(圭)
「アキバで路上ライブをやるわよ!」
・・・
ええええええええええええええええ!!?
部室にみんなの驚く声が響く。
「アキバってA-RISEのお膝元じゃない!?何考えてんのよ!?」
にこ先輩が真っ先に反応した。しかし、その質問も検討済みだったようで雄大先輩が軽くにやりとした。
「だからこそ、やるんだよ」
「だからこそ?」
「ああ、μ'sがアキバで単独路上ライブを行えるだけの力を持ったグループだと知らしめることができるだろう?それに何といっても、スクールアイドルの聖地ともいわれるアキバだ。特に宣伝らしい宣伝をしなくても一気に知名度を上げることだって可能なはずだ」
「ぐ、、、それは確かにそうだけど、、、」
「面白そうにゃー!」
言葉をつまらせたにこ先輩に代わって凛ちゃんが楽しそうにいうと、穂乃果先輩をはじめとしたμ 'sのみんなが賛成の意を示してゆく。
「それじゃあ、早速作詞に取り掛かりますね。アピールということはまた、新曲でやるのですよね?」
もはや、路上ライブに反対の人はいない様子だったので僕が立ち上がろうとする。と、
「ああ、待って、圭。曲のことなのだけど」
絵里先輩が僕を止めるとそのままみんなに聞こえるように話す。
「今回の作詩はいつもの違って、アキバのことをよく知っている人に書いてもらうのがいいと思うの。お願いできるかしら?ことり」
最後にはことり先輩と向かい合う格好で絵里先輩は言った。
「わっ私?」
「それいい!ね?ことりちゃん」
「やった方がいいと思います。ことりならきっとアキバに相応しい歌詞が書けると思います」
最初こそ驚いたことり先輩だったけれど、幼なじみ二人に励まされたのかことり先輩は結局この絵里先輩の依頼を受けることにした。ワクワクと、少しの不安を抱えた表情で、
*☼*―――――*☼*―――――(圭→絵里)
μ 'sのメンバーが練習のためにだれもいなくなった部室に私達は残っていた。
「やっぱり、様子が変やったな。大輝くん」
「ああ、普段なら真っ先に飛びつくような話題なのに一言も話さなかったからな」
希の意見に雄大が頷く。希、雄大、そして、私が残ったのは他でもない。大輝の様子がこの頃少しの変なのだ。考え事をして話を聞いていなかったり、先ほどのように、真っ先に口を挟みそうな話題でも何も話さない。
「私たちの考え過ぎ、なのかしら」
「でも、何かあったんなら話して欲しいやん、、、」
希は寂しそうに目を伏せる。
「どっちにしろ、このままって訳にもいかないだろ。ライブに万全の態勢で臨めないのは、正直厳しい」
雄大は顎に手を当てて考える。恐らく彼はライブの成功を心配しているのだろう。それを抜きにしても私と希の彼を心配している。私たちがμ 'sに入れたのは彼の尽力も大きいから。
「どうしたものかしら、、、」
私たち三人は頭をひねるけれど、妙案も思いつかない。直接聞けば?と思うかもしれないけれど、大輝くんの性格上、ライブを控えた私たちに自分の個人的な悩みを打ち明けてくれるとも思えなかった。
「、、、今は、練習の中で様子をいていくしかないのかもしれないわね。もうそろそろ屋上に行かないと、みんな待ってるから」
結局、私たちは具体的な解決案を思いつくことができなかった。
私と希は部室から出る、しかし、雄大は部室の中で自分の荷物をまとめ始めた。
「あれ?雄大君帰るん?」
希は部室のドアのノブを持ったまま、振り返り雄大に聞いた。
「ああ、ちょっと行かなきゃならないところがあるからな。今日はもう戻らないから、他のみんなにもそう伝えておいてくれないか?」
「うん、わかった。ほなな」
雄大と別れの挨拶を交わすと希と二人、屋上に向かう。
「雄大君、どこに行くんやろうね?」
「さぁ?でも一つは決まってるんじゃない?」
私たちは二人顔を見合わせてくすりと笑った。
「「甘いものを買いにコンビニに!!」」
部室の方から大きめのくしゃみが聞こえてきた。
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ことりの作曲作業は難航している様子だった。
「二、三日様子を見ようと思って口を挟まないようにしているのですが、、、絵里、ライブに間に合わせるには、やはり、私も手伝った方が、、、」
海未にしてみれば幼馴染の手伝いをすることが当たり前なのだろう。けれど、
「いいえ、海未。ことりの力だけでやらせてあげて。きっかけ作りとかなら別だけど、、、作詞は、あくまでことりが一人でやることに意味があるのよ」
