「あ、ああ・・・」
巨人、神話等で語り継がれた物語に存在する巨大な人型の怪物。私の目の前にいるのはそれそのものであった
「助けてくれたのは私の友達の彼女よ。名前はパクチー。」
「え、は、ええ?」
「驚くのも無理はないわ。わたしもそうだったもの。」
「あ、あれは・・・いったい・・・」
「・・・。」
開いた口が塞がらないとはこういうことを言うのだろう。暁が言う友とは巨人であった。
「おま、え。」
「はえ?!」
「おまえ、の狙いは、なんだ?資材、か?」
「し、資材・・・?な、なんのことでしょう・・・」
「じゃ、何が、ねらい?」
「私は、タスマン海に出現した深海棲艦を討伐するために派遣された艦娘の、大和です。」
「わたし、の、資材が狙い、じゃ、ない?」
「そ、そうです。資材の回収が、目的じゃないです。」
「大和さん、パクチーは資材を集めるのだけが目的の深海棲艦なの。資材に手を出さなければ何もしないわ。」
「深海棲艦・・・!?こんな、巨大な・・・」
巨大な深海棲艦など見たことがない。勝てるわけがない。本能的に、負けを確信した。
「暁さん・・・貴方は、深海棲艦といて、大丈夫なんですか?」
「最初はびっくりしたわ。でも襲ってこないし無視されるし。こんな深海棲艦初めてだったもの。でも今は大丈夫。資材を横取りしたりとかしなければ平気よ。私のことも助けてくれたし。」
「暁さん、貴方・・・」
洗脳されているのでは。そう思ったが口にしなかった。まだあの巨人の深海棲艦が見ている。
「ところで、大和さん。これからどうするの?」
「へ?ああ・・・助けてくれてありがとうございます。ですが私はここを離れすぐに味方の艦隊へと合流しなければなりません。」
「それは、できない。」
「何故です?」
「厚い雲の壁・・・すごい、嵐・・・この、島、出るの、わたしでも、できない。」
巨人が指さす先・・・そこにはそびえ立つ黒い雲の壁。大嵐なのだろう
「助けがこないか空き瓶にお手紙いれて流してるんだけれど、来なかったわ」
「そうなのですか・・・?」
「出れないなら誰かに助けてもらうしかないじゃない。」
「それは・・・そうですが・・・」
「大和さん、改めて聞くけど、どうする?」
・・・・・・・・・・
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・・・・・・
・・・・
・・
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暁と大和の二人は砂浜に座りいそいそと空き瓶に手紙を詰めている。
「無線でも一応呼びかけてみてはいますが・・・このような原始的な手段に頼るのも悪くないですね。」
「私は大和さんのようにいい無線は積んでなかったから助かるわ。」
「それよりも・・・」
横で膝を抱えてこちらを見ている巨人型深海棲艦。何かいうわけでもなくじーっと暁達をながめていた
「あの・・・暁さん・・・彼女は・・・何をしているんでしょうか・・・」
「何って・・・なにもすることがないからぼんやりしてるんじゃないかしら。」
「そうですか・・・」
そう言われてしまうとそう見えてくるものがある。大和は警戒を崩さないでいた。
「あの・・・一日どんなことをしているのですか?」
「えっと朝、パクチーと資材集めの為に島を回って歩いて・・・」
「島・・・ここ島だったんですね。」
「それ以外にあるとおもってたの?」
「いや、そういうわけじゃないんですけど・・・そうするとここは台風の目みたいな場所なんですね。」
「そうね、そうなるわ。」
「それで、朝は資材集めをして・・・そのあとは?」
「終わりよ。」
「へ?終わり?」
「そう。」
「あ、たまにSOS発信したりしてるわ。」
「はぁ・・・」
「何もすることが無いのよ。島の奥地に入って迷子にでもなったら大変だし、雲の壁に近づこうとしても近くは大しけで近寄れないし。」
「えと・・・その・・・パクチー、さんは・・・?」
「朝、資材を収集したらこの浜辺でぼんやりしてるわ。」
「そーだ、大和さん!今日はあれやりましょ!ココナツミルク風呂!」
「え・・・?」
「ココナツを集めてパクチーにぎゅーっと絞ってもらってドラム缶いっぱいにして・・・」
「暁さん。」
「これでお肌もぷるぷ、はい?」
「暁さんは、帰りたくないんですか?」
「え?」
「帰るためのアイデアを考えたり、装備の点検をしたり、やるべきことはある筈です。帰るためにもっと全力で取り組むべきです。」
「・・・。」
「大和はこれから雲の壁に行ってきます。そのまま出られるようなら出ます。暁さん、一緒に行きませんか?出られないからと胡坐をかいて助けが来るのを待っていては何も進展しませんよ。」
「・・・・。」
「・・・・。」
暁と大和の間に重い沈黙が流れた。
「・・・行ってきます。」
沈黙を破ったのは大和で一人、艤装に火を入れて海へと繰り出していった。
「・・・私だって、帰りたいわ・・・でも、小さな私じゃ何もできないのよ・・・」