僕達の女神   作:Isaac 1,92

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LAST PIECE

(大輝)

 

 様子のおかしい真姫に疑問を持ったオレ達。雄大先輩と真姫の関係ならば、海未や凛から真姫と雄大先輩について色々聞いていたので頭の中で様々な仮説が浮かぶ。例えば、凛の話が本当なら、真姫と雄大先輩は付き合ってるのか、そして、その縁で楽譜が雄大先輩の手に渡ったのか、、、

 

 そんなことを考えていると突然にこ先輩楽譜ふざけ始める。絵里先輩にこ注意されるが何処吹く風だ。その様子は、おかしくてしょうがない、という風で、今にも腹を抱えて笑いだしそうだった。そして、にこ先輩は真姫に聞いた。

 

「ね〜真姫ちゃん、『編曲』は何処まで進んだ〜?」

 

 その言葉に真姫の方がピクンと跳ねる。嘘が苦手な真姫のことだ。つまり、図星なのだろう。しかし、

 

「真姫、編曲ってなんだ?」

 

「大輝先輩、、、その、、、」

 

「別に言っても大丈夫だとおもうわよ~。むしろ、今のままの方が空気悪いし~」

 

 にこ先輩は相変わらずの口調で真姫を催促する。どうすることも出来ない真姫はついに決意を固めたのか、深呼吸してから話し始めた。

 

「実は、μ 'sの曲を作ってたの、、、私だけじゃないんです、、、」

 

『え!?』

 

 にこ先輩以外の全員の声が重なる。いや、どういうことだ?『START:DASH!!!!』も『これからのsomeday』も、それに『友情ノーチェンジ』だって真姫の作曲のはず、、、

 

「どういうことだ?作曲は全部真姫じゃないのか?」

 

「作曲は私です、、、ただ、、、」

 

 どうも話が見えない。作曲は真姫だが曲を作ったのは真姫だけじゃない?

 

「大輝、あなた作曲したらそれで完成だと思う?」

 

「え?違うんすか?」

 

 にこ先輩がヒントのようなものをくれるがオレは作曲なんて全くわからんから全然ピンと来ない。しかし、μ'sの中には数名、気が付いたメンバーもいるわけで、、、

 

「そっか、それで『編曲』する人が別にいた、、、」

 

「確かに、真姫ちゃんって機械とか苦手そうだもんね」

 

「それならそうだって早く言ってくれればよかったのに~」

 

 にこ先輩に加えて花陽、圭、ことりの三人も話を理解した様子だ。

 

「んん~?どういうこと~!?曲を作ったのは真姫ちゃんだけど真姫ちゃんじゃない???」

 

「頭がこんがらがって来たにゃ~」

 

 一方こちらは相変わらずの穂乃果と凛。頭を抱えてうんうん言ってる様子は一瞬姉妹にも見える。けれどオレも今回はこっちサイドだな。何が何だか訳がわからん。

 

「ことり、どういうことですか?」

 

 海未も珍しくわからないのか、ことりに質問する。しかしことりは難しい顔になる。

 

「う~ん。なんて言えばいいのかな、、、圭くん説明できる?」

 

「え?僕ですか、、、そうだな、、、曲作りを建築に例えると、真姫ちゃんは設計者ですかね。楽譜っていう設計図を作って家の形を決める。そして、その編曲をする人が大工さん、かな。実際に音を出してCDに録音したり、パソコンでいろんな音を重ねたりする人のことです」

 

「加えて、編曲は楽曲の雰囲気を盛り上げるため、楽譜上にはない様々な効果音を使って曲全体のイメージをより鮮明にする役割もあります」

 

 ことりからバトンを渡された圭と補足して花陽が説明する。つまり、曲の飾りつけをするって事か?

