僕達の女神   作:Isaac 1,92

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伝説のメイド『ミナリンスキー』

(絵里)

 

 写真に載っていたビルの入口で希は待っていた。

 

「お、みんな来たな?ことりちゃんは先に上に行って待ってるって」

 

「上?希、この上は確か伝説のメイド『ミナリンスキー』さんの働いてるって噂のメイド喫茶が以外は特に何も入ってないわよ?何でことりがそんなところにいるのよ」

 

「お、にこっち鋭いなぁ。まぁ、続きは中に入ってからやで?」

 

 希がは終始ニコニコ顔でそのまま、ビルの中に入っていく。

 

「なぁに?あれ、、、、絵里、わかる?」

 

 にこは首をかしげて私に聞くけれど私もさっぱり。

 何が何だかわけのわからない私たちは言われるがまま希の後に続いてビルに入る。二階に登るとそこは確かににこの言う通りメイド喫茶になっているようで、入った瞬間に周りにいたメイドの格好をした女の子たちからお決まりの挨拶をされた。そんな喫茶店の奥、ワンボックスのテーブルに腰掛けて、メイド服を着たことりは小さくなって座っていた。

 

「あ!やっぱりことりちゃんだ!こんなところで何してるの?」

 

 穂乃果にしてみれば単純な興味なのだろう。なんとも軽い様子でことりに問いかける。きっと穂乃果にはことりが練習をサボっている、なんて考え方はありえないのだろう。

 

「ことり?何かあったのですか?話してくれませんか?」

 

 海未も穂乃果とはまた違うけれども、ことりが何の理由も無く練習を休んだとは思っていないようね。きっとこの信頼関係が幼馴染みであるからこそのもので、そして、廃校に待ったをかけることができた要因なのかもしれないわね。

 

「穂乃果ちゃん、、、海未ちゃん、、、」

 

 二人の幼馴染みの顔を見上げたことりは、覚悟を決めたらしい。二人を座らせるとしっかりと正面から向き直った。

 

「隠してたわけじゃないんだけど、いう機会が無くて、、、実はね、、、

 

 

 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆

 

 

「「「「「「「「「「「えぇーー!?」」」」」」」」」」

 

「こ、ことり先輩が、このアキバで伝説のメイド、『ミナリンスキー』さんだったんですか!!?」

 

 ことりの告白に驚いて、オウム返しに聞く花陽に、ことりは

 

「、、、そうです、、、」

 

 と、小さく答えた。

 

「ひどいよことりちゃん!それなら教えてよ!」

 

 そうね、穂乃果もやっぱり友人が自分に隠し事をして練習を休むというのはやはり心配だし、嫌なものよね。私も希が先にμ 'sに入った時は、、、

 

「言ってくれれば遊びに来て、ジュースとかご馳走になったのにー!」

 

 、、、穂乃果らしいと言えば、穂乃果らしいのかしらね、、、

 

「アイドルショップにあったこの写真は?」

 

 雄大が手にしているのは先程のお店にあったというメイド服姿のことりの写真。ことりが嫌がっていた様子をみた雄大がお店の人に断って回収してきたものだ。

 

「店内のイベントで歌わされて、撮影、禁止だったのに、、、」

 

 ことりは半分泣き顔になりながら雄大の質問に答えた。俯き加減のことりの表情から彼女が本当に禁止だったのだろう、不本意だった様子がが伝わってくる。

 

「なーんだ。じゃあアイドルってわけじゃないんだね」

 

「穂乃果ちゃん。うん。それはもちろん、私はμ 'sのメンバーだよ」

 

「では何故、メイド喫茶でアルバイトを?」

 

 海未の質問も最もだろう。μ 'sでも、活動する以上、自分の時間が取られるということには変わりはない。その上ことりはメンバーの衣装の用意の殆どを担っているのでその忙しさも人一倍なはず。なのにメイド喫茶でアルバイトというのは大変すぎるのではないのか。

 

「ちょうど、μ 'sを始めた頃に、アキバの駅前で誘われて、メイドさんの洋服が可愛くて始めたんだけど、お仕事しているうちに、、、なんだかいつもの自分よりと違うような感じがして、それで、私、自分を変えたいなって、、穂乃果ちゃんや海未ちゃん、大輝くんと違って私には何も無いから」

 

「何も無い?どういうこと?ことりちゃん」

 

「私ね、穂乃果ちゃんみたいにみんなを引っ張って行くこともできないし、海未ちゃんみたいにしっかりもしていない、かといって大輝くんみたいに誰かを勇気づけてあげることもできないから」

 

