水鬼の視線 ー完結ー   作:電動ガン

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page2 アカツキトノデアイナノヨ

「・・・なにもすることがないのね。」

 

「もう、すること、終わった、わ。この島に、涌き出る、資材を、回収、した、もの。」

 

「・・・資材が涌き出るの?」

 

「そう、山には、金属、浜には、燃料、地中に、大量の、弾薬、あと、怪我が、治る水。毎日、採れる。あと部品の集まり、ネジ、とか。」

 

「・・・不思議な島なのね。ここが噂の宝島なのかしら。」

 

「噂?」

 

「艦娘の間で流行ってるの。宝島があるって。」

 

「興味、ない。」

 

「この島かもしれないのよ?」

 

「この、島、は、私の、拠点。全部、私の、物。私が、集める。」

 

「ひとりじめは良くないわ!」

 

「じゃあ、誰かが、採りにこれる、かしら?」

 

「・・・無理ね。あの雲、通り抜けられる気がしないわ。」

 

「アカツキ、みたいな、ちっこいのは、なおさら。」

 

「ちっこい言うな!ぷんすか!」

 

砂浜で海と雲を眺める。というか資材集めが終わったらそれしかすることがない。アカツキもどうしようもないのか隣で座って海を見ている。

 

「ちっこいって言うなら、貴方はとっても大きいのね。今までみたどんな深海棲艦よりもおっきいわ。」

 

「そう、なのか?最近、他の、生き物、に、出会ってない、から、わからない。」

 

「それにお話もとっても上手だし。誰かに教わったの?」

 

「わか、らない。気が、ついたら、こんな、だったの、よ。」

 

「ふーん。」

 

アカツキ、私が何もしないとわかったからか大分リラックスしたようで。砂浜に落書きをしながら聞いてくる。

 

「貴方くらいおっきいのを見るとメガトラマンを思い出すわ。」

 

「めが・・・なに?」

 

「メガトラマンよ!テレビで夕方からやってるのよ。宇宙から地球を壊しにやってくる怪獣をやっつけるために、選ばれし戦士がメガトラマンに変身して戦うのよ!山よりおっきな怪獣と戦うからメガトラマンもおっきいの。」

 

「・・・?宇宙・・・?怪獣・・・?」

 

「あーっ!こ、この島にいたらメガトラマン見れないじゃない!・・・今週は確か要塞怪獣ドリルドンだったかしら・・・ねぇ!テレビとかないの!?」

 

「テレビ、とは、なんだ?」

 

「あぁー・・・そん、なぁ・・・」

 

「すま、ないな・・・」

 

「これも全部しれーかんのせいだわ・・・」

 

テレビ、とはなんだろう。アカツキがこんなに落胆するなんてそれほど楽しいものなのだろうか。しかし、そんなのは見たことないし、漂流物にそんなものがあったようには思えないしなぁ・・・

 

「しれーかんったらひどいのよ!?対潜哨戒もレディーの仕事だーとか言って!そんなの関係無いじゃない!暁だってそれくらいわかるわ!」

 

「そう、か。シレイカンと、いうのは、悪い、やつ、なのか。」

 

「ん・・・悪い人じゃないのよ。いつもみんなのこと心配してくれてるし。おやつもプリンにしてくれるし。遠征から帰ったらなでなでしてくれるし・・・たまにいじわるするけど嫌いな人なんていないわ。」

 

「そう。アカツキは、シレイカン、が、大好き、なのね。」

 

「ち、ちちち違うわよ!そ、そんな大好きだなんて・・・えへへ・・・」

 

アカツキは顔を真っ赤にしてくねくねしてる。よく、わからないな。艦娘も。それにしてもアカツキはよくしゃべる。

 

「こんなに、おしゃべり、した、のは、久しぶり、ね。」

 

「・・・うぇ?」

 

「アカツキ、は、たくさん、おしゃべり、する、のね。」

 

「貴方は、あんまりしなかったの?」

 

「深海棲艦、会話、なんて、しなかった。艦娘、と人間に、対する、憎しみで、おしゃべり、に、ならない。」

 

「そうなの。確かに戦ってるとお話しして連携しているようには見えないわね。」

 

「それに、あいつら、私の、資材、狙う。だから、嫌い、なのよ。」

 

「深海棲艦にもいろいろあるのね。」

 

「わたし、だけ、かも。」

 

「そういえば、貴方お名前はなんていうの?」

 

「人間は、泊地棲鬼、と、呼んだ。まだ、髪が、白かった頃。大分、前のこと。」

 

「じ、じゃあ、今は姫級・・・!?そこから更に進化したってこと・・・!?・・・じゃなくて名前よ!泊地棲鬼なんて可愛くないわ。暁がとびきり可愛いの考えてあげるんだから!」

 

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「うーーーーん・・・・これも、いまいち、ね・・・レディっぽくないし・・・うーーーーん・・・」

 

アカツキはうんうん唸って砂浜に文字をいくつも書いた。私は字が読めないのでぼんやりと海と空を眺めて待った。

 

「決まったわ!」

 

「そう。」

 

「貴方の名前はパクチーよ!」

 

「パク、チー・・・」

 

「たしか・・・なんとかダーっていうお野菜の名前なのよ。サラダにいれると美味しいの。素敵な名前でしょ?」

 

「パクチー・・・私の、名前。」

 

「それと泊地とパクチーってなんか似てるじゃない?」

 

「良い、と、思う。私の、名前。初めての、名前。」

 

「良かった!よろしくパクチー!」

 

「よろ、しく。アカツキ。私は、パクチー、だ。」

 

どうやら私の名前はパクチーらしい。アカツキが一生懸命考えてくれた名前だ。なんだか、こういうのも、良いな。私はパクチー。音の響きは可愛いと、思う。

 

「・・・今日すること、他に何かあるかしら。」

 

「アカツキ、寝床、は、どこに、したい?」

 

「あ!そうよ!砂浜でなんて寝られないわ!ど、どうしよう・・・」

 

「・・・とりあえず、葉っぱを、集め、よう。」

 

「そうね!前に漫画で読んだわ!サバイバルでのベッドの作り方!パクチー手伝って!葉っぱを集めるわ!」

 

「わかっ、た。」

 

マンガってなんだろう。ともかく、アカツキが楽しそうでよかった。私も一日中海と空を見て過ごす日常が変わりそうで、少しわくわくした。




小ネタ

「メガトラマンは身長48メートル、体重4万6千トン。マッハ10で空を飛ぶスーパーヒーローなのよ!宇宙合気道で怪獣と戦って必殺技はコスモタイガースパーク!光エネルギーをプラズマと混ぜて腕を交差させて打ち出すの!変身するときは選ばれし戦士虎田勇人がプラックエンブレムを掲げて・・・」

「(さっぱりわからん)」



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