ブラック★ロックシューター THE・GRAY WAR   作:イビルジョーカー

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いよいよタイトル(それ以外はまだ不明の段階)が明らかとなったトランスフォーマー第五作目……。

その名も『トランスフォーマー ラストナイト』!

トランスフォーマー大ファンの自分にとっては嬉しい限りです♪



今回は少しホワイト☆ロックシューターの過去も冒頭で明かされます。

では、どうぞ!






★ 後編 part1 ☆

 

 

 人の世界は歪んでいる。

 

 それを嫌と言うほど認識したのは、愛する父が死んだ時だった。

 

 私の父は人間だった。母は不慮の事故で意図せずして地球へと来訪し、そこで父と出会った。

 

 出会った頃の母は人間を嫌悪していた。異形の姿をした自分に対し人間がする事と言えば悪意と敵意の篭った罵声と非難…その繰り返しだった。だが父はそんな母に対し悪しき感情を抱く事は無く、むしろ人の姿をしていながら人ではない母に対し興味津々で好感と言った様

 

子だったらしい。父との出会いを境に母の中にある人間に対する嫌悪を薄れさせていった。 

 

 父のおかげで様々な人間と出会えた。色んなことを学べた。

 

 母はいつしか父を愛するようになり、同時に父も母を愛するようになった。

 

 やがて数年の年月を得て2人は仲睦ましい夫婦としての絆を育み、私達、2人の姉妹を生んだ。

 

 姉は『恒星』を意味する『ステラ』。

 

 妹の私は『新星』を意味する『ノーヴァ』。

 

 それぞれ星に因んだ名を与えられた私達は両親の愛を不自由なく受け、家族は常に一つだった。そう思えるほどにあの頃は幸せな日々だったと、今を思ってもしてもそうだと断言できる。誰がどう言おうともだ。

 

 母や私達姉妹にとって、一家の大黒柱たる父は色んなことを教えてくれた恩師の様な人でもあった。私は自らの父ほど誇らしい人間を知らない。私の中では彼こそが『人間』として定義するに相応しかった。

 

 常に誰かの身を案じ、誰かが何かによって困っているならば全力で受け止め、導き。自分の利よりも他を守り支えるという、まさしく人

 

間の持つ『美徳』を体現したような御人。

 

 そんな父には夢があった。

 

 ハートレスと人間が共に手を取り合い、歩み、より良き未来に溢れた世界を作り出すという夢が。

 

 ハートレスである母とその間に儲けた子宝たる私達…家族を本当に愛していたが故の貴き願い。

 

 そんな理想に燃える父が大好きだった。だから私やステラ、それに母は父の思いを見限る事無く支え続けた。

 

 だが、父の理想は父が信頼していた同胞たちによって叶わずに潰えた。  

 

 父は自分の抱く夢を成し遂げる為、自らが所属していた『とある大国』の上層部直轄の研究機関の支持を仰ぎ一大プロジェクトを打ち立て、その発案者にして責任者となった。上層部にハートレスとクシロロ世界の全貌、そして自分が掲げる思想目的を実直に、しかし巧みな話術で伝えた成果だった。

 

 これで夢に一歩近付くよ。

 

 ハートレスと人間が共に歩むのも、もう間近かな!

 

 そう言って、幼い私に明るい笑顔で何度も話してくれたことを今でも憶えている。

 

 プロジェクトは順調に進んでいた。その内容はハートレスの闘争主義に対抗する為の兵器開発と人とハートレスの間の両種族友好条約締結で、兵器開発に関しては当初父は否定的だったものの、闘争と破壊、そして略奪を掟と掲げる危険思想のハートレスの存在を考慮すれば『抑止力』としての必要性が浮上するのも止む得ずだった。

 

 母は事実上、クシロロ世界の頂点に位置する一大国家組織『クロワ』の最高地位『ブラック★王朝』の末裔だった。

 

 『賢者黒王タウロース・ケイロ』の娘にして、現クロワの最高統括者だった母の協力もあって人類代表として大国の上層部はクロワと同盟関係を結ぶ事に成功。

 

 この瞬間、父の貴き夢は大きな一歩を踏んだ筈だった。

 

