機動戦記ガンダム・ナガレボシ   作:アルファるふぁ/保利滝良

15 / 57

こんにちは
ファーストガンダムのヤバイところはビーム兵器でもルナチタニウム装甲でもなく素手でザクやらグフやらを引き裂けるそのパワーだと思うアルファるふぁです

今回は前回に引き続き戦闘です!



荒野に立ち上がる

 

いくつものロケット弾がネクストの視界を埋め尽くした

ジム改から撃たれたバズーカの狙いは、ナガレボシだったのだ

「おぶぐふゥッ!?」

生きていて始めて経験する、とてつもない衝撃

妙なところにバズーカが直撃したに違いない

視点は反転し、上の方に地面が見えた

自分、というよりナガレボシが、被弾によって転がっていると考え付いたとき、グレックリーの声が聞こえた

「うわぁ!おい、ネクスト!」

それが心配してくれている声音だと気付けることもなく

「なっさけねえなぁ俺・・・」

衝撃に目を回しながら、ネクストは意識を手放してしまった

 

 

 

 

 

 

「うわぁ!おい、ネクスト!」

「余所見するなベン!」

ウォルターの顔に緊張が生まれる

部下を叱責した後、旧ザクを走らせて叫ぶ

「散れッ!」

その瞬間、一本の光の束が機体の左側を通過した

直撃したわけでもないのに、片手の表面が熱を帯びる

ネモのビームライフルが、僅かに掠ってしまったようだ

「クッ!?」

ドムトローペンがホバー移動を駆使して射撃をかわす

「うおお!のわぁ!」

グフカスタムはスラスターで機体を飛ばし、なんとか避けているようだ

「まずいな」

一見すればアイアンフィスト側が有利に見えるかもしれない

事実直撃はしていない

だが実際はアイアンフィスト側に向かい風が吹いている

向こうは攻撃が当たらないのだが、こちらはそもそも攻撃ができないのだ

攻撃する隙を見せた瞬間、一撃必殺のビームライフルが己を焼くだろう

それをバリアで防いでくれるナガレボシに乗るネクストも、バズーカにてグロッキー状態だ

機体は大したダメージを受けている様子がないが、すぐに起き上がることはないだろう

「ジリ貧になるな・・・」

マシンガンを狙いも定めず撃つ

牽制にもならない苦し紛れの三点バーストだったが、見事にジム一機の片腕に当たってくれたようだ

だが、まぐれはもう起こらないだろう

「隊長!アサルトコンボを・・・」

「よせ、蜂の巣にされるだけだ」

「しかし・・・」

はやる部下の気持ちもウォルターには痛いほどわかっていた

いずれこのままではなぶり殺しである

だがこちらから仕掛けて返り討ちに合うのも目に見えている

こちらは数も、性能も、軍と民間集落という関係上機体コンディションも負けている

ナガレボシというイレギュラーがいてなんとかやれていたのだ

ネクストが遮蔽物として防御に徹していたから互角以上に張り合えた

「ええい、どうやら調子に乗りすぎたらしいな・・・」

「もともと最初から負け戦のようなものだったからな・・・それよりも無駄話はそろそろ切り上げた方がいい、メガ粒子に焼かれたくないならなッ・・・!」

レイゼンの一人言に苦笑いで返しつつ、ウォルターはビームを避ける

スラスターの推進材が目に見えて減ってきた

コクピットの中で舌打ちをする

「やはりジリ貧じゃないか!」

デッドウェイトのヒートホークを捨てる

落下して地面に突き刺さるモビルスーツサイズの手斧には目もくれず、ウォルターはただ回避に集中した

が、決定的な反撃はできずにいた

 

 

 

 

情けない

力を手に入れ、仲間を手に入れ、自信と答えを手に入れて、油断してこの様だ

ビームを防いで慢心していると、バズーカでノックアウト

目も当てられないほど情けない

この前ジムを四機捌いて、余裕を感じたのか

己はまだ戦場というものを、戦争というものを理解していなかったのだ

ああ、なんて情けない

「ふざ・・・けるな・・・」

しかし

しかし、諦めるものか

「ふざけんな・・・」

自分はぬくぬくと肥え惰眠を貪り、他者が幸せになろうとするのを許さず

それが地球連邦だ

彼らは縛りつけることで地球圏を支配した

そんなの、自分勝手だ

「ふざけんじゃねえ・・・!」

自分のためだと言い切り、周りの全てを燃やしてでも理想のために暴れ狂う

それがジオンだ

彼らは目的のためになんでもする

そんなの、迷惑千万だ

「ざっけんじゃねえぞぉおおッ!!!」

答えはとうに見付けた

見付けていた

はじめから答えは見付けていた

記憶を失った直後から

あのとき、見知らぬ病院のベッドで目を覚ましてから

答えは見付けていたのだ

「負けて、たまるかよ・・・!」

連邦も

ジオンも

両方クソッタレだ

だから

「俺はまだ・・・」

両方ともぶっ潰してやる

沢山の人達に迷惑をかけるのなら

そんなの

絶対に

許すわけねえ

「負けてられねえんだよォッ!!」

 