 

「そして、私たちの場合、その編曲をしたのが雄大だった。それであってるわね?真姫?」

 

「、、、ええ、そうよ。にこ先輩の言う通りよ、、、」

 

「真姫、、、」

 

 海未はスッと立ち上がり真姫のそばに。その真姫はギュッと目を瞑り身体を縮めて身構える、、、

 

 ポンッ

 

「それならそうと早く言って下さい。私たちは仲間なんですから」

 

 海未は優しく真姫の頭を撫でてやる。

 

「いいの?私は作曲のために呼ばれたのに、、、?」

 

 海未を見上げた真姫の目にはうっすらと涙が溜まっていた。真姫が言い出せなかったのはそんな理由か、、、

 

「誰もあなたをそんなふうに思ってませんよ。真姫、例え作曲が出来なくても穂乃果はきっと、あなたをμ 'sに誘いました。そうですよね?」

 

「うん!だって真姫ちゃんすっごくカワイイもん!」

 

 穂乃果の言葉に自分の髪くらい顔を真っ赤にした真姫はそのまま俯いてしまった。

 

「あーあー、なーんだ。凛はてっきり雄大先輩と付き合ってるのかとおもっちゃったにゃ〜」

 

「な、凛!!そんなわけないでしょ!」

 

「あ~れ~?真姫ちゃんでも、顔真っ赤だよ~?」

 

「っ!り~ん~!!」ボコッ☆

 

「にゃあ!?真姫ちゃん痛いにゃあ!」

 

 真姫にチョップを喰らった凛はひっくりかえって叩かれたデコをさする。その様子がおかしくてオレ達は誰からということもなく噴き出した。凛のおかげで真姫はすっかりいつもの調子に戻った。そして、部室を覆っていた暗い空気もまた、どこかに行ってしまった。一通り笑ったところで、穂乃果が口を開く。

 

「ねぇ。私、やっぱり雄大先輩にステージを作ってもらいたい!編曲とか難しいことは分からないけど、、、要は音楽に飾りつけするって事でしょ?私、μ'sの曲大好き。それってつまり雄大先輩の編曲も含めてだと思うんだ。だから私ね、雄大先輩の作るステージもきっと素敵だと思うの!」

 

 穂乃果は自分がこれだ!と直感的に決めたものに飛びつく。そしてそうやってオレ達はここまで来た。スクールアイドルを始めたのも、圭や真姫、それ以外ここにいるメンバーがそれったのだって全部、穂乃果の思いつきだった。そうやって集まったからだろうか、先程あんなにキレたのに、穂乃果の勘を信じてみたくなるのは、、、

 

 異論はなかった。オレ達は立ち上がって追いかけた。オレ達に欠けていた最後のひと欠片を手に入れるために、、、

 

 

 

 

 

 *☼*―――――*☼*―――――(大輝→雄大)

 

 

 

 日は大きく傾いてそれを染める。上を見上げれば赤から青に変わるグラデーションを何にも遮られることなく楽しめる。春の終わりの空の下を俺は一人、校門に向かって歩いていた。ひゅう、と吹き抜けた風の冷たさに夏がまだもう少し先だと感じる。

 

 校門を出るときふとその横に目をやる。もちろん何もない、ただ学校を囲んでいる塀があるだけ。しかし、そこに金髪碧眼の少女が立っているような気がしたのだ。

 

「、、、おかしいな、、、」

 

 どうしたというのだろうか。以前そこに立っていたのは『その少女の妹』だっただろうに。なぜ俺はその『姉の方』が立っているなんて錯覚したのだろうか、、、

 

「雄大先輩!!」

 

 後ろから大声で呼び止められる。振り返ればまだ少し距離のある位置にからこちらに走ってくる一団がある。

 

「雄大先輩!私たち、やっぱり雄大先輩にステージを作ってほしいんです!」

 

 アイドル研究部に所属する、その活発そうな茶髪をサイドにまとめた子は駆け寄ってくると先程と全く同じ話を蒸し返す。

 

「さっきも言っただろ?俺は、、、」

 

