(大輝)
ことりがアキバの街の喫茶店でも、メイドのアルバイトをしていた。
そのことがバレたことりはつい先程までしゅんと小さくなっていたが、オレ達が注文をし始めると途端に明るくなり、それは普段のことりとは違う雰囲気を持って生き生きとしていた。ことりにつけられた『伝説のメイド』という通り名を納得させるだけのものがことりにはあった。
そうして、オレ達はしばらくの間他愛もない話をしあって、そして、そろそろお店を出ようかとなり、メンバーがそれぞれことりにエールを送って出ていく。そんな中、オレが出ていこうとした時の、
「大輝くん、みんなが帰った後もう一回来てくれない?」
「え?」
しかし、ことりはそれだけいうとそのまま、オレから離れて穂乃果と話し始めてしまう。仕方が無いからオレは先に店の外に出ているだろうほかのメンバーの元に急いだ。
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一年生組がゴタゴタと帰っていく中、みんなの目を盗んですぐさまことりの働く喫茶店の入っているビルの中に戻った。ことりはビルの入口をすぐ入ったところでオレを待っていた。
「なんだことり?まだ何かあるのか?」
「うん、、、」
オレから話しかけたけれど、ことりは顔を俯かせたまま話さない。呼び出したのはことりの方なのに、なかなか話す決心がつかないと言った風だ。
「なぁ、何かまだ言いたいことがあるなら遠慮なんてしなくていいぞ?」
「うん、、、あのね、、、」
オレはことりが何か悩みでも抱えているのかと思っていた。ならばオレはことりのチカラになってやろうと思っていた。しかし、オレはことりの次の言葉で何も言えなくなってしまった。
「一昨日のことなんだけどね、、、聞いちゃったんだ。大輝くんがそこでほかの高校の人と話してるのを」
そこ、と言ったことりの視線の先はこのビルの外の通りを見ていた。確かにオレは一昨日、μ 'sの買出しにここに来ていた。そして、、、
「ことりはね、大輝くんが優しい人だってわかってるから、大輝のこと信じる、、、信じたいから。だから、、、話してくれないかな?あの人たちは誰なの?大輝くんに何かあったの?、、、なんで大輝くんがあんな風に呼ばれてるの?」
ことりは本当にオレのことを信じてくれるだろう。ことりは視線をオレの目から離さない。、、、逸らしたのは俺の方だった。
「あーー、何でもない。元中の奴らでさ、、、なんていうか悪ふざけ?そんなに心配することじゃないって」
視線を外しまままオレは早口に言った。
「でも、、、」
「いいからいいから、ことりが気にするようなことじゃないよ」
「うん、、、」
「時間大丈夫?もうそろそろ戻らないと行けないんじゃない?」
「うん、、、それじゃあ、、、」
オレはことりを急かして喫茶店に戻らせた。
あれはことりが気にするようなことじゃない、、、けれど、知ったならば気になるのは当然だろう。ならば、、、
行動は、、、早い方がいいか、、、
*☼*―――――*☼*―――――(大輝→希)
境内を藁箒を片手に歩く。本道まで続く石畳の上の落ち葉を掃き終えて、神社の入口に当たる長い階段の上から正面に沈んでいく夕日を見るのがバイトをしているウチの習慣になっていた。そこから見る夕日は街全体を包み込むように赤く燃えてとても綺麗、、、
「希」
夕日に見とれていると、背後に人の気配があった、かかった声は私の親友の声。
「どうしたん、エリチ?」
振り返るとエリチがいつものようにスッと背筋を伸ばして立っていた。
「少しだけ、付き合ってくれないかしら?」
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「どうしたん戻ってきたりして」
エリチに連れられてウチは再びアキバの街に来ていた。夕日を受けて街全体がオレンジに染まり、昼間とは打って変わった黄昏時の慌ただしさを感じさせる。
「私ね、この街に来て思ったことがあるの。この街は絶えず変化して行って、それでも、受入れてくれる。この街なら、スクールアイドルもきっと受け入れてくれる。そんな気がするの」
エリチは行き交う人々を眺めながら今まで見たことのないくらいワクワクとした顔をしていた。ようやく、自分がやりたいことを見つけたみたいやね?
