白い巨体が超巨大深海棲艦を投げ飛ばす。その際に生じた大波に浚われそうになりながらも堪える艦娘達は何が起きているのか把握出来ずにいた。
「パ、パクチー・・・?!」
「ウオオオオオッ!!」
その光景に誰もが疑問符を抱いたままだった。二体の超巨大深海棲艦がぶつかり合っている。それ以上の感想は出てこない。
「アカ・・・ツキ・・・」
「パクチー!パクチーなの!?」
「ソウ・・・アカ・・・ツキ・・・」
「パクチー!!」
暁が叫ぶと同時に大和は本部司令船へと無線を飛ばす。
「ハアアアッ!!!」
「グオオオオオ!!」
パクチーと超巨大深海棲艦がぶつかり合い嵐の海を更に荒々しく砕いていく。そこには誰も立ち入ることの出来ない様相だった。
「こちら大和です!超巨大深海棲艦が二体に・・・!」
『確認した・・・黒い方を戦艦水鬼と呼称する・・・ザー・・・白い方は・・・暁達との接触があった深海棲艦か?』
「それで間違いないようです!パクチーと呼称していた個体かと・・・」
『ザー・・・わかった・・・』
「無線が・・・」
大和が無線連絡している間にも海上はパクチーと戦果水鬼のぶつかり合いで荒れていくばかり。
「パクチー!頑張って!そいつをやっつけて!!!」
「グ・・・アアアアッ!!!」
「キサマ・・・ナゼ、ジャマヲスル!!」
「喋った・・・!?」
「ワカラナイ・・・デモ、トモダチガイルンダ・・・!!」
「トモダチダト!?」
パクチーの艤装が戦艦水鬼の艤装に食らいつき、パクチー本体が戦艦水鬼本体へと肉薄する。白い腕が左の黒い腕を握り潰し、黒い腕が白い腕に拳を打ち込んでいく。
「グアアアア!!オノレ・・・!!」
「・・・ッ!!!」
「パクチー!!!」
「皆さん!左腕に集中砲火!撃てッ!!」
「グアアアアッ!?」
「暁さん!パクチーさんを援護しましょう!!」
「はいっ!」
艦娘たちもパクチーが敵ではないと感付き始めているのか援護するまで時間は掛からなかった。周りの露払いも済んでいるので援護は容易い。
「ーーーーーッ!!!」
戦艦水鬼が巨腕を振るおうとするがパクチーに阻まれがっしりと組みあっている。そこに戦艦水鬼は艤装の力も加えパクチーを背負い投げしていた。
「あの巨体を投げるなんて・・・!」
「皆さん集中して!敵の左腕だけを狙って!!!」
「はい!」
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「はぁっ・・・はぁっ・・・」
「大和さん・・・!」
戦艦水鬼は膝を付き、パクチーは立っている、勝敗は決したかに思えた。
「ソウカ・・・オモイダシタゾ・・・。」
「ナニヲ?」
「オマエ・・・シザイアツメノフネダナ?」
「シラナイワ・・・。」
「シラナクテケッコウ・・・ハハハハ・・・ソウカ・・・ナニヲシテイタノカトオモエバ・・・。」
「・・・。」
「クラウガイイ・・・ワタシノマケダ・・・モウタツコトモデキン・・・」
「ソウ・・・。」
パクチーの艤装が口を大きく開けて戦艦水鬼の前に立つ。
「サヨナラ。」
ガブリ、と一口で体の大半を平らげられた戦艦水鬼の残りは漆黒のオイルのようなものに変化し海へと溶けていった。パクチーはそっと艤装の口を拭う。
「アマリ・・・オイシクナカッタワ・・・。」
「パクチー!」
パクチーは振り返ると足元にいる小さな暁を見つめた。
「パクチーなんでしょ!?思い出したわ!暁よ!」
「アカツキ・・・」
パクチーは掬うように暁を手に乗せ自分の目線まで持ち上げる。
「大和さんも頑張ったのよ?」
「シッテル・・・ミテタ・・・カラ・・・」
「パクチーなんか喋り方が変よ?」
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「あれが暁が言っていた超巨大深海棲艦・・・」
