水鬼の視線 ー完結ー   作:電動ガン

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page16 開戦

「なんなんだ!なんなんだあいつは!!」

 

轟音が海を裂き砲弾を散らしていく。そこには無情で巨大な暴力しか存在していなかった。

 

「どうなっているんだ!?味方は!?」

 

凄惨な状況を想像した伊勢だったが味方は持ち堪えていた。あちこちで悲鳴が入り混じり戦線はとっくに崩壊している。

 

「みんな一時撤退!持ち直すぞー!!!」

 

無線で呼びかけるも聞こえてくるのは悲鳴ばかり、超巨大深海棲艦に狼狽するばかりであった。

 

「くっ・・・!」

 

伊勢が撤退することでそれに混じり撤退する艦娘達が目立ち始めた。しかし漆黒の巨大な手がそれを阻み艦娘達を散らしていく。

 

「間に合わない・・・!!」

 

伊勢は感じ初めていた。敵うわけがない。相手は自分の何十倍もある巨大な相手だ。みんな殺されてしまう・・・そう感じずにはいられなかった。

 

「全砲門開け!撃てぇーっ!」

 

「な・・・大和!?」

 

「みなさん撤退してください!戦線を立て直します。急いで!」

 

大和の鶴の一声で艦娘達は撤退し始める。狼狽えていた艦娘達に目に光が灯った。

 

「撃てぇーっ!」

 

大和の砲撃が巨大な手を払い除け退路を作っていく。艦娘達は瞬く間に撤退し、巨大な魔の手から退いていった。

 

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「・・・超巨大深海棲艦はタスマン海周辺を屯ろするだけで進軍する意図は見られません・・・今は斥候らしき深海棲艦を撃破するのみとなっています。」

 

「どうすればいいんだあんなデカいのを!!!」

 

「大和君、君たちが見た深海棲艦とは、違うものなんだね。」

 

「はい山尾中将・・・私たちが見たものは、こう牧歌的というか・・・邪悪な意志を感じるものではなかった気がします。」

 

「ふぅむ・・・超巨大深海棲艦が・・・まさか二体もいるとは・・・」

 

海軍の指令船の中は阿鼻叫喚だった。それもそのはずだった。二体目の超巨大深海棲艦の存在は南方だけではなく本土にまで影響をもたらしていた。

 

「大本営からはどこへの上陸も絶対阻止するように、との通達が出た。もはやなりふり構っていられないぞ。」

 

「暁君、君はどう思うかね。」

 

「はい・・・えっと・・・私たちと一緒に過ごしていた方は心配及ばずという感じですが・・・タスマン海の方は絶対に倒さなければいけないと思います。」

 

「わかった・・・今は停滞しているようだが今のうちに叩くしかない。決戦打撃艦隊を編成し、すぐさま打って出る。本当に倒せるかどうかも怪しいが絶対に奴を自由にはさせられない。いいか?」

 

「「「了解!」」」

 

「横須賀からの大和君達を中心に編成する。暁君にも入ってもらう。気づいたことがあればすぐにでも報告してくれ。」

 

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ーー

 

 

「これよりタスマン海へと再突入し、超巨大深海棲艦を打倒します!総員前へ!」

 

大和達が檄を飛ばすとそれに続いて艦娘達は前へと進み嵐の中へと突入していく。嵐の中は先刻と何も変わらず海を裂き海流を曲げ突風が吹き荒れている。そこには無慈悲な自然の脅威ではなく明確な悪意をもっているかのように感じられた。

 

「見えた・・・!」

 

暗雲立ち込める視線の先に雷に照らされた巨大な影が浮かぶ。それは海上に漂う塔のように見えていた。

 

「総員展開!露払いは任せました!」

 

艦娘達が戦列を整えると同時に発砲が開始される。大和達は支援艦隊を背に超巨大深海棲艦へと肉薄する。

 

「皆さん!個々に撃ってもダメです!タイミングを合わせて一点集中!全砲門開け!腕を狙え!」

 

「ぐっ・・・」

 

「暁さん波に呑まれないように注意して!」

 

「ッ・・・はい!」

 

「撃てぇーーー!」

 

艤装が一際激しく唸り、砲口が火を噴く。放たれた砲弾は超巨大深海棲艦の左腕へと吸い込まれていく。

 

しかし圧倒的な巨躯への攻撃は全くダメージを与えられていなかった。

 

超巨大深海棲艦は大和達へと振り向き巨大な艤装から砲を向けた。

 

「みんな避け・・・」

 

お返しとばかりに巨大な砲弾が放たれ大和達へと撃ち込まれる。大和達は避けるのも間に合わずバラバラに飛ばされていった。

 

「戦艦霧島、榛名、中破!」

 

「球磨!大破したクマ・・・」

 

「愛宕、高雄小破!」

 

「暁、無事です!」

 

「くっ・・・たった一撃で・・・戦列を立て直します!みんな集合して!」

 

無線で呼びかける大和だったが次の瞬間相手の砲がこちらを睨んでいた。大和は逃げられないと悟ったがもうどうしようもない。

 

「みんな避けてーーー!」

 

最後の無線を飛ばし、衝撃に堪える姿勢を取るので精一杯だった。また轟と砲弾を放つ音がしたが体に生じる筈の衝撃がこない。恐る恐る目を開けてみたのは黒い巨体にしがみつく白い巨体であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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