ブラック★ロックシューター THE・GRAY WAR 作:イビルジョーカー
黒と白のかつて姉妹だった者たち。彼女等の持つそれぞれの刀が持ち手の技量によって神速の剣戟を繰り出し、打ち合う度に激しく甲高い金属音が周囲に反響する。
黒の少女…ブラック★ロックシューターことステラは、激化する両刀における戦いの中で思考する。
純粋な剣術ではまずもって互角。
現に激しさだけが増し、両者一歩一歩と押しては退き、退いては押すの繰り返しだ。
このままやっていったとしても不毛なだけに終わる。ならばどのような術を使い、どんな搦め手でもって突くか。
勝敗の決め手はそこに帰結して来る。
そしてそれを理解したのはステラだけではない。白の少女…ホワイト☆ロックシューターことノーヴァもまた同じだった。
苛烈な剣戟戦を止めたものの、ステラとノーヴァは互いの刃である愛武器『ノワール★ソード』と『ヴァイス☆ブレイド』自体は装備したままの状態だった。そうしてステラは、ソードを持つ手とは反対の空いた手にまた別の武器を選択し召喚。対するノーヴァは一旦腰に差し、両手を空けた状態で新たな武装を召喚した。
ステラは黒き砲身『ブラック★ロックカノン』を。
ノーヴァは白い巨弓『ブランティック☆ボーゲン』。
この二つの武器はまさしく弓と砲、そう表現するに相応しい。
どちらが『戦闘用途の道具として』強い弱いかは一目瞭然だろうが、しかしそれはあくまでも『普通だったら』という視点で見据えた場合の回答。
彼女等の武器である以上、それは決して『普通ではない』のだ。
故にその基準は当て嵌まらない。
「これで仕留めてやろうブラック!」
赤い炎のオーラがノーヴァの身体から放出されたかと思えば、それは巨弓へと集まり矢に形を変え、ノーヴァはその羽の部分を掴む。
そして弦を引き絞り、照準をステラへと捉える。
ここまでなら通常の弓と何ら変わる所はない一般的な弓の使用における動作に入る。しかしこの後が普通とは違うところだった。
何とオーラの矢の先端から小さな円錐状のエネルギーニードルが飛び出した。弓にセットされた矢はそのままで、矢の先端から次々と発生しては飛び出していく針の数は際限がまったくなく、間を空ける暇もなく連続的に発射される。例えるならばマシンガンのそれだろうか。
連射されたエネルギーニードルの数は500以上。ステラは迫り来る多勢のニードルを前にしても決して焦らず、ロックカノンから放たれる球体状に青光するエネルギー弾で次々と相殺していく。相殺し切れなくなり撃ち漏れたニードルはそのままソードで切り伏せていった
。
「馬鹿め。それらは所詮、虚仮威しに過ぎぬわ!」
その宣言と共に不敵な笑みを浮かべるノーヴァ。
あの500以上の数のニードルは本命ではなく、真の本命は最初にセットされた炎の弓矢だった!
「『憤怒による滅びの破壊を(ラース・オブ・エンド)』!!」
技名と共に解き放たれる一本の紅蓮に彩られた矢。それは先ほどのミサイル10本分に相当するニードルよりも暴力的なまでの威力を保有し、例えるなら一度で東京タワーを木っ端微塵にできるほどだ。
そんな威力を秘めた代物を受けて無害平然としていられるほどステラは不死身などではない。
今この瞬間において、ノーヴァの放った矢を即回避できない事を冷静に分析した上でステラは絶望を抱く事はなく、すぐさま防御態勢へ
入った。すなわち、ノーヴァがそうしたようにステラもまた紅蓮の炎とは対照にして対極を成す蒼炎のオーラを放出し、それを自身の周囲に間一髪のタイミングで覆い包んだ。
これによって必殺の直撃を受けることはなかった。
しかし代わりにその威力を完全には防ぎ切る事が適わず、結果として凄烈な高熱を内包した衝撃と爆風を受けて胸の中心から右腹部の脇腹にかけて抉られたような大火傷を負い、更には比較的軽傷ながらも両足の太股から足首にも火傷を負ってしまった。
命に別状こそはなく、仮死状態に陥らねば然程重篤という訳でもないとは言え、それでも苦痛は容赦なくステラを蝕みその行動に制約を
かけてしまっていた。
