どんな所にも落ちこぼれというか、劣等生というかそんな人物は存在する。しかし、そんな存在が本当の意味で優等生より劣っているかと言われると実はそうでも無かったりする。これから綴る物語はそういうイレギュラーの物語である。
【第1話 優等生の困惑】
【ギフト・オラクル保有者教育施設 第一異能科高校内戦闘訓練場】
「はあー不運だ。しかも特上の厄介事と来たもんだ。脱力・現状維持・エコロジー、この三つをもっとうとする俺がなぜ学年随一とゆわれる実力主義優等生と戦わねばならんのか俺は疑問を投げかけたいよ。」
この愚痴をたらたらと述べている青年、名前を十六夜 葉花と言う。この少年が愚痴を言っているのには、当然理由がある。ここは異能科高校、一般的にギフト・オラクルか蔑称として超能力と呼ばれる力を持つ人間が集う場所である。ここに集まる人間は皆、ギフトかオラクルを将来に生かしたいと思って通って、日々勉学に励んでいる。ギフト・オラクルを纏めて異能力と呼ばれているが、その異能力は現代では無くてはならない物で、異能師の資格を持っていれば仕事には困らないというのは今では子供でも知っている周知の事実で、しかも異能力を扱える人間は全人口の1%弱。それを実用レベルで扱えるにんげんはそのうちの1%から3%の間というのが定説だ。定説というのは強力な異能力を持っている人間の存在は各国で機密情報扱いで全能力者数というのはいまだによくわかっていない。ここまで見ればわかると思うが異能力者で尚且つ、こうやって異能科学校に通えているだけここにいる人間は恵まれていると言わざるを得ないだろう。なにせ、異能力を扱えるかは100%才能なのだから。しかし、そんな恵まれている人間達のなかにも確固とした階級表(ヒエラルキー)の底辺を彷徨う落ちこぼれというのは存在する。その落ちこぼれと称されている人間の一人こそこの気だるさ抜群の青年十六夜である。そしてこの少年が愚痴を述べている理由を簡単に言えば、「1学年合同戦技演習会という、要するに殴り合い大会の対戦組み合わせ抽選会をやったところ、なんとランダムとは言え、不幸にも学年トップの人間と当たる羽目になってしまった」という訳である。そんな気だるさ抜群の青年に近づいてくる黒髪の少女が居た。
「あんた何しょうもないことやってんのよ。あんたが一番手なんだからさっさと定位置に着きなさいよ。あんたのせいで長引いたりしたら、総務委員《ルールパーソン》の私が困るんだかね。それとあんた只でさえ実技評価が悪いんだからこれ以上評価点数《ジャッジポイント》を減らされたら、留年も考えられるわよ。」少女が説教染みたことを言うと十六夜は相も変わらず気だるそうな表情で答えた。
「解ってるよ呉羽、俺もさすがに留年は避けたいからね。」
「だったらさっさと行く。」
「はいはい。」
「ハイは一回」
「はいっ」
少年はもうやだーという顔で定位置に向かった。
「これより模擬戦を始める。解っているとは思うが最初なのでレギュレーションチェックをしておく。安全装置により致命傷を負うことはあり得ないが殺傷ランク4等級以上は使用禁止。使用制限がかかってにているものも同類だ。いいな。尚、勝負の判定は相手にクリティカルヒットを与えた時点で相手側の勝利とする。では試合開始。」
監督教師の号令が開始の合図をするといきなり十六夜が話し始めた。
「なあ、あんたに言ってておきたいことがあるんだけどよ。いいか。」
「ええ聞いておいてあげる。何。」
「棄権してくんない。」
十六夜は素直な忠告を述べたつもりだが、どう考えても挑発にしか聞こえない物なので相手も定番通り反応した。
「ふ、ふ、ふざけるなー。」
そういうと少女は強酸化状態発生能力《パイロキネシス》を用いて火炎を発生させて撃ちだして十六夜にぶつけようとした。しかし、
「あーー、もう。なんでこうも上位ランカーって頭に血が昇りやすいんだろう。」「シュウン…」
その火炎は十六夜に当たる直前に消滅した。彼の皮膚に当たる直前に。
「はっ?。」
少女、神舞 葉子は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「なあ、これは本当に率直な感想なんだけどよ。棄権してくんね。」十六夜は未だに頭に血の上っている相手に挑発まがいのことを言った。
「イッ、これならどう。」
葉子は重力制御能力《グラビティーコントロール》を用いて相手を戦闘不能にしようとした。彼の周りの地面がメキメキと悲鳴をあげているが、しかし、
「あのさー、お前ってやっぱり人の話を聞かないタイプ?。」
十六夜は平気な顔で佇んでいた。
「どういうことなの。」
葉子は混乱していた。そもそも現代で言うところのギフト・オラクルとはどんな物質にも存在する粒子「精神子《ユネサス》」を用いて物質に干渉する技術の総称である。「精神子《ユネサス》」は物質の在り方に干渉する性質を持っていて、それを利用して空気中の水分を収集、分解、燃焼すれば火炎が生まれ、物質にかかる重力の値を変更すれば通常の何倍もの圧力をかけることができる。当初、卿子は化学変化操作系統を用いて酸化反応を打ち消しているのかと思い、力場操作系統である重力制御能力《グラビティーコントロール》を発動したがまったくと言っていいほど効果は無かった。しかし、彼女には何か思うところがあったのである。
(重力制御能力《グラビティーコントロール》は範囲指定によって行うフィールド型の能力、それで周りの足場にはきちんと効果が出ているということは少なくとも抵抗《レジスト》をしているわけでも無効化《キャンセル》をしているわけでもない。だとしたら……。)
「あなた、存在固定《プロテクション》をやっているの。」卿子は探りを入れるような感じでといかけた。
「
いいや、そんなことはしてないよ。そもそも、存在固定《プロテクション》は高難易度特殊技術だよ。そんなのができるほどだったら、こんなところで落ちこぼれなんてやっていないよ。それに、そもそも存在固定《プロテクション》を行使するには専用のデバイスが必要だろ。あんな高価なもの手が出せないし、そもそもあれはオーダーメイドだからね。」
「じゃあ、抵抗《レジスト》か無効化《キャンセル》でもしているというの。」
「いいや、ちがうな。そもそもそれはおまえ自身が否定した解答じゃないのか。お前はこう考えたんだろ。抵抗《レジスト》は他の人間の放った物質に干渉するはずの精神子《ユネサス》に自分の精神子《ユネサス》をぶつけることによって、相手の精神子《ユネサス》の働きを阻害する技術だ。。もし自分の能力が俺に聞いていないのが抵抗《レジスト》せいだとしたら、周りの地面にはちゃんと効いているのはおかしいので却下。無効化《キャンセル》は能力の使用者自身に精神子《ユネサス》をぶつけて相手の能力使用を邪魔する技術だ。だけど、もし無効化《キャンセル》だとしたら対象となった人間に出るはず体に異常が出ないのはおかしいので却下。まあ、そもそも能力が正常発動している時点で両方とも却下なんですけどね。」
十六夜はやれやれと言った感じで言い放った。
「あんた、何者なのよ。」
卿子はゴクリと息をのみこんで尋ねた。しかし帰ってきた答えは彼女を嘲笑うものだった。
「答える必要はない。」
その答えとともに彼女の意識は暗闇の中に沈んでいった。
誤字脱字等ありましたらよろしくお願いします。