 ところが大国には裏があった。

 

 正確に言えば、邪な思想を抱く上層部の一部が父が立案した兵器の数々を他国侵攻の為の道具に利用する腹積もりだった。そればかりか自分達こそが大国の主導権を担う最高権力者機関として君臨するという、そのような浅はかな下克上の野望さえ持っていた。

 

 この事を秘密裏に知った父は、母に打ち明けありとあらゆる様々な手段で兵器開発を妨害し破壊する事に成功。そしてクシロロや兵器の資料の全てを処分した。上層部のクーデーター派は父の所業を知り、当然の如く激昂。

 

 すぐさま私達家族を捕らえようと特殊戦闘部隊を派遣して住居を強襲。

 

 父は私と姉を対ハートレス用の銃弾から身を犠牲にして庇い……死んだ。  

 

 母はその顔を憤怒と悲哀に歪めながらも私達姉妹を抱えゲートを開き、こうして私達は地球を追われるような形でクシロロへと難を逃れた。

 

 母は泣いた。今までに無いほど複雑な、様々な情念が織り交ざった人間らしい表情で泣き叫んだ。

 

 姉も私も同じだった。

 

 そうして私の涙が枯れる頃に私は……『妾』は一つの誓いを自らに立てた。

 

 父を殺した人間、欲望に溺れ堕ちる所まで堕ち切った人間、他者を平気で蹴落としてまで優位性を得ようとする人間。

 

 これらは人にあらず、人の形を持ったモドキに過ぎない。

 

 ウジのように多く湧くヒトモドキのストックは真の人々を何処までも有害し、無残に喰い散らかし、その涙を啜ることで脅かしている。

 

 そんな賎しく汚らわしい存在は一匹残らず一掃しなければならない。

 

 そして父の果たせなかった夢を、理想を。人とハートレスが紡ぐ輝かしい未来を創造すると。世界を何処までも歪ませ害するしかないヒトモドキのストック共に未来など与えん。滅び以外の選択肢などない!

 

 我が前へ立ち塞ぐ者もまた同じ。例えそれがコアと血を分けた……実の姉だったとしても……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カタスロット・インフィス。

 

 ワールド・ヴィレッジが最深部にて屹立する大地にぽっかりと開いた超巨大な洞穴。

 

 その周囲にはハクトの軍事施設である四角い形状の白い建物がずらりと円陣を形成するように並び、カタスロット・インフィスを取り囲んでいた。しかもそれだけでなく、高い戦闘能力を有する大型の異獣ハートレスを筆頭にハクトの人型兵士が白を基調とし、肘から手首、膝から足首の左右に赤い塗装が施されているだけのシンプル且つ、スラッとしたシャープのあるパワードスーツを身に纏い、頭部に装着している西洋騎士のようなヘルメットに搭載されている横一線状の四角く赤いバイザーが鋭くも妖しい光を発していた。

 

 兵器の方もハクトの中で最高峰戦力に入る数々が陳列しており、異様な存在感を放っていた。

 

 そしてカタスロット・インフィスの最深部において『それ』はあった。

 

 『それ』は、まるで塔のように屹立し、周りには大小四角いボックス形状の機械群が塔のような物体を囲むような形で設置されており、更に太いケーブルのようなもので繋がっていた。

 

 これこそクシロロと他世界を繋ぐ空間の橋を生み出す空間位相装置…通称『ワールド・ヴィレッジ』。

 

 高さ100m。幅55mに及ぶ円柱の形状を成した物体には、四角いモニターのようなものが数多に渡り縦横と余さず全面的に並列するよう設置され、その隙間を赤いラインが迸るという風なデザインで造形されている。

 

「ワールド・ヴィレッジの稼働率はどの程度だ?」

 

「間もなく90%に到達し、このまま順調に行けば予定通り明日には使用可能となります」

 

 設置された10mほどの四角い柱状の高台から、ワールド・ヴィレッジを見上げるようにして眺める形で会話するハートレスの少女らが2人。

 

 1人はハクトを束ね全統括権限を持つ白き総督『ホワイト☆ロックシューター』。

 

 もう1人はその隣に控え、黒く刺々しい帯を唾の広い三角帽子に巻き付け、その帯の下部と双眸は青みがかった緑色に染まっている。

 

