狩人たちは夜風に語る   作:秋の夜長

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世界観はポータブル系列を基準にしています。


プロローグ「ハンターがモテるとは限らない」

 ここは他とは違う、少し変わった世界。

 モンスターがいて、それを狩るハンターがいる。

 そんな世界。

 そこの大陸の中心の位置には、大きな町が建っていた。

 町の一角、ハンターたちの居住区にある酒場の中、昼も夜も関係なく狩人たちの騒ぎ声が聞こえるその場所の、正確には入り口から離れた壁際の四人掛けのテーブルに、二人の男が座っていた。

 

「なあ、シロウ」

 

 ハンターの笑い声を背に座る、髭の男がふと、といった風に口を開いた。

 

「何だ?」

 

 シロウと呼ばれた童顔の男は、硬貨の入った袋を整理しながら答えた。

 すると、髭の男は大きくため息を吐くと、自分の酒を一気に飲み干した。

 

「俺、ハンター向いてねえのかなあ」

 

 そう呟くと髭の男はテーブルに伏す。

 

「どうした、お前らしくもない」

 

 シロウは硬貨を数えるのをやめると、袋をまとめて鞄に入れ、髭の男に向き直った。

 

「だって……」

 

「だって?」

 

 顔を伏せたまま、髭の男は涙交じりの声で答えた。

 

「だって、モテないんだぞ……」

 

 その答えを聞き、シロウは「またか……」と言った表情をする。

 この男はいつもそうなのだ、仕事が終わり、酒が入ると一気に気が弱くなり愚痴をこぼす。

 日頃、男と組んでいるシロウはいつもその愚痴を聞き、慰めてやるのがほぼ習慣になっていた。

 

「何かと思ったら、今日はそんなことか……」

 

「そんな事とはなんだ! そんな事とは!」

 

 シロウの面倒そうな言葉に触発されたのか、髭の男は顔を上げ叫んだ。

 しかし、男の叫びは周囲の歓声に掻き消され、男は再び気分が沈んだようだった。

 

「もう、その話は3回はやったぞ、ほぼ同じ内容で」

 

 シロウ頬杖をつき、ウェイトレスに料理を注文する。

 

「重要だからだろ! 死活問題だろ!」

 

 いきり立つ髭の男をなだめつつもシロウは、今日はいつごろ寝られるだろうか、などと考えていた。

 

「それに、あれを見れば嫌でも気にするだろ……」

 

 そう言いながら髭の男が指差した先には、喧騒の中心、一組のハンターのパーティだった。

 

「ああ、あれね」

 

 シロウは運ばれてきたサラダを口に運びつつ、そのパーティの様子を眺めた。

 あえて言葉で表すなら「場違い」、そんな雰囲気だった。

 ハンターとしてはまだ若い十代後半から二十歳ほどの少年を中心に、少女たちが集まっていた。

 むさ苦しいと言う言葉が似合うこの古い酒場には、とても似つかわしくない一団だ。

 

「ふーん」

 

 少年と少女たちはハンターなのだろう、皆武器を傍らに置いていることがわかる。

 だが、明らかに違う、言葉では言い表すことが出来ないような違和感があるのだ。

 少女たちは皆誰もが端正な見た目をしており、武器を振るうことが出来ないのではないか、というような華奢な体の少年少女達だ。

 なんというか変な言い方だが、綺麗すぎる。

 まあだから何だと言われたらどうしようもないが、あまり興味も湧かなかったので視線を戻す。

 

「まあしょうがないだろう、若さに嫉妬してどうする」

 

「だって羨ましいじゃん! 俺なんて最近女性と話してないのにあいつモテすぎだろ!」

 

 おっさんが「じゃん」とかつけるなよ、と内心突っ込みたくなったが、黙っていることにした。

 まあ確かに、とシロウは思う。

 少年とその周囲の少女たちの喧騒はさらに大きくなり、痴話喧嘩のような声まで聞こえてくる。

 しかしこの男の言葉に引っかかる部分がある、シロウは疑問を口に出した。

 