「ほう。アレを防ぐか。ならば褒めてはやるが…その命もここまでだ」
ギラリと。その赤く光る瞳の視線をステラへ突き刺すかのように向けながら、ブランティック☆ボーゲンを返還。
腰に差していたヴァイス☆ブレイドを抜き、その刃をステラの首筋へと当てた。
「この日をどれほど待ち焦がれ、望んだ事か! 貴様も死したクロワどもと同じ末路を迎える時だブラックゥゥッ!!」
唸るように叫ぶノーヴァ。大火傷のダメージから膝を付き、片手も付いた状態で苦悶の声を口から漏らし、表情を苦痛のそれに染め上げた。
このままでは首に刃が入り、そのまま切り裂かれる形でコアへと直行する事でコア自体に損傷を与えられてしまう。そうなっては待ち受けるものは……死、以外にない。クロワはハクトに自らの敗北を与える事となり、それはつまり、この800年に及ぶ長い戦いの終止符をハクトが打ち、同時に戦いの勝利をハクトが手にする結果となってしまう。
そんな未来を……ステラは受け入れる筈も無かった。
「はぁ…はぁ…はぁ……まッ……まだよッ! こんな所で、私は終わらない!!」
故に…決意をもって己が身体を奮い立たせる。
そして自らの両手を繋ぐようにして一つの拳を形成し、そこに青い炎のオーラを纏わせるステラは渾身の力を込め、その重い一撃をノーヴァの頬へとめり込ますようにして喰らわせた!
「なっ、ぐベらァァッッ!!」
顔の側面たる頬へと吸い込まれるようにして、両拳を食らわされたノーヴァはもはや回避する事も防御する事も間に合わず、しばらく数秒の内に宙を舞った後、地面へと仰向けに倒れてしまった。
よく見れば頬に軽い火傷も確認できた。
そして今、この瞬間において絶好の機を逃すほど、ステラは甘くない。
「はアアアアアアッッッ!!!!」
倒れ伏すノーヴァに既に手にしていたノワール★ソードで、彼女の胸をズブリと。力を込め抉るようにして貫いた後、ブラック★ロックカノンで彼女の両腕を吹き飛ばしてしまった。
「ガアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!!」
コアへ伝わる痛みはそれほど酷くは無い。
何せコアさえ無事ならばどんな重傷も致命的なものには成り得ないからだ。
しかしこの叫びは違う。途方も無い激痛から来るものではない。確かに痛みとしての意味合いもあるにはあるが、憎き宿敵により、ここまでされるがままになってしまった事への怒りの叫びなのだ。
傍から見れば、かなり惨い事をしていると揶揄されかねない陰惨な光景だが相手が相手だ。こうしなければ仕方ないだろうし何よりハートレスの再生能力をもってすれば三日の時間を要するが元通りになるので、余ほどの事がない限りは心配ない。
「コアに直接刃は通ってないし、掠り傷もない。ちゃんと手加減したから」
「ぐゥゥッ、おのれ……」
やはり、その瞳は決して消えることの無い憤怒と憎悪が篭っていた。
そんな視線でもって睨まれた者は生きた心地がしないかもしれないが、生憎ステラは違う。その恐ろしい、まるで地獄に彷徨い跋扈する鬼のような形相で突き刺すかの如く睨む実の妹に一切動じる事はなく、ただ冷静に機械的に。
ステラは彼女に今後の処遇を告げた。
「貴方の身柄は我々クロワが預かる。無駄な抵抗はやめなさい」
ブラック★ロックカノンを砲口を向け警告するステラ。そんな彼女の不殺生精神に反吐が出ると言いた気な苦々しさと嫌悪が織り交ざった表情を浮かべた瞬間、身体から炎のオーラが爆発的なまでに増幅され放出。燃え盛るオーラは失われた両腕を無し、胸に開かされた風穴を埋めるかのように盛り灯っている。
その様相はまさに獄炎の鬼神か。
いや、それ以外に他にあるかどうかさえも分からない劫火の化身と化したノーヴァの変貌ぶりは凄まじいの一言だろう。
形相も形相で、その姿に拍車を掛けている始末だった。
炎の両腕を成し、胸の風穴に炎が灯されるこの姿の名は『スカーホワイト☆ロックシューター』。
肉体の部位欠損と一定のダメージを受ける事で発動を可能とするタイプモード。これ以外にもあともう一つあるが、この形態となったホワイトの力は計り知れない。