 格好は三角帽子も然ることながら、まるで人類間で御伽噺として語れるところの魔女そのものだ。 

 

 彼女の名は『エルダ・キャスタ』。

 

 ハクトにおいて生体系統のアーマメント術式の天才的権威を有し、その他の分野においても天才的頭脳をもって成し得る生粋の研究者なのだ。そんな彼女の思考は極めて無駄のない合理性と論理性に特化した構築となっている。

 

 そのような在り方を持つが故に一般的な感情のそれらが一切無く、本人に言わせれば『持つ価値の無い代物』と断言するほどに情念に沿わない理的主義を貫いている。

 

 しかし唯一感情があるとすれば、それはホワイトに対する忠誠心と森羅万象とある事象現象に向けられる探究心のみだろう。

 

 この頭脳をもってして世界に散らばる万物万象の真理を解き明かし、その成果の全てをかの総督たるホワイトへ捧げ、役立つ事こそが彼女の中にある確かな使命にして自らの存在理由。

 

「あとはその間に最終調整を済ませ、時が来るのを待つのみかと」

 

 淡白とした味気ない言葉ではあるものの、それに対しホワイトは機嫌を損なう様子はなく、むしろ嬉々とした笑みを張り付かせていた。

 

「素晴らしい。やはり、お前にワールド・ヴィレッジの修復を任せて正解だった」

 

「……光栄の極みです」

 

 ホワイトの言葉を真摯に受け止め、深く頭を垂れるエルダ。

 

 2人の眼前に聳え立つワールド・ヴィレッジは当初、修復は困難な代物だった。

 

 何せこれ自体が1千年前の『異世界交流紀』という、クロワにとって異世界との交流が盛んだった時代に造られた代物なのだ。

 

それを考慮すれば時間が進み過ぎて、ワールド・ヴィレッジ自体の老朽化も否めなかった。それにかつてクロワに手によって徹底的に大破された為、もはや鉄屑の瓦礫のような有り様だった。

 

 しかし、ある者が……ホワイトの師たる女性が修復の為の『技術』と『設計図』を授けた事で、ワールド・ヴィレッジは起動可能という段階にまで修復を果たす事ができたのだ。

 

『この設計図をもって『橋』の修復に取り掛かりなさい。……ええ、私が描いた物だけど、ちゃんと保証していいわよ?……ふふ』

 

 かつて、そう言ってホワイトにワールド・ヴィレッジを修復する為の『設計図』を渡して来た師たる彼女の妖艶な姿を思い出しながら、

 

その弟子たるホワイトは何処か苦い顔を浮べる。

 

 ホワイトが闘争主義者のハートレスらを完全統一させ、ハクトという、クロワと互角に対抗できるほどの一大勢力を築き上げるまでに成功した理由は総督たるホワイト自身のカリスマ性と才能溢れる手腕も大きな要因には違いない。が、それと同等に師たる存在に師事を受けたのもまた大きな要因に違いない。

 

 ホワイト自身は師を尊敬している。いつでも、どんな相手でも、その傲岸不遜な態度を崩さないホワイトだが、師たる女性の前では礼節をもって敬語で言葉を交わすのが常だ。

 

 だが尊敬している反面、あまり信用していない面もある。

 

 それは一重に自らの師がまったく底の読めない人物だからだ。正直に言えば、師は師なりに何らかの姦計を企ていると。ホワイト自身はそう思っている。

 

 断言できるほどではないが……長年師事を受けて来た弟子だからこそ感じる、予感めいた感覚。

 

 それが心の中で根強くこびり付いているのだ。

 

「……エルダ」

 

「はい。確実に来ています。無論クロワの軍勢ですが、下級と中級を除く精鋭と上級戦士のみに構成されています。数は……17万8千と推定。我が軍の数は18万2千と数の差ではこちらに利がありますが、それほど離れてはいません。よって単純な個々の戦力で行けば我々が不利に陥り、敗北を喫す確率は高い物と思って良いでしょう。しかし、兵器と武装の差を含めて鑑みるのであれば、こちらの勝率は敗北よりも高いと断言できます」

