今のラバウルは最悪だ。暁がいなくなってからはや一ヶ月が経った。その間にもなんどもマーシャル諸島近海へと捜索に出撃したが一向に晴れる様子が無い嵐に阻まれ捜索は進まなかった。
「・・・電ちゃん?何を見てるの?」
「・・・メガトラマンなのです。」
電が見ているのはメガトラマン。突如として宇宙からやってきた怪獣から地球を守る為に青年が同じく宇宙からやってきた戦士と融合し戦う男児向けの特撮番組だ。もうひとつに何の変哲も無い少女が光の力で変身し、地球侵略をもくろむ闇の僕と戦う女児向けアニメ番組、妖精戦士プリティキャノンがある。・・・実はこの二つ軍が作らせた番組だったりする。どちらも未知の脅威である深海棲艦に対抗する意識を持たせるように大本営が作らせたのだ。本来なら電くらいの子達はプリティキャノンを好んで見る。うちでもそうだった。しかし暁は違ってメガトラマンの方を好んでよく見ていた。放送時間帯が被らずに安心したのを覚えている。ちなみにプリティキャノンは朝、メガトラマンは夕食時の放送時間だ。
「・・・お姉ちゃんが、いつ帰ってきてもいいように、お話を教えてあげれるように見ているのです。」
「・・・ごめんね・・・」
「司令官さんは何も悪くないのです!!八つ当たりして、雰囲気を悪くしてしまった電が悪いのです・・・」
「それでも・・・ごめん・・・」
今このラバウルはずーっと葬式をしているような雰囲気だ。駆逐艦、軽巡艦娘は絶え間無くマーシャル諸島へ出撃し、戦艦、重巡艦娘は邀撃に、空母達は索敵にと忙しくはあるが・・・会話は少なく、執念で動いているような感じだ。暁を見つけようとまとまっている・・・と言えば聞こえはいいが、どう見てもアンデッドのようである。
「・・・お姉ちゃん、メガトラマン大好きだったのです・・・電達がプリキャノを見ようと早起きしていてもお姉ちゃんはお寝坊さんで、でも出撃はメガトラマンに間に合うよう早く帰ろうとしたりして・・・どことなく男の子っぽかったのです。」
「うん・・・」
「遊ぶときもみんなはなにをする?って言ってもおままごととか言うのにお姉ちゃんは野球とかサッカーとか・・・お外で遊ぶの大好きだったのです・・・」
「・・・うん。」
「今ではメガトラマンの時間に帰ってくる人はいないし、野球道具もサッカーボールも押し入れで埃被っているのです・・・」
「・・・。」
「どうして・・・どうしてお姉ちゃんなのです?電じゃダメだったのです?出来るなら・・・電が代わりになっていれば良かったのです・・・」
「ごめん・・・ごめんねぇ・・・」
「ひっぐ・・・司令官さん・・・もう、もう捜索は・・・中止にした方がいいと思うのです・・・だって・・・お姉ちゃんがいなくなってから・・・メガトラマンを何度もみたのです・・・最初の方、もう覚えていないのです・・・もう教えて、あげられ、ひっぐ、ないのです・・・ひっぐ・・・」
「・・・くっ・・・」
「もう・・・お姉ちゃんは・・・」
《第一艦隊が帰投しました。第一艦隊が帰投しました。》
「・・・電ちゃん、ごめんね・・・行ってくるね・・・」
「・・・はいなのです。」
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「第一艦隊帰投しました!全艦損傷無し!捜索結果は・・・ハズレでした・・・」
「ご苦労様・・・みんな補給してきて?」
「了解!」
「あ、神通ちゃん、旗艦を勤めてもらってすぐで悪いんだけど捜索結果をまとめて持って来てくれる?」
「はい、わかりました。」
補給をしに歩いていく第一艦隊のみんなは悔しさに顔を歪めている。やはり・・・生存率絶望として・・・捜索を止める方がいいのかな・・・もう一ヶ月も捜索にあててしまい海域攻略も進んでいない。このままでは大本営から苦言を呈されてしまうかもしれない。
「みんな・・・ごめんね・・・」
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「・・・以上が捜索結果です。残る未捜索エリアはもうここだけです。」
