東方白狐録√A【完結】   作:白狐さぐじ

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第三十五話「妖気では無い物」

この屋敷の敷地内に入ってから、何かに呼ばれている気がした。

誘われている場所はだいたい分かっていた。

その場所に向かうに連れて木々が少なくなっていた。

何となく分かっていた。

この先に居るのがどんな奴で、どんな力を持っている者なのかは。

『死』に誘われてる気がした。

気を緩めると、死のうとするかもしれない。

ふと、良いことを思い付いた。

左目にだけ狂気を宿す。

左目だけが真っ赤になった。

すると、感情が安らぎ『死』にいつて考えなくなった。

 

そんなことをしている内に、目的の場所にたどり着く。

目の前には巨木が一つ、妖気を放ちながら佇んでいた。

触れれば、どういった樹なのか、何なのか分かる。

でも触れたら私がどうなるか分からない。

それでも私は近づき、触れ…

 

「その樹に触れぬ方が身のためだぞ、ミクラ殿」

 

…た。

 

「!?くっ!」

 

妖忌は私を引き剥がそうと近寄ったが、この樹が妖気を放ち、それを避けたため近づけなかった。

それに加え、私は近くに在った植物を操り妖忌を縛り付ける。

もうこれで身動きはとれない。

妖忌が動けなくなった事で、私はこの樹に集中した。

この樹の声を聴くために。

 

 

ミクラ殿は何者なのだ?

西行妖に触れたにも関わらず正気を保てていた。

儂もこれでも強い方だが、西行妖は儂より強い。

ということはミクラ殿はそれ以上ということ。

それと、先程勝負したときにはなかった、あの赤い左目。

あの左目は西行妖と同じかそれ以上の物だ。

あれは見てはいけない、見ない方が身のためだ。

ああ、恐ろしい。

 

……動けない。

 

 

 

(……ナニモノダ?)

意志疎通は出来るみたい。

(何だっていいじゃん)

(ヒダリ目ガオソロシイ、カクセ。ワタシヲ、ソノ目デミルナ!)

狂気が恐ろしいみたいだ。

それでも閉じない。

(これを開いていないと、アンタ暴れそうだから断る)

(ナラバハナレロ。シカシ、オマエに興味ガワイタ)

ふーん。

(なら、誰も居ないときにでも話すよ。アンタとね)

紫が此方に来るのが分かった。

この樹も、それに気づいたようで私との話を後回しにしたようだった。

 

 

「あら、妖忌ったらこんなにされて」と言いながら拘束を解く。

「うふふ、この樹に興味が沸いたのかしら。ミクラ?」

 

そう言いながら、妖力の弾を翔ばしてくる。

私は左目でそれを全て消し去る。

 

「どうだろうね。私の物にしたいとは思ったかな」

 

紫はそれに驚きながらも撃ち続けてくる。

左目だけじゃ、追い付かないので右目にも宿す。

これで両目に狂気が宿った。

その狂気を直に受けたのか、妖忌がふらつく。

 

「そうなのね。それでその目は何かしら」

 

それで撃ち続ける。

周りの植物が腐り、地面がひび割れ、塀が崩れ始めた。

 

「もう分かってるんでしょ、紫。いくら撃ってもこの力には敵わないってのが」

 

「そうね敵わないわ。ミクラ、貴女は何者?」

 

撃つのを止めた。

 

「私は私だ…よ…」

 

うっ!急に頭痛が…。

意識が…。

立っていられない。

やっぱり、狂気を表に出し続けたのがいけないかな。

駄目だ、意識が……遠の…く…。

 

 

 

ドサッと突然ミクラが倒れた。

頭を抱え目を抑えたかと思ったら、一瞬だった。

周りの重い空気が晴れる。

紫は、注意しながら近づく。

完全に意識がないのに気づき、抱えて急いで何処かに向かっていった。

 

途中からの記憶が曖昧だが、ミクラ殿が恐ろしかったのだけは覚えている。

妖気では無いものを放っていた気がした。

 




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