「んー?ここ…何処?」
廻りは木の壁、扉が一つも無く、窓も無い。
寝ていた布団をたたみ、端に片付ける。
部屋は結界で閉じられている。
無理矢理壊せば此処から出られるけれど、外がどうなっているのか分からない。
もしかしたら、外も破壊してしまうかもしれない。
「あらあら、大人しいのね」
突然声が聞こえた。
この声は…知っている。
「この声は……紫?」
「貴女は………何処まで知ってるのかしら」
……。
「何の事?」
「知らばくれてもダメよ。貴女、幽々子の寿命が何れくらいか知っているわね?」
それなら、幽々子に会った時点で分かった。
会った瞬間、幽々子の未来が見えたから。
「私が倒れて2日位なら、あと3日かな。紫が幽々子をその後どうするのかは知ってるし、西行妖をどうするかもしってるよ?」
「知っているなら貴女には大人しくしてもらうわよ」
そう来たか。
「勿論良いよ」
「あら、いさぎが良いわね。まあ簡単に言うと、貴女の身体ごとこの部屋に縛り付ける結界よ。無理矢理壊せば私に伝わる」
伝わるのは厄介。
「……うん」
でも、此処で出来ることはあるのだから…。
「なら、私は行くわ」
紫の声が出ていたスキマが閉じる。
空間を開き、
火月に事を伝え、行動してもらった。
後は……
◇──────────────────◇
軒先で庭を眺める少女が独り。
庭に生えている木々は弱々しく、幾つかは枯れ落ち葉が舞っていた。
目には正気が感じられない。
「もう、生きる気力が無い」そんな風に感じられる。
突然風が吹き、落ち葉が舞う。
舞った落ち葉が纏まり、燃えた!
だが、燃えたのは一瞬だけ。
次の瞬間には、尾が4本で耳が生えている少女が一人立っていた。
「貴女は……誰?」
ミクラとは全く違う。
耳と尾が焔のようにユラユラと燃えている。
「貴女は…ミクラ?」
火の粉が飛ぶ。
「…違うけど、違わない」
首を振り頷く。
「どういう……事…かしら」
「貴女は、幽々子は生きたい?それとも死にたい?」
首を傾げ聞く。
「っ!……分からない。生きたいのか、死にたいのか」
驚き悩み悲しくなる。
「生き続けたい?死んで生きたい?」
それでも聞く。
「…………………死んでも生きていけるなら、それが良いわ」
「でも、それは罰がある」
そう、天罰がある。
「罰って?」
「…今まで生きた記憶を失う」
「それは……
悩み悩みで、答えを出すか出さぬか。
それは本人の出すものであり、出したならば、それを叶えるのが我が使命なり。
哀しき使命なり。
◆──────────────────◆
此処は西行寺家の庭。
「紫殿、質問とは?」
此処には紫と妖忌だけ。
「あの目の話よ」
「ミクラ殿の目ですか?」
「そうよ、あの目について何か知っているのでしょう?」
「ええ、まあ、少しなら」
「なら、話しなさい」
「我が一族には、古くから教えられている事がございます。
古くからの言い伝えで『夜に口笛を吹いてはいけない』という物があります。これは、『善からぬ者を惹き付け喚んでしまうから』と言われています。
それと同じような物で『紅い目は、相手も自らにも不幸が振りかかる』というものがありました」
「何故……過去形なのかしら?」
「我ら一族が滅ぼしたと言われていたからです。滅ぼした後、一族はその紅い目の生まれ方、原理を研究していました。
その結果、紅い目は、負の感情から生まれる事が判りました。
『怒り・憎しみ・妬み』そんな感情がある一定の条件が揃うと目が赤くなり、最悪自我を失い暴れ、土地一つ滅ぼすことになります」
「…………」
「ミクラ殿は、その『怒り・憎しみ・妬み』が一切感じられませんでした。しかし、『羨まれる事・褒められる事・称えられる事』を毛嫌っている節がありました。
誰もが嬉しくなる事を嫌い、自慢をしない。それがミクラなのです。
先程、紅い目と言いましたが紅い目の正式名称は『狂気』。狂った気です」
「狂…気」
「ミクラ殿は、まだ自我があります。ミクラ殿の能力が何なのか知りませんが、その能力を使って抑えているのだと考えています」
「………そうだったのね。何故話さないのかしら、そんな大変なことを…」
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