(花陽)
どうも、こんにちは。小泉花陽です。私たちμ 'sは今、アキバでの路上ライブほ準備に取り組んでいます。と言っても、肝心の曲がまだ完成していないので具体的には、今までの曲の確認と精度を高める練習、普段通りの練習と大差無いのですが、、、
ことり先輩。大丈夫かなぁ。
「かーよちん?なにぼーっとしてるにゃ?」
凛ちゃんが振り返ってこちらを見ます。
「花陽ちゃん、早く行こ?」
「うん」
圭くんが後ろから追いついて来ました。真姫ちゃんも一緒です。今日は私たちでお出かけ。実はとっても行きたいところがあるんです。それはみんなもよく知ってる人に関係があって、、、
「このビルじゃなかった?」
「さっすが真姫ちゃん!キオクリョクがいいにゃー!」
「いや、このくらい誰だって覚えるでしょ、、、」
目的地に着くと凛ちゃんと真妃ちゃんがいつものようにからかい合っています。二人はμ'sに入った時こそ心配だったけど。いまではもうすっかり仲良しさん。私たちはビルの階段を上って二階へ。木製のオシャレなデザインのドアを開けます。カランコロンと鐘の鳴る音がすると中から
「おかえりなさいませぇ!ご主人様!、、、ってあれ?花陽ちゃん?」
とっても元気いっぱいの声でメイド服を着た穂乃果先輩が出迎えてくれました。
「遊びに来ちゃいました。、、、迷惑、でしたか?」
「うんうん!全然そんなことないよ!むしろ大歓げーい!」
「どうしたの穂乃果ちゃん、、、あ、花陽ちゃん!」
「お邪魔します」
奥からことり先輩もやってきました。
「あれ?大輝先輩と海未先輩はいないんですか?」
「あ~、真姫ちゃんそれがね、、、大輝くんは誘ったんだけど来ないっていうし、海未ちゃんはいるはいるんだけど、、、」
そう言って穂乃果先輩は『staff only』と書かれた厨房の方を指さします。
「海未ちゃん、恥ずかしがっちゃって、お皿洗いばっかりやってるの」
「あはは、海未先輩らしいですね」
「さ、穂乃果ちゃん、いつまでも話してないで席にご案内してね?」
ことり先輩が小さく穂乃果先輩を優しく窘めるように言います。
「うおぉっとそうだった。えー、それでは、席にご案内しますね!ご主人様!」
と、私たちは、再びメイドモードに入った穂乃果先輩に席まで案内してもらいました。
「海未先輩のメイド姿も見てみたいにゃー」
穂乃果先輩に飲み物を頼み終わると凛ちゃんがそう言いました。
「折角アルバイトしてるんだから、もう少し楽しめばいいのにね」
「そうだよね、圭くん。あーあー、凛も、アルバイトとかやってみようかなぁ」
「あら?凛がメイドをするの?」
「う、真姫ちゃん、、、り、凛はメイドさんとかじゃなくて、ただ、アルバイトが楽しそうだなぁーって思っただけだよ」
「そう?凛がメイドでもいいと思うけど」
「うー、じゃ、じゃあ!真姫ちゃんもメイドさんするにゃ!」
「私はパス」
「にゃんで」
「別に、アルバイトとか興味無いし」
「ううう、、、」
真姫ちゃんはメニューを眺めながらクルクルと髪の毛を指先で巻始めました。凛ちゃんは悔しそうに真姫ちゃんを見ています。
「ははは、ところで大輝先輩はどうしたんだろうね?あの人なら嬉嬉として来そうなのに」
圭くんがそんな二人の様子を見ながら言いました。
「確かに、大輝先輩。なんで断ったんだろう?」
「ただ単にすることがなさそうだったからじゃない?男がメイド喫茶のスタッフにいても、ひまなだけでしょ」
確かに、真姫ちゃんのいうことも一理あるかも、、、でも、圭くんは納得していないふうでした。
と、そんな風に話していると私たちの近くの席に別のお客さん達が座りました。
「おお、花陽ちゃん。それに真姫ちゃん、凛ちゃん、圭くんも。みんなお揃いで」
「の、希先輩?絵里先輩ににこ先輩も」
隣に座ったのはμ 'sの三年生の三人でした。
「みんな考えることは同じってわけね?」
「絵里先輩。雄大先輩はきてないんですか?」
「雄大は何か行くところがあるって言って。遅れてくるみたいよ」
雄大先輩は最近μ 'sの練習にいないことが多い。なんでも、今度のアキバでの路上ライブの場所を確保するために、いろんなところに行っているらしいです。この前、理事長室に行くのも見たことがあります。