「・・・そう、わかった。」
「ここ、捜索するには嵐が晴れるの待つしかありませんが・・・ここ一ヶ月出撃する度に全く同じ場所にあります。普通じゃありません。」
「・・・いったいこの嵐の中には何があるのかしら。潜水艦のみんなからの報告によると海の中もそうとう荒れてるらしいの。近づけなくて困っているらしいわ。」
神通がいう未捜索海域、ここはずーっと大型台風並の嵐が吹き荒れている。その為様々な噂が飛び交い情報が全くまとまらない。いわく見たこともないような深海棲艦が牛耳っていてる。深海棲艦の本拠地がある、資材に溢れる宝島があるなどどれも信憑性があまりない。だが普通の嵐と違う点も数多く悪魔の海域として第二のバミューダとも言われている。この嵐についてわかることは風速が強く艦娘の航空機が近づけない。海流の流れが不確定で海中まで狂わせている。妖精の羅針盤さえも狂わせ進むべき方向が定まらない・・・まるで何人たりとも近づけさせない為の要塞だ。
「海流の流れがめちゃくちゃですが・・・暁ちゃんはこの中に流されていった可能性も・・・」
「だけどこの嵐の中がどうなっているのかはわからない・・・不用意に近づくとこっちが沈んでしまうわ。指揮官として、この嵐の中の捜索は許可できません。」
「・・・くっ!」
「気持ちはわかるわ神通ちゃん・・・でも、他に被害を出すわけには、いかないの・・・」
「くぅ・・・ううう!暁ちゃん・・・!!」
「・・・現時刻をもって特Ⅲ型駆逐艦一番艦暁を・・・MIAとします。捜索隊も全て解散・・・通常通りの海域攻略の艦隊へ再編成します・・・」
「ううぅ・・・了解・・・現時刻を、持って・・・捜索艦隊を解散します・・・」
「・・・ありがとう神通・・・」
「・・・みんなに伝えてきます。お見苦しい所を見せて大変失礼致しました・・・」
神通ははちがねを締め直し、執務室を出ていった。その後も大変だった。捜索を止めるなと暴れる者、涙を流し崩れ落ちる者、悔しさで壁を破壊する者・・・だが電の笑顔のみんなに戻って欲しいという言葉で落ち着いた。電も、さぞ辛いだろう・・・だがしかし私達の本分を忘れてはいけない。今は再発を防ぐ為に注意して作戦を練ることしか出来ないのだ。
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さらに時は一週間過ぎて、場所はショートランド泊地。
「ふっふふーん・・・今日のおかずに一品加えたいクマァ~とりゃーっ!」
大きくしなる釣り竿から瑠璃色のルアーを飛ばし、波止場に座る彼女は球磨型軽巡洋艦一番艦の球磨。この様子だといつもの食事にさらに色を添えるべく釣り竿を握ったのだろう。
「いなだ~ぶり~はまち~・・・クマ?」
球磨は防波ブロックの中に陽光を受けて輝くものを発見した。
「ゴミ・・・じゃないクマ。中に何か入ってるクマ・・・はっ!」
それはビンだった。球磨が見るに中に何か紙の束が入ってるのが見えて、コルクを取って取り出すのが面倒くさくなったのか手刀でビンの上を切り落とす。
「もしかして遠くの国からの手紙クマ?球磨は英語しかわからな・・・マジかクマ。」
何枚かの紙を読むと釣り竿を放り投げ、紙の束を握りしめて球磨は本舎の方に走った。その額には玉のような汗をかいている。よほど驚く内容だったのだろうか。
「えらいこっちゃクマ・・・えらいこっちゃクマ!!提督ーーーー!!!!」
波止場には放られた釣り竿と空のバケツが取り残され、寂しそうに空を眺めた。
小ネタ
「よいしょ・・・よい、しょ!」
「アカツキ、それ、なにしてる、の?」
「これはゴールポストよ!パクチーが倒した木がそのままだったから使ってみたの。サッカーするためにね!」
「サッ、カー・・・?」
「ボールはこれ!ちょっと硬いけど椰子の実よ!艦娘パワーなら痛くないんだから。」
「サッ、カー、って、なん、だ?」
「サッカーっていうのは11人ずつ二チームにわかれてボールを蹴る・・・あ。」
「?」
「今私とパクチーしかいないじゃない・・・」