水鬼の視線 ー完結ー   作:電動ガン

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page7 ユメノシマナノヨ

「とりゃーーーっ!」

 

「ないす、ぴっちん、ぐ」

 

アカツキの投げたビンがきらきらと陽光を反射し、放物線を描いて着水する。ゆらゆらと漂うそれは沖を目指していった。

 

「ふぅ・・・今日のやること終了!」

 

「おつ、かれ。」

 

「これで流した手紙は30個・・・ちゃんと届いてるといいなぁ・・・」

 

「海は・・・静か。」

 

「ま、遭難中だし。気長に待つわ。」

 

艤装から黒い煙を噴かして砂浜へ逆戻りする・・・と、海底を泳ぐ何かがいる。この大きさ・・・まさか。

 

「アカツキ・・・こっち、へ。」

 

「ふぇ?なにパク・・・っきゃああああっ!!」

 

巨大な水柱と共にアカツキは空高く打ち上げられた・・・海底から現れたのはクジラのような外観をした巨大な下等深海棲艦だった。おかしい。あの嵐を越えてきたの?

 

「ぴゃああああっ!!!」

 

「アカツキ!!!」

 

「!!!!」

 

金属を引き裂いたような鳴き声をあげるそいつは喉の奥から漆黒の砲身でアカツキを狙う・・・私を無視してだ。

 

「オノレッ!!」

 

「!!?!?」

 

艤装の両腕でそいつを持ち上げ、豪快に引きちぎってやる。私ほどの上位になれば容易い。黒い液体を撒き散らしながらビクビクとのたうつそいつは次第に海に沈んでいった。

 

「アカツキ!!」

 

「ぴぃ・・・だ、大丈夫よ・・・」

 

「早く・・・浜、に、戻ろ、う。」

 

「そうね・・・なんでパクチー以外の深海棲艦が・・・」

 

「わから、ない・・・」

 

アカツキを大事に掴み、浜辺へ急ぐ。嵐が弱まってきたのか・・・はたまた嵐の外に大挙して押し寄せてきたのか・・・原因はわからないが、ひとつだけ理解した。

 

「ここ・・・は、危険・・・だ。」

 

「・・・でも、どうするの?あの嵐からは出られないんじゃないの?」

 

「おそ、らく、嵐、が弱まって、いる。島、の、近く、で発生、した奴、なら、わかる、から。」

 

「じゃ、じゃあ出られるの!?」

 

「出て、も、外、は、敵がいっぱい、かも・・・」

 

「う・・・それは怖いわね・・・」

 

「少し、様子、を、見る。だい、じょうぶ。私、強い、から。」

 

「そ、そうね・・・さっきのロ級も、まっぷたつだったし・・・」

 

「強い。」

 

危険が迫ってはいるのはアカツキに対してだ。私はよっぽどでなければ脅威にはならない。アカツキは鎮守府に帰ることを望んでいる。ならば友としてそれを手伝ってやらないと・・・

 

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時は一週間ほどさかのぼり。夕暮れ時のラバウル。

 

「俺達もあのM作戦に参加していたし、暁捜索に・・・協力してやりたいが・・・これは罠なんじゃないか?」

 

「・・・。」

 

「・・・なんてったって都合が良すぎる。なぁ鈴木よ。そこんとこどう思う?おい。」

 

「私は・・・」

 

「まぁまぁ若林君、そうカッカするなよ。鈴木君、これはレアケースだ。罠だなんだと決めつけるのは早計だと思うよ?」

 

「だけどよ!森本のおっさん!この手紙の内容が本当ならとんでもねぇ事態だぞ!?超大型深海棲艦・・・ここらのちっさい泊地なんか一晩で焼け野原だ!」

 

「・・・。」

 

「だから、その内容通りならその超大型深海棲艦は友好的なんだろう?話も出来るらしいじゃないか。」

 

「ですが森本さん、暁ちゃんが脅されて書かされた、という可能性も捨てきれないです。」

 

「ううーん・・・」

 

「とりあえず・・・だ。鈴木、若林、森本。この手紙の内容が本当なら・・・駆逐艦暁はあの嵐の中だ・・・」

 

「一通目は俺のショートランド。二通目はテテパレ島、そのほかソロモン諸島、ツバル、ニューカレドニアなどかなり広範囲に漂着しているようです。一番遠くてオークランド・・・」

 

「我がトラック泊地にも毎日漂着物はあれど手紙のようなものは確認されていない・・・かなり大規模に捜索しているがな。」

 

「山尾中将・・・既に捜索は打ち切ってしまいました・・・再開するべきなのでしょうか・・・?」

 

「鈴木、お前はどうしたい?」

 

「私は・・・ど、どうしたら・・・これ以上他の艦娘を危険な嵐の海域に送り出すのは・・・」

 

「その超大型深海棲艦・・・手紙を読めば随分仲良くやっているようではないか。我が輩は捜索再開しても悪い事にはならんと思っている。」

 

「山尾中将・・・!本気でありますか!?」

 

「若林君!」

 

「良い・・・森本、若林も自分の艦隊を危険に晒せんと言いたいのだろう?」

 

「そうであります!確かに助けられる可能性があるなら助けたい・・・ですがこの賭けは負けたら南方一帯が火の海になるんですよ!?駆逐艦娘一隻と・・・どちらが助けるに値するか・・・」

 

「くっ・・・」

 

「・・・ならばこうしよう。ただいまよりトラック、ラバウル、ブイン、ショートランドの各泊地は協力し超大型深海棲艦を捜索し、撃滅する。」

 

「!!」

 

「りょ、了解!」

 

「了解。」

 

「漂着物により判明したこの脅威・・・放っておくわけにはいかないだろう。後日、正式に作戦を開始する。」

 

「それなら僕は先に偵察艦隊を編成すればいいですかな?」

 

「・・・頼めるか?」

 

「了解。」

 

「鈴木は我が輩の艦隊と連合艦隊を組む準備をしておけ。若林、お前は漂着物の捜索だ。超大型の手がかりを見逃すな。」

 

「了解っ!」

 

「了解!」

 

「た、大変です!!」

 

「こ、こら榛名!会議中よ!」

 

「も、申し訳ありません!緊急事態です!タスマン海に大型の嵐が発生、嵐内部より深海棲艦が出現しオーストラリア、ニュージーランドに甚大な被害が出ているとのことです!各国政府が日本に艦娘の出撃を要請して、すぐさま出撃するようにと・・・!」

 

「・・・話は聞いたな?先にこちらからだ。急げ!!」

 

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時は戻り、どこともわからない、暁の漂着した島。

 

「アカツキ。」

 

「なに?パクチー。」

 

「明日、の、おてがみ、は、私が、書きたい。」

 

「えーっと・・・パクチーが書ける大きさの紙もペンもないから、私がパクチーの言葉をお手紙にするわ!それにパクチー、日本語書けるの?」

 

「・・・書けな、かった。」

 




小ネタ

「じゃあパクチー!ドラム缶に思いっきりぎゅーって絞るのよ!」

「わかった。」バキバキメシメシボタボタ

「・・・うわぁ!すごいわ!ココナッツミルクたっぷり!何リットルくらいあるのかしら・・・これで夢にみたミルク風呂ができるわね!」

「(ミルク風呂のミルクとは動物性の乳ではないのか?)」

「これでお肌ぷるぷるよ!」

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