 

 ホワイトの唐突な振りに対し、何ら動じる事なく、ただ冷静で機械的に計算と分析を実行。そしてその結果をありのままに答えてみせた。そこに一切の忠誠や驕りなど…個人的な私情の諸々などが皆無なほど冷たかった……。

 

「やはりか。奴ならばここを嗅ぎ付けるものだとは踏んでいたが……」

 

「明日には装置の稼働率が100%に到達し、計画が実行される予定。この事を考えればタイミングが良すぎますね。おそらくクロワのスパイか斥候がいたのかと」

 

「ふん、まぁ何でも言い。障害は根も葉も残さず踏破し、蹂躙するまでの事に過ぎん」

 

 紅蓮の瞳をより一層と輝かせ、凶悪な笑みを浮かべるその様は、まさしく見る者全てを恐怖と絶望に陥れるに不遜なきものだろう。とは言え、エルダはそれとは真逆の感情である『昂揚』。この感情をコアの奥底から感じていた。

 

 彼女にとって全ての万物万象の類は所詮『現象』に過ぎない。

 

 条件があるから発生し、定められた法則があるからこそ、それに準じ決して揺らぐ事などない。それが論理と合理で構成された思考性を有する彼女の在り方であり、一つの答えだ。

 

 しかし、ホワイトは違う。

 

 躊躇いも何もなく、徹底的に抗い、何者にも縛られず、ただ己を貫いていくのみ。

 

 その障害となる者は成す術もなく、ただ絶望を抱いて死に逝くしかないのだ。

 

 まさに論理や合理性の壁を、その手で理不尽なまでに粉々に砕く破壊の化身……そんなホワイトの在り方故にエルダは彼女に忠誠を誓った。自分では理解できないがいつか知って感じたいと願う『論理や合理を超えたもの』。それを他ならぬホワイトから見出したからのだから。

 

「さぁ、一体どのようにして来るのか。これは中々に見物だな」

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 カタスロット・インフィスの外側では、その周囲50km先はもはや戦場と化していた。殺傷力を秘めた光弾が宙を飛び交い、クロワの上級戦士やハクトの兵士らが激突。互いが互いの命を奪い合う、まさに破壊と殺戮。それぞれの信念が故に戦う者たちの戦意と死によって彩られる世界。

 

 まさに戦場という場所だからこその光景だろう。そんな凄惨な世界の渦中に一隻。大型の降下船ができるだけ低空を保ちながら、それなりに早いスピードで飛行していた。

 

 クロワの精鋭と上級戦士達が搭乗しているそれには、精鋭の一員であるチャリオットの姿も見える。が、その顔には不安という感情が見え易く浮き立っていた。

 

 チャリオットはこれまで何度も精鋭として戦場を駆け抜けては、その都度多くの仲間を救い、様々な功績を成した実力者だ。

 

 決して素人ではない筈の彼女だが、今回ばかりは普段とはまるで違っていた。例えるなら緒戦に赴く際、不安と恐怖から緊張し、表情を強張らせる新兵のような様子だろうか。

 

 精鋭たる彼女に対して可笑しな表現かもしれないが、今回は今回で前の任務に比べればその重要性も困難も桁違いと言っていい。

 

 クロワの統率者たるブラック★ロックシューターことステラが発令した史上最大の作戦…『コード・K』。その全貌はカタスロット・インフィスの最深部にあるワールド・ヴィレッジの奪還、そして破壊するというもの。

 

 それだけなら、わざわざ一個の戦線に精鋭全員と最上級と上級戦士の全てを使った『上位戦力』で来る事も無い筈なのだが、その奪還と破壊する予定にあるワールド・ヴィレッジそのものがハクトにとって幹部や兵士の大半を戦線に投入しても、何らおかしくない代物であると言うのが問題なのだ。

 

 何の策も無く迂闊に行けば……即座に壊滅と言う最悪な結果は予想以上に有り得る。

 

 既にハクトはそれほどの戦力を持ってワールド・ヴィレッジに近付けさせないよう防衛網を陣形させ、徹底抗戦の構えを取っている。

 

 いつでも近付く敵を容易く始末できるように。

 