「見る限りは敵意は無さそうですが・・・」
「下手に刺激して暴れられても困る。今連戦する余力は残っていないからな・・・」
「鈴木提督、ここは暁君と大和君に任せよう。」
「はっ中将。」
司令船の中はパクチーのことでいっぱいであったが嵐が晴れつつある外を気にしているようだった。一方外では暁がパクチーの側にいてこれからの方針等を話し合っているようだった。
「ねぇパクチー、あなたこれからどうするの?」
「ワカラナイ・・・ワタシハ・・・」
「パクチーさえ良ければ、私の鎮守府に来ない?」
「ソコニ、シザイハアル・・・?」
「うーんパクチーに少しずつ分ける程度なら出来ると思うけど・・・」
「シマニイタトキノシザイハ・・・スベテステテキタ・・・アカツキニメイワクハカケタクナイ・・・」
「そっか・・・」
「ウン。」
夕日が水平線の向こうに沈みだし、辺りが暗闇に呑まれつつある時間。暁はパクチーとは一緒にいられないことを薄々と感じ取っていた。
「ねぇパクチー・・・私どうしたら良い・・・?パクチーと離れたくないわ・・・」
「デモイッショニハイラレナイ・・・ワタシハ、テキ・・・ダカラ・・・」
「敵じゃないわ・・・こうして仲良くお話し出来るじゃない・・・」
「・・・ワタシハ、シンカイへ、モグロウトオモウ・・・」
「パクチー・・・」
「イツカ、マタアエルトキマデ・・・キットマタアエルカラ・・・」
「・・・わかったわ。司令官にお話ししてきていいかしら。」
暁が司令船へと戻っていく背中を見つめながらパクチーは小さく暁に謝るのだった。
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「・・・ということでした。」
「そう・・・わかったわ。争うようなことにならなくて良かった。」
「ええ・・・でも・・・」
暁は俯き言葉を続けなかった。
「・・・暁は立派なレディになったのね。」
「本当は・・・本当は!」
「うん・・・」
「・・・言わないわ。私は一人前のレディだもの・・・。」
「ええ・・・じゃあ私も挨拶しに行こうかしら!それぐらいは許されるでしょ!」
「・・・うん。」
司令船をパクチーに近づけ甲板に二人は出てくる。
「あなたがパクチーさん?」
鈴木提督が声をかけるとパクチーは顔を近づけ応対した。
「ソウ・・・アナタガシレーカン?」
「そうです。鈴木と言います。」
「・・・パクチー。」
「まずは・・・暁と大和のこと、どうもありがとう。」
「ベツニ・・・イイ。キマグレ、ダカラ。」
「それでも・・・ありがとう。」
「・・・。」
「パクチー!私・・・私ね!」
「・・・ウン。」
「短い間だけど楽しかったわ・・・パクチーに会えて良かった。」
「ウン・・・」
「パクチーは・・・どうだった?」
「ワタシモ、タノシカッタ・・・シラナイコトイッパイシレタ・・・アカツキトヤマトニカンシャシテル・・・アリガトウ。アカツキ。」
「うん・・・うん!」
「ダカラ・・・モウ、イカナキャ。」
パクチーが波を掻き分け徐々に暗い夜の海へと潜っていく・・・二人はその背中を見つめながら再びありがとうと呟いた。
報告書
タスマン海海戦における報告書
超巨大深海棲艦二体の脅威を確認しこれを撃破。
当方の損失戦力、無し
20xx\aa\dd
これにて水鬼の視線完結です。
失踪したりなんだりしましたが無事完結まで持っていくことが出来ました。
これも感想や評価をいただけて励みになったことこそだと思います。
出来としては正直イマイチだったかなとも感じますがそれでも勉強になったと感じます。
次回作はこちらになります。
https://syosetu.org/novel/276490/
良かったら読んでみてください。
よろしくお願い致します。