俺としおりんちゃんと時々おっぱい。   作:Shalck

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 今回から第三話の内容に入ります。
 皆も知ってのとおり第三話はガルデモ(岩沢さん)の話なので、ガルデモ中心のこの話はかなり長めになると思います。
 そして同時に、ある種の多々君救済回ですしかなり重要な話となりまっせ。
 と言うわけで非常に重要な所なので頑張って書きます。友情エンドが決まっている相手はヒロインに含まれますか?
 ぐーたらププっちさん、OC.Cさん、ブリザードさん、napokunnzさん、やしまさん、aikawaさん、ヘ(^0^)/さん、評価ありがとうございます。同じ人二回名前書いてませんよね?
 お気に入り数も450を突破し、UAも15000を越してノリに乗ってるこの感じが素晴らしく皆様のありがたさを感じさせてくれます。
 これからもどうかよろしくお願いいたします。


第4章 《貴方に贈る恋の歌~Song of the love presented to you~》
026 《Cure》


 新しい音が聞こえる。

 俺の頭を活性化させる様なその音を聞きながら、俺は一人で拍手をした。

「いいんじゃないかな?」

「そう? それなら嬉しいけど」

 まさみちゃんがギターを外して、そう笑顔で言った。

 今俺とまさみちゃんは二人で屋上に来ている。と言うのもまさみちゃんが俺を誘ったからだ。

「ひさ子も関根も入江もバンドとしての曲ばっかりだから、普通の人で音を聞いてくれる人は多々しかいなかったんだよ」

「それならしょうがないね。皆バンド大好きっ子だから」

 俺は自分の腰についている日本刀を撫でながら、まさみちゃんを見た。

 この日本刀はギルドに頼んでいたもので、非常に優秀な日本刀となっている。

 要は天使ちゃんのハンドソニックに対抗できる様に、非常に硬度の物を探した結果日本刀に行き着いたんだよ。

 まぁこの刀はある意味で、俺が他の人と繋がってることを示せてるのかなぁ?

「多々は、歌わないのか?」

 ドクンと、俺の心が跳ねる気がした。

 俺はかつて感じたあの歌を無理矢理好きにさせられている感覚が嫌で、歌うことをやめていた。

 風呂場ですら歌わないし、しおりといる時は勿論いつだって歌っていなかった。

「ホントはね、歌いたいんだ」

「ならどうして……」

「でも何故か知らないけれど、俺は大切な人の為に歌いたいはずだったのに皆の前で歌ったら凄く楽しく感じると同時に――違和感を感じた」

 あの時の感覚を思い出すと、今でも吐き気がする。

「違和感?」

「楽しくされているんだ。俺は楽しくないはずなのに、酷く不自然に楽しいと言う思いを感じている。無理矢理楽しいと感じさせられている様なあの感覚が、俺の心の中で留まってるんだ」

 楽しく歌うことすら、俺には許されないのかと何度思ったことか。

「歌いたいのに歌えない……か。私もそうだった。歌いたい歌が歌えなくて、そしてこの世界に来た」

 そうしてまさみちゃんは、自分の過去を語りだしてくれた。

「私の両親は喧嘩が絶えなくてね。いつもいつも一緒にいれば喧嘩をして、ずっとそれを見ないように部屋に閉じこもって耳を塞いでたんだ」

「それは、酷い家だったんだね」

「そうだった。でもそんな時に、CDショップで聞いたSAD MACHINEの曲で救われた。音楽の道に目覚めて、雨の日にゴミ捨て場に捨てられていたアコースティックギターを拾って、路上ライブをしながら音楽活動を始めたんだ」

 路上ライブで音楽活動なんて、本当に音楽が好きじゃなかったらそんなこと出来るはずがない。

 それに雨の日にゴミ捨て場に捨てられていたアコースティックギターって、雨の日に捨てられていた子犬を拾ってきたみたいに言われるとキュンキュンしちゃうじゃん。

 心もぴょんぴょんし始めるからね?

