東方白狐録√A【完結】   作:白狐さぐじ

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変章「その時までは」
天ツ狐の休憩


 

 

 

 

 

 

 此処の場所は伏見。

 目の前には大きな社。

 今は冬で参拝客の人は居なかった。

 

 此処には特別な巫女が居た。

 とある神に命じられ認められた巫女。

 その巫女の一族を「(あま)の巫女」という。

 天の巫女の由来は、幾つかの説がある。

『天を詠み今後を伝える役割の巫女』

『天神様の巫女をしていた』

『天変地異を鎮めた巫女』

 そんな中で最も理由が通るのは『天狗(あまつきつね)の巫女』であろう。

 「アマツキツネ」は天ツ狐と書く場合もあり、そのままテングと読む事もある。

 また、「アマツキツネ」とは流れ星の事で、天変地異の前触れを知らせるモノでもある。

 勿論、天ツ狐と書く通り天狐を指している。

 天狐(てんこ)とは、神獣の一種で稲荷神のお使いとなる。

 狐が1000年生きると天狐になれる。

 天狐に+2000歳生きると、神通力を自在に操れる空狐(くうこ)になる。

 此処まで生きている妖狐は少なく、殆どが神に成っている。

 そんなにも少ない神の中でも大神に成ったもモノも数える程しか居ない。

 いや、一人だけかもしれない。

 話が少しズレたが、そんなことから天の巫女の由来は全て合っているとも言える。

 そして、こんなに思考が長くなったのだが、今からその巫女と神の眷属諸々に会いに行く途中。

 

「紫様、本当に居るのでしょうか?全く気配が感じられませんが……」

 

「ええ、居るわ。気配を上手く消しているだけよ」

 

 最近、ミクラが活動してきた後が消え始めている。

 そもそも存在すら歴史から、記憶から消されている者もいる。

 切り裂きジャックは(ことわり)がどうとか言っていたが、ミクラの何と関係があるのか分からなかった。

 思い当たる節は未だ不明のミクラの能力。

 私が知っているのは『自然を司る能力』のみ。

 あと、彼女(ミクラ)は『視る』事に関する能力を持っていると今のところは考えている。

 そもそも、一人が複数の能力を持つことは珍しく、3つ以上は聞いたことも見たこともない。

 今の時点でミクラは複数の能力を持っていることは確定と出来る。

 

 それと、ミクラの生きてきた歴史が良く分からない。

 ミクラは200万歳と言っていたが、『偉大なる総意』は6000億歳とも言っていた。

 そもそも『偉大なる総意』とは何なんだろうか?

 「次元の意志の集合体」と言っていた。

 

 

 そこら辺も聞きたいが、当の本人は此処に居ないらしい。

 居たのは本題の巫女だった。

 

「どなたでしょうか?」

 

 巫女としては普通の格好をした少女だが、それには似合わない太刀を持っている。

 たぶんなんだけど、それは神器に近い物。

 

「これは失礼、私は八雲 紫と申します。もしや貴女は天の巫女では?」

 

「紫殿ですか……あの御方から聞いた通りの方ですね。

 はい、紫さんがおっしゃる通り、私が今代の『天の巫女』です。

 隣の方は紫さんの式神の………籃さんですよね?」

 

 あの御方はミクラの事だろう。

 しかも、籃について幾つか聞いていたらしい。

 

「ああ、そうだ。何故それをお主が知っている」

 

「あの御方が仰っていましたから、そうかと。

 そうそう、紫さんは私と、イズナさん達に用が有るんですよね」

 

 私の行おうとしていた事が全て筒抜けだった。

 さすがというか何というか。

 

「それは全てミクラの言ったことかしら?」

 

「その事は後で話します。

 どうぞ此方に…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 招かれて入った屋敷には、イズナが居た。

 というか待っていた。

 

「お久し振りですね紫さん」

 

「イズナを本当に久しぶりに見たわ。死清を見ないのだけど、どうしたのかしら?」

 

 気配は感じるのだけど、何処に居るのか分からない。

 

「一応、居ますよ。ただ、眷属として整理がついていないみたいで…」

 

