ー助けて!
突然聞き覚えのある声が頭にがひびいた。
ー朱乃ちゃん?
いや予感がする。
職場に向かっていた俺は車体を真逆にある姫島さんの家の方向に向けてアクセルを回す。
激しいエンジン音があたりに鳴り響く。
何だこの胸騒ぎは。
何なんだこの感覚は。
階段をバイクで飛ばす。
バリンと何かが割る音が響き俺は目の前の後景に絶句した。
刀を持った複数の男が姫島さんに切りかかろうとしていた。
そこからは自分が驚くほど流れる様に俺の腕が動いた。
腰に付いている拳銃で刀を狙い撃ち、すぐに男と姫島さんの間にバイクを滑り込ませる。
「殺人未遂に銃刀法違反その他もろもろで逮捕な」
男達に銃を向けて俺はあくまで冷静に告げる。
だが、銃は1丁しか持っていない。
しかもこれは総監殿に無理を言って使っている六連式リボルバー。
予備の弾も持ってきていないので残り五発が俺のハッタリで使える武器。
ーヤベェ。
相手はパッと見10人以上。
完全にやばい。
あと5発撃ってしまったら俺はその場で負ける。
せめて警棒でも持っておけば何とかなったかもしれないが今となってはなんとやら。
「結界を張ってあったはずだがどうやった」
「わからぬ、だがあの男からはただならぬ気配と少しだが神気を感じる」
何を話しているかは解らないが大方どうやって俺を倒すかだろう。
クソ!武器はすくねぇし隙を見て姫島さん達をに逃がそうにも。
いや、行けるかもしれねぇ。
頭に思い付いた事を近くにいた姫島さんに耳打ちする。
「それでは貴方が!」
「いいから走れ、そのような事聞く耳持たねぇよ」
第一にこの歳で母親を失うなんて可哀想だろ。
「朱乃ちゃん!」
俺は姫島さんを抱えて賽銭箱の陰に隠れていた朱乃ちゃんに声をかけアクセルを回す。
タイヤがその場で周り砂利を男達に掛けながら俺は走り出す。
「お兄ちゃん!」
賽銭箱の陰から出てきた朱乃ちゃんを空いた手でつかむ。
既に姫島さんはハンドルを握っている。
「手を絶対に離すなよ」
朱乃ちゃんを後座席にのせて姫島さんの腰に手を回させてから俺はバイクから転げ落ちる。
その時に受身を取るのも忘れない。
まあ、20年も鍛えた体には擦り傷ぐらいしか付かないが。
「時間稼ぎにもなるし俺が勝てばそれで終わるよな 」
「貴様!」
ギリっと目の前でたっている男が歯ぎしりをする。
さあ、相手が使うのは刀だ。
それもなんの特徴もなく何の長所も短所もないただの刀。
体が覚えているかは解らないが使わせてもらおう。
俺もまだ死ぬわけには行かないし結婚したいし。
別に之を使うのに躊躇いが無いわけではないが自分の命には変えられない。
ーゴメンなとがめ。
ー又使わせてもらうよ姉ちゃん。
「虚刀流壱の構え鈴蘭」
俺は今だけは刀となろう。
一度は錆、そして折れた刀(自分)を抜く。