「成績はこれでもかなり良かったんだ。でも音楽で生きて行きたかったからアルバイトをしながらオーディションを受けてた。毎日バイトとオーディションを繰り返してたけど、案外楽しかったんだ」

 案外楽しかったと言う言葉に、あぁこの後に何があったのかを確信した。

 何故なら家庭環境が壮絶なだけで、この世界に来るとは思えなかったから。

「そんな時だった。いつものように父さんと母さんが喧嘩してて、何故か知らないけれどその日は止めたいと思ったんだ。そして止めようとして――父さんにビール瓶で殴られて脳梗塞を起こした。でもそれに気がつかなくてバイト先に突然意識が無くなって、起きたら声が出なくなってたんだ」

 声が出なくなっていた。それは音楽を志している者達にとって、一番最悪なことだ。

 歌いたいと思っていたものが歌えない。

 俺なんかとは全然違う、歌いたいものが本当に歌えなかったんだ。

「それでそのまま18歳で死んで、私はここに来た」

 それを静かに聴き終えた俺は、拳を握り締めていた。

 人の過去を聞くのは辛すぎる。だって、俺とは違い本当に苦しい思いをしているのだから。

 俺は――ただ上乗せされただけの記憶だから。

「なぁ多々。私は――自分の好きな歌を歌えられているのかな?」

 その問いに、俺は口を閉じたままだった。

 歌えてるよと言うことは言いたいけれど、それを言ったら彼女はどう思う?

 自分が歌えていることを感じて、消えてしまうんじゃないのかと。

「答えられない……よな。ごめん。そこでその答えを聞いてしまったら、私が消えてしまうと思ったんだろ?」

「いや、その……」

「そんな謙遜しなくていいよ。私達が元々あんたが消えることができるまで消えないって約束してたんだ。その相手に自分が消えるかもしれない質問なんて、少しやりすぎたと思ってる」

 違うんだまさみちゃん。

 俺は絶対に消えることが出来ないんだ。

 だから、もう消えてくれても構わな――。

 そこで俺の思考は止まってしまった。

 消えてしまっても構わないと、本当に思ったのか俺は?

 本当に目の前からまさみちゃんが消えてしまってもいいと、思ったのか?

「――まさみちゃんは、自分が好きな歌を歌えてないと思ったんだよね?」

「え?」

「だから俺に、自分が普通は歌わない様なバラードの曲を歌った。それがまさみちゃんが世界に聞いて欲しい曲だったから、俺に聞いてもらったんでしょ?」

 その言葉に、まさみちゃんは何も返せなかった。

 だって多分それが本当のことなんだから。

「まさみちゃん。これはしおりにも言っていないことだけれど、俺は消えることが出来ない。例え俺の未練が無くなっても、俺は消えることが出来ないんだ」

「待って。それは前も聞いたはずだ。だけどもう一度なんで――」

「何故なら俺は――NPCなんだ」

 空気が凍ったのがわかった。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。だって多々はNPCって単語を使ってるし、私達と一緒にいつもルールを破ってるじゃないか!」

「あぁ。でも気がついたんだ。ギルド降下作戦があったあの日、俺は消えてもいいと思える程皆を助けることに安堵を覚えた。なのに俺は消える予兆すら無かった。消えていいとも思ったのに」

「でも、だからって――」

「さっき言ったあの感覚も、何者かによって埋め込まれた感情だった。だから俺は消えることすらできずに、永遠にこの世界に囚われ続けなきゃならないんだ」

「そんなの、尚更許せるかよ!」

 まさみちゃんの叫びを聞いて、俺は嬉しく思った。

 そこまで俺のことを大切に思ってくれているって言うのは、分かっていてもやっぱり嬉しいものがある。

 だっていつも一緒にいるんだから、表裏もなく俺達は接しあっているんだ。

 互いの感情だって大体はわかる。

「しおりは多分、気がついてるんじゃないかな? あいつはあれでいて察しがいいからな」

「だからって、あんたが消えられないなら私達は絶対に消えない! 約束じゃないか!」

 まさみちゃんが言ったことは確かに約束したことだ。

 でもそれは俺が生きていた人間だったと思っていたから、その約束を嬉しいと思っていた。

 だけど今からしてみれば、誰かを束縛していると言う鎖にしかならない。

「でも俺はもう自分が人間じゃないって気がついたんだ」

「そんなの関係ない! 私達はあんたと一緒に居たいからそう言ったんだ! 勝手に自己完結して、私達を置いてくな!」

 驚く程大きな声を出されたことに、流石の俺もビックリしていた。

 だっていつも音楽にしか興味がないまさみちゃんが、凄い大きな声を出したんだよ?

