(絵里)
「取り返すわよ」
「、、、へ?」
にこの言葉に穂乃果はほうけた返事をした。
「にこ、それじゃあざっくりすぎるだろ。しかも、取り返すって何から取り返すんだよ、、、」
「う、うるさーい!うまい言葉が思いつかなかっただけよ!だいたいあってるでしよ!」
呆れた風に言う雄大に、にこは手を握って言い返す。が、雄大は相手にしていない様子で、さらににこが怒り始める。
「あの、これば一体どういう?大輝は家庭の事情でアイドル研究部をやめるのでは?」
にこが中途半端なところで話題を止めてしまっていたので、二年生の三人はポカンとした顔で居た。
「ああ、海未、えっと、、、大輝のことなんだけど、長くなるから場所を移してからにしましょう?」
私はみんなを促すと歩き始めた。
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「ここなら、いいかしら」
私たちがやってきたのは学校近くの公園。そういえば、私がμ 'sに入る前に海未と話したのもここだったわね。私たちは誰もいない公園のブランコのある1画を占領して各々適当な場所に腰を下ろしたり、立ったりした。
「大輝のことを話すのにわざわざ場所を変える必要なんてあったのですか?」
海未らしい、もっともなことを言うわね。
「ま、場所を変えたってことはそういう話をこれからするってことなんだがな」
「ちょっと、雄大先輩!」
いきなり本題に入ろうとする雄大を圭が諫めるが、
「いいだろ?圭。どうせ話すんだから」
「そうですけど、、、」
「いいよ、圭くん」
穂乃果が真っ直ぐに雄大を見る。
「雄大先輩、教えて下さい。大輝くんのこと」
「ああ、と言っても、俺達もさっき初めて聞いたことだし、正確かどうかわからないことだがな、、、」
雄大が話し始めた。
*☼*―――――*☼*―――――(絵里→大輝)
『マークオッケー!』
『ディ!ディ!』
『走れ!速攻!』
『ナイスシュー!
、、、、、大輝!、、、、、
はっと体を起こす。いつの間にか机に突っ伏して寝ていたみたいだった。
「大輝!ご飯できたよ!」
一階から母さんが呼ぶ声が聞こえてくる。立つと、変な体勢で寝ていたせいか、頭に軽く頭痛がある。手で頭をゴリゴリ掻きながら階下に降りていくと、
「、、、なんで兄貴がそこにいんだよ、、、」
「?ここはボクの定位置だけど?」
リビングのオレの席の隣、いつもなら空席になっているそこに眼鏡をかけたやせ形の、オレの兄がいた。
「定位置って、兄貴一人暮らしだろ!なんでうちで晩飯食ってんの!?」
「成人すると、たまにはおふくろの味ってもんが懐かしくなるもんなのだよ、弟よ。あ~みそ汁が染みる~」
歳に合わないジジくさいセリフとズズッという音とともにお椀を傾ける兄貴に、オレは軽く呆れた目線を投げかけながら席に着く。メニューは白米、みそ汁、肉じゃが(里芋入り、多め)サバの味噌煮(の缶詰)、にら玉、、、
「?どうした?腹すいてないのか?ボクが食べてやろうか?」
「、、、なんでもねぇよ、、、」
わざわざ頼んだのだろう、兄貴の好物だらけの晩飯にオレは箸を伸ばした。
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「はぁ~~~」
勉強でもするか、という気持ちになってから三十分。集中できなくなってきたオレはベッドの上で横になってぼんやり天井を見上げていた。
(あいつら、今日も屋上でちゃんと練習したんだろうな?
穂乃果はすぐさぼろうとするし、
海未は一人で頑張ろうとしすぎるところがあるし、
ことりは作詞のこともあるから二人の面倒を見切れないだろうし、、、)
コンコン
「大輝!ちょっといいか!?」
ドアの向こうから軽いノックオンと兄貴の声が、
「って、返事を聞く前にドアを開けんな」
「ん?何。なんかまずいことでもしてたの?マ〇ター、、」
「そういうことをサラッと言うな!してねーし!!」
、、、このクソ兄貴、成人してからその扱い方が余計に面倒くさくなってきたような気がするぜ、、、
「で?なんか用?」
「うんちょっとさ、、、学校でなんかあったか?」
スッ、と真剣に質問をしてきた兄貴の眼鏡の奥の細い目は鋭くなった。
「な、なんでだよ、、、」
少しの沈黙、やがて兄貴はオレの椅子に腰を掛けた。
「あのさ、ボクは一応だけど大輝が中学で何があったかは知っているつもりだし、バスケを辞めた後、理由は何であろうと勉強を頑張って音乃木坂に入ったことには何もいう事はないと思っているんだ。
だけどね、久しぶりに大輝の顔を見たらさ。なんていうかな、気の抜けた感じだったから。晩御飯の時もそうだったけど、何か他の事考えてたでしょ。それに今も」
、、、兄貴は普段ふざけていやがるくせに、観察眼が鋭い。確かに最近のオレはいっつも同じことを考えてる。
「、、、何かあるのならいつでもボクに相談していいからね。一応、兄なんだから」
兄貴はそれだけ言うと部屋を出て行った。
、、、相談、ね
まぁ、一応結論を自分の中で出したから、あとは時間が経てば解決するだろう。要は慣れの問題。
μ'sの事にはオレは関わらない方がいいから。
*☼*―――――*☼*―――――(大輝→ことり)
「中学時代の大輝にそんなことが、、、」
海未ちゃんが私の隣で驚きと大輝くんへの同情の表情を作って言う。穂乃果ちゃんもにたりよったりな顔だ。私は今、どんな顔をしているのかな?