 故に今まで以上に困難な作戦になるだろうが、だからと言ってこのまま放置すると言う事は絶対にありえない。

 

 チャリオットはステラと出会った時から彼女が語り聞かせる『地球』に住む、その世界に生きる『人間』という種族に是非とも友好的な交流をしてみたいと思っていた。故に会ってみたい、行ってみたいと強い思いはあるし、できる事ならワールド・ヴィレッジは破壊せず、そのまま使いたいと思うのが彼女の心境だ。

 

 だがそれによって齎される悲劇や災厄を思えばこそ、あくまで胸の内にしまって置くに留めておき実行する気などない。実際にそうした経緯でいくつもの異世界が滅んで来たのは、紛れも無い事実であって逸らしてはいけない真実でもある。

 

 しかしもし…本当に有り得ない事だが、会える機会が出来たとして。それは余ほどのイレギュラーな事態か、もしくはこの戦争をクロワが勝利させ終結させた後の代の時か。

 

 いずれにしろ予てから憧れている地球にハクトの魔の手を伸びさせない為、そして仲間達と自分の未来の為に戦うのだ。尤もその意志はチャリオットだけでなく、彼女以外の精鋭や戦士達…そしてクロワの全民が願うものなのだ。

 

「どうしたのチャリオット。そんな不安そうな顔して」

 

 チャリオットに話しかけて来たのは同じ精鋭で『紅蓮の飛弓』という異名を持ったツインテールの少女。名は『カルファムト・バーター』。

 

その格好はまさに軍人の将校と、そう称するに相応しい軍服のようなトップスとボトムスを身に纏い格好と髪、瞳を染めている色は『黄緑色』という仕様。

 

 両腕には紅蓮の弓と一体化したガントレットが装備されており、これこそが彼女専用の愛武器『クリムゾア・スピア』。

 

 その性能に関して言えば遠距離の狙撃と近接での射撃は自他共に認めるお墨付きの代物だろう。

 

 そんな変わった武器を持つ彼女は皆から愛称を『カルファ』と呼ばれ、チャリオットに似て人懐こい性格だが、やはりハートレスである故か。あまり表情は垣間見せない。

 

 とは言え、本人曰く『少しくらい』なら表情はそれなりに作れるようだ。

 

 カルファはチャリオットが座っている座席とは別の、隣の座席へと腰を降ろし、その無表情に近い顔をチャリオットに向け視線を合わせた。

 

「当ててあげようか? 今回の任務の事でしょ。巧く事が運ぶかどうか、生きて無事に戻れるのかって感じで。皆そういうもんよ」

 

「まぁ、大丈夫だろう。こんな可愛らしい精鋭様方が付いてるんだからな」

 

 二人の前に現れたのは褐色の肌にスキンヘッドという、丸坊主系の髪型をした大柄の人型ハートレスの男性だった。服装はコートのような黒いアウターを身に纏い、左手にマシンガンのように弾を連射することが可能な黒いガントレットを装着していた。

 

 彼の名は『サウズパーター・カルム』。

 

 カルファと同じ『パーター(草木の狩人)』の名を持つ、パーター族に連なる者で精鋭ではないがそれに匹敵しかねない上級戦士だ。

 

 そしてやはり、他のハートレスやカルファと同じように感情を含まず垣間見せない無表情なわけだが、実際の彼は気さくで兄貴肌な面倒見の良い人格者だ。それ故多くの部下に慕われている。

 

「嬉しいこと言ってくれますね、サウズさんは」

 

「当然だ。俺はありのままに事実を言ってるだけさ」

 

 両者に表情は無い。だがこれは冷めているわけでも互いに嫌悪して皮肉を述べているわけでもなく、むしろ本当に良好的なものなのだ。人間ではそう見る以外にないかもしれないが、ハートレスで見ればそういうものである。

 

「わ、私なら大丈夫ですよ! この任務、絶対成功させてみせます!!」

 

「おい。そろそろ着くぞ」

 

 不安で緊張しながらも意気揚々とそう宣言するチャリオットの台詞とは裏腹に冷淡な台詞が後に続くかのように差して来た。その声の主は鋭利な目と赤紫の長髪をサイドテールに状に束ね、黒に紫の爪痕のようなデザインの刺繍が施されたカットソーに着込み、下は黒い短パンという、他と比べるとラフなスタイルをしている1人の少年だった。

