けたたましく鳴り響くサイレン。
『緊急警報緊急警報、当鎮守府近海において深海棲艦出現。敵戦力は駆逐二隻、軽巡一隻、施設内にいる一般人及び非戦闘職員はただちに避難してください。繰り返します…』
突如として鳴り響いた警報は深海棲艦がこの近海に現れたことを知らせた。
「深海棲艦ってことはこれって危険なやつじゃないんですか!?
そもそも僕ってこのままなんですか!?」
「狼狽えるな!
それでも日本男児か!」
理不尽な長門総司令の一喝に気圧されて黙ってしまう。
日本男児ではあるけれど戦いとは無縁の生活を送ってきた身なのだから深海棲艦だと言われてしまえばそれは怯えるというものだ。
「大丈夫ですよ。仮にもここにいる子達は総司令のお膝元で育った子たちですから。」
そう簡単には沈みませんよと樋代少将は僕の縛を解きながら付け加えた。
「当たり前だ、私が手塩にかけた娘たちだそう簡単には負けはせん!
この際だ、貴様もついてこい。」
「そ…総司令!?」
さすがの少将殿も総司令の言った言葉に驚いたようだ。
それはそうだろう、僕がついて行くなんておかしな話だ…って
「僕もついていかなきゃならないんですか?」
どうしてと、ハテナマークが見えそうなほどに僕の頭の中にはハテナが浮かんでいた。
「一般人だが艤装に呼ばれたのは偶然ではなかろう。ならば貴様もついてくることに意味はあるぞ。貴様に価値が見出せれば雇うこともやぶさかではないぞ」
「総司令!
それはいくらなんでも無茶が過ぎます!」
理不尽ここに極まれりだ、樋代少将も彼女の突飛な発言に対して抗議を示した。
しかし、僕は聞き逃さなかった。
価値があるかもしれない…それはつまり僕にもなにがしかの力があるということか…。
「君も無理についてこなくていいんですよ、よくある事ですし」
早く避難してくださいと言わんばかりの不安満点の表情で樋代少将は僕に詰め寄った。
「いえ、僕にも何か出来る事があるというのならついていきます。何もできずにいるのはもう嫌なんです」
と樋代少将の勧めを断り、長門総司令の誘いを受けた。
もう嫌…か、何故だか前にもこんなことがあったような気持ちを感じてそう言ったが思い出せない。
そのほんの少しの違和感と寂寞に後ろ髪を引かれながら僕は彼女たちの後ろをついていった。
「艦隊総司令長門、ただいま現場に帰った。戦況はどうだ」
作戦司令室に入って一言、長門総司令は戦況の確認に入った。
司令室と言うからにはもっと大きい設備を期待していたが中は思ったよりも簡素で、通信設備のようなものとと作戦で使われているであろう机と黒板があっただけだった。
「現在、確認されている戦力は駆逐イ級二隻と軽巡ホ級が一隻、これらに対して我々は駆逐艦不知火と浦風、軽巡は夕張と由良合計四隻で迎撃に当たらせております。」
と長門総司令に少女が報告した。
「ご苦労だ大淀、引き続き戦況に変化があれば報告してくれ」
はい、と彼女は返事をして通信機に向き直った。
そして僕は期待を裏切られたような気持ちになっていた。
「思ったよりも簡素なんですね…もっとこう…」
大きいモノを期待していた分に落胆も大きかった。
「貴様が期待しているようなものでなくて悪かったな。」
長門総司令も不服だ、と言わんばかりに大きな嘆息をした。
「本当はもっと大きいモノもあるのですけれど…今は別作戦でかかりっきりですから…」
樋代少将も僕をと言うより長門総司令をなだめるように言葉を続けた。
「総司令!大変です」
今まで通信機とにらめっこしていた少女が突然こちらに向き直った。
「敵増援を確認!戦力は…」
言葉を途中で切り、青ざめた表情で彼女は押し黙ってしまった。
「どうした?敵戦力の報告をしろ」
そこに不穏な空気を感じ取ったのか長門総司令も樋代少将も…そして僕すらもその沈黙に囚われた。
「敵増援戦力…空母ヲ級一隻、戦艦ル級一隻…です。」
震え声で怯えながら少女は答えた。
そしてその時、僕の心臓も一際高く鼓動した。
コイ…
深イ海ノ底マデ…
我ノ名ヲ呼ベ…
力ヲ手二セヨ…
「呼ん…でる…?」
何かに呼ばれている、気のせいじゃなく確かに。
重みのある言葉に引き寄せられ僕はそれに引かれて歩き出した。
「ちょっと!どこへ行かれるんですか!?」
司令室を出ようと扉に手をかけた時、樋代少将から止められた。
「呼ばれているんです。何かに…
僕はいかなきゃならない。」
そういかなければならないんだ。
あの戦場に…
力を持ってしまったから。
僕を呼んでいるから…
僕には責任があるから。
「だから、行かせてください。」
僕はそう言って樋代少将に向き直った。
「どうしたの…その目は…」
驚愕と怯えの混じった表情になった隙に僕は彼女の手を振りほどいて廊下へと飛び出た。
半ば無意識の状態ではあるが自然と足は目的地へと向かって走り出していた。
「どうしてあの青年を行かせた!」
長門総司令は理解ができないと言った風で少将に詰め寄った。
「戦力はこれ以上つぎ込めないと言うのに…彼の逃亡まで重なるとは…」
強くこめかみを押さえて嘆息する長門総司令を他所に彼の目を見た…否見てしまった少将も混乱していた。
どうして彼が…先程までは普通の目だったのに…まさかあの反応はあの目に…。
どうしても納得いかない事だらけではあったが彼の目が"アイツら"と同じものであるのなら納得がいってしまう。
それじゃあ艤装に導かれたのも…
でもどうして彼があの目を…経歴的にも彼は普通の人間のはずなのに。
全ては彼が帰ってきてから問いただそう。
それで全ての謎が解けるはず。
そう自分に言い聞かせて少将はこの戦況を見守る事にした。
彼の目のことも彼が帰ってきてからでないと確信できないから。と自分に言い聞かせるように。
遅くなりました
ごめんなさい
完全不定期更新であることをお詫びします
8話くらいまでは書き上げていますがそこから先が停滞気味です
復活の目処が立ち次第また投稿します