 

 

 

 

 

地面に寝転がっていたトリコロールの怪物は、上半身を乱暴に起こした

それはおもむろに片手を伸ばした

手のひらには、光

瞬間、ビームがジムに飛んだ

「何だ!?」

クラウン隊のジムⅡパイロットの一人が、その台詞と共に消し飛んだ

ジムⅡの胸部には、円形の穴が開いた

主を失ったモビルスーツが、胸から火を吹き膝から崩れ落ちる

それを見てから、ナガレボシはゆらりと立ち上がった

長き戦乱により荒れ果てた、地球の大地を踏み締めて

眼を爛々と輝かせ

敵を見据え

 

そして

 

【挿絵表示】

 

立ち上がる

 

「おっしゃ、第二ラウンドだぁーっ!」

ネクストが手のひらを別のジムに向ける

そこに白い光が発生し、瞬時にまっすぐ飛んでいった

腕からビームガンが出るのだ

命中したビームは、ジムⅡのシールドを溶断した

あまりの威力にジムⅡのパイロットが固まっていると、そこへもう一発が飛んでいく

ビームサーベルのようにシールドごとモビルスーツを倒せるくらいの威力はないものの、ジムならコクピット狙いでワンショットキルを狙える

二機目のジムⅡが首から下を抉られた

そのジムにマシンガンで止めを刺しつつ、ウォルターのザクⅠが近寄ってきた

「ズゴックみたいだな?」

「うるせぇ!強いなら良いだろ!」

「違いない」

冗談と正論を言い合うと、ウォルターはナガレボシの後方に滑り込んだ

ナガレボシの肩の輪が光り始める

肩全体が輝くと、その周りにはビームを無効化するバリアが展開された

 

ザクⅠを狙ったビームライフルが、ことごとく無力化される

放たれた桃色の閃光が、ひとつ残らず弾けて消えた

「わあぁ!モビルスーツ擬きが復活しやがった!」

基地所属戦隊のパイロットが怯えるように叫ぶ

ケイロンは顔を青くした

もう少しでジオン残党の旧式達を削り殺せたのだ

それを覆された形になる

「も一回バズーカだぁ!」

 

片腕が無事なジム改がバズーカをナガレボシへと向けた

それを見付け、アイアンフィストの用心棒代表は静かに告げた

「待たせたなベン、アサルトコンボだ!」

グレックリーは即答した

「待ってました!」

基地所属戦隊に、グフカスタムがジャイアントバズを連射する

白煙を牽いて飛んでいく弾

連邦の部隊はそれをシールドで防いだ

盾の表面で爆発と火花が華開く

徹底的に焦がされた盾から顔を出すと、ジム改の目の前にグフが迫ってきていた

ヒートロッドがうねり、伸びた

グレックリーのモビルスーツから現れた電磁鞭は、ジムのシールドで防ぎきれていない場所へ潜り込み、腹部を叩いた

当たった直後ジムが動きを止める

ヒートロッドが送り込んだ電圧はジム改の内部機器をショートさせ、その機関を一部停止させたのだ

「そぉおおおおりゃああああああ!!!」

縦に振るわれたヒートソードが、ジムを頭から裂いた

真っ二つだ

撃破されたジムには目もくれず、グレックリーはスラスターを全開にして飛んだ

「あっぶね!」

幾度もビームが機体に掠めるが、ナガレボシの背後に逃げ込む

これでビームは怖くない

「次はハウゼン!」

「わかりました」

「援護する!」

ウォルターの指示に、了解の意思を示すレイゼン

それを聞き取り、ネクストは両手を敵に向けた

ネモ三機がおろおろするだけのクラウン隊は無視し、再び基地所属戦隊へ攻撃するのだ

 

「逃げろ逃げろッ!」

ナガレボシの両手から交互にビームが連射される

こればかりはシールドで防ぐのは危険だ、ジムは散開した

ブースターで思い思いの方向へ離れるジムの部隊

そのうちの一機、いや偶然にも一緒の方向に逃げた二機を、ドムトローペンが狙う

 