 

 名を『ダムロ・ルーキファス』。

 

 カルファやサウズと同じく、精鋭たるチャリオットの護衛の任に就いた上位戦力のの1人。しかしその階級の位は2人が位置する上級よりも上の、精鋭候補とも呼ばれる最上級に位置している故に、その実力はカルファとサウズを容易く凌駕する実力者でもある。

 

 一見して冷めたような態度と雰囲気だが、実際は意外と熱く謙虚な性格の持ち主でもある。

 

 今回においてチャリオットが与えられた任務は護衛である上級・最上級含めた20名と共にブラック★ロックシューターが直轄で指揮を執る精鋭3名と最上級10名から成る特殊強攻部隊『チーム・アタッカー』をギリギリまで防衛・援護することにある。

 

 アタッカーがカタスロット・インフィスの最深部……すなわち、ワールド・ヴィレッジが安置されている場所に到達できるように計らう事がチャリオットに課された任務の達成条件。正直欲をかいて言えば、望ましい形としてはアタッカーと共に最深部まで行く事だろう。

 

 が、敵の戦力を鑑みれば、そんな暇があるとは到底思えない。

 

 ともかく敵の防衛網を突破し、カタスロット・インフィスの一歩手前の距離…その地点まで到達できればいい。

 

 他の精鋭達は部隊を率いて既に戦いを始めており、それぞれが防衛網の崩壊や制空権の確保。情報伝播及び兵器破壊など、自分の与えられた任務を達成すべく行動している。

 

「よし、行くよ~!」

 

 万全且つ悔いなしに準備を整えた4人のクロワの戦士たち、精鋭のチャリオット。最上級戦士であるダムロ。上級戦士のカルファとサウズ。降下口に横並びに立ち、やる気満々のチャリオットの声に反応するかのようにハッチが開かれたその下の光景は既に始まっている戦場。

 

 激しい熱を帯びた戦火が舞い、敵味方関係なく命が消え、全てが跡形もなく粉砕される場所。

 

 こんな地獄とも思える光景に戦士たる4人は飛び込むのだ……己が課せられた使命の為に。

 

 心の準備などもはや必要ない。残ることなく全員が余裕に満ちた雰囲気で飛び降りていき、そのまま落下していく事で戦場へと一直線に向った。

 

 その様子を最後まで確認したパイロットは至急ハッチを閉め、敵の攻撃に当たらないよう即座に速度を上げて戦線を離脱していく。自らの同胞に武運を祈りながら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白黒の大地の上にて、絶えることなく続く戦火の狂乱。鉄で構成された木々が密集領域…つまり『森』を作り、澄んだ虹色に輝く湖がいくつも大小フリーに点在する一帯。

 

 カタスロット・インフィスはここにあり、広範囲にまで渡り拓けた場所にポッカリとその口を開け、今も尚その不気味な暗闇を覗かせている。そんな巨大な洞穴を三重に取り囲む形で張られた防衛網は第一防衛網を突破され、第二のところでクロワの軍勢を留めている状況だった。

 

「とにかく撃ちまくれ! 怯むな!」

 

「連中の防衛さえ崩してやればこっちもんだ!」

 

 クロワの先攻部隊。その各々の隊長達が戦士達に檄を飛ばし、喝を徹底に入れさせながら攻撃を休む暇なく継続させていた。

 

 赤いロリータドレスのような装束を身に纏った女性戦士部隊『ロザリアム』はハクトの兵士相手に白兵戦を挑み、緑色のコートに黒いラインが電子回路のように描かれた服装を纏う遠距離支援部隊『サーキファルト』が可視出来ない電子の衝撃波を巧く、繊細な技量でもって扱う事でハクトの兵士を一人一人、確実に狙撃していく。

 

 殺傷力を秘めた閃光と火花。それらが鉄の木々に様々な傷を与え、時には泥のように溶かし、中には大破させ粉々に等しき状態にしてしまうものさえあった。対する虹色の湖では、絶え間なく水柱が『力の余波』を付属として勢い良く噴き上がっていた。

