≪~IS・男達のリベリオン~≫=world rebellion!= 作:かたつむり
≪~IS・男達のリベリオン~≫
=world rebellion!=
五話:生きるために。
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まだ夜が明けて間もないころ、一人のシスターがフライパンとお玉を握り、通路を進んでいく.
彼女の向かう先は子供部屋。
そのまま通路を進むとハイビスカスが咲き誇る庭が見えて来る。
そのすぐ奥には大きくも無いが小さくも無い、歴史を感じるレンガ造りの建物が在った。
シスターはドアの前に立つとドアを開ける。彼女はその後、両手に持ったフライパンとお玉を何回も勢いよく叩き搗けながら、シスターは子供部屋の中へと足を進める。
「ほ~ら、皆起きなさい。朝で~すよ~」
未だ寝ている子供達の耳へガンガンと煩く響く音と、シスターの優しい声が届く。
子供達の一日は此処から始まりを告げるのだった
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ここは、マサチューセッツ州に在る、テュークスベリーの州立孤児院。
今日の物語はこの場所から始まります。
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【ガウ】
「ふぁ~あ、クソねみーな」
何時ものクソ煩い音で起きた俺は、顔を洗った後食堂で朝飯をとっている。
孤児院へ来て一年。此処での生活は早寝早起きに団体行動や門限など、元ストリートチルドレンの俺には未だに慣れない事は多い。
その中に一つ、此処の集団生活のなかで俺には如何しても理解できねぇ事が在る。
食事の前にする、お祈りだ。
百歩譲っても早寝早起き、団体行動、門限は良いだろう。理に適っているだろう
けど、お祈りはどうだ。出来立てのワッフルを冷ましてまで、ホントに居るかも判らん我らが主様に祈りを詠うの価値があるか。
俺には意味が分からね~・・・
それよりも温かい食い物が目の前に在るんだ
俺は犬じゃねぇ、ごはんを前にお預けは勘弁して欲しいぜ。
だいたい神さまが居るならこんなとこには誰も居ないんじゃないか。
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俺は元ストリートチルドレンとは言え、赤ちゃんの頃からストリートチルドレンだった訳じゃない。
言うなれば事故、勝手に死んだバカ(親)のとばっちりを食らっただけだ。
親の名前だって憶えていないし今じゃあ声すら思い出せない。
唯一幼い頃の記憶の隅に残っている親の印象と言えば、結婚記念にアメリカへ新婚旅行に行きテロで死んだ間抜けだった事と、俺がガウルンと呼ばれていた事だけ。
テロに遭い親が死んだ後、気付けば俺はスラムに居た
そこは何も知らないガキには正しく、地獄の様な場所だった。
中毒者は金欲しさに人を襲う。女は暮らしていく為に自身の体を売る。ガキは腹が減ったから人を騙して食い物を盗む。
誰もが騙し襲い、奪い盗る。女は犯され死体は転がり、シャブは出回る無法地帯。
幼いながら本能で理解した、此処では誰も助けてはくれないのだと。
だから奪え。やらなきゃやられるのは自分だと
だから俺は本能のままに、そして生きる為に奪う事にした。
初めて盗んだのは市場に並ぶリンゴだった。大人に追われる恐怖を必死に押さえ付け、唯がむしゃらに走った。
何とか逃げ切った俺は安心したのか、そのまま地面に倒れこんだ。俺は倒れながら大きく小刻みに何度も息を吸い込んでは吐き出した。
あの時は死ぬかと思った、停まったら殺されるとも思った。
今思えばバカらしい考えだ・・・唯、あの時はホントに怖かったよ。
気付けば手に持っていた三個のリンゴは一個だけ。それもつめが食い込み果汁が溢れて果肉は酸化していた。
けどそのリンゴは、今まで食べたどんなリンゴよりも甘くて、しょっぱくて、とても苦い味がした。
怖かった、
惨めだった、
恐ろしかった、
情けなかった、
遣る瀬無かった・・・
初めてリンゴを盗んだ夜。俺は様々なマイナスの感情に溺れながら、ゴミ箱の中で強く願った。
『もうイイ、こんな怖くて、惨めで、カッコ悪るい気持ちは二度と御免だ。俺は生きたいんだ!』
胸糞悪い気持ちと、襲い掛かる疲労の中で立てた誓いを噛み締めながら、俺は静かに目を閉じた。
それから俺は生きるためなら何でもやった