身体能力の方面も勿論通常よりも遥かに凌駕し、ある程度のダメージ回復も可能だ。
しかし、これだけ破格であればその代償たるデメリットも当然だが存在する。
もって15分しか持続できず、それ以上を過ぎれば相当の苦痛を伴い、無理にあと10分と続ければ良くて強制解除…最悪の場合はコアの消滅も有り得るまさに諸刃の剣。
しかし、それを踏まえても今この瞬間にも倒さねばならない宿敵がいる。だからこそ…やらなければならない。
「このホワイト☆ロックシューターに敗北はない! あるのは我が勝利と貴様の死だけだブラックゥゥゥゥッッッ!!!!」
「ノーヴァ……」
自身の妹の魂の叫び。例え己が全て塵と化そうとも、もはや止まる事などない。
そう感じたステラはノワール★ソードの切っ先を向けるようにして構える。
しかしやはり、事ここに及んでも尚、彼女はノーヴァを真の本気で殺す意志には至れていなかった。それは『たった一人の家族だから』や『姉として…』などの様々且つ、複雑に絡み合う感情から来るところが大きい。
でなければ母を殺された憎悪に深く囚われ、何処までも殺意に駆られた冷酷な殺戮者へと成り下がっていた事だろう。
何せノーヴァへの憎しみは、今でも彼女の中の奥底に深く、渦巻くように根を張っているのだから……。
「いいえ……負けるのは貴方よ。今日、この時をもって終わらせる……長かった私達の……クロワとハクトの戦争を!」
ステラの宣言と共に振るわれる灼熱の伴う劫火の鉄拳。それをステラは下へと膝を屈み、斜めへと前転。巧く回避する事に成功するがその最中に青い炎をソードに纏わせ、拳ごと炎の腕の手首部位を切り裂くという芸当を見せつけた。
とは言え、すぐに再生。
大きく鞭のように伸び出されていた炎の片腕は、先ほどのように殴るのではなくステラの太股を掴んでは地面へと叩きつける。
「ぐうっ!」
「いいザマだな。ついでに餞別も受け取るがいい!」
何度も叩きつけていたステラを投げ捨てる形で解放したかと思えば、今度は自らがステラへ急接近。その腹部へと掌を広げ押し込む事で
事前に溜めておく形で仕込んでいたエネルギーを爆破させた。
「ぐはァァァァァッッッッ!!」
大きく息を吐き出し、その刹那に苦悶の声も漏らすステラはそのまま10mは吹っ飛ばされ地面に着地した。
「ぐゥッ……ウゥッ……」
「どうした? こんなものでしかないのか? 貴様の実力のほどは」
嗜虐的な笑みを浮べて見下すノーヴァに対し、一方のステラは未だ激痛は残るが何とか立ち上がって見せた。その際に腹部の具合を確認するも、その光景は凄惨なものだと思えるものだった。
表層の皮膚は完全に炭化し、丁度バスケットボールほどの歪な円形状の火傷を作り出していた。更にその中から、鮮やかな赤に染まった筋肉繊維が抉れて乱雑に絡み合った糸の様に掻き回されていると言う、グロテスクな光景が覗かせている最悪な状態だった。
決して気分のいい物ではない。
ましてや、自分の腹の肉ともなれば尚更だ。
「そら、足掻いてみせろォォッ!!」
だが一々気にする暇などない。一分一秒さえも無駄にすることなくステラ抹殺に殺気揚々と移行するノーヴァは、殺意と高熱を伴った炎拳を連続的に行使し、ダメージから対応できなかったステラへ容赦なく浴びせていく。
そして両手で拘束したかと思えば、オーラを灼熱に昂ぶらせた。
「ぐっ、がァァッ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
「ふはははははっ! このまま貴様を焼き殺してやる。コアも残さず灰燼にしてな!」
ステラはマズマやノーヴァと同様『火炎』の属性を有し、それ故に高熱や火炎に由来する攻撃には意味を成さない。唯一『ノーヴァの紅い炎を除けば』だが。
ノーヴァの炎の特性は『破壊』。
全てを灰に…あるいはそれさえも残さぬほどの強大さを秘めた炎は、ステラの『火炎属性』という壁を無意味へと変換せしめる。
「ああッ……ァァァ……」
「もう限界だろうに。このまま息の根を止めてやる」