レイゼンが狙いをつけた敵を援護しようと、他のジムが攻撃してくる

だがウォルターがマシンガンを乱射した

それに当たらないよう、ジムスナイパーⅡが僅かに動きを変える

その瞬間、ドムが動いた

猛烈に砂埃を巻き上げつつ、ホバーとブースターを併用して地上を高速で移動する

右手にラケーテンバズを構え、左手にはマシンガンを持ち、足にマウントしたシュツルムファウストの弾頭を前方の目標へ向ける

「食らえ!」

ドムトローペンの方を向いたジムがその意図に気付いたように身じろぎをした

もう遅い

三種類の武器が、一斉に炎を吹いた

マシンガンが無茶苦茶に飛び回り、バズーカが突撃し、シュツルムファウストが踊った

そのいずれかが、敵機に命中した

片方のジムのシールドは粉々に砕け散った

片方のジムの頭部は粉々に砕け散った

二機とも仕留められなかった

だが、いいところまで弱らせることはできた

「美味しいところはやる・・・行け」

「任せろ!」

あっさりと敵から離れるレイゼンに、ネクストは力強く応えた

横へ移動するドムトローペン

そして、先ほどまでそのドムがいた地点を、ネクストがナガレボシで駆け抜ける

踏み砕かれた地面を振り切って、走る、走る

ジムが一機、サーベルを抜きつつバルカンを乱射した

もう一機の方はビームライフルを放った

バルカンは弾き、ビームライフルはバリアで無効化する

ブースターで接近しながら、一気に斬りかかってきたジムに、ナガレボシもビームサーベルを取り出した

「お、」

二機のサーベルがぶつかり合う

「おお、」

だが、ジムの方のサーベルに、ナガレボシの白いサーベルが食い込んだ

「おおおおおおおおおおーッ!!!!!」

そのままネクストは、ビームサーベル諸共敵機を切断した

一瞬で装甲を通り抜ける白い光

胸から入ったそれは、瞬きより早く背中から出てきた

空中で、ジムが大爆発を起こした

 

 

 

 

 

 

ヴィランは逃げ出した

ネモの機動力を全開まで利用した、全力の逃げ足であった

「あああ畜生!ガンダムさえ、ガンダムさえあればぁ!」

屈辱と行き場のない怒りに顔を歪ませて、連邦のボンボンは叫んだ

顔には青筋が浮き立っている

「カーネイジ、マグニート、いるな?!」

「はい、隊長!」

「ここにいます、生きています!」

腰巾着二人の存在を確認すると同時に、その二人以外の部下が死んだことに気を失いそうになる

また父に怒られる理由が増えたのだ

「ヴィラン大尉、今は一刻も早く逃げましょう!」

「今死ぬべきではありません!」

「そんなことはわかっている!おのれ、おのれぇ、ジオン残党どもめぇえええッ!!」

怨嗟の雄叫びをコクピットで喚きながら、ネモ三機は逃げていった

 

ケイロンは残りの味方を確認した

五機いた仲間は、残り三機

クラウン隊含めると、十五機の中で生き残ったのは六機

「なんてこった・・・」

そして敵の損耗はゼロ

ケイロンの背筋が凍り付いた

レーダーで味方が後退するのを確認しつつ、ブースターで後退移動をする

追撃されると考えたのだが、相手は追いかける様子はない

「いったい何なんだ、奴ら・・・?」

味方の死に歯噛みしながら、ケイロンはジムスナイパーⅡを飛ばして撤退した

 

 

 

 

 

ジムが尻尾を巻いて逃げていく

勝った

勝ったのだ

完全大勝利だ

「やっ・・・たぞぉおおおおっ!!」

ネクストが両手を上へ振り抜いた

あまりの喜びに、つい大きなアクションを起こした

ナガレボシも同じ動作をしてしまう

だが、勝利に酔っていたのはネクストだけではない

四倍以上の戦力差を、覆したのだから

「やったやったやったやったイェー!!フォーッ!!」

グレックリーはやたらなハイテンションで騒ぐ

「任務完了か、フッ・・・」

レイゼンはニヒルに笑う

「諸君、よくやってくれた」

ウォルターが全員に声をかけた

グフとドムとナガレボシの視線が、ザクⅠに集まった

ウォルター自身も、コクピットの中で微笑んでいた

そして今日の戦いを、こう締め括った

「さあ・・・帰ろう!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。