのも知らねぇのに。真姫がにこ先輩に作曲のアイデアになるからと、アイドルソングを借りて勉強してる苦労も知らねぇのに。そして、絵里先輩と希先輩がμ'sに入るのに流した涙の数も知らねぇのに、、、

 

 それなのに、平気でオレ達の今までをしていて全く無視したコイツの発言が言ったこいつが許せなかったのだ。

 

 苛立ちが顔に出ていたのか、雄大先輩はオレを座ったまま見上げ、呆れたように溜息ついて冷たく続けた。

 

「身勝手言うのも大概にしろ。確かに俺は君たちの事をよく知らない。だけどな、この学校の生徒である以上、この学院のルールに沿ってくれないと俺も困るんだ」

 

「で、でも、それは生徒会としての立場ですよね?なら、僕たちは雄大先輩個人に頼みます。μ'sのステージを作ってくれませんか?」

 

 オレが反論する前に答えたのは圭だ。人見知りをする圭はこの空気で発言することはきっとよっぽどの勇気を出したのだろう。両手は机の上で固く握られている。空気を悪くしてしまったオレは少し罪悪感を覚えた。すぐさま絵里先輩が圭の援護射撃をする。

 

「そうよ、私たちは雄大個人に頼んでるの。お願い、私たちにステージを作ってくれないかしら?学校を廃校から救う手助けと思って」

 

 しかし、雄大先輩はやはり首を縦には振ってくれなかった。

 

「俺個人に頼んだとしても、やっぱり答えはノーだ。第一、俺は今生徒会で手がいっぱいなんでな、、、話はそれだけか?」

 

 雄大先輩はオレ達を見渡すと、話は終わった、と判断したようで席を立った。そして、何か思い出したようにカバンをあさった。中から取り出したのは一つの透明なCDケースだった。中にはタイトルのない一枚のCDが入ってる。

 

「一応、完成したから渡しとくわ。最も、作った本人から何の説明も聞いてないなら、いい機会だと思って後でしてもらいな」

 

 そういうと雄大先輩はそれを置くと部室のドアを再びくぐるようにして出て行った。

 

 

 

 残されたのは誰も何も話さない、重苦しい空気と一枚のCDだけだった。

 

 

 

 

 

 *☼*―――――*☼*―――――(大輝→真姫)

 

 

 

 

 雄大先輩が出ていった部室には形容し難い重い空気が横たわっていたけれど、私の内心でそれどころじゃない。動揺を隠すため自分の赤い髪を弄るくせが出てしまう。しかし、それでも尚、心臓は早鐘のようになる、、、机の上にはCDが一枚、、、

 

 

 先輩!!何やってくれてんの?!?

 

え?え?あのCDって絶対『友情ノーチェンジ』の完成版よね!?

 

 

 私の視線は雄大先輩がCDを取り出した時からそれに釘付けだった。マズイわね。何とかしてみんなに不審がられないようにあれを回収しないと、、、いや、何も隠し事にする必要も無かったけどなんとなく機会を逃して来ちゃったし、、、しかも今この空気で「実は編曲したの私じゃありませんでした~」なんて言えるわけないし、、、あーもー!!ホント、なにやってんの!?あのデカ眼鏡!!

 

「、、、とりあえず、雄大が置いていったこれは何かしらね?」

 

 私の心の中なんて知らないで絵里先輩がCDに手を伸ばす。普段なら重苦しい雰囲気を変えようとしたわけだから偉いのだけれど、今の私に取ってそのCDは爆発物同然の危険物だ。触られるわけにはいかない。

 

「え、絵里先輩!」

 

 何とかしなきゃって思ったのはいいけど、自分の想像よりも大きな声が出てしまった。みんな不審な目でこっちを見てる、、、

 

「、、、ま、真姫?どうしたの?」

 

 絵里先輩が伸ばした手を戻して私に聞いてくるが、怪しんでるのが表情から滲み出てる、、、なんとかしないと、、、

 

「え、えっと、、、きょ、今日は遅いから、帰りませんか?ほら、みんな練習で疲れたでしょ?ね?ほら、帰りましょう?それはまた明日って事で、、、」

 

 あ、ダメ、、、みんなの疑惑の目線が痛いくらいになってきた、、、

 

「真姫、、、あなたに聞きたいことががあります」

 

 海未先輩は私に疑うような視線のまま真剣な顔で向き直る。

 

「先日、私は雄大先輩と話す機会がありました。その時はまだ、『友情ノーチェンジ』が形になってませんでした。私は圭と完成させた詩をあなたに渡した。その日に雄大先輩と私は話しました。そして、私は見てしまいました、雄大先輩が、ある筈のない『友情ノーチェンジ』の楽譜を持っていたのです。圭にも聞きましたが、そもそも、圭は詩は作れても、曲を乗せることはできません。

 

真姫、貴方しかあの時にその楽譜を持っている可能性は無いんです。なのに、雄大先輩は楽譜をしていて持っていた。これは一体どういうことですか?」

 

「、、、」

 

 海未先輩の話に私は黙り込んでしまう。それは今まで伝えられなかった後悔と、今話したらどうなるだろうかという恐怖からだった。

 

「え?でも?海未ちゃん、それってつまりどういうこと?」

 

「穂乃果、、、それは私にもわかりません。分からないからこうして真姫に聞いているのです。凛から聞いた話では真姫と雄大先輩はμ 'sに入る前からしばしば音楽室で合っていたようですし」

 

「そうだよ、真姫ちゃん!凛達に内緒で雄大先輩と合ってたの凛たち知ってるんだからね!雄大先輩とどういう関係なの!?」

 

 そこまでバレてたのか、、、確かに私は入学式の時から雄大先輩と合っていし、μ 'sの最初の曲『START:DASH!!!!』を完成も手伝ってもらった。言わなければならなかったけれど、言えなかったそのことに対する後悔と、言った時の恐怖が再び私の心にのしかかり、答えるための唇は思うように動かなくなる。と、

 

「音楽室?、、、μ 'sに入る前?、、、CD、、、『完成』、、、」

 

 なにやら呟いていたのはにこ先輩だ。そして、ストンと何かに納得した顔になり、、、

 

「プフっ」

 

 吹き出した。

 

「にこ?真面目な話をしているのよ?」

 

「ごめん、ごめん絵里。でも、ふふっ真姫ちゃんは相変わらずだなぁって」

 

「にこ?何か分かったの?」

 

「ええ、もう、ぜーんぶ分かったわ。全く、そうならそうと早く言えば良かったのに~。真姫ちゃんって、やっぱり素直じゃないってゆ~か~」

 

 にこ先輩は戯けるような口調で絵里先輩に応じる。その様子から考えて、答えが完璧に分かってしまったのか、、、

 

「にこ、いい加減に教えてくれない?何がわかったの?」

 

「絵里~慌てない慌てない。ね~真姫ちゃん、

 

『編曲』は何処まで進んだ~?」

 

 

 、、、にこ先輩は本当に全部分かったみたいね、、、

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