ノーヴァの火炎属性を宿したオーラの高熱は太陽のそれと同等。そんなもので焼かれ続けていればいかにステラと言えども、死への限界は訪れる。既に手足から腿と腕へ……そして腹部側面と下腹部が炭化して来た。このままでは炭化の勢いは全身へと行き渡り、文字通り彼女を灰にしてしまうだろう。
だが、運命はその結果を良しとはしなかった。
「?! なんだ……これは!」
その『異変』に気付いたのはノーヴァだった。
そしてそれに答えるかのようにタイミング良くエルダ・キャスタからの通信が入った。
『応答願います総督』
「エルダか! 一体これは何事だ……何故ワールド・ヴィレッジから膨大な量のエネルギーが発生している?!」
ノーヴァが感じた『異変』。それはワールド・ヴィレッジから途方も無いほどに膨大なエネルギーが放出され、それが胡散することなく特殊且つ不安定な磁場を形成していると言う事実。そして、このまま行けば予想だにしない災厄的結果を招くと。そう直感していた。
『原因は不明ですが……ワールド・ヴィレッジが突如として稼動し、こちらの制御を受け付けません。このまま行けば大規模な爆発かあるいは次元転移に巻き込まれるかのいずれかです。どう致しますか?』
「妾が行くまで何とかして持ち堪えろ!」
『了解し…!!ッ ワールド・ヴィレッジの更なるエネルギー上昇を確認。このままでは…』
「ええい、くそッ! 貴様の始末は後回しだ」
そう言いステラを投げ捨てたノーヴァは背中に二対の炎翼を展開。跳躍で地面を離れ、そのまま飛行体制に入った彼女はすぐさまワールド・ヴィレッジへと至急向って行った。
「あァァ……ぐゥゥッ!」
「ロックゥゥゥッ!!」
大火傷とダメージで動く事の出来ないステラの下に同じく、ダメージのせいで今まで動けなかったチャリオットが悲痛な声を上げながら駆けつけ、ステラを介抱する。
「ご…ごめんね、チャリオット……助けに来たのに…こんな、ザマで」
「そんなこといいから! 早く医療班に診て貰わないと!」
チャリオットの判断は正しく、ステラのコアは先ほどの炎で少ないながらもダメージを負ってしまった。
ハートレスにとって最大の生命機関たるコアへのダメージは死活問題となる。一歩でも治療が遅くなれば命を落す危険性だってあるのだ。ステラを抱かかえ早く医療班と合流しようとするチャリオットだったが、一足遅かった。
白銀の光と衝撃波が2人を襲った……。
「総督! ご退避を! このままでは貴方の身が…」
「黙れエルダ! 我が野望目前にこのような事……あってたまるかァァッ!」
ワールド・ヴィレッジは白銀のエネルギーを発生させ包まれ、今にも爆発しそうな危険性を孕む代物と化していた。
そんなものを相手に何とか元の状態に戻そうと丁度ワールド・ヴィレッジの頂上先端が見える位置に設立された管制室にて、ノーヴァは機械端末を操作していた。後ろにいるエルダの言葉を無視して尚も奮闘するもやはりこちらの制御を受け付ける事は無かった。
「(何故だ、何故こんな事に! ミスは無かった筈……だが……)」
様々な思考が駆け巡り、その間尚も操作を止めないノーヴァ。
だがその時は無情にも訪れた。
白光が更なる輝きを増し、ノーヴァとエルダにその他数十名のハクトらをまるで濁流の如く飲み込んでしまう。
だが光はそれだけに留まらず、防衛網の第1。第2。第3。これら全域にまで広がり未だ戦闘を続けていたクロワとハクトの両陣営を容易く飲み込んでしまった。
「わ~お! すごいねこれ」
「でしょう? 予め仕込んでおいた起動装置のおかげですよ、これ」
その光景を遥か遠く…クシロロの果てに位置する白い屋敷から宙に投影されたモニタースクリーンで見ている者が2人。
大白師の異名を持つ『ホワイト☆メイラ』。
そして、その協力者『ロード・ミック』。
上記の会話でもう既に察したと思うが…ワールド・ヴィレッジの異常発生はシメールの手によるものだ。彼女が秘密裏にある方法で仕込んだ起動装置。それが結果としてあのような惨事を招くに至った。