「、、、わかりました」
海未はうなずくと自分の教室に戻っていった。
「海未がわざわざ昼休みに教室まで来るってことはよっぽどみたいね、ことりの作詞は」
海未の背中を見送っているとにこが傍まで来ていた。ちなみににこと私は同じクラス。希と雄大はまた別のクラスだ。
「でも絵里、どうしてそこまでことりの作詞にこだわってるの?ライブが近いのは確かなんだから海未に手伝わせた方がいい気がするわよ?」
にこは私を真剣な目で見つめていた。
「ええ、にこのいう事も最もなのだけれど、、、少し心配なのよ、ことりのことが」
「ことりが?」
「ええ、考えたのだけど、ことりがアルバイトをしているのって、ことりが自分自身に自信をなくしてしまったんじゃないかなって」
「自分に自信?自分が一番なんて思ってる方がどうかしてるんじゃない?それにことりの場合は『伝説のメイド』なんて言われてるんだし、自信過剰になるならまだしも、自信を無くすなんて」」
「確かに普通ならそうよね、ことりは名実ともにナンバーワンのメイドなのだし。だけど、それがことりにとっては大した価値にならないんじゃないかなってか」
「、、、どういうこと?」
「ことりは、やっぱり、周りの評価よりも穂乃果、海未、幼馴染み二人に比べて自分が劣っているように感じてるんじゃないかなって」
あくまで、推測に過ぎない。けれど、これは当たっているような気がする。そして、これは希も感じていたらしい。ことりに作詞をしてもらうの事は、雄大も交えて路上ライブについて話し合ったあの日の帰り道、希が提案したことだった。もちろん、ライブをないがしろには出来ないから、様子を見て手伝うつもりだけど、、、できればことりには自分の力だけで完成させて自身につなげてもらいたい。
にこに事情を説明するとにこも納得してくれたようだった。
「ま、そういう事なら大輝あたりがしばらくしたら相談に乗るでしょ」
にこはそうなると分かり切っている、と言った感じの口調で言った。実際、私自身そうだと思ったから。
未来に何が待っているかなんて、誰も予想出来やしないのだから、、、
*☼*―――――*☼*―――――(絵里→圭)
「僕が作詞したときですか?」
「うん、何かことりちゃんのヒントになるような事がないかなって。ねぇ、なんでもいいから教えてくれない?」
穂乃果先輩が僕の顔の前で両手を合わせて頼み込んできた。時間は放課後、早く部室に行って用意しなくちゃなぁとか考えていたら、僕に向かって一直線に向かってくる、明るい色のサイドテールの頭が見えた、と思ったら案の定、穂乃果先輩だった。要件は、現在絵里先輩の直々の指名で作詞を任命されたことり先輩の手伝いをしたいのだとか。海未先輩は三年生の先輩のところに行っているらしい。
「アドバイスって言われても、特に変わったことは、、、」
「あなたがいつも作詞してる時何してるか言えばいいんじゃない?元々、作詞なんて日常的な作業じゃないんだから」
「え?あ、真姫ちゃん。いつの間に?」
「いつの間にって、廊下で話していたら流石に気づくわよ」
なるほど、1年生は人数が少ないから廊下も空いている。そこで先輩と話すのは少し目立つかもな。
「ねぇ、圭くん。ほんとに何でもいいから、なにか無い?」
「何か、うーん、、、」
「はぁ、ダメそうね」
真姫ちゃんが隣でため息をつくのが聞こえた。いや、確かにすぐに思いついて言えることが無いから、仕方ないのだけど、、、
「と、取り敢えず、考えるておきますね。それより、もうそろそろ部室に行ったほうがいい時間じゃないですか?」
「ん、あ、ホントだ!それじゃあ、圭くん頼んだよー!」
そういいながら、穂乃果先輩は走り去る。
「同じ部室なんだから、歩きながら話せばいいのに、相変わらず穂乃果先輩らしいわね」
そんな風に真姫ちゃんはまたため息をついた。
「さ、私たちも行きましょ?」
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部室に集まった僕達はいつも通りに練習の支度をしていると、急に大輝先輩が僕らを呼び止めた。
「あの、さ、少し話とかなきゃならないことがあるんだけど」
「なんですか?改まって」
海未先輩がそういうのとに合わせて僕らは各々の作業の手を止める。
「まぁ、何だ、急なことで悪いんだけどさ」
そう、前置きした大輝先輩は少し、小さく深呼吸して腹を決めたように言った。
「オレ、次のライブでμ 'sのマネージャー辞めるわ」