俺としおりんちゃんと時々おっぱい。   作:Shalck

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新年開けましておめでとうございます。
喪中の方はお悔やみ申し上げます。
今までちと前書きが書けないくらい忙しかったので、申し訳ありませんでした。
蜂蜜梅さん、狐狐狐狐さん、ウルトラエックスさん、グータラぷっぷさん、おまっさんさん、OC.Cさん、futaさん、acceleさん、評価ありがとうございます。
またおまっさんさん、推薦していただきありがとうございます。
今年もできる限り頑張りますので、応援よろしくお願いいたします。


031 《Defensive》

そのまま体育館の前で待っていると、足音が聞こえてきた。

 新しく来た観客かどうか判断しようとしたが、背の高さと服的にそれは無いなと確信する。

 まさみちゃん達の演奏を止めようとしている教師達――つまりはまさみちゃん達の敵だ。

「すいやせん先生方。こっから先は生徒以外立ち入り禁止なんすわ」

「校則違反だ」

 お堅い頭だと思いつつも、俺はヘラヘラとしながら教師を見る。

「まぁ見逃してくださいって。今日が引退ライブなんですよ? それを邪魔するのは、流石にどうかと思うんですけどねぇ」

「また日を改めて別の時にすればいいだろう。キチンとした状況でな」

 はぁ。呆れて物が言えねぇぜ。

 その態度から自分達が馬鹿にされていると思ったのか、教師達に苛立ちが溢れ出している。

「今やってるのにそれを止めるのが野暮だって言ってんだ馬鹿教師共」

「貴様教師に対しての口の利き方が――」

 なってないと言う前に俺は刀を抜くと地面に突き刺した。

 思い切り突き刺したのでかなり深く突き刺さったが、こいつら相手に武器を使うのは癪だ。

 必ず殺すと思った瞬間、既に行動は終わっている。

 そんなことが出来たら良いのにと思いつつも、俺は拳を握り締めた。

 強く、強く、芯まで撃ち抜けと。

 さぁ俺の中にある別の俺君。これは君にとって願ってもいない状況じゃないのかい?

 あの時守れなかった大切な人が――この先にいる。

 自分のことを大切に思ってくれる人達が――この中にいる。

 それを守ることが出来るんだぜ?

 それの為に戦うことが出来るんだぜ?

 なぁ相棒――それがお前の願いじゃなかったのか?

 俺は踏み出す。

 全身全霊を賭けて、ここを通さないと決めた一歩を踏み出す。

「――わかってるさ。例え教師であろうと生徒であろうと、女を守りたいと思った瞬間それは男と男へと変貌する。簡単な自然のルールだ。女を守る為に男が戦う」

 踏み出した瞬間俺は世界の見え方が変わったのに気が付くことができた。

 いいじゃないか雨野多々。ここに俺がいるのだから。

 俺が俺で――お前も俺ってことで全部。

 俺の中に埋め込まれている記憶も、埋め込まれた感情も全て引っ括めて雨野多々だ。

 そう教わっただろ、大切な人達からさ。

「舞おうぜアミーゴ」

 加速した。

 今までの戦いが嘘だったかのように体が動く。

 疾風迅雷。電光石火の速さで教師達に向かっていく。

 そうだこれだ。これが――守る為の戦いって奴だ。

「こいつ速――」

 最後まで言わせずに殴り飛ばした。

 そのまま足を引っ掛けると空中で一回転してから地面へと叩きつけられた教師を一瞥してから、それに驚いていた教師の顔面を右拳で殴り飛ばす。

 どうだい? 楽しいだろう?

 失ったものの為に戦う喧嘩じゃなくて、今守る為に戦う喧嘩って奴は――最高だろうッ!

「例えそれが善であろうと、例えそれが悪であろうと、たった一人の女の為に戦う時点でそんなものは関係ないとは俺の恩師が言った言葉さ。その金玉――潰される覚悟は出来てんだろうなぁ!」

 顔面を殴って体勢を崩した教師の股間に、右拳を引く動作と同時に左足の蹴りを放つ。

 右拳を引く時の力がかかっている左足の蹴りはそのまま教師の股間から炸裂音を響かせると、そのまま振り上げた左足を次の狙う教師がいる方向に向けて勢いそのままに右拳を放った。

