機動戦記ガンダム・ナガレボシ   作:アルファるふぁ/保利滝良

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こんにちは
連邦軍人は主要キャラ以外みんな酷い奴等ばかりだと思い込んでいるアルファるふぁです
でもジオニストは卒業してます(笑)



パルバライゼーション

 

「ぁああああッ!」

クラウン隊隊長、ヴィランが奇声を上げた

その胸には黒い憤怒と真っ赤な憎悪が渦巻いている

髪を掻きむしり、虚空を睨み付けると、ヴィランは少し落ち着きを取り戻した

カーネイジとマグニートの二人組がおろおろしながらそれを見ていた

「ヴィラン特務大尉」

鼻息荒く、ジロリと振り返る

いかにも不機嫌なヴィランに声をかけたのは、ブルースだ

「あぁ、貴様か・・・」

舌打ちしつつ、ヴィランは答えた

「何の用だ」

「出撃前の約束、お忘れでないですね?」

ヴィランが不愉快そうに顔を歪めた

そうだ、自分はコイツととある約束を結んでいたのだった

己の無力さを、この何処の馬の骨とも知らぬ男にさらけ出すような約束を

「・・・好きにしろ!」

歯が欠けるのではないかというほど歯軋りをすると、ヴィランは身を翻して歩きだした

腰巾着二人も慌てて着いてゆく

「ガンダムが今届いていれば・・・!」

クラウン隊の三人は、ズタボロになった味方のためにかなりの大騒ぎになっていたモビルスーツ整備ドックを出ていった

「なかなか荒れているな」

誰に言うでもなくそう呟いたブルース

その顔は笑ってもいなかった

ヴィランに嫌な感情を抱いているから無表情になっているのではない

無駄なことを一切削ぎ落とした、兵士の顔だ

 

 

 

 

 

 

ブルース・ウェイン連邦軍大尉は、先の第一次アイアンフィスト攻略戦に参加できなかった

別にどうしようもない理由があったわけではない

予備のモビルスーツはあるし、彼にパイロット適正がないというわけでもない

むしろその逆だ

ブルースは『強すぎる』のだ

基地所属戦隊とクラウン隊、ここの連邦軍基地の中で最も腕のいいパイロットは彼だ

ヴィランは、彼により狩りの獲物が全滅するのを怖れた

そこで、ブルースに基地での待機を命じたのだ

あの高慢さと自己陶酔と妬み深さの塊であるあのヴィランが、である

それだけでこの男の腕のほどがわかる

だがブルースはこの件に、個人的に悲しんでいた

「・・・まさか、必死になって磨いてきた腕が仇になって、部下を失うとはな」

彼は自分の腕を過大評価していない

だが、それでも、今回の作戦に自分がいなかったために、基地所属戦隊の部下に不用な犠牲を出してしまった

あのときあの場にいれば、最悪代わりに死ねただろう

それもできなかったのだ

「・・・負けられんな・・・」

だが同時に、ヴィランの出撃前にブルースは約束を取り付けた

ヴィランが負けた際、独自に攻撃をしていいという約束を

まさか自分が負けるとはその時思っていなかったヴィランは、それを呑んだ

その結果、今回は出れるようになった

もう部下の死に悲しむことはない

残念ながら、その心の隙一つが、戦場では死に繋がるのだ

彼は、己が連邦軍という大きな組織のちっぽけな部品に過ぎないことを知っていた

自覚していた

無駄なことは一切捨てて、連邦の言うことを聞くことに全力を尽くしてきた

良くも悪くも、職業軍人なのだ

「ジムクゥエルは上がっているか?」

「へい、バッチシですぜ大尉!頑張ってきてくだせえ」

「ああわかった、お前らも準備しろ」

整備長と短いやりとりをし、ブルースは一列に並んだ部下に声をかける

「了解!」

「了解!」

「了解!」

「了解!」

「了解!」

五人のパイロットがそれに敬礼をする

彼らは駆け足でそれぞれのジムに走っていく

それらを尻目に、ブルースもジムクゥエルに歩み寄る

迷いはない

自分はただ一本の矢、一発の弾丸なのだ

撃つ人間の目的を、愚直に、確実に遂行するのが役目だ

迷いなどはこれっぽっちもない

ただ一つ不安を挙げるとすれば、実戦はネオジオンの地球降下以来ということだが

「そればかりはどうにもならんか」

コクピットシートに座り、OSとメインシステムを立ち上げる

ジェネレータ出力、駆動系の稼働率、スラスターのチューン

推進材と各種武器弾数の残量

その他諸々

コクピットにいる時自分で確認できることは全て確認する

機械が出したオールグリーンを鵜呑みにして、戦場でアクシデントが発覚してからでは遅い

死の目は自分で消せるだけ消す

メインカメラの写りもよく見て、機体状況わできるだけ把握した

問題はない

全くもって良好だ

「システムチェック完了」

操縦桿とフットペダルにそれぞれ手足を置き、ブルースは深呼吸をした

新鮮な酸素を吸い、古い二酸化炭素を排出する

そして、部下を見て、号令をかけた

「全機発進準備」

「了解!」

五人分の返事を耳に入れ、ブルースはフットペダルを踏み込んだ

「ブルース・ウェイン、出撃する」

ジムクゥエルが一歩を踏み出した

その後ろを、基地所属戦隊のモビルスーツが着いていった

 

 

 

 

 

やや歩いただろうか、振り向いても基地が見えなくなってしまった

荒野の向こうに見えたのは、三機のモビルスーツ

そのどれもが、武器を持っていた

「ザクⅠ、グフカスタム、ドムトローペン・・・そして」

その情報がある機体の後方に、トリコロールの異形の機体

「あれが・・・」

モビルスーツであるかどうかも疑わしい、奇っ怪なフォルム

ブルースはなんのリアクションもしない

通信機越しに部下のざわめきが聞こえたが、それだけだ

戦うことに、変わりはない

ブルースはペダルを踏みつけた

その視線は、ただ冷たかった

 





次回は戦闘前恒例キャラクターの過去回想です
誰が出るかな?誰が出るかな?
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