「身勝手なのは分かってます!それでも、私は雄大先輩にやってほしいんです!真姫ちゃんに聞きました。μ'sの曲を編曲してくれたのは雄大先輩だったって。私、編曲とかよくわからないけど、、、μ'sの曲、大好きなんです。だから、きっと雄大先輩の作るステージも大好きだと思うんです!お願いします!」

 

 一気にそこまで語ったその子は、がばっという音が聞こえそうなくらい勢いよく頭を下げてきた。

 

「私からもお願いするわ」

 

「絵里、、、」

 

「私の廃校を阻止したいって思いは変わらないわ。でも、もっと言うなら、私はμ'sのみんなでこの学院を廃校から救いたい。ねぇ雄大。そのためにはあなたの力を貸してほしいの。お願い!」

 

「雄大先輩、協力してくれないともう曲あげませんからね?」

 

 赤毛の真姫ちゃんが、自分の髪をいじりながら言い、言い終わるとそのままそっぽを向いた。

 

「雄大!『ファン第一号』がなんでこの宇宙No1アイドルにこにーを追いかけないのよ!いいから協力しなさい!」

 

 にこめ、チビのくせに態度ばっかり大きくしやがって、、、

 

「あのなぁ、俺が協力できないのは、、、」

 

「生徒会、ですよね?」

 

 俺の言葉を遮ったのは小柄な男子。確か今年唯一の一年生男子だったか、、、

 

「生徒会の事なら、僕が生徒会に入って、お仕事の手伝いをします。それだけじゃダメですかね?」

 

「え!?圭くんそれ本気!?」

 

「ええ、だって穂乃果先輩、僕がμ'sに入ったのは自分のやりたい事探しのためですよ?ならいろんなことに触れたほうがいいかなって。絵里先輩たちがどんな仕事してたのかも気になりますし」

 

「あら、圭。生徒会は楽しいわよ?確かに大変なところもあるけど、何よりやりがいがあるわ。あなたみたいな秀才は大歓迎よ?」

 

「まぁ、そういうことで雄大先輩。僕が生徒会の手伝いに回ります。それで問題解決ですよね?」

 

 確認するようにケイと呼ばれていた小柄な男子は俺に問いかける。確かに問題は解決しているんだよなぁ、、、

 

「あれれ?そしたら雄大くん、断わる理由なんてなくなっちゃったんやない?」

 

 希がわざとらしくニヤつきながら痛いところを突いてくる。断わる理由もなくなった。この子達は俺のセンスを認めてくれていて、その上でここまで頼み込んでくる。

、、、ここで断われば俺はとんだ甲斐性なしか、、、

 

「、、、はぁ~、、、仕方ない、か、、、」

 

 俺の言葉を肯定の意味にとったのだろう、アイドル研究部の面々はその表情をパッと明るくし、そして全員声をあげた。

 

『やった~!』

 

 まったく、仲のいいことだな。

にこの奴のああやって笑う姿、そういえば久しく見てなかったかもな、、、絵里、すっかりこいつらと打ち解けたみたいだな。希、ここ最近絵里とうまくいってなかったみたいだったけど、どうやら仲直りできたみたいだな。

 

 まぁ、それが見れただけでも、この誘いを受けてよかったかもな、、、

 

「ねぇみんな!私思いついちゃった!オープンキャンパスで新曲をやらない!?」

 

「穂乃果!?本気で言ってるのですか!?オープンキャンパスまであと二週間ですよ!?」

 

「本気だよ!海未ちゃん!『友情ノーチェンジ』も素敵な曲だけど、、、私は新曲がやりたい!このメンバーになって初めてのライブだから、私たちの始まりの曲をやりたい!それでライブをしたら、きっとうまくいくと思うの!どうかな!?」

 

 おいおい、現実的に考えてそれは無理だろ、、、

 

「いいんじゃない?やりましょう、私たちのスタートの曲」

 

