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僕は彼女の手を引きながら夏の歩道を走っていた。あたりはすでに夜の帳が落ち、大通りを行き来する車の数が少なくなっているように思えた。信号灯の黄色い光がチカチカと点滅している。
「ねぇっ、森野くん!どこに行くのっ!?」
その少女は息を切らしながらも必死に足を動かしていた。
「黙ってついてこいよ!それに僕のことは『氷帝アイスエンペラー』と呼べ!」
電灯の下を駆け抜ける時彼女の困ったような表情が照らされた。彼女の髪を横で束ねている彗星色のリボンがキラリと光った。
「あ、アイスエンペラーっ!わ、私もうっ・・・足が・・・」
ついに彼女は足を止めてしまった。苦しそうに息を吐く彼女の額には少しだけ汗が滲んでいる。
「しょうがないなあ・・。ほら・・・乗れ!」
「は、はい!」
僕は困り顔の彼女を無理やり背負うと、遠くに見えるイルミネーションが綺麗なピンク色を点灯しているセリオンタワーを目指して再び走り始めた。
いくら走っただろうか。踏切を通り、目的地である港に近ずくと何処か悲しげな古臭いベンチが姿を見せた。その横には今にも消えそうなほど弱い光を放っている電灯が佇んでいる。そしてその前方には日本海が広がり静かに白波を立てていた。
彼女をベンチに座らせると僕はなぜか自信満々に夜の帳が落ちた天を指差した。
「見るがいいっ!あの星達の輝きを!」
「星・・・?」
と彼女は首を傾げながら僕の腕を伝い、僕が指し示した夜空を見上げる。
そこには色々な彩りに飾られた幾千もの星々が儚げに輝いていた。まるで僕たちのことを歓迎しているようだ。
彼女は開いた口が塞がらないと言ったように「うわぁ・・・」と声を漏らしている。さっきの涙を流した顔が嘘のように消えていた。
僕はそれに安堵すると満足そうに腰に手を当てた。ふと彼女と目が合う。
「お前はあの星達のようになれ!これは約束じゃない!・・・僕の願いだっ!!」
「・・・・・うん!!」
その時確かに、夜空にひとつの彗星が流れたのだった。