(絵里)
「ことり?何かいいアイデアは浮かびそう?」
私は店の出口で見送ってくれたことりにそう聞く。ほかのメンバー達は店の外で、穂乃果や海未も交えて談笑している。
「うん、穂乃果ちゃんのおかげで何を歌にすればいいのかがわかった気がします。だから、もう少し頑張ってみようと思います」
「そう。なら良かったわ。また何か困ったことがあるならいつでも相談に乗るからね?」
ことりはすっかり元気な様子で返事を返しました。自分の力で何かを生み出す。それが楽しみだというような感じ、もう大丈夫みたいね。
「それじゃあ私たちはこれで、穂乃果?お店に迷惑かけてはダメよ?海未ももう少し自身持ちなさい?似合ってるわよその洋服」
「え、絵里先輩〜、、、」
普段は出さないような、情けない声を出す海未に手を振って私たちは店を出ました。
「結局、大輝先輩は来ませんでしたね。そんなに忙しい家庭の事情ってなんなんですかね?」
「あんまり、他所の家庭を詮索するのは良くないぞ?」
「そんなんですけどねぇ、、、気になるんですよ」
圭と雄大が雑居ビルの階段を降りながらそうな話をします。私たちが雑居ビルから出ると、そこにはさっきの雄大に丸め込まれた男子高校生の一団が居た。
「ったくよぉ、何でおれ達だけ出禁なんだよ。納得いかねぇ。あいつらだって騒いでたじゃねぇかよ」
彼らはあの騒動の後、店の奥から出てきた店長さんに出入り禁止になっていたはず。
「2回目だからってよぉ、それにあの時は『大輝』だっていたんだから、あいつも出禁にするべきだよな?」
「そうそう、あの『犯罪者』な!」
、、、え?
立ち止まったのは私だけじゃなかった。花陽も凛も真姫も圭も、にこも希もそして、雄大も立ち止まった。
「、、、どう、いうこと?」
口から出たのは情けないほど擦れた声だった。男子高校生達は私たちの様子に気が付かず、まだ大声で話し続けている。
「にしてもよーあいつのせいでおれ達の中学生活がパーになったのは、未だに腹立つよな」
「ああ、全く。『歴代最高のフォワード』なんて言われて調子乗ったんだよ、あの『犯罪者』め」
「あいつ、今どこに行ってるんだっけ?練習試合とかで見かけないけど」
「ああ?えっと、、、確か元女子高に行ったんじゃないか?なんだっけ、音なんとかってところの」
「音乃木坂?じゃああいつ、もうバスケやってねぇんだな。ザマァねぇな」
「おれらとしては万々歳だけどな。あいつのせいでバスケ部自体が冷てぇ目で見られたもんな」
「まぁ、結局はぜーんぶあいつのせいってみんなわかってくれたけどな」
、、、彼らは一体何の話をしているのか。言葉は理解出来てもとても受け入れられるものではなかった。
『音乃木坂』の『大輝』が『犯罪者』、、、?
頭の中でグルグルとているそれはいつまでも飛び回って一向に落ち着く様子もなく、私の思考は完全に妨げられて何も考えられなくなる。
「おい、お前ら」
こんな状況でも、思考を止めないでいられるのは、雄大だった。
「今の話、詳しく聞かせろ」
*☼*―――――*☼*―――――(雄大→大輝)
オレがバスケットボールを始めたのは小学校3年の時だった。
動機はいかにもガキっぽくて、その時やってたドラマの主人公がバスケットの選手で、メチャクチャカッコよかったから、オレもあんな風になりたいって思ったのがきっかけ。
近くの公営体育館でやってるミニバスケットチームに入ってそっからずっとバスケットをやってきた。はじめはなんにもできなかったけど、チームに入る前からバスケのことをすげー考えてたオレは、すぐにこの球技が好きになった。
もっとうまくなりたい。
もっと遠くからシュートしたい。
もっと鮮やかにディフェンスを抜きたい。
そうやって練習するのが楽しくて、朝から晩まで一人で体育館に行く日もあった。
そんなことしてたら、小学校6年の時に地区選抜に選ばれた。ずっとやってきたことで認められたって思うと嬉しくて堪らなかったのは今でも覚えてる。
