この屋敷の敷地内に入ってから、何かに呼ばれている気がした。
誘われている場所はだいたい分かっていた。
その場所に向かうに連れて木々が少なくなっていた。
何となく分かっていた。
この先に居るのがどんな奴で、どんな力を持っている者なのかは。
『死』に誘われてる気がした。
気を緩めると、死のうとするかもしれない。
ふと、良いことを思い付いた。
左目にだけ狂気を宿す。
左目だけが真っ赤になった。
すると、感情が安らぎ『死』にいつて考えなくなった。
そんなことをしている内に、目的の場所にたどり着く。
目の前には巨木が一つ、妖気を放ちながら佇んでいた。
触れれば、どういった樹なのか、何なのか分かる。
でも触れたら私がどうなるか分からない。
それでも私は近づき、触れ…
「その樹に触れぬ方が身のためだぞ、ミクラ殿」
…た。
「!?くっ!」
妖忌は私を引き剥がそうと近寄ったが、この樹が妖気を放ち、それを避けたため近づけなかった。
それに加え、私は近くに在った植物を操り妖忌を縛り付ける。
もうこれで身動きはとれない。
妖忌が動けなくなった事で、私はこの樹に集中した。
この樹の声を聴くために。
◇
ミクラ殿は何者なのだ?
西行妖に触れたにも関わらず正気を保てていた。
儂もこれでも強い方だが、西行妖は儂より強い。
ということはミクラ殿はそれ以上ということ。
それと、先程勝負したときにはなかった、あの赤い左目。
あの左目は西行妖と同じかそれ以上の物だ。
あれは見てはいけない、見ない方が身のためだ。
ああ、恐ろしい。
……動けない。
◇
(……ナニモノダ?)
意志疎通は出来るみたい。
(何だっていいじゃん)
(ヒダリ目ガオソロシイ、カクセ。ワタシヲ、ソノ目デミルナ!)
狂気が恐ろしいみたいだ。
それでも閉じない。
(これを開いていないと、アンタ暴れそうだから断る)
(ナラバハナレロ。シカシ、オマエに興味ガワイタ)
ふーん。
(なら、誰も居ないときにでも話すよ。アンタとね)
紫が此方に来るのが分かった。
この樹も、それに気づいたようで私との話を後回しにしたようだった。
「あら、妖忌ったらこんなにされて」と言いながら拘束を解く。
「うふふ、この樹に興味が沸いたのかしら。ミクラ?」
そう言いながら、妖力の弾を翔ばしてくる。
私は左目でそれを全て消し去る。
「どうだろうね。私の物にしたいとは思ったかな」
紫はそれに驚きながらも撃ち続けてくる。
左目だけじゃ、追い付かないので右目にも宿す。
これで両目に狂気が宿った。
その狂気を直に受けたのか、妖忌がふらつく。
「そうなのね。それでその目は何かしら」
それで撃ち続ける。
周りの植物が腐り、地面がひび割れ、塀が崩れ始めた。
「もう分かってるんでしょ、紫。いくら撃ってもこの力には敵わないってのが」
「そうね敵わないわ。ミクラ、貴女は何者?」
撃つのを止めた。
「私は私だ…よ…」
うっ!急に頭痛が…。
意識が…。
立っていられない。
やっぱり、狂気を表に出し続けたのがいけないかな。
駄目だ、意識が……遠の…く…。
◇
ドサッと突然ミクラが倒れた。
頭を抱え目を抑えたかと思ったら、一瞬だった。
周りの重い空気が晴れる。
紫は、注意しながら近づく。
完全に意識がないのに気づき、抱えて急いで何処かに向かっていった。
途中からの記憶が曖昧だが、ミクラ殿が恐ろしかったのだけは覚えている。
妖気では無いものを放っていた気がした。
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