僕達の女神   作:Isaac 1,92

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彼の笑顔

(ことり)

 

 昨日はなんだか落ち着かなくて、布団に入ってから寝付くまでに珍しく時間がかかってしまいました。それに、朝起きてもなんだかすっきりしない感じ、、、やはり、大輝くんとお話するということが自分の中で少し不安なところがあるのかな?

 

 でも、やっぱり大輝くんにはマネージャーでいて欲しい。

 

 自分の気持ちを無くさないように確認してから、ベッドから出てリビングに向かいます。お母さんは、いつものことだけど、もう起きていて朝ごはんを用意してくれている。お母さん、学校のことで忙しいはずなのに、朝早くから毎日朝ごはんを作ってくれてる。そう考えると、なんだか申し訳なくなってきて、

 

「お母さん、あの、毎日ありがとう」

 

「ん?突然どうしたの?」

 

「ううん!何でもない。言いたくなったの。お母さん毎日ありがとう!」

 

「ふふ、変な子。どういたしまして!」

 

 朝ごはんを食べて、食器を流し台まで持っていく。それから、制服に着替えてたら、いつも通り髪を整えて、学校に行く。

 

 絶対大輝を辞めさせない!

 

 そう胸の中で強く思いながら。

 

 

 

 

 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆

 

 

 

 

 今日も大輝はいつも通りに学校に来た。だけど、なんとなく距離がある感じがして、私や穂乃果ちゃん、海未ちゃんが話しかけたら、一応返事は帰ってくるけど大輝くんから話題が振られることはなかった。

 

 そうしているうちに放課後になった。

 

「大輝くん」

 

「ん?ことり、どうした?」

 

「あの、今日は練習にくる?」

 

「ん、あー、今日はちょっと用事がな、、、」

 

「それって、大輝くんがμ 'sのマネージャーを辞めるのと同じ家庭の事情?」

 

「ん、まぁ、そうだ。悪いな、皆にもそう言っといてくれないか?」

 

「、、、」

 

「ことり?」

 

「、、、嫌」

 

「は?」

 

「大輝くん、もう嘘を吐くのはやめて」

 

「、、、」

 

「みんな昨日聞いたの。大輝くんがμ 'sのマネージャーを辞めるの本当の理由。大輝くん、私たちのためにマネージャーをやめようとしてるんでしょ?」

 

「、、、オレは誰にもそんなこと言ったことは無いんだけどな」

 

「大輝くんのことを『犯罪者』って言ってる人たちが、私がアルバイトしてる喫茶店に来たの。それで、大輝に中学校で何があったのか聞いたの」

 

「それで?なんで、そいつらの話とオレがμ 'sのマネージャーを辞めることがつながるの?」

 

 大輝が珍しくイライラした声になってきている。それでも私はさらに踏み込んだ。

 

「大輝くんのことを様子がおかしいってみんなが思ってた。でも、家庭の事情っていうから踏み込めなかったけど、違うんだよね?あの日、アキバの街であの人たちと合って、それで、自分の中学時代にあったことを思い出して、それと同じことがμ 'sにも起こるんじゃないかって、それでなるべくμ 'sと関わらないようにしようと思った」

 

「、、、」

 

「あの、大輝くん?」

 

 急に大輝くんが黙り込んでしまった。

 

「、、、」

 

「、、、」

 

「、、、ことり」

 

 たっぷり間を開けて大輝くんが口を開いた。

 

「あいつらからオレのことをなんて聞いた?」

 

 

 

 

 

 

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「ああ、と言っても、俺達もさっき初めて聞いたことだし、正確かどうかわからないことだがな、

 

 大輝が、中学時代にバスケをやってて地区先発選ばれるくらいうまかったってのはみんな知ってるよな?」

 

 夕暮れの公園で、雄大先輩の言葉に私、穂乃果ちゃん、海未ちゃんが頷く。

 

「よし、それでしばらく大輝は校内でも校外でも、ちょっとした有名人だったらしい。それだけ上手かったんだろうな。一年の頃から目立っていたらしい。

 

 けど、目立つって事はそれだけ他人から陰口を叩かれやすい立場でもあるってことだし、実際そういう事があった。はじめのうちは陰口程度で済んでいたが、二年になってそれがエスカレートして来た。

 

 SNSが発達した今、いろんなところで大輝のあることない事を言い出す奴らが出てきた。

 

 しばらくはただの陰口の延長だったが、大きな大会の直前にある写真が投稿された。これは見てもらった方が早いな」

 