私は二人とも違って、少し前から大輝がμ 'sを辞めるのは家庭の事情って言うのが嘘だって気付いていた。それが彼の中学時代に遡るのも、あの時ビルの階段で聞いた話からなんとなく分かっていた。それでも、やっぱりことの子細は知らなかったから、雄大先輩が話した大輝くんにあった事件について、驚くこともあったし、、、
「あー、それでな、ここからが重要なんだけどよ、、、一応、話を聞いた時にあの場にいたメンバーには聞いたが、改めて。
お前達は大輝がμ 'sのマネージャーを辞めるのを止めるか?」
雄大先輩の質問にハッとなる。そうだ、このままだと大輝くんがアイドル研究部をやめてしまうのだった。
「!止めるよ!そんな理由で、大輝くんがやめる必要なんてない!」
穂乃果ちゃんが声を張って言う。海未ちゃん同じ気持ちみたい。穂乃果ちゃんの隣で静かに頷いてるのが見えた。
「、、、ことり?お前はどうだ?」
雄大先輩が私に聞いた。みんなも私をじっと見ている。
「私は、、、一度、大輝くんと話をしたいです。きちんと」
「うん、そうだな」
雄大先輩はただ、そう言うだけだった。
「よーし!こうなったら、大輝奪還作戦、開始よー!」
にこ先輩がそういうと、ノリのいい一部のメンバーが、おーと、返した。
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「ことり」
今日はもう解散にしよう。となったので私が公園から出ようとすると、雄大先輩に呼び止められた。
「少し、話があるんだけど、いいか?」
私は頷いて、穂乃果ちゃん達に先に帰っててと伝えると雄大先輩と向き合った。
「なんですか?」
「その、さっきの大輝と話したいって言ってただろ?それなんだけど、多分大輝は研究部全員で話をしてもごまかす気がするんだ。だから、明日、ことりが一対一で、話してきてくれないか?」
「え?」
あまりに唐突な話に思わず口に出てしまいました。
「ダメか?」
「い、いえ、でもどうして私なんですか?それなら絵里先輩とか希先輩の方が上手な気が、、、」
「あー、確かにそう思うか。えっと、希も一度大輝の様子が変だって思って聞いてみたらしいんだ。だけど、上手いことごまかされたみたいで、、、だから、俺やにこは論外として、希や絵里が行ってもうやむやにされて終わる気がするんだ,。」
「そう、なんですか」
「ま、μ 'sの最初からいるメンバーの中で一番まともに見えるのがことりだってことの方が理由としては大きいんだけどさ。とにかく頼む」
「分かりました」
私は頷きました。
雄大先輩は送ってくれようとしたみたいでしたが、断って一人で帰路に立ちました。
一人で帰りながら、私はこれまでのことを思い出していました。一年生の時、隣のクラスの保健委員として初めてあった時の大輝くん。少しふざける時があっても、仕事には真面目に取り組んで、二人でいてもつまらなくないように話しかけてきてくれた。
進級して最初にあったのは始業式の時だったな。穂乃果ちゃんが倒れた時にそばにいて、保健室まで運んでくれたんだっけ。
それから、私たちがμ 'sを初めて、大輝くんがサポートするって言い出して。ファーストライブでは挫けそうになった私たちを励ましてくれたり、、、
、、、
、、、、、、
、、、、、、、、、
思い返すと、μ 'sができて以来いつも大輝くんが私たちのそばに居た。練習中も、みんなでどこかで遊ぶ時も、楽しい時も、辛い時も、、、
この短い期間だけで、μ 'sとの思い出がたくさん出来て、その中にはいつも大輝くんがいたから。
だから、これから先の思い出の中に大輝くんが居ないのは、とても寂しい。
家に着く頃には私の気持ちは固まっていた。穂乃果ちゃんや海未ちゃん、他のμ 'sのメンバーはきっとすぐにこの結論に達してしたのだろう。
やっぱり、大輝くんがいなくなるのはいや!
とっても簡単でシンプルな答え。だけど、何よりも固いこの思いを私は改めて確認した。