雲の壁から離れ、再び砂浜に戻った3人は顔を突き合わせていた
「全然わからなかったわ・・・只の嵐じゃ無いとは思ってたけど・・・」
「致し方ありません。駆逐艦の小さな体躯ではあっという間に飲み込まれていたでしょうし。」
「うん・・・」
「暁さんはここに辿り着いた時のことを覚えていますか?」
「ええと・・・覚えてないわ・・・大和さんと同じく漂着していたの。」
「そうでしたか・・・では他に入ってきた人は?」
「他には・・・最初からいたパクチーだけよ。・・・あっ」
「なにか?」
「人じゃないんだけど深海棲艦が入ってきたわ。」
「深海棲艦が・・・パクチーさんにも聞いてみましょう。」
「なん、だ?」
パクチーは屈んでいても顔が結構な高さにあるため二人は見上げることになる。
「パクチーさん、あなたがここに入ってきた時、どうでしたか?」
「・・・。」
パクチーは思案する。大きな顔が動くと迫力があり大和は思わず身構える。
「わたし、が、来た時、ここ、に、嵐は、なか、った。」
「!」
「ほんと!?」
「わたし、が、ここに、きた、とき、資材も、なかった。」
パクチーが艤装を呼び口を開けさせると中に暁達から見ると山のような各種資材がある。
「いつから、か、わからない。でも、資材、あるの、わか、って、集めた、とき、には嵐、あった。」
大和の表情が少し曇る
「嵐に、も、近づいた。雲の壁、入るとここに戻ってくる。いろいろ、投げ込んだり、した。戻ってくるもの、と、こないもの、あった。」
「具体的に、戻ってきたものとこないもの、わかりますか?」
「おぼえ、てない。」
「・・・そうですか。ありがとうございますパクチーさん。」
「良い、アカツキの友達、なら、わたしの、友達」
「(本当に変わった深海棲艦ですね・・・)」
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
夜、今日は珍しくパクチーは海に出て海の上から星を眺めていた。
「・・・暁さん。」
「なぁに大和さん。」
「暁さんが出した手紙、きっと届いてると思います。大和の推測が正しければ。」
「えっ!?本当!?」
「はい。大和の推測、聞いてもらえますか?」
砂浜のシェルターで横になっていた大和は暁に向き直り、真剣な顔で口を開く。
「あの嵐、原因はこの島の資材にあると思っています。」
「資材・・・?」
「はい。」
暁は身を起こしちらりと海の上で星を眺めるパクチーを見た。
「資材が、どう関係あるの?」
「おそらくなんらかの力がこの島から資材を出さないようにしているのではないかと思っています。」
「なんらかの力・・・」
「パクチーさんが言ってたことが本当なら、パクチーさんは嵐に入り、ここに引き戻されている。そして嵐に投げ込んで戻ってきたものはこの島のものではないかと思います。戻ってこなかったものは流れ着いた島の外のもの。」
「うん・・・」
「暁さんが出した手紙と瓶はこの島にあったものではないですよね?」
「そうよ。パクチーが流れ着いたものを拾ったって・・・」
「この島のものではないなら手紙入り瓶は嵐の外に出ていると思います。」
「・・・!じゃあ!私たちは出られるんじゃない!?」
「これも推測ですが・・・おそらく今のままでは無理です。」
「え・・・どうして。」
「暁さん、この島の資材を使って補給をしたりしませんでしたか?」
「あっ・・・」
「大和のこともこの島の資材で修復しましたよね?」
「・・・ごめんなさい・・・」
「いえ、いいんです。あのままでは大和も朽ち果てていたことでしょうし・・・」
「・・・うん。」
「大和達が出るためにには・・・補給した資材以上の損傷を被る必要があると思っています。」
「大破状態で・・・あの嵐に突っ込むの?」
「・・・現状そうすれば・・・出られる可能性が高いです。」
二人は少し見つめあった後・・・遠くの嵐の壁を睨みつけた。