 やはり、眷属であった仲間が主に喰われたのは、辛いのでしょね。

 

「そう…。天の巫「朱美(すみ)でお願いします。あ、さん付けはいいです」…朱美は、ミクラが今現在何処に居るのか知っているのよね?」

 

 私が此処に来た目的の一つはミクラの居場所を探るため。

 

「知っていますよ」

 

「教えてもらうことは…」

 

「出来ません。ただ、伝言のような事が…。『紫は今すべき事を全うすること』と仰っていましたが、私にはなんの事かさっぱりで…」

 

 勿論、教えてくれる事は無いことは分かっていた。

 今すべき事……か。

 「探すな!」という事ね。

 

「ミクラらしいわね」

 

「イズナさんと死清さんにも伝言が。

 イズナさんには『繋がりは途絶えるけど、死なないから』と。

 此処には居ませんが死清さんには『地獄にツテがあるから相談しな』と言っていたました」

 

「御母様が……そうですか」

 

 イズナには、イズナなりに理解したようだ。

 

「ミクラの謎が一つ増えたわね」

 

 まさか、地獄にまで繋がりが合ったとは。

 ツテっていうのが引っ掛かるのだけど、今は違うことをしなければならない。

 

「紫さんが本題を話すようなので、私は此処で少し御いとましますね」

 

 朱美はそう言って立ち上がると、障子に向かい開ける。

 開けた先には死清が居て、入れ替わるように入ってきた。

 

「紫、ゴメン」

 

 死清はそう言って座った。

 

「さて、本題を話すとしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それで今、紫はイズナ達と話してるの?』

 

 その世界の時間は、外とは違う動きをしていた。

 

「はい、貴女には全く気付いていない様子でしたよ」

 

 朱美は目の前に居る不思議な存在にそう話した。

 

『そりゃあそうでしょ。今の私は霊体に近い存在だからね』

 

 不思議な存在の目は銀のような色をしていた。

 

「………会っていかなくて良かったんですか?」

 

『まあ、会って話をしたかったさ。今の私じゃアレだからね。

 一部を除いて記憶と歴史を改竄と操作したから、私が何処に居てどんな状態なのか知られる事は無いと思うけど。

 紫は今の状態を知ったら朱美を殺しちゃうから……ね』

 

「私だって辛かったんですよ。

 私達が信仰する神を………封ずるのは…」

 

『でもアレは一時的な封印だから。

 今の私はこうしないと駄目だから、しょうがなかったんだよ。

 それに妬小神が(ほんたい)を守ってくれてるし、そもそもあの空間に入れるのは、私と同等かそれ以上の存在しかいないから大丈夫』

 

「…………」

 

 朱美は泣いていた。

 自分が信仰する神が壊れかけて、それでも気にかけてくれることに。

 

『私はEternally cursed presence(『永遠に呪われた存在』)であって、朱美はそうじゃない。

 私は私のすべき事をしないといけないの。

 私は審判する者だから、見極めなきゃいけない。

 

 ほら、朱美は戻りな。

 イズナ達が待ってるよ』

 

「…分かりました」

 

 朱美は涙を拭き、扉を開けて去っていった。

 

『イズナは地底に、死清は地獄、佐吉は骨董屋で、妬小神は見守り。

 私が居なくてもやっていけるだろう。

 

 ふふふ、っく………ゴメンね、喰ったのは私の意思だよ。

 狂気にのまれたのを抑えるのに必要だったんだ。

 (つみ)を喰って鬼になった。(いにしえ)を喰って翼が生えた。神威(かむい)を喰って聞く力を得た。

 他の知らぬモノ達も喰ってしまった。

 また今度謝らないと。

 

 ああ、そろそろ…寝な…いと、いけ…ないな。

 次に目ガ覚めルのは、龍ガアラワレル年だっタ気がスル。

 眠い、ネムイ、ネ…ム……イ』

 

 その場所には何も居なかった。

 いや、そもそも此処は洞窟。

 住むモノも、立ち寄るモノも居ない場所

 

 

 

 

 

 





一時の休憩で御座いました。






                 20121221
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