 だが既に一度見られていたことによって、両手をクロスして防がれたのを確認した俺は右足で教師の右足を踏みつける。

 それによって後ろに逃げることが出来なくなった教師は、右足の筋を伸ばしながらも耐える。

 その耐えた瞬間に右足を離すと、力を込めていた足が一気に解放された反動で転ぶ。

 そして――真上から金玉を踏み潰すとグリグリと痛みを与えて気絶させる。

「――お前らにそんなもんいらねぇだろ?」

 三人が瞬時に倒されたのを見て、もう一人は驚いたようにこちらを見てきた。

 その瞳からは恐怖が感じられるが、関係はない。

 俺は走り出すとその最後の一人の股間を掴んで持ち上げる。

「いだぁぁぁああああああ!?」

「彼女作ってから出直してきなぁ!」

 手に嫌な感触を残しながらも握り潰すと、その教師を投げ捨てる。

 四人全員潰した。

 そのまま気絶している教師達を放っておいて、俺は地面に刺しておいた刀を抜くと鞘に戻した。

 そして再び誰かが来るまで待つと言う単純な作業を繰り返すことになる。

 1分、2分、3分、4分、このまま来ないで欲しいと望んでいた。

 これだけの時間が長く感じたのは初めてだなと思いつつも、刀の柄を掴んだ。

 時間稼ぎも大体5分が精一杯だったか。

「……また教師に手を出したのね。それほどまでにあの子達のことが大切?」

「あぁ。大切だ。大切で守りたい存在だ」

 多々と言う一個人として、絶対に守りたい存在として、かけがえのない存在へ既に変わってしまった。

 姉さんや蓮花のことも忘れたわけじゃないけれど、それと同じくらいに大切に思ってしまったんだ。

 周りの皆は姉さんや蓮花のことを捨てて、今いるしおり達に走ったと言うかもしれない。

 俺はそれを否定できないし、否定するつもりもない。

 それが現実ならば受け入れるだけだ。でも俺は――しおりのことが好きだ。大好きだ。

 この世で一番愛していると言うことを誓うことができる。

 でも結局人間は一人しか選ぶことができないんだ。

 しおりを世界で一番愛していると誓えば、姉さんや蓮花のことを世界で一番愛しているわけではないと言う事になってしまうだろう。

 それでも構わない程にしおりのことを愛しているんだ。

「貴方は自分の存在に気がついていないの?」

「気がついているさ。気がついてるけど――だからなんだ。俺には記憶がある。思いがある。未練がある。誰がなんて言おうと俺は雨野多々だ。それが事実なんだよ。それが現実なんだよ」

 刀を抜くと、鞘を捨てた。

 動くのに鞘は少し邪魔になる。

「誰になんて言われようとも、俺はしおりを愛している! そしてガルデモの皆のことが大好きだ!」

 堂々と言い張った俺は、刀を地面と水平に構えて真っ直ぐに天使ちゃんを見る。

「それだけは絶対に譲れねぇ」

「そう。なら私もこの学校のルールを守る義務があるの」

 ハンドソニックと呟いて現れたハンドソニックを一瞥してから、天使ちゃんは告げた。

「演奏を停止しなさい」

「無理だ!」

 俺は走り出すと、天使ちゃんの首を狙って日本刀を振るう。

 しかしそれをハンドソニックで防ぐ。

 ガチガチと言う金属同士が削り合う特有の音が鳴り響く中で、俺は日本刀の刃を反した。

 それにより峰の部分とハンドソニックが激突し、流すようにしてハンドソニックを俺の後ろに向ける。

 残されたのは無防備になった天使ちゃんの体だ。言うだけだと犯罪臭が凄い。

 でも実際この状況に持ち込むには非常に精神力を使います。

「切り捨て御免!」

「ガードスキル、《ディレイ》」

 一瞬にして俺の背後へと移動した天使ちゃんに俺は目を見開くが、すぐさまポケットの中に入れてあったFiveSevenと掴むと背後に向けて発砲する。

 ノールックで撃ったけれど、真後ろにいたから直撃したらしい。

 少し顔を顰めながら右脇腹を抑えている天使ちゃんを見て、罪悪感が生まれたけれどそれを全て心の奥底に飲み込む。

 そんなものを持っていたら負けるだけだからだ。

 因みにFiveSevenは二つ目を貰いました。前壊したからね。

 すぐにFiveSevenをしまうと、両手で刀を持って天使ちゃんに向けて振るう。

 それをバク転をしながら避けた天使ちゃんを見て曲技団かよと思うけれど、天使ちゃんの身体能力ならその位出来てもおかしくはないから声には出さない。

 と言うかマジで勝てるんですかねぇこの子に。

 前回は相討ち覚悟の自爆でぶっ飛ばしたけれど、今回はこの後に歌わなきゃいけないからそんなことしてる暇はない。

 死ぬわけには行かなくて、倒さなきゃならない。

「いつつ……」

「げ」

 しかも教師達も目を覚ましやがった!?