ホワイトの目を欺き、ワールド・ヴィレッジの強制起動を成功させたその『ある方法』……それは起動装置をエネルギーを生み出す『エナジス・コア』の部品として設計図に書き記したのだ。
偽ったのだ。しかもエネルギーを発生させる機能も問題なく備わっている為、装置の心臓と言っても過言ではないエナジス・コアがまさか起動装置であると言う事実に気付く事ができなかったわけだ。
「でもさ~いいの? 可愛い弟子が何処に行くとも知れないってのに……」
「ふふ、ロード。あの子の執念を侮ってはいけませんよ。あの子は戻って来ます…その意志を決して曲げず、その力でもって全ての障害を踏破し砕き、このクシロロに舞い戻って来ますわ」
「へえ~随分信頼してるね? やっぱ師弟ってヤツかな?」
「勿論。そうでなければこんな確信なんてありえませんから……あと一つ、ロードは間違っていますよ? 何処へ行くとも知れないと。貴方は今そう仰ったけど……彼等が飛ばされ漂着する場所は設定されていますわ」
「え? そうなの?」
「ええ。ふふ……やがて行き着くその場所の名は……『地球』。人間という脆弱で愚かな知的種族のストックが蛆虫の如く這い回る……あの忌々しい世界に!」
穏やかな口調から一変し、怨嗟の如し質感を有した声で張り上げたメイラの姿にさすがのミックも自前の飄々さを保てず、軽く引いてしまっていた。
言葉のそれから察するに因縁ありと言った感じだが、ミックは敢えてその事を聞かず自身が気になる点のみを質問してみた。
「ま、まぁ~とにかくさ、その……今ので封印は解かれたんだよね?」
「その点に関しては間違いなく。封印が解かれた以上、計画は次の段階に移行できますわ」
クロワ史上初の大規模作戦『コード・K』。
カタスロット・インフィスに最深部にある次元転移装置『ワールド・ヴィレッジ』の破壊を目的としたこの作戦はワールド・ヴィレッジの突然の暴走により、その終幕を下ろした。
しかしこの作戦によってブラック★ロックシューターことステラが行方不明となり、同時に精鋭全員とクロワ上級戦士の大半もまた行方不明となってしまった。
帰還した上級戦士等の事情聴取が行われ、カタスロット・インフィスでの大規模な捜索がなされたものの結局見つかる事は無かった。
また行方不明となったのはクロワ側ではなく、ハクトも同じだった。総督ホワイト☆ロックシューターを含めた幹部全員が行方不明となってしまい、当然ながらハクトは混乱を極めた。
中には自分が新たな総督になると主張する者まで出る始末だったが、そんな混乱状態のハクトを平静なる状態に戻したのは事前に残っていた幹部の二名。『十字将』こと『クロスシタン』と『監獄長』の異名を持つ幹部『ハウラム』。
この2人によってハクトは自滅の危機を脱するに至り、現在は戦力の調整と警備の強化。そして『次元観測装置』を使っての捜索も行使されていた。一方のクロワは全権限を持つ統率者である現ブラック★だったステラの不在により、急遽その代替としてブラック★タウロース・ケイロ』が就役する事となった。
評議会はステラの帰還を願い、その尽力を惜しまぬ形で捜索を徹底したが1年の歳月が尽きても尚、ステラや他の行方不明者の発見できなかった。
「もう1年。我等のような長命の種であろうとも、ことブラック様のいない1年はどうにも……長く寒いものがありますれば」
「ああ、そうだなタートックス。私も貴殿と似た思いだ……それにあの子は私の娘が生んだ孫。なればこそ、な……」
長く天井と床の上下が白と黒の回廊を歩く2人のハートレス。
1人は重厚な甲冑を身に纏ったようなケンタウルスの如き風貌の『ブラック★タウロース・ケイロ』。
もう1人は評議長『タートックス』。その姿は堅牢な甲羅を持つ亀の獣人だった。
2人の会話の内容はブラック★ロックシューターことステラだ。もう1年になれどその足取りはまったく掴めず、今尚行われている捜索も結局は無駄に終わってしまっているのが今の現状だった。
「しかし生きているのは間違いない。ライフデータバンクスに行方不明者らの生命反応が記録されている以上、それは確かだ」