「あれ、女性と話してないってクリスさんは? いい雰囲気だったろ」

 

 シロウの言うクリスとは、最近よく狩りに同行する女性ハンターのことだ。

 たまたま同じ狩場に居た彼女を二人が助けたのが出会った切っ掛けで、以外にもこの髭の男、ウィルと馬が合ったのか、手料理を作ってもらう約束までしていたのをシロウは覚えている。

 

「ああ、クリスか。確かに美人だけどさあ……」

 

「だろ、このまま付き合うなり結婚なりすればいいじゃないか」

 

 組んでいるハンター同士が結婚することなどあまり珍しいことではない、必ずとは言えないが男女混合でパーティを組むと、結構な確率で交際に発展するものが多い。

 しかし、同じくそれが男女間の不和が原因となりパーティが解散することも少なくは無い。

 昔から酒場を出入りしているシロウは、多くのハンターたちがそのような騒動を起こす様を腐るほど見てきていた。

 

「でもさ、あいつ料理が下手なんだよ!」

 

「……それくらいいいじゃないか、許容してやるのも男の甲斐性ってやつじゃないか?」

 

「そういう問題じゃねえよ! 下手とか言うレベルじゃねえ! 香辛料と爆薬を間違えるとかありえねえよ……」

 

「それは……ちょっと酷いな……」

 

 お互いに、沈黙する。

 確かに以前狩りに同行した時、調合書の入門編を忘れて燃えないゴミを量産していたし、少し天然な人だと思っていたのだが、たしかにそこまで来ると致命的だ。

 

「まあその件については後で考えるとして」

 

 丁度良く料理が運ばれてきたので、それに合わせて話題を変える。

 ウィルは料理に手を付けると、ゆっくりと味を堪能し噛み締めるように咀嚼し、飲み込む。

 そこまで酷かったのか。

 

「たしか、彼は最近噂になっているな」

 

 数か月前にこの街に来たばかりだと思っていたが、今では飛竜を何頭か討伐するほどの腕になっているらしい。

 

「ああ、羨ましいこった、俺もちやほやされてえなあ」

 

 シロウとウィルの狩人としての実力は決して低くは無い、むしろこの街では上位の実力をもつといわれているのだが、周囲の人間は逆にその実力を恐れ自分たちを敬遠しているのだ。

 

「不名誉なあだ名までつけられちまったしさあ、なんだよ『暴君』って」

 

 ウィルは不満そうに言うと酒を飲み干し、空いた皿を下げようとするウェイトレスに再び追加の酒を頼む。

 このウィルと言う男、ハンターの腕は確かなのだが、狩猟時に武器を握ると性格が一変し、酒が入ったときとはまるで真逆の荒々しい性格になる。

 その性格を体現したかのような轟竜の素材を使用した巨大なハンマーを振り回し、大型のモンスターに一歩も引かず、押し返し吹き飛ばす様は確かに『暴君』などという異名が付くのも頷けるだろう。

 

「あながち間違ってはいないだろ」

 

「だからってさあ、いつもそんな感じじゃねえのに、みんな目えすら合わせようとしないんだぞ……」

 

 そう呟くと一気に手に持ったジョッキの酒を流し込む。

 酒が回り、呂律がまわらなくなり始めた。

 この男、外観は厳つく大酒のみのように見えるのだが、その実態は酒豪と真逆のとんだ下戸なのだ。

 呂律に続いて目まで回し始めたウィルを抱え、シロウは店を出る。

 なにかぶつぶつと言っているウィルを彼の部屋に放り込むと、シロウも自分の部屋に入った。

 装備(・・)を外し、大きな天幕付きのベッドに倒れこむと睡魔が襲ってくる。

 シロウは次に狩るモンスターのことを考えながら、まどろみの中に落ちていくのだった。

 

 今日も酒場はにぎわい続けている、きっと夜が明けてもこの活気が静まることはないだろう。




モンハンXたのしいです
息抜きなので短い上に更新はクソ遅いです
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