水鬼の視線 ー完結ー   作:電動ガン

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page13 オオキクナッタノヨ

暁と大和を大破させ、コンテナに詰めて嵐の外に追いやった後

 

「・・・。」

 

細波が足を打ち、雲ひとつない夜空を見上げるパクチー

 

「おおきく、なったわ。」

 

ひとりごちるパクチー、その手には無数の空き瓶が握られており月明かりと波の反射でキラめいて見えている。

 

「・・・。」

 

パクチーは拳を握りバキバキと瓶を潰していく。その顔は表情が読めず、瓶を粉微塵にしていった。

 

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場所はラバウル、ショートランドの装甲連絡船が到着しつつあった。波止場にはラバウルの皆が集まり今かいまかと連絡船の到着を待ち望んでいる。

 

「・・・!」

 

連絡船が埠頭に着くと同時に荷物の陸揚げが始まる。そして皆が待ち望んでいた小さな影が船を降りてきていた。

 

「・・・駆逐艦暁!帰投しました!」

 

暁が帽子を直しながら敬礼をする。待ち人達も揃って敬礼し、鈴木提督が一歩前に出る。

 

「・・・おかえりなさい。」

 

あちこちで今にも飛びかからんと堪える者、涙を堪える者で溢れたラバウルの波止場に笑顔があふれている。

 

「ただいま!」

 

暁の返事と共にタガが外れたのか歓声に包まれる波止場、暁はもうもみくちゃにされて帰投を喜ばれている。

 

「手紙読んだぞ!」「生きてて良かった!」「無茶しやがって!」

 

様々な言葉の嵐に包まれる暁は涙して再開を喜んでいる。

 

「お姉ちゃん・・・」

 

「電・・・」

 

「お姉ちゃんがいない間、とっても辛かったのです・・・みんなにひどいこといっぱい言っちゃって・・・すっごく辛かったのです・・・」

 

「そう・・・ちゃんとごめんなさいした?」

 

「したのです!いっぱい・・・いっぱいしたのです・・・」

 

「そ・・・じゃあよろしい!ただいま電!」

 

「お゛か゛え゛り゛な゛さ゛い゛な゛の゛て゛す゛ぅぅぅあああああああん!!」

 

電と抱き合って再開を喜ぶ暁、その後ろで横須賀の艦隊が大和を迎え入れている。

 

「さぁ!みんな!いつまでも喜んでる場合じゃないわよ!まだやることが残ってる!!暁は報告!よろしくね!!」

 

はぁいと返事が聞こえた後各々が持ち場に戻っていく。暁は提督に連れられ執務室へと向かっていった。

 

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「さて、暁、大和さん、報告をお願いします。」

 

「はい。」

 

執務室のテーブルを囲みお茶を一杯すする。

 

「報告なんですが・・・実はあまりよく覚えていないのです。」

 

「うん・・・」

 

「はい、まるで漂流自体が大したことではなかったように記憶が薄いというか・・・」

 

「うん・・・それは若林提督の報告でも聞いているわ。わかる範囲で良いの、二人とも教えてくれる?」

 

「とりあえず漂流していた場所なんですが嵐の中心部のような場所だったのを覚えています。その嵐が晴れているところを見たことがないです。大和さんが来たときも晴れた形跡はなかったです。司令官の方でそういう場所なかったです?」

 

「あったわね・・・ええっと、場所はこの辺りかしら。」

 

テーブルの海図に丸がかきこまれていき、漂流地域の断定を図る鈴木。

 

「この辺りにずっと嵐が居座っている場所があるの。現在進行形で・・・」

 

「おそらくそこでしょう。ショートランドに着いた関係から大和もそう思います。」

 

「中には島があって・・・えっと、」

 

「資材が山のようにあったエネルギースポット、だったのよね?」

 

「そうです・・・でもそれも曖昧で・・・」

 

「わかった。次なんだけど・・・超大型深海棲艦について。」

 

「それもよく覚えていないのです・・・さらに言うと深海棲艦と会っていたとも感じてなくて、巨大な何かと一緒にいたくらいにしか覚えてなくて・・・」

 

「うーん手紙にも襲われたとか何かあったとは書いていなかったわね・・・」

 

「大和も一緒です。確かに巨大な存在と一緒にいて・・・ううーん。」

 

「じゃあどうやって島と嵐を出たとかは?」

 

「それが一番わからないんです・・・なぜ大破していたのかも・・・」

 

「・・・わかった。だいたい若林提督の言っていたことと同じね。」

 

「すみません・・・」

 

「いいのよ。言ってることがガラッと変わる方が驚くし。暁はこのまま自分の宿舎に戻って休んでちょうだい。大和さんは横須賀の艦隊に貸してる宿舎へ行って休んでください。我々は今タスマン海に出現した深海棲艦を伴う嵐に対する作戦行動中です。今は治っていますが・・・警戒中ですので。」

 

「了解!」

 

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「ふぅ・・・」

 

暁は久しぶりの自分のベッドで横になっていた。砂の上にはっぱを敷いて寝る生活はもうだいぶ昔のことのように感じている。

 

「・・・パクチー・・・」

 

ふと口をついて出た言葉に驚いた。

 

「・・・大事なこと忘れている気がするの・・・」

 

暁は日が落ちて間もない時間だが眠気に襲われ、瞼を閉じた。

 

 

 


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