「は、、、え、絵里?本気なのか?」

 

 間の抜けた声が出てしまったが、仕方ないだろう、、、いや、だって考えてみろよ。今から詩を作って作曲して、それができてから編曲だろ?曲もないってことはステージの雰囲気もどんな風にしたらいいか分からないってことだし、、、

 

「ええ、本気よ?さぁみんな。これから忙しくなるわよー!」

 

『おー』

 

 しかし、そんな俺の内心なんてどこ吹く風、絵里はそのサファイアブルーの瞳をキラキラ輝かかせながら言い切りやがった。しかも、アイドル研究部のほとんどの連中がそれに応じて掛け声まであげやがった。

 

「身勝手だと思わないですか?これから作る側の苦労も知らないで」

 

 掛け声を上げなかった作曲の担当の赤髪の子が俺に寄って来た。

 

「まったくだ、よくここまで来れたな」

 

 ため息交じりに毒づくいたが、その子はクスッと笑った。

 

「でも、ああいう風に自分のやりたいことにまっすぐな姿にあこがれて集まったのが私たちなんです。だから雄大先輩、あきらめてください」

 

「、、、」

 

『憧れ』か、、、

 

「おい真姫」

 

「はい?っていきなり呼び捨てですか、この前まで違ったのに」

 

「これから一緒に仕事すんのに、距離作る呼称なんて面倒だからな。それより新曲、二日以内に持って来い。じゃなきゃ間に合わねぇから編曲しないぞ」

 

「、、、はぁ!?いやそんな、歌詞だってまだ、、、」

 

「文句があるんだったら『μ's』を恨め。君たちはそういうグループなんだろ?」

 

「~~~ッ!あーーもう!分かったわよ!、、、圭!明日の朝までに新曲の詩を完成させなさい!」

 

「え?真姫ちゃん?そんなむちゃ「さ、せ、な、さ、いーー!!」はいぃ!!、、、」

 

 ふん、とりあえずこれで俺の負担は少し軽くなったわけだ。交渉事は先手必勝に限る。一週間と少しあるなら編曲も普段通りのペースで何とかなるし、作曲さえ終わればステージ作成も編曲と並行して始められるしからな。え?間に合わないんじゃなかったのかって?ハッタリって何のためにあると思ってんの?

 

 

 、、、、

 

 

『憧れ』か、、、

 

『μ's』さっき何気なく言ってみた、この子たちのグループ名。今、会話の輪の中心にいる茶髪サイドテールの子の思い付きから始まり、それは不思議なもので始め嫌悪感すら抱いていた絵里までもその輪に引き込んだ。そしてその絵里本人も、その子と同じ、屈託のない素直な笑顔を見せるようになった。

 

 

 、、、 

 

 

 ああ、そういうことか。

 

 前に絵里に『嫉妬』とは何か聞かれたとき、俺は『憧れ』の言い換えだ、なんて頭の中の知識でしかない、実体験もない自論を偉そうには振りかざしったっけな。

 

 だけど、今ならわかる。

 

 俺は今もそうだ、自分の損得だけ考えて他人のために何かしようなんてしてこなかった。生徒会に入った動機も自分のため、活動も与えられた仕事をこなすだけ。絵里に協力して廃校を阻止してるように見せかけて、絵里が与える作業をこなしただけ、、、

 

 だけど、君はずっと前から違った。自分の学校をよりよくするために生徒会に入り、廃校を阻止しようと努力を続け、そして、生徒会と掛け持ちなんて大変なのは目に見えてるのに、それでも自分のしたいことと両立しながら、未だに誰かのための努力を惜しまない。今だって、無茶をしたがるあの子を君はそっと後押ししてあげたんだろう?

 

 そんな君の強さに、やさしさに、

 

 

 

 

 俺は、ずっと前から『嫉妬』してたんだな、、、

 

 

 

 

 

 

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