雲の壁が近づく、目の前に迫る壁は体感より遥かに大きいものだった。
「すごい雲・・・でもなにか・・・」
時化る海の直前まで来た大和は不安定な波に揉まれながら辺りを見渡していた。
「・・・?何か様子が・・・変な感じが・・・」
波が渦を巻き、暴風が蠢くそれを注視し観察する大和。
「やっぱり。これは戻って暁さんに聞いてみたほうがよろしいですね。」
目前の嵐に背をむけ引き返す大和。
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「暁さん。」
「なぁに大和さん。」
「暁さんは・・・あの、雲の壁に近づいたことはありますか?」
恐る恐る大和が暁に聞く、暁は少し伏し目がちに答えてくれた。
「無いわ・・・暁みたいに小さいと近づくだけでも転覆しそうで・・・」
「そうでしたか、では、あの、パクチーさん、は?」
「わたし、か?」
パクチーは大きな体を屈め二人に顔を寄せた
「わたし、は、近づいたこと、ある。閉じ込め、られた、と、わかった、とき。」
「その時に、何か違和感を感じた事は?」
「わか、らない。ただ、出れそうに、ない、とだけ。」
「(これだけの巨体を持つ深海棲艦が出られないと感じる・・・)」
大和は思案し、パクチーと暁に視線を移すと再び口を開く。
「あの、暁さん・・・先ほどあのような物言いをしてしまったところ申し訳ないのですが・・・」
「大丈夫よ。私も臆病になってたから・・・」
「わかりました・・・改めてご相談をしたいのですが、暁さんも大和と一緒にあの雲の壁を見に行ってもらえないでしょうか。その、大変危険なので、パクチーさんに手伝ってもらって・・・」
「?なにか気になることがあるのね。パクチー!」
「わか、った。アカツキが、やるなら」
パクチーが巨大な艤装に合図を出すと艤装が腕を伸ばした。
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「ここで止まってください。」
「わか、った。」
海をかき分け進むパクチーと追従する艤装、それに乗り揺られる暁と大和。
「暁さん、ここから先は危険なので、ここから見える状況で何か感じることはありますか?」
「えっと・・・?」
帽子を被り直し辺りを見渡す暁、じーっと雲の壁を見つめてハッとなったように気づく。
「この海、確かに時化てるけど何か変よ。」
「そうなんです・・・暁さんには何が変に見えますか?」
「え・・・それは・・・うーん・・・」
首を傾げながら雲の壁を見つめる暁。
「・・・あ、え?嘘、どういうこと?」
「気づきましたか。」
「あの雲の壁の下・・・水面はどこ?」
暁が指さした雲の壁の麓と呼ぶような場所は加工写真のように雲の底面とあったはずの水面が混じりあって境界がわからなくなっている。
「大和はこれが嵐が起きているから海流も風向きもぐちゃぐちゃになっているんだと思ってました・・・でも逆です。これは、海流もなにもがおかしくなっているから嵐のようになっているんです。」
「なに、わから、ない。」
「えっと、ですね、パクチーさん、この嵐は私たちが想像するよりももっと厄介なものだと大和は想像しました。」
「え、じゃあ私たちが書いた手紙・・・」
「残念ですが・・・どうなっているかは・・・」
「そんな・・・」
二人の顔が曇り、消沈していく。しかしいつも表情の動かないパクチーの口角が僅かに上がった。