「えいっ」
投合されたガラス瓶がぽちゃりと音を立てて波間を漂っていく。もういくつ投げただろうか材料の続くかぎりは投げてきた手紙入りの瓶。暁には予想も出来ない。
「ねぇパクチー」
「な、なに?」
「手紙、ちゃんと届いてるかしら。」
「わか、らない。」
「そうよね。」
幾百と続けたこのやりとり。島から出ることも出来ず、繰り返し続けた行為に暁のメンタルは限界であった。
「助け、来ないわね。」
「きっと、嵐、抜けられない。」
「そうよね。」
ぼんやりと波の向こうの雲の壁を眺める。天気は快晴。雲の壁は頭上までを覆うことは決して無かった。
「私、ちゃんと帰れるのかしら」
「・・・アカツキ、採集、行こう。」
「そうね。」
ぐらりと大きな体を揺らし立ち上がる。差し出した手のひらに暁を乗せ島の反対側、崖と暗礁の広がるオイルの海へ向かう。
「飲んで。」
到着したらば艤装にオイルを飲ませひたすら採集する。すると手のひらの暁が何かに気づいた。
「・・・パクチー!あれ!」
「どう、した、?アカツキ?」
「あれ艦娘じゃない!?」
「?」
暁の指さす方向を見ると雨合羽につつまれた、暁と比肩すると大きい艤装、座礁したと思われる艦娘だった。
「パクチー!あの艦娘のとこへ連れてって!」
「わか、った。」
「・・・生きてる、助けなきゃ!」
「・・・。」
「パクチー!手伝って!」
「・・・。」
「パクチー?」
「・・・こいつ、は、私の、資材、狙って、きた、のかも、しれない。」
「そうかもしれない・・・でも見捨てるなんてレディーのすることじゃないわ。」
「・・・。」
「パクチー、私が説得する。ダメだったときは・・・私ごと海へ投げ出していいから。」
「・・・それは、いや、だ。アカツキ、を投げ出す、なんて、したく、ない。」
「お願いパクチー・・・」
「・・・。」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・
・
明るい・・・これは太陽の日差し・・・?私は・・・嵐の中を突っ切ってきたはず・・・
「目が覚めた?」
声・・・仲間の物じゃない・・・
「大丈夫?もっと修復材かけてみよ。」
なに・・・?かけて・・・?
「おぼぼおぼぼぼぼ!」
「あ!目覚めたわ!」
「ぷはぁっ!げっほげほ・・・あれ・・・?」
「私は暁よ。あなたは誰?」
「貴方が私を助けてくれたのですか・・・?」
「座礁しているところを見つけたの。」
「そうだったのですか。私は大和、大和型戦艦一番艦の大和です。」
「戦艦大和!貴方が大和なのね。初めて見たわ!私は暁。」
「助けてくれてどうもありがとう。でもここは・・・?」
「場所はわからないわ。私も遭難中だから。」
「そうだったのですか・・・」
「大和さんあなたはどうしてこの島に来たの?」
「私は・・・横須賀からラバウルへの救援として出撃しました。嵐の中より現れた深海棲艦を迎え撃つために。」
「嵐の中・・・?」
「はい。タスマン海に発生した大型の嵐と同時に深海棲艦の進攻がありまして・・・ここは・・・あの嵐の中・・・?」
「少なくともここで深海棲艦は見たことないわ・・・一体を除いて。」
「・・・?それはどういう・・・」
「大和さん、貴方を助けたのは私じゃないわ。見つけたのは私だけど。」
「暁さん・・・?」
「パクチー!」
私がみたのは大きな水柱をあげて現れた・・・巨人だった。