買い物中の主婦を狙ったり、無邪気なガキを装い、旅行客を騙して荷物を奪い取ったりもした。
慣れてくると盗みやすい奴、狙い何処やカモを見分ける事も出来るように成った。
主婦ならハイヒールやタイトスカートなど、動きを損なう様な服装を着ている奴。
旅行客なら中途半端に治安の良い日本人、学生同士の個人的な旅行だとなお良い。
警戒していても子供の外見は、その警戒心を例外なく下げる
夜になれば、街や公園で飼われている猫や鳥等を捕まえる。貴重な肉だ、直ぐに血が腐るから殺したら手早く捌かないといけない。
最初に食べた時は血抜きなど知る筈も無く肉は血の味しかなくて、とても食えた物じゃあ無かった。
此処に来るまでの二年間、俺は一人でスラムに暮らしていた。
やられる前にやれ。俺以外は全て敵だと、そう思っていた。
俺は死にたくなかった。
だからかもしれねぇな
奪うか、奪われるかの生活をしていた俺には、此処での生活は優しすぎるのかも知れない。
「ガウにーちゃん、ジャムとってよ」
「アぁ、自分で採れよ・・・ホラよ」
偶に考え事をしてると、ガキが俺にジャムをとれと言いやがる
自分でとれと言ったが、このジャムはテーブルの真ん中に置いてあるんだ。
ガキは斜め向居の椅子に座っている。俺は一応、此処のガキの中では一番年上だ。
メンドーだが年下の面倒は看なくちゃいけねぇんだ。
「へへへ、ありがとう」
・・・だがまあ、此処の生活も悪くはない。ああ、悪くないな
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「あ、それあたしのー!」
「いいじぁあないか」
「・・・うるせ~な!!」
俺がワッフルを頬張っていると、隣りのガキ共が喧嘩してやがる。
ガキがガキの料理を盗ろうとしたらしい。
ギャアギャア煩いから怒鳴っちまったが、今日のオカズは八個にカットされたポークソテー。
今が育ち盛りの男の子にはさぞや美味しいだろう、そして物足りない事だろう。
だがそれはここに居るガキ、全員に言える事だ。
俺も足りねぇし、だからだ・・・
「そんなに欲しいならくれてやる。ただし、全員一切れづつだ。」
「いいの」
「まじで!」
「さすがガウにー、わかってる!!」
「イヤダ、イヤダ。いじきたねぇえガキ共だね~、飯が不味くなるぜ」
ガキ共が嬉しそうにポークソテーを食べる中
シスターは俺の行動に呆れたのか、それとも諦めたのか。重いタメ息を吐き、そのまま俺を睨んできた
それを睨みかえした俺は、サラダとワッフルを平らげ食堂を出る。
良いんだよ、俺みたいな糞ガキなんかが食べるよりも、毎日厭きもせづお祈りしてるガキ共に食べられた方が天に召された子豚ちゃんも悦ぶだろうさ。
それに俺はこれから肉を食べるから良いんだよ。
自分の部屋へ帰ってきたら、スクールへ向かう仕度をすませる。
まあ、仕度と言っても鞄はそのままなんだ、持っていく物は体育の着替えとプリント。それと塩胡椒にライター・・・
あとはナイフに鉄串。
「うし、準備完了」
仕度を済ませたらそのまま部屋を出て、俺はスクールへ向かう。
この世は弱肉強食。
生きる事は奪う事。
勝手な理由だが、俺が生きるために奪わせて貰う。
俺は今日も食えそうな肉を探しながらスクールへ向かう。
この後、親切心でガキを犬から助けた事が、俺達の人生を180度変えるとは思わなかったよ。切実にな・・・
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【シスター:A】
「う、冷たい!」
朝食も終わり、庭の方から子供達の元気な声を聴きながら、子供達が食べた食器を洗う為に洗面台へと向かう
水道の蛇口を捻る。
今の季節は夏から秋に移り変わる頃。
この時期の朝は水道の水は冷たく、朝の火照った手にかかる冷たい水がとても心地よく。私は思わず声を上げたしまった。
それから暫く洗剤の付いたスポンジで食器を洗っていると、一人の子供が荷物を持って庭から門の方へ向かって行くのが見えた。
「はぁ~、」
その子の顔を見て、私は堪らず天を仰いですまう。
アノ子を正しく導く事。これは主様の課した試練なのですか・・・
食器の後片付けをしながら今日で何度目かのタメ息がこぼれる。
「あら、如何したの?タメ息なんて吐いちゃて」
私がその問題の彼の事を考えていると、陰気なタメ息が聞こえたのか。
入り口から一人のシスターが私に話しかけてくれた。
「最近の貴女は少し変よ。悩みが在るなら相談に乗るわ」