 そう言うことりの顔はどこか、淋しい。

 だけど、私の見る限りではことりが二年生の中で劣等感を感じる必要もないと思う。ことりはμ'sの衣装づくりを一人で頑張ってるし、暴走しがちな穂乃果とたまに厳しすぎる海未、お調子者の大輝の間に立って上手に折り合いをつけている。私だってμ'sに入って少ししかたってないけど、それくらいなら分かる。私が希と雄大を頼っていたように、この二年生の間には誰にも取って代わることのできない関係がある。そんな風に感じる。

 海未がそんなことはないとことりに話しかけているけれど、それはことりの耳には届いていたとしても、ことりの心境変えるのには至らなかったようでことり顔でその寂しそうな顔を変えることは無かった。

 

 そんなふうに私がそのやり取りを外から眺めるような姿勢を取っていたからだろうか、普段ならば重ねた時間など関係なく会話に入っていくだろう、もう一人の二年生の様子に気がつけたのは。

 

「どうしたの?大輝?」

 

「え?オレっすか?」

 

 私が急に話しかけたためか、大輝は少し驚いたように目を開いて、自分を指さす。その様子は普段通りの少しふざけた部分があるような調子に戻っていた。けれど、先程まで大輝はとても目を鋭くして、シワを寄せていたのを私は見ていた。それはことりに向けるには、、、あまりにも激しい感情を表していた。

 だけど、大輝はそれきりいつもの調子に戻ったので、何も言及することは出来なかった。私の見間違いということもありえるわけだから、、、

 

 その間、海未と穂乃果がことりと話し続けていたようだけれど、ことりから、淋しさの消える様子はなかった。

 

 

 

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 結局、ことりも、大輝もそれ以降何の変化もなく私たちはことりのアルバイト先のお店で適当な注文をして、しばらく時間を過ごした。そして、帰り際表通りまで見送りに来たことりは私たちに自身のアルバイトのことを黙っておくように頼むと慌ただしくお店に帰っていった。

 

「それじゃあ僕らも帰りますか?」

 

「何言ってるにゃ!圭くん!まだこんなに明るいよ!」

 

 圭の提案を凛が即、遮った。

 

「そうね、なんだかこのまま帰るのも少し味気ないかも」

 

「え?ちょっと?凛ちゃん?真姫ちゃん?」

 

「と、いうことで、凛たちはもう少し遊ぶにゃー!ね?かよちん」

 

「うぇ?わ、私は、どっちでもいいけど、、、」

 

「そ、じゃあ行きましょ?早くしないと日が暮れるわよ?」

 

 真姫はそういうと、スタスタと歩き出す。あとに続くのは凛と、引きずられてく圭。それを苦笑いしながら追う花陽の一年生たち。あの子達もあれはあれで独特の関係を築いているわよね。

 

「ウチはこの辺で、バイトがあるんよ」

 

「俺も、少し一人でしたいこともあるから」

 

 希と雄大はそう言うと、私たちに別れを告げて歩きだした。

 

「じゃあ、私たちはどうする?」

 

「ハイハイ!私、ちょっと行きたいところがあるの!なんかね!美味しいアイスクリーム屋さんが出来たんだって!だからみんなで行きたいなぁって」

 

 穂乃果がビョンビョンと飛び跳ねながら右手をピンと伸ばして言う。

 

「私はいいですよ?今日は特にすることもないですし、大輝は?、、、大輝?」

 

 しかし、海未が振り返ったとき、そこにいたはずの大輝はいなくなっていた。

 

 

 

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「でも、以外だなぁ、ことりちゃんがあんなこと悩んでいたなんて」

 

 私と穂乃果、海未が並んでアイスクリーム屋さんから帰っている途中、穂乃果がそう零した。

 

「誰だって自分が他人より優れているなんて思わないのよ。案外、友達っているのはライバルみたいなものなのかもしれないわね」

 

 少し落ち込み加減の穂乃果に私はそう伝えた。私自身、そういう風に感じたことは多々ある。とくにμ 'sに入ってからはそれは顕著になった。生徒会にいた頃は希や雄大の仕事の速さに何度も劣等感を感じたこともあるし、オープンキャンバス前の練習中、穂乃果の成長の速さや凛のバネには何度も驚かされたし、ことりやにこの衣装ののセンスのには舌を巻いた。かるく考えただけでも数え切れないほど思い出すことが出来る。

 

 と、穂乃果と海未が顔を見合わせて、そして、私を見て笑った。

 

「な、なによ?」

 

「やっぱり、絵里先輩にμ 'sに入ってもらって良かったです」

 

「そんな事言って!明日から練習軽くしてくれなんて言わないでよー」

 

 海未が本当に愉快そうに笑って言うものだから、私はそうやって誤魔化すしかなかった。

 

「それじゃあ、また明日ね!」

 

 軽くてを上げて穂乃果たちと別れる。別れて、しばらく歩いてから、思い直して再びアキバの街に足を向けた。

 

 

 

 

 

 

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