 

 ここでは水面を利用した戦法。あるいは水その物を操る戦術などが行使され、クロワもハクトも、互いに犠牲を強いられながらも激しい戦いを展開していた。

 

 とは言え、未だ進展は無い。

 

 クロワは第二防衛網で寸止めを食らわされ、未だ防衛網の崩壊・突破には至っていない。

 

 体良く言えば『両者互角の激戦』……悪く言えば『進展をあまり見せない泥沼の拮抗状態』になるだろうか。しかし、ステラことブラック★ロックシューターが率いるアタッカーズの登場により、戦況はクロワ側に良き進展を見せた。

 

 ステラの持つブラック★ロックカノンが遠距離の敵を容赦なく爆破させ、近付く敵には刀でもって切り裂く事で次々と屠っていく。彼女と同行する精鋭の三名の内、ストレングスとデッドマスターも負けてはいなかった。ストレングスはオーガアームを変形させ、ガトリングモードで敵を木っ端微塵に粉砕するほどの威力を見せつけ、デッドマスターはデッドサイズで容赦なく敵を大小関係なく、薙ぎ払うように

 

その命を奪っていく。

  

 そしてもう一人…精鋭『メイコック・ガンナー』もクロワの頂点に立つ戦士としての実力を見せていた。

 

 ボブカットの茶髪に鮮やかな赤いコートを上に、その中に黒の袖の無いインナーを着用。

 

 更に着ているコートと同色であるホットパンツを下に、両手には彼女が使う選りすぐりのマシンガンを手に取るという風貌の彼女は、迫り来る敵を得意の銃撃戦で漏らすことも外すこともなく、敵の命を銃弾で略奪していく。

 

 まさにステラと精鋭による戦闘は『一方的』と言う言葉が非常に良く似合う光景だったが、彼女等の敵たるハクトの幹部も負けてはいなかった。

 

「ぐわぁッ!」

 

「航空将官を確認! 繰り返す! 航空将官を確認! これより迎撃態勢に…がああぁぁッッ!!」

 

「クソッ、二機が撃墜された。各自防御システムを展開して臨め!」

 

 カタスロット・インフィスの東側第二防衛網の空域を飛ぶ、クロワの航空部隊。

 

 1人1人が背中に戦闘機のような金属の翼を取り付けたジェットブースターを装備、あるいはエネルギーフィールドを展開して空を翔る彼等はハクトの中で最も空中戦に優れた幹部『バード・スラッシャー』による奇襲を受け、何とかそれに対応している状況だった。

 

 しかし、既に戦士二機が高速で身体の中にあるコアを抉り取られ死亡。最初の二機に続くかのように次々と一機また一機と、数分単位で空の戦士達がその命を落としていった。

 

 苦戦を強いられている状況だが、しかし空中戦を可能とする幹部はバード・スラッシャーだけではない。

 

「ごわァァッ!」

 

「ぎゃっ!」

 

「こいつ! や、やめ、ああああああああああッッッ!!」

 

 更に三機。バード・スラッシャーとは異なる幹部の手によって、その命が無情なまでに略奪された。

 

 主犯は箒型の愛武器『ウィッチバレット』に跨り、空を翔る魔女…『ミー』だ。

 

「良い感じ良い感じ~♪ そのまま無様に落ちていきなさい、クロワども!」

 

 陽気と狂気を交えた笑みを浮かべるミー。彼女はバード・スラッシャーのようなアクロバティックな飛行こそできないものの、得意の射撃と魔法のような御技でもってしてクロワの航空戦力を束ねる隊長格に位置する空の戦士達を屠っていく。

 

 ハクトによる制空権の獲得も時間の問題だった。

 

 そして同じく防衛網の東側。

 

 鉄の木々が生い茂る地上ではナイトリッターとその主、リリオが騎士兵団を率いてクロワを迎撃。いかに上位戦力である上級戦士とは言え、さすがに幹部2人では分が悪い。しかし、そうだとしても。それなりに攻防を繰り広げられている点においては良い方だと言えるだろう。

 

 これが下位戦力ならば話にならず、それこそ5分も満たない速さで壊滅せしめられるからだ。

 

