やがて、スリチュアンのあらゆる機能が起動し、インダストリアから逃れることに気が向いて最低限のチェックしかできていなかった彼らは各々点検に取り掛かっていった。船内に慌ただしさが戻ってきた。
「居住ブロックの割り当てって終わってた?」
「いや、適当に好きなとこ入ってっていれたけど」
塔のある空間、大気生成循環室の上に操舵室があり、さらにその上に居住ブロックがある。
「俺たちまだ決めてなかったな」
そこにアベニールから通信が入った。
「船内は今無重力だけどどうする」
「どうするって?」
「重力を入れる?」
「重力も自由なのか!」フィリアスだ
「第一次DG災害の時代は重力発生装置でコロニーの重力を補っていたらしいからその技術だろう。今はまだいいよ」クロードはもう少し漂っていたかった。
「どういう仕組みなんでしょう?」副操縦のリムが聞いた。
宇宙空間で人工物に重力を発生させる場合、例えばスペースコロニーなどではコロニーそのものを回転させ、内側に発生した遠心力を重力の代わりとする。いわば疑似重力なのだが慣性が不十分であり、慣れない内は酔って仕方がない。一方、宇宙船内においてはマグネットのついた靴を履くなどするが、そもそもの重力を発生させていない。
この問いに対し、アベニールにしては珍しく多弁になった。
「この船では核に仕込まれた磁場発生装置と、外骨格装甲に仕込まれたエキゾチック・カーボンから発する素粒電子との相互作用で疑似的な重力磁場を作っている。人体、物体内のクォークが発する極極微小な電荷を捉え、核に向かって押さえつけ、引きつける力が発生する。磁場の強度によって重力も地球くらいだったり月くらいだったりできる。どうする?」
「じゃあとりあえず月くらいで」
メイには何の迷いもなかった。というよりただ単に面倒だった。
船内に微かに重力が戻ってきた。クロードはもう少しあってもいいと思ったが体を慣らすには手頃とも感じた。
スリチュアン、第一格納庫にガンダム、通称プレアデスがそこに鎮座している。その様を下から見上げる影がひとつ
レイだ
「3年前の…あなただったんでしょ…あなたがあのまま来てくれたら・・・あいつらを潰してくれてたら・・・
こんなこと言っても何にもならないけどさ」彼女は一人ため息をついた。
「あれ?」誰か来たようだ。
「君は、えーっと・・・」「ナユタ!」
「あぁナユタくん!クロードさんとメイさんの!」「う、うん・・・てかさ!こんなとこでなにしてんの?」
「えっ?あぁ・・・やっとこの人に会ったからね・・・」「知ってたの?」
「まぁね…何でもっと早く来なかったのって怒ってたんだ。ナユタくんは?」
「こいつを呼びに来たんだ!ちょっと手伝ってほしくて!」
「手伝い?」「うん!」ナユタはプレアデスを見あげ「ねぇ!ちょっと来てよ!」
プレアデスはナユタの呼びかけには答えず鎮座したままだった。
「中に入らないといけないんじゃないの?」
「!そうか」ナユタは床を蹴ってプレアデスの腹部のキャノピーに飛びついた。
「えーっと…これどうすんだろ?」
キャノピーの周りにこれというスイッチのようなものは無く、ただつるんとした装甲があるだけだった。
「んんんんんん」装甲とハッチの隙間に手を突っ込んでこじ開けようとしていると「うわあぁ!」
プレアデスが動き出した。「なんでぇ!?」
いつの間にやら格納庫にマオが流れ込んでいた。
「マオちゃん!?」
レイがマオを受け止めた時、プレアデスの目が蒼く光った。
「おーい!」
次こそナユタの声に反応したプレアデスだが、レイは『マオちゃんに反応している・・・・?』と感じていた。