「うん、チョッとアノ子の事で」
「・・・若しかしてガウルン君事かしら。」
彼女は私のタメ息の理由に思い当たったのか。私に確認を取るように、アノ子の名前を口にする。
その問いに小さく頷く私に、彼女は眉を寄せて困った顔顔をする。
「そう、まさかとは思ったけど、何かガウルン君が困る事でもしたの」
「いいえ、違います」
ガウルン君は何もしていない。
誤解競れないよう、ハッキリと否定する。
「確かに、ガウルン君の事で私は此処最近悩んでいます。正直何で悩んでいるのか、私もいまいちよく解らないんです。ただ、ガウルン君の事が少し怖いんです」
シスターとして、子供達の母として。
ガウルン君の事は、今の私のにとって子育ての大きな悩みです。
「そう、確かにスラム育ちだし貴女が必要以上に心配するのも分かるわ。でも余り意識しすぎるのも善くないわ」
「それでも私は・・・ガウルン君の事が心配なんです」
そう、ガウルン君はこれまでに看て来たスラム育ちの子供とは違い、あの子は暴れる事はないし人間関係にも、問題は無い。
確かにガウルン君は何時も不機嫌で子供達にもキツイ言葉を使うけど、ほんとは優しくて思いやりの在る良い子なのは、此処に居る皆が知っている。
でも、私は心配なんです。ガウルン君は、あの子は心は明らかに歪だ。
捻くれている訳じゃない・・・荒んでいる訳でもない・・・
歪。この一言がいちばん的を得ていて、ガウルン君を表す言葉はない。
いつか、取り返しのつかないことをしてしまいそうで
「だからと言って、私達シスターが子供を怖がってはダメなのよ」
「・・・そうですよね、私達が怖がってはダメですよね。ありがとう、話しを訊いてくれて。お蔭でスッキリしました」
彼女が言った言葉が心に沁みる。初歩の初歩だ、私は間違っていた。
シスターが子供を怖がってはいけない、距離を置いてはダメだ。
スクールから帰って来たらガウルン君とちゃんと話そうと私は決めた
「ふふ、お役に立てたようで何よりだわ。そうね、先ずはガウルン君の良いところを探してみたらどう」
「良いところ、ですか・・・」
「ええ、人は嫌な事や悪い事には直ぐに気付くの。でも良いところは親しくなければ中々見えてこないわ。怖いと思っていたらなお更ね」
他人の印象を決めるのは自分の思い込みが七割よ。彼女が言った事に、私は苦笑するしかない。
つくづく私は自身の未熟を自覚する
「・・・運動とか、体を使った事は凄いですね」
「ああ、確かに。公園で混ぜてもらったバスケで上級生を相手にあっさり抜いていったしね」
私達はお皿を洗いながら、ガウルン君の事でお喋りに花を咲かせていた。
それから暫く経った時、一本の電話が入った
「あら、誰かしら?こんな時間に」
「あ、ホントですね。私が出ます」
「そ、お願いね」
そして電話に出た私はこの電話の後にもっと早く決断をしてれば
ガウルンと話していればと、後悔をする事になった・・・
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【シスター:B】
「そう言えばこの前、ガウルン君と同じくらい運動が出来そうな子が居たわね」
彼女が出て行った後。私は唐突に、この前街て出会った子供の事を思い出した。
見た感じ歳はガウルン君と同じくらいだけど・・・
「アノ子も不器用ね」
気持や心ほど、繊細で難しい者は無いね。
「確か名前は・・・」
・・・アリー・アル・サーシェス、君だったかしら・・・
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つづく
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【おまけ】今回の没ネタ
「最近の貴女は少し変よ。悩みが在るなら相談に乗るわ」
「うん、チョッとアノ子の事で」
「・・・若しかしてガウルン君事かしら。」
彼女は私のタメ息の理由に思い当たったのか。私に確認を取るように、アノ子の名前を口にする。
その問いに小さく頷く私に、彼女は眉を寄せて困った顔顔をする。
「そう、まさかとは思ったけど・・・貴女、ショタコンだったのね!
・・・ないわ~ぁ、シスターがショタコンとか、マジないわ~ぁ」
「ち、違います!!私は、ショタコンではありません。それに、その発言は不謹慎です!」
「不謹慎?はは、ワロスwwwwwwww。シスター、オワタ」
「マジメに聞いて下さい!!」
つづかない。