やはり俺の青春ラブコメがゲームなのは間違っている。 作:Lチキ
少し時間が空きましたが本編どうぞ!
デスゲームが始まり‥‥なんかこの言い回しもめんどくさいな。
見覚えというか聞き覚えがあるし、なんかすげぇ既視感を感じる。夏目友人帳のモノローグと同等レベル。単行本10巻越えてるっていうのにあの歌いだしはいつまで続くのだろうか。
そう言えば一応あの主人公も初めはぼっち設定だったんだよな。
小さな頃からときどき変なものを見た。でも、今では友達や理解者に囲まれメガネ委員長と学年上位の美貌を誇る妖怪を見た少女をはべらす超リア充。
一方、小さな頃からときどき変な目で見られた比企谷君は現在プロのぼっちマイスター。
しかもこのクソゲーの中で1ヶ月近い時間を過ごしてる。ふむ、とりあえずリア充は爆発しろとだけ言明しておこう。
自分で言うのもなんだがあの主人公と俺は結構共通点があると思う。間違っても似てる訳ではない。似た環境にいるのだ。
例えばお互い高校生までぼっちだったり、妖怪を見た夏目と妖怪みたいと言われた俺。他にも顔が整っていたり、ところどころでスッペクが高かったり、後はそうだなお互い可愛くない猫がそばにいたりするな。
基本的にスペックの上で俺と夏目君は大差ないはずなのだ。なのになぜ俺と彼にはここまで差ができたのだろう?
うちの猫が妖怪じゃなかったからか、それとも他に理由があるのか。
だが、生憎と俺はそこまであいつに対し羨ましさを感じていない。なぜなら俺には最愛であり、世界一可愛いマイシスター小町がいるからな!
例えどんなものを引き換えにしても譲れはしない。どこぞの不届きものがお義兄さんと呼ぼうものなら全力で目つぶししてやる。地味な上に卑怯だな。
それと同じ猫みたいなのがいる駄目主人公で言えばやはり野比さん家の息子さんが上がるが、ぶっちゃけあいつは友達いるし、将来幼馴染と結婚するし、最終的にドラ○もんを作り歴史に名を遺したりするので親近感とか全然わかない。
なんだよこの将来絶対成功する小学生は、絶対当たる宝くじレベルでお買い得じゃねえか。もうドラ○もんとか必要ないよね?なんなら家に来てもいいんだよドラちゃん?むしろ推奨する。
今あらどら焼きとカワイイ
「はぁ‥‥」
空想の中ではすでにドラ○もんが家に来てもしもボックスで、夢を叶えてるところだ「もしも、ぼっちは将来専業主夫になる世界だったら・・・」みたいな感じで。夢だけど夢が無さすぎる・・・。
と言っても所詮は空想、幻想、妄想だ。そんなものこの限りなくリアルに近い仮想空間では何の意味も持たない。
日数にすれば30日、被害者を数えれば2000人オーバー、攻略できた階層は‥‥無し。逃げたくても逃げられない確かなリアルがそこにある。
人は物事を数に置き換える事で冷静さを得ると何かの本で読んだが、数に直すと冷静になるどころか不安と絶望が押し寄せる今の状況は極めてまずい。
何がまずいって下手をすればその2000人の内に俺も仲間入りしてたかもしれないというのがまずやばい。生きてる内はその他大勢にも含まれないカースト外ぼっちの俺は、死ぬことでようやくその他大勢の被害者に含まれるとか皮肉すぎる。
アルゴの助けがなければ俺はずっと前に死んでいるはずだった。
思い出しても背筋の冷や汗が止まらない。あのキモイ植物の事はもう2度とみたくないほどにトラウマなのだ。
アルゴに助けられ、その上で情報を得る代わりに彼女の仕事を手伝いながらどうにか生き延びたこの1月。ビギナーであり、生存率がパーティーよりも格段に低いソロプレイヤーの俺は、彼女にもたらされた情報と持ち前の危険察知能力を駆使し、レベルだけで言えばどうにか最前線のプレイヤー平均に届くというほどに成長していた。
もちろんベータテスターやトップランカー達には一歩及ばないがビギナーで言えば結構上位に組み込んでると思う。
そんな俺は、今迷宮区の近くにある安全エリアの草原に横たわり雲1つない空を眺めている。
別に死んでるわけじゃないぞ。昔、俺がついつい休み時間に昼寝してたら周りの連中が「ヒキガエルが死んでるぞ!」「比企谷菌がかもされた!」「カエルの死体だー!」と面白おかしくはやしたててた時があるがそういうのじゃない。
というか誰1人俺の名前呼んでないし、その上最後の奴にしたらそれはもうただのカエルの死骸だから。
ヒキガエルの・・・と言われた時からもう起きてたんだけど何か起きずらかったのでそのまま寝たふりをしてたが、あれは中々の地獄だった。
休み時間が終わりようやく解放された俺がむくりと起き上がると今度はゾンビだなんだとはやしたてられその日はずっとゾンビと呼ばれた。
結局起きてても寝ていても地獄である。
そんな昔の
「どうしタ。そんな辛気臭い顔しテ?」
両頬に書かれた3本のペイントが特徴的な小柄な少女。屈託のない笑みはまさに幼女のそれに近いが、実際にはすでに幼女と呼ばれる時代をとうに終えたどこか哀愁すら漂う憂いをおびた半開きの瞳。
かくしてその正体は、命の恩人であり、SAO随一の情報屋でもあるネズミのアルゴがそこにいた。
「アルゴか‥‥お前こそどうしたんだ。仕事か?頑張れよ、じゃあな」
「イヤイヤ、2度寝しようとしてんじゃねぇヨ!そっけないにもほどがあるだロ‥‥」
「生憎これが俺のナチュラルなんだよ。慣れ合わない、干渉しない、仕事しない。それが俺の普遍的な通常だ」
と、俺はキメ顔でそういった。
「‥‥そんなダメ人間発言のどこが普通なんだヨ‥‥それとその顔キモイゾ」
おかしい俺はキメ顔をしたはずなのになぜかアルゴから帰ってきたのはキモ顔の指摘。1文字違いで間違えてしまったのだろう。その証拠にアルゴはもう1つ重大な誤りをしている。
仕方ない。本当はそんな義理なのだが、優しい優しい俺は彼女の間違いを正す事にする。上から目線すぎないか俺?
