ペンギンのおもちゃ箱   作:ペンギン3

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血染花はもう咲かない 3話

 ボロボロになった家の隙間から朝日が入り込む。

 強い光に目が拒絶反応を起こすがそれを押さえ込み体ごと起き上がる。

 同じ布団には咲耶が眠っている。

 よく眠っている、と思う。

 昨晩はあれから色々あったが為、咲耶はもうしばらく眠り続けるだろう。

 

 刑士郎自身は大した疲労もなく、肩を鳴らしつつ床を離れる。

 水をひと浴びするために井戸へ向かおうとする。

 だが、ある物に気付き舌打ちを一つして無造作にそれを掴み取る。

 

 手紙である、何時ぞやの夜行が認めたものと同一の紙を使用している。

 この前は警告文だったが今回は何が来たものか。

 気が滅入りながら中身を読むとそこには、

 

 秀真周辺には近づくな、行くなら北に沿って穢土に近い土地へ等のことが理由や対抗策と一緒にに書いてある。

 あと、手紙は一つではなくもう一枚あるなどと書いてあった。

 存外世話焼きな夜行に気色の悪いものを覚えつつ、もう一枚の紙を開くと先の紙の二倍程の長さがあり、そこには混沌とした惨状が広がっていた。

 

 覇吐や竜胆、その他東征の仲間や死んだ連中が一言ずつ手紙に言伝が書いてある。

 中には天魔どもの字が混じってさえいる。

 内容は分からないが不快な感じがするので見なかったことにして手紙を懐へしまう。

 

 

 

 だが、気分は悪くなかった。

 体の底から力が湧いてくるような錯覚さえ覚える。

 あの手紙からその活力をもらったと考えると癪だが。

 それを誤魔化すように近くの山へ狩りに出かける。

 体を動かしてあまり考えないようにしようとの魂胆であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで熊を狩ってくるのですから、さすがは兄様と言ったところでしょうか」

 

 そう言って山から戻った刑士郎が解体した熊の肉を調理しながら、賞賛と呆れが8:2の割合で咲耶は感嘆しながらも溜息をついた。

 

「兄様は病み上がりなのです。

 あまり無茶をなさらないでください。

 兄様の身に何かあったのでしたら私は悔やみきれません」

 

「っは、この程度の畜生には遅れは取らねえよ。

 咲耶、お前が生きているうちは俺が助ける。

 それに……」

 

 それから刑士郎は続きの言葉を紡がなかったが咲耶には何が言いたいのかが分かっていた。

 

「はい、兄様に守っていただきます。

 私も兄様をお助けいたします、ですね」

 

 そういってほっこりと笑う咲耶に一つ頷き、刑士郎は今後の方針を確認し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大欲界天狗道の発動により世界中で血みどろの殺し合いが起きた。

 大和の国は特異点があったからこそ多少はマシではあったが、それでもあの見るにも耐えない状況である。

 

 あの手紙には世界と大和では天狗道の発動に時間差があったと書いてある。

 おそらく穢土に近ければ近いほど影響からは守られるとも。

 だからこそ夜行も穢土に近い土地に行けと書いたのであろう。

 

 もう一つ好条件といえば秀真から遠く離れているということだろう。

 忌々しいことに、貼り出された手配状は解除されてなどいない。

 

 つまり俺たちは未だに謀反人なのだ。

 だからこそ影響の殆どない穢土周辺なのだろう。

 

 因みに手配書については夜行と龍水が何とかすると言っていた。

 大和の国の責任者は軒並みくたばったから舵を取る奴が必要になる。

 そこに短期間の間、あいつら変態二人がこの国を立て直すのだと。

 御門の家を前面に押し出しつつ政権を握り、合法的に手配書消すそうだ。

 

 幸いなことに傀儡だった帝は一人玉座に君臨して、私は神だとか阿呆なことをほざいていただけで生きていたそうだ。

 元から頂点を極めていたのが幸いしたとか。

 

 復興の暁には帝に権力を渡してサッサとずらかる事にするという計画。

 普通だったら出来るはずないが、誰も収集できない今だからこそ何とかできるとか。

 