 多分金玉は再生されていて、俺に殴られて気絶させられた程度のことしか覚えていないだろうけど。

 最悪の展開と言ってもいいかもしれない。

 ――殺すか?

 教師を殺すという選択肢も頭に入るが、そんな隙を天使が何とかしてくれるはずがない。

 でも俺は、守るって決めたんだ。

 俺は天使ちゃんから離れて距離を取ると、体育館の入口の前で両手を広げた。

 刀は地面に置いている。

「……何のつもりかしら?」

「通さないってつもりですわ」

 苦笑いをしつつもそう言った。

 絶対に入れるわけには行かないんだ。

「あぁぁぁああああああ!」

 俺は地面に置いた刀を――自分の右足に突き刺した。

「なっ!? お前は何をしてるんだ!?」

「こ、こうすればさ……。俺の足は動かねぇだろ?」

 血が漏れ出すのを無視して、俺は両手を広げた。

 気迫を込めて全身全霊の力で動かないことに徹する。

「正気じゃない! あいつを押しのけてでも入るぞ!」

 俺に対して突撃してきた教師達を前にしても、俺は動かなかった。

 四人の体重がかかって俺の足から血が出るが、それでも俺は全身の力を全て込めて押し返す。

 傷口が開いて血が大変なことになってるが、気にしない。

「男四人でぶつかっても返すだと……?」

「あったり前だろ……。あんたらとは覚悟が違うんだよ。こちとら死ぬ気で、ガチで止めに入ってるんだからなぁ!」

 俺は再び両手を広げて立つ。

 それを見た天使ちゃんは俺を見て驚いたような顔をしていた。

「何故貴方はそこまでするの? 守るという行いは既に果たされているはずよ」

「わかってないな天使ちゃんは。好きな女一人守れない男なんて、カッコ悪いじゃん?」

 守るべき女がいるから俺は立ち上がることができるんだ。

 例え死のうとも、例えこの命を無駄にしようとも。

 女が守られるならそれでいい。それだけでいいんだ。

「……諦めて」

 ピシャッと言う音と共に、俺の刀で支えていた右足が切り裂かれた。

 その行動に驚いている教師達だが、今の隙にと体育館に入ろうとする。

「させるかぁ!」

 俺は右手の力だけで跳ぶと、教師の体を掴んで投げ飛ばした。

 その間に一人の教師が入っていこうとするが、俺はそれに飛びかかると右手で柱を掴んで左手で教師の服を掴んでそこから奥に行かせなようにする。

「がぁ!?」

 ブシュッと俺の右足から血が噴き出したが関係が無い。

 俺は守りたいんだ。

 あの頃守れなかった皆を守りたいんだ。

「離せ!」

「離さねぇ! 離したら――俺はまた誰かを失うから!」

 そして次の瞬間――俺の体は天使ちゃんによって貫かれた。

「あ」

 無防備になりすぎたと思いつつも、自分が心臓を貫かれたのだと気が付く。

 それによって力が抜けて、俺が掴んでいた教師ごとライブ会場に倒れ込んだ。

「――タッ君!?」

 血だらけの状態の俺を見つけてしまったしおりが叫んでしまい、全員が俺の方を見て悲鳴をあげる。

 もう動く力すらねぇよ。

 だけど――。

「お前達に、邪魔させっかよ」

 渾身の力を振り絞ってFiveSevenを抜くと俺が捕まっていた教師の頭を撃ち抜いた。

 これで、もう――。

 ごめんしおり。約束、守れなかったよ。

 俺の意識は闇へと落ちていき、そこで止まった。

 




次回予告
「――俺の女に触れるんじゃねぇ!」
「こいつらは全員俺の仲間だ。まぁしおりだけは仲間じゃなくて嫁だけどな」
「あぁ。聞いてくれ――MySong」
「色々とややこしいってことはわかったよ」
「――まさみちゃんの最後の曲、酔いしれたかい?」
「もっとだ! もっと熱くなれよ!」
「思う思う! ってあたしの前で堂々とみゆきちを汚そうとするな! この馬鹿彼氏!」

「俺は雨野多々だ。お前と同じ、雨野多々だ」
第32話《My Song》
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