「いいかアルゴ、俺は別にダメ人間なんかじゃねぇよ。そもそも人間っていう生き物が駄目なんだよ」
駄目人間ではなく人間は駄目。それが正解、ファイナルアンサー。
有史以来人は発展をするにつれ、代わりに環境を壊し続けた。その弊害も多岐にわたる。温暖化、砂漠化、水質汚染、大気汚染・・・。地球は母なる星と称される。つまりは、地球の環境汚染とはかあちゃんに対するDVと同義だ。
母親に対して蹴る殴るの暴行を働き、ゴミを投げつける息子。それが人類である。
さらに、母親だけに飽き足らず兄弟同士で争いごとを続けてきた。戦争、闘争、決闘、喧嘩、イジメ。もはや世紀末並みの焼け野原だよこの家族。
な、そう考えると人類とは皆平等に駄目なんだ。
むしろ、逆に考えれば俺は真っ当な人間だ。リア充が夏とかに花火で大気汚染してる間も俺は家でゴロゴロ。リア充がザ・青春みたいな安いドラマっぽい喧嘩や闘争をしてる間、俺は自分の席でゴロゴロ‥‥。
環境にも人間関係にも優しいぼっちエコロジーである。このままいけばぼっち平和賞とか貰えそう。そんな賞があればだけどな。
「心配すんナ。そんな事言ってる時点でお前はすでに駄目人間だヨ」
と、せっかく間違いを訂正したのにアルゴはそう一言いい俺のロジックを否定する。
もっとも間違いの訂正すら間違いだったので仕方ないと言えば仕方ない。
「で、なんでこんな場所で寝てんだヨ?」
いつの間にか俺の真横に座ったアルゴが聞いてくる。小柄と言っても寝そべってる状態の俺より高い目線の彼女は見下ろす様に顔を下げた。
一見すると小さな幼女に見下されてるみたいで言い様もないドキドキが段々強く広がっていく。
「別に理由なんてねぇよ。しいて言えば、今日は天気がいいだろ」
いくら安全エリアと言えど、真昼間からフィールドで寝そべっている理由なんて普通に考えたらそうそうないだろう。
安全といえどモンスターが蠢くフィールドで昼寝するとか並みの神経では無理だ。仮に複数人いて誰かが見張りをしてるとかなら話は別だが、俺の場合もちろん1人だ。1人である事にもちろんとか言っちゃうあたりかなりの重傷、または末期だな。
「天気がいいって、お前はアホカ?」
「うっせえ‥‥そういうお前はなにしてんだよ?」
「おれっちは仕事の途中だヨ。今日はあっちに用があってナ」
予想はできてたがやはりアルゴは仕事中らしい。迷宮区とは反対の方角に人差し指を向けると、ちょうど大きな鐘の音がなった。
この方向で仕事と言えばその内容も大体予想ができる。むしろ、それしかないとさえいえる。
「つーか、ハチ公も同じだロ?」
「別に俺は仕事なんてしてねぇよ」
「・・・なんかその言い方だと本当にただのヒキニートだナ」
なんか言われもない同情の視線で見られているのだが、本当に言われもなさ過ぎて全俺が泣いた。ところで、ニートはいいとして(全然良くない)ヒキは何処から出てきやがった?名前が比企谷だから?それとも見た目が引きこもりっぽいからか?返答しだいによっては‥‥別に何もないけど、怒るぞコノヤロウ!
「と、話を脱線させんなヨ。ハチ公も攻略会議に行くんだロ」
「脱線させたの俺じゃねぇだろ・・・まぁ行くけどよ」
俺とアルゴの目線の先にはさっきまでやかましい音を出していた壁に囲まれた街に向かう。
1ヶ月目にしてようやくこの階層のボス部屋が発見され、そしてその攻略を話し合う会議が開かれる。
場所は迷宮区に最も近い街トールバーナー。