 雄大先輩はそう言って打ち切ると自分のスマホを操作してある画面を見せてきた。

 それは有名SNSの誰かのページで、そこには制服姿の大輝くんが、どこかのコンビニの商品棚の前で商品を手に取るすがたと、もう1枚、同じ場所で自分のカバンの中身を確認しているような仕草の写真があった。そして、その下のコメント欄にこんなコメントが書かれていた。

 

『地区選抜のバスケ男子の万引き発見したんだけど(笑)』

 

「っ!何これ!?」

 

 穂乃果ちゃんが驚いて手で口を塞いだのを見て、雄大先輩がスマホの画面を切り替えて、自分のポケットにしまった。

 

「この投稿で、大輝にが万引きの疑いがかかった。学校に警察が来たこともあったらしい。そんなことになったら今まで大輝のことを知らなかった奴らも野次馬感覚で探りを入れ出す。あっという間に大輝は万引き犯っとして校内に噂が広まった。

 

 警察が動いたとなればバスケ部の大会出場も取り下げになった、事実関係がはっきりする前に顧問が自主的に辞退したそうだ。

 その事件をきっかけに、大輝はバスケを辞めてらしい。学校では孤立して、誰も大輝と関わらなくなったらしい。

 

 関わったのは大輝のチームメイトだったヤツらの一部が大輝に嫌味を言ってイジメていた短い期間だけのことみたいだ。イジメは大輝が無反応を決め込んでいたからすぐに収まったらしい」

 

 雄大先輩がそこまで話し終えて一息ついた。

 

「俺達が聞いた話はこんな感じだ。あってるよな、絵里」

 

 雄大先輩は隣に厳しい顔をして立っていた絵里先輩に確認をとる。

 

「ええ」

 

 短く、絵里先輩は言った。その顔には、絵里先輩がμ 'sに入る以前に見せていたものよりも厳しい、怒りの篭った表情があった。

 

 

 

 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆

 

 

 

 

「そっか」

 

 私が聞いたことを話していると、大輝くんは突然そう言った。

 

「、、、大輝くん?」

 

「うん、その話は本当のこと」

 

「大輝くん、、、」

 

「オレは中学の時に万引き犯で、警察も学校まで来て事情聴取とさやったよ。それで小学校からやってきたからバスケも台無し。そんなやつ、これから廃校をどうにかしようとしているμ 'sにはいない方がいいだろ?」

 

「、、、」

 

 私が黙っていると、大輝くんは軽く笑った。

 

「いいんだよ、むしろ、今まで一緒にやってこれて楽しかったからその分でオレは満足。μ 'sに変な噂が立つと音乃木坂まで危うくなるんだから、オレみたいに後暗いことがあるやつは手を引くべきなんだよ」

 

 大輝くんはそう言うと歩き出した。

 

「じゃあな」

 

 大輝くんが私の横を通り過ぎる。

 

「、、、待って!」

 

 手に自然と力がこもる。

 

 大輝くんが足を止める。

 

「まだ、話は終わってない!」

 

 私か振り向くと大輝くんは、笑ってこちらを見ていた。

 

「それは、その万引き事件が事実無根のでっち上げだったってことか?」

 

 これから話そうとしていた内容を的中させられて私は動揺する。

 

「その話、雄大先輩がしたんだろ?あの人なら、写真に写りこんだデジタル時計の秒数までしっかり見てるだろうよ」

 

 大輝くんの言う通りだった。大輝くんの噂の原因になった2枚の写真。この2枚がさっき言った通りの順番ならば確かに、大輝くんが万引きしたように見えただろう。だけど、実際は逆。大輝くんが先にカバンの中から財布を取り出して自分の所持金を確認した後で、商品を手に取った。よって大輝は万引き犯なんかじゃない。

 

 そう言って大輝くんを説得しようとしたのに。

 

「警察がそんなことを見落とす分けないだろ?でも、オレが無実だって話は万引きした話よりも広まらなかった。結局、悪い噂が一人歩きしてそのまま定着したってことだよ」

 

 大輝くんが肩を竦めてながら言う。

 

「そんな、、、」

 

 私が話せたのは、それだけだった。

 

「悪い噂ってのは一度広まるとなかなか直せないんだ。だから、μ 'sにはそういうと、思いをして欲しく無いんだよ」

 

 大輝くんが私の目をじっと見つめて、

 

「今までありがとうな。ことり。

 

 オレが辞めてもしっかりがんばれよ?」

 

 ニッと歯を見せて笑った。

 

「それじゃあな」

 

 大輝くんが今度こそ、歩いて行ってしまう。

 

 私はその場から動くことができなかった。

 

 彼の悲しいほどの優しさに触れて、私は一人、泣いていた。

 

 

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