 もう夜行は動いているらしく、毎日帝の夢に毎日のように訪れているらしい。

 毎日夜行の顔を見る羽目になる帝に同情しつつも早く洗脳されることを切に願っておく。

 

 まぁ、それまで逃げ切れば俺達の手配書は失せるらしい。

 この件に関してはは夜行達だから失敗はないだろう。

 

 後は出来るだけ早く、腹に子を抱えている咲耶が休める居場所を手に入れる必要がある。

 これは現地に行って確かめるしかない。

 後は復興にでも手を貸しつつそこに溶け込む、それくらいしかすることは無いだろう。

 

 

 

 

 

 面倒なことを色々考えていて少々頭が痛い。

 少し頭をほぐしつつ、目の前を見る。

 

 そこには熊肉を調理を終えた咲耶の姿があった。

 匂いや空腹に釣られて急に腹が空いてくる。

 腹が鳴り、早く肉を喰らいたい気分になってきた。

 

「ふふ、幸いなことに沢山お肉はありますから、是非とも召し上がってください」

 

「ああ」

 

 そう短く返事をし、早速肉に食らいつく。

 

「旨い」 

 

 久しぶりに感じた感覚であった。

 脂が舌で踊り、甘いようでしっかりとした肉の味がする。

 

 最近は味を楽しむ余裕が無かったので、久しぶりにまともな物を食ったという気持ちが湧き上がる。

 今、生きていると感じる。

 

 その様子を咲耶は嬉しそうに眺める。

 焼いただけといっても手間は相応に掛けているのだ。

 それを好きな男子がうまいと言いながら食すのは女子の本懐であった。

 

 

 

 これから環境や生活は色々変わるでしょうがこの風景だけはずっと続いて欲しいと切に願います。

 兄様と私、そしてお腹にいる赤ん坊、皆で釜を囲みとうございます。

 それを成すためにも兄様、贅沢は申しません。

 私と一緒に長生きしてください。

 

 ずっと離しません、兄様

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 咲耶のお料理教室

 

 

 

「こんにちは、凶月咲耶です。

 今日は私が兄様に手料理を振舞おうと思います。

 材料は血抜きした熊のお肉、兄様が取ってきてくださった物です。

 一日では食べきれないので幾つか保存食にしておきます。

 

 では、お料理開始です。

 さっそくお肉を焼きます。

 王道ですね、脂ののった熊のお肉を薄く切りそのまま焼きます。

 脂を取ってしまいますと噛み切れなくなってしまいますから。

 

 においがキツいので胡椒を振りかけて誤魔化します。

 ですが素の味を楽しみたくもありますので全部に振りかける訳ではありません。

 他にも味噌などを塗ったり、唐辛子をまぶしたりして味の種類を増やします。

 同じ味で飽きられたりされるのは嫌ですから。

 

 元々熊肉は仕込みに時間が掛けて料理するものですから今は焼く程度しかできないのが残念です。

 

 それからですが、焼いた熊肉だけでは寂しいので前に取って貯蔵してあった野草を持ってきます。

 庶民の味方、なずなです。

 これをご飯と一緒に炊きます。

 本当は七草すべてを揃えたかったのですが無いものはないので贅沢は言えません。

 

 炊けたのならお塩を軽くかけてます。

 あまりかけ過ぎますと本来の味を殺してしまうので気をつけてください。

 

 後は里芋が余っていますのでお塩をいれたお水で少しの間浸します。

 それが済んだらお鍋で煮ます。

 それが済んで少し煮えて来たらお酒やみりんお砂糖等を入れてまた煮詰めます。

 匂いがよく分かるようになったら今度は醤油を入れて蓋をします。

 お湯が沸騰して少なくなったらお水からお汁に変わったものを絡めて完成です。

 

 ひたすら煮詰めてばかりでしたがこの状況です、致し方がありません。

 

 ですが愛情はたっぷり入っているはずです。

 

 兄様、喜んでくださるでしょうか?」




本格的に意味不明だった話。
なんでしょうか、このお料理教室って……。
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