ケイロの言う『ライフデータバンクス』とは、クロワに属する者たちにのみ備えられた生体識別の術式により得られるデータの保存場所で、その頭脳となる巨大な箱型の物体…人間で言うところの高性能のスーパーコンピューターになる『データキューブロック』が存在する。
術式から得られた生体データによれば、行方不明になった者たちは今現在において全員生きており、健康状態も極めて良好との事。
この1年間諦めず捜索を続けられてこれたのもライフデータバンクスの情報に基づく生死の判明があったらこそであり、今尚も行方不明者らに対する生存の希望は燦々と現実味を帯びて輝ている。
「やはり、ワールド・ヴィレッジの暴走で異なる次元に跳んでしまった考えるべきですかな」
「もう確定も同然だわい。なればこそ、早く例のアレを完成を急がねば…」
「ですな。このような事を申すのは不本意ですが、今のクロワにはやはりロック様のお力が必須です。貴方も私も結構な年……新たなる時代にはやはり適任となる若き者が必要です」
「無論、承知の上だ。この身は今一度ブラック★の座に就いたとて、所詮は老骨過ぎた過去の遺物。大賢者と呼ばれようがその事実は変わりない」
「……しかし、本当にこの先不安ですな。かの総督と幹部等が行方不明になった今、ハクトどもが一体どのような手練手管に出るか……前の時のように襲撃されたらたまりませんぞ」
「案ずる必要はないタートックス。確かに今の統率者であるロックや精鋭たちがいないのは痛手だが、我々には『切り札』がある。それあればハクトがどのように攻めて来ようとも問題ない」
自信満々に答えるケイロだが、内心タートックスの不安は消えなかった。
これが只の杞憂に終わることをタートックスは願うばかりだった。
しばらくそんな会話を交わしながら歩いてた2人はやがて、ある扉の前へと辿り着いた。
重厚なドアが上下左右の四つに開かれた先には広大な円形の空間があり、上も下も左右も四方全てがチェス盤のようなモノクロ柄に覆われていた。中心には巨大な円卓が据えられ、その周りには様々な姿形や体格を成すハートレスたちが集結していた。
この全員が評議会メンバーであり、その数は37名。
席はイスの代わりに床に設置された浮遊の為の術式円陣があり、そこに入る事で浮遊にしながら座する事ができる。姿も体格もバラバラであるが故の配慮だ。2人は空いている二つの円陣の中に入ると浮遊しながら座し、ケイロが鶴の一声を上げた。
「皆揃ったな。これより評議会と我がブラック★の名の下にクロワ会議を開講する!まず今回の議題は現在行方不明となっているブラック★ロックシューターに関係する事項ともう一つ、『例の物』を使用した実験と計画に関してだ」
≪ザザ……ジジ……≫
≪ジジ……ザァァ……ジジジ……ザァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー………≫
応≪ジジ…ザァァーーーー≫答……応答願う。繰り返す、応答願う……。
私の≪ジジ……ジジジジ…≫名は『ブラック★ロックシューター』…≪ザァァーーーーーーーーー≫
雑音交じりで巧く≪ザァァーーーーーーーー≫聞こえ≪ザァァーーーーー≫いかもしな≪ジジジ…≫
このメッセージをクロワに向け≪ジジジッ≫発信す≪ザァァーーーーーー≫。
私は今精鋭≪ジジッ…≫の≪ザァァーーーーーーー≫チャ≪ジジーーー≫ットと行動を共に≪ザァァーーーーーー≫している。
ワールド・ヴィレッジに巻き込まれた≪ザァァーーーーーー≫は、現在『地球』に飛ばされてしまったらしい。母であるブラック★ゴールドソーが父と出会い、馴れ初め合った異世界に。私≪ジジッ≫以外に≪ザァァーーーー≫ばされたでろう精鋭や他の皆は発見できていないものの、ライフデータバンクス≪ジジッ≫生存を確認。
2人1組でのチームで仲間の捜索に臨ん≪ジジッジ≫る。
どうか≪ザァァーーーーーーーー≫が届く事を願う。
蒼き宝石の如き世界『地球』。そこで新たな物語が……始まる。
な、長かったァァァァーーーーーーーーーーーーーー!!!
残すは『後書き』と『番外編』のみ。最後までがんばります!