「うん、ええやん!エリチ」
「そうでしょう?なら、早速準備しましょう?」
ウチが出来ること、ずっとエリチを後ろから見てきたウチがするべきなのは、エリチを肯定してあげること。
「フフッ楽しくなりそう!」
珍しいはしゃいだ声を出すエリチを見て本当にμ 'sに入れて良かったなと感じる。
「なーに勝手に話を進めてんだ」
話しているうちらの背後から、聞きなれた低めの声がかかる。
「μ 'sのステージを作るのは俺の仕事なんですけど?」
「雄大!」
ウチらのすぐ横までやってきた雄大くんは、言葉では責めるようなことを言うけれど、それはウチには本気には聞こえない。普段、その身長と無表情な態度もからよく勘違いされがちだけれど、彼はそんなことで怒るようなほど短気ではない。
「雄大、ダメかしら?」
「いいや、、、、」
彼は首を横に振って、そして、ニヤリと口角を上げた。
「俺も、同じことを考えてたとこだ」
*☼*―――――*☼*―――――(希→穂乃果)
キーンコーンカーンコーン!
今日の授業も終わり!!さぁ!練習だぁ!私は荷物を手早く片付けて机の横にかけてあるカバンを持つと同時に立ち上がる。
「穂乃果!あなたは今日、掃除当番ですよ!」
「え?あ!そうだった!」
立ち上がった私を呼び止めたのは近くの席にいた海未ちゃん。
「全く、穂乃果はいつもせっかちなのですから、、、自分の当番くらい覚えていてください!」
「えへへ~ごめんごめん」
「おい穂乃果、いつまでも話してないでサッサと机下げろ!後ろつっかえてるぞ」
「ああ、大輝くんちょっと待ってね、よいしょ、、、」
私は今比較的教室の後ろの方の席に座っているから掃除の前には早く席を下げないと後から下げる人の迷惑になっちゃう。急いで机運ぶ。
「穂乃果ちゃん、先に行ってるね」
「サボらないで下さいよ!穂乃果!」
机を運び終えた私に、ことりちゃんと海未ちゃんが一声かけてから教室から出ていく。
「ほれ穂乃果、サッサと済ませちまおうぜ」
同じく教室掃除の当番になっている大輝くんが回転箒を2本持ってやって来て、そのうち一本を私に差し出した。
「うー、海未ちゃんたちも手伝ってくれたっていいのにー」
箒を受取りながら少し文句を言う。だって今日はとってもやる気があったのにー!
「ことりちゃんなんてメイドさんなんだよ!掃除くらいチョチョイのチョイだよ!」
「チョチョイのチョイて、お前なぁ」
「あーあー、でもことりちゃんがミナリンスキーかぁ。伝説のメイドなんて、なんだかアイドルみたいだね!」
「あぁ、まぁ確かにことりが黙ってそういうことしてるのは少し意外だったな。隠し事するタイプに見えないからな」
「だよね!なんで隠してたりしたんだろ?」
「それは、まぁお前らだからなんじゃないか?」
「へ?」
「ことりはお前と海未に近づきたくて、それで、自分探しも含めてバイトしてたんだろ?なら、目標の相手に簡単に言い出せるはずもないってことだろな」
「ふーん、、、何か、昨日絵里先輩にも同じようなこと言われたなぁ」
「絵里先輩が?」
「うん、友達って言いかえればライバルみたいなものなんじゃないかって」
「ライバルなぁ、、、うん、ことりからしたらお前と海未はそうなのかもな」
大輝くんは一人、納得したような顔をして頷いた。
「海未ちゃんも穂乃果のことをライバルだって言ってた」
「海未が?お前よりはるかにしっかりしてんのに?」
「そうなの!しかもなんでって聞いても教えてくれないんだよ!そうだ!大輝くんは私達のことライバルとか思ってる?」
「オレか?うーんそうだなぁ」
大輝くんは考え始めるそぶりを見せたけど、
「コラ!加藤、高坂!二人共話してないで手を動かしなさい!」
大輝くんが答える前に先生に注意されてしまったので私たちは急いで離れて掃除を始めた。
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掃除を終えた私はすぐに部室に向かった。もうやる気満々だよ!部室に入って着替えを済ませて制服をロッカーにかけ終えて扉を閉めると、間を置かないで屋上に駆け出す。
「ちょっと穂乃果、待ってちょうだい!」
だけど、すぐに絵里先輩に呼び止められた。
「練習の前に話したいことがあるの。だから、少し練習は待って」
「お話?」
「ええ、ちょっとやりたい事があるの、、、入っていいわよ!」
「ん?絵里先輩屋上に行かないんすか?」
絵里先輩に呼ばれて大輝くんたち三人が部室に入ってくる。
「ええ、少し話すことがあって、あなた達マネージャーにも聞いて欲しいのよ」
「話っすか?」
「ええ、みんないるわね?」
絵里先輩は部室を回して全員が注目しているのを確認すると頷いて続けた。
「アキバで路上ライブをするわよ!」
「え?」
誰かがつぶやいた。
ええええええええええええ!!?