中学でも、もちろんバスケを続けた。小学校からずっとチームメートのやつもいたし、中学から始めたってやつもいた。オレ達は互いに教えあったり励ましたり、時には厳しい言葉をけたりもしたけど、チーム一丸って言葉通り一つになってバスケに打ち込んだ。オレは一年の後半からユニホームを貰えた。同学年の仲間達は羨ましがったけど、みんな祝福してくれた。その年の中体連でオレはベンチに座った。先輩の交代でコートに立ったオレは自分のできる限りを出し尽くす思いでプレーした。結果、オレ達は勝った。しかも、コーチがオレを次回からも使うと言ってくれた。
それから、オレはスタメンになった。その大会は優勝できなかったけれど、代わりにオレは地区選抜に選ばれた。
そうやってオレはずっとバスケに打ち込んできた。
気が付けば周りからは『歴代最高のフォワード』だ、なんていわれるようになった。正直やっぱりうれしかった。
だけど、あの事件があってから、全部が変わっていった。
*☼*―――――*☼*―――――(大輝→ことり)
ふぅ
みんなを見送ったお店の扉の前で一息つきます。
「みんな、楽しんでくれてよかったね!」
穂乃果ちゃんがすっかりなじんだメイド服姿で私の隣でニコニコします。
「うん、穂乃果ちゃんすっかりメイドさんになっちゃったね?」
「ほんとだよ~!海未ちゃんは、相変わらずみたいだけどね!」
「う、、、め、メイドとは、本来は屋敷の主人に仕えて家事をこなす使用人のことのはずです。ですから、洗い物でも立派なメイドです!」
「ふふふ、でも海未ちゃんのメイド服姿もとってもかわいいよ?」
「なっ!」
私の言葉に顔を真っ赤にして口をパクパクさせる海未ちゃん。照れてるけど、その様子もとってもかわいくて、私と穂乃果ちゃんはそんな海未ちゃんをクスクス笑ったら、海未ちゃんはそっぽを向いてしまいました。
いつもの三人で、いつもみたいに笑って。
ちっちゃいころから、こうやっていつも一緒で。
三人でいられることがとても幸せで。
三人でスクールアイドルを始めて。
そしてこれからもこの三人でいられれば、
私は、 満足だから。
、、、
、、、、、、
、、、、、、、、、
本当に?
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「うーんっ!やっと終わったぁー!」
穂乃果ちゃんがメイド服からいつもの制服に着替えて伸びをする。
「ううぅ、メイドさんって意外と大変、、、ずっと立ちっぱなしで足パンパン~」
「全くです。ことりはすごいですね」
「え?そ、そうかな?」
二人に褒められるて、ちょっとびっくりして、ちょっと嬉しい。
「あーあ、それにしても大輝くん、最後まで来なかったなぁ。せっかくだし三人おそろいのメイドさん姿見せて自慢したかったなぁ」
「大輝に自慢して、何になるというのですか。穂乃果」
「ん~?大輝くんがμ's辞めちゃう前に、なんていうか、記念に!みたいな?」
穂乃果ちゃんが何気なく発した言葉が、私にささる。
『犯罪者』
あの人たちは、大輝くんのことをそう呼んでいた。それがどいう意味なのか、私にはまだわからないけど、直感的に大輝くんがμ'sを辞めることと、それは関わっているような気がしているから。
「ファーストライブの時からずっと見守って来てくれたんだから、私たち三人で何かできればなって思ったんだけど」
「そうですね、μ'sが私たちだけで、まだ名前もなかった時からですからね」
穂乃果ちゃんと海未ちゃんが隣で話しているのを横でならんで、お店から出た階段を降りている私は、一人取り残されたような感覚でした。大輝くんのこと、二人に話すべきかな、、、
「ん?ことりちゃん、どうかした?」
少し先を歩いていた穂乃果ちゃんが振り返る。
「え?なんでもないよ?」
私はとっさに笑顔を作ってごまかした。
「、、、そっか。ねぇことりちゃん、詩はできそう?」
「うん、おかげ様で!」
穂乃果ちゃんのおかげで、私はこの街にあった歌を書くことができると思えるようになった。
「そっか、よかった!」
穂乃果ちゃんは軽い足取りで階段を駆け下りていく。
「あれ?なんでみんなまだいるの?」
階段を降りきって外に出た穂乃果ちゃんの声が、まだ階段の途中の私と海未ちゃんの下に届く。穂乃果ちゃんを追って外に出ると。帰ったはずのみんながいて
「穂乃果、ことり、海未」
にこ先輩がその真ん中で、代表するように言った。
「大輝はやめさせないわ。取り返すわよ」