「私達を、あんたを希望としてる私達を見捨てないでくれ!」

「どういう、こと?」

「私達だって辛い過去を持ってる。でもそれ以上に辛い過去を持ってる多々が明るく振舞ってるからこそ、私達だって強くならないとダメだとわかったんだ! だから私はあんたにこの歌を聴かせた。 MySongを聞かせたんだ!」

 俺が希望? 俺の過去なんて、誰かわからない人のものかも知れないのに。

 それでも彼女達は、俺を信じてくれていたんだ。

 自分が情けなくなったし、こんな自分が理不尽だと思った。

 勝手に自分が消えるまで生きて欲しいって言って、自分が消えられないとわかったら消えてくれと頼む。

 そんなの――許容できる訳ないじゃないか。

 声が出なくて苦しんだ子が、こんな声が出なくなる様な叫び声をあげながら怒っている。

 涙を流しながら俺の両肩を掴んでいる。

「私とひさ子と入江は、関根みたいなあんたの特別にはなれないのかもしれない。でも、親友にはさせてくれ。お前が困ったときに話せる、親友にしてくれ……。じゃないと、何のために私達が決意したか、わからなくなるじゃないか……」

 自分の烏滸がましさに腹が立つ。

 自分本位な考えしか出来なくて、他人のことを考えられなかった自分に無償に腹が立った。

 いつもそうだ。

 記憶にある俺は自分のことしか考えられなくて、周りに目を向けてみたら時既に遅し。

 間に合わなくなって悔しくなって、未練となってこの世界に来てしまった。

 俺は――何も変わってないじゃないか。

「私達はお前と共に行く。例えゆり達が消えても、戦線が無くなっても、そこに多々がいるなら私達はそこに行くんだ。それが私達の決め事だ。あんたが勝手に決めたことなんて知らない」

 俺は、しおりしか愛することはできない。

 だけれど男女間の関係は、愛がなければ成り立たないものなのか?

 友達に、親友になることだって出来るんじゃないのか?

 それを理解せずに自分から身を置こうとしていたのは俺だ。

 しおりに迷惑だからと関わりを少なくしていたのは俺だ。

 でも――そんなのは俺の都合じゃないか。

 勝手にしおりに迷惑だと思って、勝手に距離を離した方がいいと思った俺の都合じゃないか。

 そんなことでガルデモを、俺の仲間達を悲しませる様なことを言ったのか俺は。

 何なんだ。何様のつもりなんだ。

 例えNPCかもしれなくても、例え植えつけられた感情かもしれなくても、ここにいる俺は俺じゃないか。

 誰がどう見たって、ガルデモメンバーと一緒にいる雨野多々じゃないか。

 自分で自分が信頼できなくて、自己不安に苛まれて呑まれていた馬鹿が一人いるだけじゃないか。

 最悪だ。どうにでもなってくれ。

 だからってこの子達を見捨てるわけには行かない。

 俺を頼って、一緒に居てくれると言うのならば俺だって考えがある。

「――見つけてやる」

「え?」

「俺が必ず、お前達と一緒にいる方法を探してやる。まさみちゃんがもし今の現実に満足して消えそうになっても、そこまで居たいって言うなら必ず方法を見つけ出してやる。それが一緒にいて欲しいと願った俺に出来る、君達への贖罪だ」