「それじゃあ、大輝先輩以外は全員集合ってことになりましたね」
圭くんが呆れつつ、どこか嬉しそうに言います。やっぱりこのメンバーで集まるのは楽しいのんだと思う。
「大輝先輩もこればよかったのに」
「もしかしたら、他に用事でもあったのかもしれなわね。家庭の事情って人によるでしょ?」
真姫ちゃんがそう言うと、みんなを急にしんみりした感じになってしまいました。大輝先輩はその、家庭の事情で今回のライブでμ 'sのマネージャーが最後なのです。そう思うと、やっぱり寂しい気持ちになります。私たち一年生がμ 'sに入った時に、みんなの背中を押してくれたのは大輝先輩だったから。
「あ、いや、そういうつもりじゃなかったんだけど、、、」
自分の発言で予想外にシリアスな雰囲気になってしまったことで真姫ちゃんはあたふたしてます。
「、、、そうね。しんみりしても仕方ないわね。私たちはできるだけ大輝に悔いを残させないように最高のライブをしましょう?」
絵里先輩が落ち込んだ雰囲気を退かせようとみんなに言いました。
「そうね、寧ろ、やめたことを後悔させるくらいのライブをしてやりましょ?」
と、にこ先輩が相変わらず勝気に言います。
「ふふふ、でも、真姫ちゃん。さっきの慌ててる顔も可愛かったで?」
と、希先輩が真姫ちゃんをのぞき込んでからかうと、
「な、何よそれ!」
と、真姫ちゃん花陽顔を真っ赤にしてそっぽを向きました。いつも通りの真姫ちゃんにみんなで暖かい目を送ります。悪い雰囲気は、もうどこかに行ってしまった、そう感じました。
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私たちはしばらくことり先輩の喫茶店でおしゃべりしてました。30分くらいたった時だったのかな?その間にも二年生の先輩達は注文を取ったり席に案内したりと大忙しでした。それでも終始いい笑顔でいることり先輩は、流石あの伝説のメイド『ミナリンスキー』と言われているだけあって、尊敬の気持ちを感じていました。
そんな時でした。新しいお客さんを迎えに行ったことり先輩の様子がどうも変な感じになっていました。お客さんは四、五人の高校生の男の人達。私たちとは違う高校の制服を来て、周りを顧みずに大きい声で話して笑い声をあげています。私たち以外のお客さんも居心地の悪い顔をし始めました。
「ご主人様?もう少し声を落としてお話下さいませ?そうした方が素敵ですよ?」
ことり先輩がやんわりと指摘します。メイド喫茶である以上、ご主人様が上、という関係は壊せないからこその独特の注意の仕方でした。けれど、
「うるさいなぁ、ご主人様なんだからいいだろぉ?」
一人がそういうと、周りの男の子達がゲラゲラと笑います。ことり先輩は変わらず笑顔のまま注意し続けますが、男の人たちにはそれを聞く気配もありません。ことり先輩が、とても可哀想です。
そんな時でした。私の隣に座っていた圭くんが突然で立ち上がって、男の子達の方に歩いていきます。
「あ、あの!」
「あァ?」
圭くんが声をかけると、その人は圭くんをジロリと椅子に座ったまま睨みつけました。
「その、、、ここは公共の場なので、マナーを守って下さい」
「んだァと?」
男の子が立ち上がって圭くんに食ってかかりました。男の人はある程度背があって、立ち上がると、小柄な圭くんを見下ろす形になりました。
「チビのくせに、、、なんか文句あんのか?あ?」
圭くんを男の人が威圧します。と、その男の人の肩に誰かの手が乗せられます。
「んだァ!?てめぇも、何か文句、あるん、の、です、か?」
振り返った男の人は相手の、自分をはるかに超える身長に、思わず変な敬語になったみたいです。
「、、、そのチビは俺の連れなんだけど、何かあったのか?あ?」
そこには雄大先輩が立っていました。表情はメガネに光が反射しているせいで読み取れませんが、手には相当な握力がかかっているみたいで、男の人の服にシワが出来ています。
「まぁ、なんかあったとして、、、『チビのくせに何か文句あんのか?』」
「い、いえ、、、何も、ありましぇん、、、」
男の人がストン、と椅子に腰を下ろしました。