 故に幹部がそれほどまでの実力者である事を忘れてはいけない。

 

 ともかく。いかに上位戦力で奮戦したとしても、このままではクロワ側が敗北の色に染まってしまう。

 

 それを阻止する為二つの影…否、3人の精鋭が東側防衛網へと全速力で向っていた

……。

 

 一方、チーム・アタッカーが参戦し始めた西側の第二防衛網では恐るべき敵がクロワの戦力に着実なダメージを与えていた。

 

「ぬはっはっはっは! 脆い、弱い、何たる有り様だ! これがクロワの戦力とは、何とも片腹が痒いわい!」

 

 それは『30mほどの巨体を有す蜘蛛』と表現すべきか。丸い球体に計8本の刺々しい節足の剛脚で地を闊歩し、脚の先には楕円形の足が付属されており、向って来るクロワの戦士達をその足で容易く命を文字通り潰していた。球体部分にはバイザーのような長方形をした視覚器官が球体を一周するほどあり、その死角はゼロも同然。

 

 更に球体の下部は自分の意思で開く事ができ、ハッチのように機械的に開かれたその中には敵を一掃するに優れた火力を誇るマシンガン式キャノン砲を装備。これの餌食になった敵は数知れないだろう。

 

「な、なんて野郎だ」

 

「クソッ、頑丈過ぎて弾が通らねぇッ!」

 

 黒い甲虫のような特殊合金製のパワードスーツを着用している接近戦部隊のメンバーは、眼前の蜘蛛のような敵に対して、その巨体さと頑丈な身体に絶望を感じていた。 

 

 彼等はこの敵に関してはそれなりにだが、一応知識はあった。

 

 蜘蛛のような敵…『ボールパイダー』。通称パイダーは幹部ではないが、それでも幹部になれるやもしれないパワーとガードを秘めた攻防特化型の兵士だ。そんな彼の弱点は球体下部が花弁のように五つに分かれて展開される、ハッチの中に存在するキャノン砲。

 

 そこから巧く攻撃を内部に入り込ませれば勝機はある。

 

 とは言え、自らの弱点を考慮しないほどボールパイダーは愚者ではない。

 

 対策は施されていた。バイダーの内部に移植されたエネルギーバリア発生器官が開かれた下部を守っており、余ほどの威力でなければ貫通することは叶わない。

 

 しかもそのエネルギーバリアはただ防ぐのではなく、キャノン砲から出るエネルギーのみを通す仕組みになっている。つまりバリアを張った状態でありながらクロワへ攻撃を行使する事が可能と言うわけだ。

 

 故にパイダーの進撃は誰にも止められず、こうして意気揚々と敵を剛脚で振り払い踏み潰していく。

 

「みんな! ここは私に任せて!」

 

 力強くも凛とした声が響き渡った。

 

 そして数秒の後、颯爽と俊敏な動きで地を蹴り宙を舞う一つの影…ステラがブラック★ロックカノンの標準と銃口をパイダーに定め、彼の頭上からその黒い砲口から蒼きエネルギー弾を発射。解き放たれたエネルギー弾は一瞬にして頑丈を誇っていたパイダーの金属の体表を砕き、内部で爆発した。

 

「■■■■■■■■■ーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!」

 

 言語として成立しない、そんな不気味な悲鳴を上げてパイダーは沈黙。

 

 コアはエネルギー弾の内部爆発で完全に消滅した為、死んだと見て間違いなかった。

 

「おお、凄い!」

 

「ブラック★ロックシューター様だ!」

 

 クロワの戦士達からの歓声が沸き起こる。しかし未だ勝利の時ではない為、ステラはその場の全員に厳格な重圧を乗せ、前進命令を下した。

 

「皆、前進せよ! 恐れる必要はない。私がいる! 精鋭がいる! 既に第一防衛網を突破した以上、第二第三の突破も時間の問題よ!!私達の力をハクトに見せつけてやりなさい!」

 

 それは力強く、厳格で、同時に凛とした華麗さを秘めた勝利への宣告。それに魅了されたクロワの戦士達は士気を昂ぶらせ、絶望を払い希望をもって戦いに臨んだ。

 

 

 

 

 

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