 無いのなら見つければいい。

 俺が消えることが出来る可能性を。

 俺のことを考えて歌いたい曲を歌わないのなら、歌いたい曲を歌えるようにしてやる。

 何がNPCだ。何が人間だ。

「俺は――ガルデモのマネージャー兼プロデューサーの雨野多々だ。それだけは誰にも譲れない」

「多々、あんた――」

「待たせたねまさみちゃん。俺が悪かったよ。こんなに可愛い子を泣かせちゃってさ」

 指で軽く流れていた涙を拭うと、まさみちゃんは恥ずかしそうに腕でこすって涙の跡を綺麗になくした。

 勿論まだ目は赤いけれど、それでも嬉しそうに笑うまさみちゃんを見て良かったと思う。

 何を暗くなってたんだ俺は。

 結局、自分がしたいことが出来てないじゃないか。

 復讐なんて、後回しだ。

 子作りだって、後回しだ。

 結婚だって、後回しだ。あ、順序逆か。

 俺は今雨野多々で、しおりと付き合っていて、ガルデモのマネージャー兼プロデューサーで、死んだ世界戦線のメンバーなんだから。

 なんだよ。俺を証明するものは一杯あったんじゃないか。

 この場所に俺が俺である証明をする必要なんてなくて、ここにいる俺こそが俺だと証明出来てたんじゃないか。

「いきなりそんなこと言うのは、卑怯だぞ」

「わかってるからダイジョーブ! 迷惑かけてごめんね。それと――まさみちゃんは歌いたい曲を歌えてるよ。皆で一緒に歌いたい曲をね」

 俺が軽くそう告げると、嬉しそうに頷いてから立ち上がった。

「涙の跡はあるけれど、俺が責められるだけでダイジョーブ。一緒に行こうよ。俺は皆のマネージャーだからさ」

「そうだな。じゃあ最後に――」

 そう言って振り返った瞬間、まさみちゃんに唇を奪われた。

 ――え?

「知ってるか? 外国だと挨拶にもキスするらしいぜ?」

「え、あ、うん。ってまさみちゃんも顔赤くなってんじゃん!」

「赤くもなるさ。私だって人間だからな」

「もー! 後でしおりに怒られるじゃんよ! 俺は隠し事はしたくないタイプなんだぞ!」

「知らない知らない。私は私でやりたいことはやるタイプなんだ」

 まさみちゃんがアコースティックギターを片手に走って屋上から降りていく。顔は赤い。

 その後を追って俺も走って屋上から降りていく。顔はまだ赤い。

 その顔の赤さを感じてあぁ俺は人間なんだなと思いつつ、ガルデモが待つ軽音楽部の部室へ向かった。

 ――友情エンドなのにキスとは、ヒロインに含まれるのかなぁ?

 そんな馬鹿みたいなことを考えて、俺は部室の扉を開いた。

 いつもよりも綺麗に見えたその部室の中で輝く少女達に、俺は声をかけて。

「遅れてごめんね! スーパーマネージャー兼プロデューサーの多々君が、今日も練習見ちゃうよー!」

 絶対に、消える方法を見つけ出す。

 

 

 

SIDE:???

「あらら。またプログラムを書き換えないと」

 全く多々は色々な女の子を巻き込んでいくね。

 でも結局の所恋心があるわけじゃないし、女の子の方もからかったに近いキスかな?

 だけど彼女がしたことは大きいと思うし、私からも感謝したい。

 多々が自分が人間だと理解し、彼女達と生きて消える道を選んだことは私が一番望んでいたことだ。

 幸せを教えてあげて欲しい。

 嬉しさを教えてあげて欲しい。

 満足を教えてあげて欲しい。

「ありがとう岩沢ちゃん。今度あったらよろしくね」

 そう。まだまだ私の所に来れるまでには時間がかかるのだから。

 




次回予告
「お察しの通りでございます」
「なんつーか、やっぱ多々ってすげーのな」
「出た最低男」
「ちょっと待てよ多々! お前今自分がなんて言ったのかわかってるのか!?」
「多々はAlchemyは歌えるな?」
「そうなったら俺が責任を取るよ」
「貴方じゃないことはわかっているわ。心あたりは――ありそうね」

「次回を引退ライブとして、ガルデモからまさみちゃんを脱退させる」
第27話《I Like Song》
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